<完結> βの俺が運命の番に適うわけがない

燈坂 もと

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< 本編 >

50.車の中でキミと

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「初めまして。士郎の母の時任 優里香です。遠かったでしょう。おつかれさま」
「士郎くんと、お付き合い、させていただいている……、っ。……黒木、圭介、です。お迎えに来ていただきありがとうございます」

圭介さん……絶対、今『お付き合いしてる』って言葉に悶絶してたな……どこまでもかわい過ぎてこっちが悶絶しそう……

「……!ちょっと、士郎……!めちゃめちゃイケメンで、めちゃめちゃ礼儀正しい子じゃないの……!やだ、どうしましょう!ウチの子、なんて素敵な方のハートを射止めたのかしら!」

興奮気味の母さんは、俺の肩を力一杯バシバシ叩いた。
痛すぎるんだけど……!

「ちょ、母さん、やめてよ……!け、圭介さん、ごめんなさい……!ウチの母、ミーハーで……!」
「構わない。何も気にならない。お義母さん、運転よろしくお願いします」
「任せて!安全運転で向かうわ!」

圭介さん……今、さらっと お義母さん て呼んだな。
俺には何故か、圭介さんの言葉に文字が見えた。
何か……何か……恥ずかしい……!!!

母さんの車は8人乗りのファミリーカーで。
気も遣うだろうからと三列目に座ってと無理やり押し込められて、2人でそこに座った。

だけど、圭介さんは自分から母さんに話しかけていて、母さんと会話のキャッチボールが成立していたのだ。
絶対会話しないと思っていたから、とても驚いた。

圭介さんは終始微笑んで喋っていて。
いつもの圭介さんぽくなくて。
他所行きの圭介さんに、何だか、変な気持ちになった。
……嫌、とか、そういう事じゃなくて。
………………ム、ムラムラ、して、しまった。(俺も健全な男の子だから。生理現象なので……許してください。)


「……士郎……?どう、したんだ?」
「ふへっ?!や、あ、あの、なんでもない、です!」
「?そうか?」

ムラムラしてる俺に、俺がムラムラしてるとは知らない圭介さんが、俺の様子が相当おかしかったのか、話しかけて来てくれて、思わず声が裏返ってしまった。
爽やか圭介さんなんて貴重すぎるから、心のアルバムに仕舞っておこう。かわいい。

「……士郎。今までのお義母さんへの、俺の態度で微妙なところがあったら……教えてほしい」

ぽそ、と俺に耳打ちした圭介さんの表情は、不安そうな、微妙な顔をしていた。

「えと、微妙も、なにも……完璧すぎて、吃驚してます」
「そうか。よかった……練習した甲斐が、あったよ。」

そう言って圭介さんは、ほ、と息を吐いた。
あれ、もしかして、今までの母さんへの態度って……?
不思議に思って、彼に質問をした。

「圭介さん……もしかして、母さんに……演技、してる……?」
「む、勿論だ。士郎のご家族に、嫌われたくはない。昨日、士郎が寝た後、この動画を見て必死にインプットした。」

圭介さんが見せてくれた画面には「挨拶に行った時に好印象な接し方~これを見れば、間違いなく気に入られる!~」というタイトルがでーんと画面いっぱいに陣取っていて。
こんな映像を、夜遅くまで確認してただなんて……知らなかった。

動画のチョイスも……意味わかんないし。
もう、この人……ほんとに、なんなの。

どれだけ、必死なんだよ…………でも。
すごく、すごく、嬉しい。

「……っ、」

この人が……堪らなく、愛しい。

「……士郎……?」

胸が、苦しくて、切なくて。
くっつきたくなって母さんにバレない様に、圭介さんの腕をギュッ、て掴んだ。

「……!……こんな、可愛い事……されると、寮まで我慢しようとしてたのが、難しく、なる」

小声で、でも俺だけに聞こえる様に彼は耳打ちした。
俺も、今、同じ気持ち。
我慢、しなくて……いいのに。

「……いいよ……?……母さんにバレないように……こっち、きて?」
「…………っ。……困った子だ……」

2列目の背凭れに隠れて、軽く、触れ合うだけのキスをした。
母さんには、バレてるかもしれない。
けど、彼に触れたくて……しょうがなかった。

熱の籠った、彼の瞳に、俺が映ってる。
もう一度、くっつきたくて。
今度は俺が、彼の口唇に、蓋をした。

「……っ!……帰ったら……嫌だと言っても……絶対やめないからな」
「……帰ったら……ずっと……離さないで、くっついてて……?貴方が思ってる以上に……俺、貴方とキスするの……すごく、すき、だから……」
「……!……困った、子だ……!」


家に着いて、車から降りた時、母さんの顔が真っ赤っかで。
給湯室に続いて、またやらかした、と俺も真っ赤っかになったのは、言うまでもない。


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