<完結>同僚に叶わない恋をしている俺が、完璧上司に堕とされる話

燈坂 もと

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4.あの日の事:side東雲(2)

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「それでぇ……もう、やめよっかな、ってぇ……ぐす、おれ……もう、しんどくて……!おかわり……!ぶちょう、おかわり……ください……っ」


焼肉屋から出て、ご馳走様でした!じゃ、帰りましょう!なんて野洲原が言うもんだから、こんな機会そうそうないし(野洲原が俺が既婚者だと思い込んでいるせいで、残業後に早々に帰したがるのは今回に限ってではない)、逃がしてたまるかと2件目に無理矢理連れていき、酒を浴びせたのは俺の欲望からで。
終電を逃した流れで、俺の部屋に連れ込むくらい、目を瞑っていただきたい。
2年も想いを拗らせている俺へのご褒美として、それくらいは受け取らせてほしい。

焼肉の後、いい店を知ってると俺の行きつけの、俺の家の近所のバーに案内した。
常連だけが使える個室があって、そこはふたりだと、密着しないと座れない空間で。
野洲原を奥にして、狭くてごめんな、といいながら膝と膝がぶつかる距離に腰掛ける。

バーなんてあまりきた事がない、とソワソワしていた野洲原は、俺が勧めた甘いカクテルを数杯飲み。

酒に弱い彼は案の定、精神的に負荷もあったためか、直様泣き上戸に変貌した。
その涙が俺のためのものじゃなく、立川が原因だという事実に憤りは隠せないが、それでも今の野洲原の気持ちを洗い浚い聞く事が出来て、俺としては最高の時間だった。
予想通り、立川へ言い出せない気持ちを持っていて……しかし、それを諦めようと思い始めている、という事。
俺にとっては、願ったり叶ったりな状況に震えが止まらない。

今迄、どれほど大きな案件でも冷静さを欠いたことはない。
泣いて酔っぱらっている部下を目の前にして、どうしたらこの子を俺の手中に収められるのか頭の中が忙しなかった。
そんな状態を悟られないよう、泣いている野洲原に向かって、静かに口を開く。

「野洲原……泣かないで?取り敢えず、水、飲みな?」
「うう……いいです……、っ。……おれ、みずのむ、しかくない……です……ぐすっ」
「何言ってんの。水飲む資格、あるよ。ほら、ちょっと酔い醒ました方がいいし、こんなに泣いてちゃ干からびるぞ?飲んで?」
「みずは、のまないです……!そんな、みずなんて、おそれおおい……!ていうか、ぶちょ……やさしすぎ……っ、……いいなあ、ぶちょうのおくさん、ぜったいしあわせじゃん……おれも、ぶちょうみたいなひと、みつけます……!……ぐす、……さいきん、あぷり、いれたんすよ……、?……あ、……?ぶちょ、けいたい……かえ、して……くださ……???」


俺以外の奴と、野洲原、が、?

そんなの、認められる、わけ、ない、だろ。


「俺みたいな人、なら……俺で、いいよな?……野洲原、水、飲めないの……?飲ませて、あげよっか。」
「……へ……?」

度の入っていない眼鏡を外して、胸ポケットにしまう。

酔っ払って目の焦点があまり定まってない野洲原をジ、と見つめると、ぽぽぽ、と顔が赤くなった。
面倒だと思っていたこの顔も武器になるなら、悪くない。

野洲原の後頭部を掴んで固定して。
水を含んで、彼の口唇に、口唇をゆっくりと重ねて、舌を滑り込ませた。

「……っあ、ふ、ぁ」

甘い声に……ゾクゾク、する。
水を流し込んで、飲んだことを確認した俺は、ゆっくりと口唇を離した。

「……ん、……飲めた……?」
「……の、めまし、た……、?……え、……???……な、ん……で……?」
「うん?酔い、醒めてない、な?……もう少し足りない、みたいだな……口、開けて」
「っ、ふ、ぁ……ん、……ぶちょ……」
「……は、……やす、はら……ん、……」

何度も、何度も。
野洲原の口唇に、優しく愛撫する様に俺の口唇を重ねて。

何度目かの口付けは、水を口移しする事を忘れて、お互いに口唇を貪っていた。
野洲原もキスに夢中になっていて、いつの間にか俺の首元に腕を回して、俺を求めてくれている。
堪らない。足りない。

もっと、欲しい。

「……っ。……、野洲原……?……俺の家、ここから近いんだ。終電終わってるし……泊っていって……?」
「っ!お、おくさん……!奥さん、いる……!す、すみません、俺、不倫……!」
「ああ、ごめん。言ってなかったけど、コレ、フェイクだから。」
「…………ふぇい、く???」
「女避けの、偽物。俺は独身だ。独身で、フリー。こんな良物件、そこらへんに無いと思うぞ?……他の男の事で頭いっぱいになったら……立川の事、忘れられるんじゃないか……?俺が忘れさせてあげる。……おいで。」
「……は、い……、?」



言われるがままに、促されるままに。
思ったより簡単に、愛しい部下は俺の誘導に素直に着いてきてくれる。

酒に酔った勢いでも構わない。
この子が、手に入るなら。


店を出て逃げられたら堪らないと、横抱きにして足早に家へ向かう。
嫌がることなく、彼は俺の首元に腕を回して、俺の横顔を見つめていた。
ぽーっとしている表情は可愛さが爆発していて。

愛しい部下の甘い口唇に優しく口付けると、へへ、と言いながら、とろんと微笑んだ彼に下半身が疼く。

逸る気持ちを悟られないよう、大人なフリをして。
俺の中の感情は嬉しさと喜びが爆発しているが、スマートに、何でも無い風を装って。

どんな商談よりも、的確に、慎重に。

外堀から囲って、逃がさない。



────── 絶対に、手に入れる。




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