<完結>同僚に叶わない恋をしている俺が、完璧上司に堕とされる話

燈坂 もと

文字の大きさ
8 / 16

番外編1.立川の場合(1)

しおりを挟む





第一印象は『何か、放って置けないやつ』だった。



「え、俺と……大学一緒だったんだ?全然すれ違わなかったよな?」
「俺、経済学部だったから……棟が違うと同じ学年でも会わないよな」
「経済学部?!ウチの大学の中でも、めっちゃ偏差値高いとこじゃん……!えっ、何で、それでここに…?!経済学部なら、もっといいとこ狙えたんじゃ……」
「狙えなかったの。俺は。どの会社も、俺は……ダメだったみたい。」

そう言って、不貞腐れた顔をした同期の野洲原トウジは酒を煽った。
俺も吃驚しすぎて、彼に無神経な発言をしてしまった事を、野洲原の態度でやっと気付いて申し訳ない気持ちになって。
何かごめん、って謝ったら「ほんと無神経だよな。お詫びに今日はずっと俺の相手して!」とか言われたのでそんな事でいいならって話してたらめちゃめちゃ気が合って。

新歓がきっかけで、同期の中でも特に仲の良い同僚というポジションに俺の中で彼の位置付けが、確定した。

ヤス、という呼び方は俺がそう呼びたい、と彼に提案したモノだ。
野洲原、と呼ぶのも余所余所しいし、トウジと呼べる程、深い付き合いでもない。
何か彼にだけは、みんなが呼んでいない特別な呼び方が良くて……今まで渾名なんて使うことのなかった俺が初めて自分で考えて、決めた名前だ。
だって、名前なんて呼び捨てにしちゃえば自然と仲良い風を装える。
でも、彼の事を名前で呼び捨てにするのは、何故だか出来なかった。何でか自分でも分かんないんだけど。

そういうヤスは、いつまで経っても俺の事は立川呼びで。
別に、いいんだけどね?でもいつか、しゅんって距離が縮まったら呼んでくれるかな、なんて安易に考えてたら……気付いたらもうすぐ入社して3年が経とうとしている。
このままいくと永遠に立川呼びのまんまだろう、なんてこの前ぼんやり考えてたら少し悲しくなって、悲しくなった自分になんで?ってなった。
何か最近、俺ってば変だ。自分が自分でよく分からん。

でも、程良い距離感。程良い付き合い。
深くなり過ぎず、離れてる訳でもない。
ヤスとの関係性は俺にとっては居心地のいいものだ。

俺は大学の時から付き合ってる彼女がいた。
なんなら中学で初めて彼女が出来てから……別れたとしても間が長期で空くことがない。
その大学時代から付き合ってる彼女と、喧嘩して一瞬音信不通になった時も。
仲直りしてこまめに連絡を再開した時も。
結局別れて大泣きした時も。

側にはヤスがいつもいてくれて。

その彼女と別れた次の日に、今フリーなの?って連絡が来た子から付き合おうよ、って言われて彼女が出来て、その子とは半年。
その次の彼女とは3か月。
そのまた次の彼女とは5か月…?くらい?
んーととにかく、どれくらい付き合ったかはイマイチ覚えてないけど、直近のが1番長かった、気がする。

その度に、俺の感情の浮き沈みをヤスはフォローしてくれた。
こんなにイケメンで、こんなに優しいのに何でずっとフリーなんだろ?彼女作らないの?って聞いたら「好きな奴はいるけど、ソイツ、俺の事眼中にないから」だと。
何処の馬の骨だよ……?!そんな失礼な奴は……!
こんな完璧な奴どこにも居ないぞ???
連れてこい、俺が説教してやる……!と俺が鼻息荒く憤慨してたら、ほんと、本人にその発言聞かせてやりたいよ、って笑ったヤスは、なんかめっちゃ可愛くて。
可愛くて???一般男性だよな???ってこの時も混乱したっけ。俺、なんか変だよなあ。

まあ、とにかく。
俺の中でヤスはカッコよくて、かわいくて。
優しくて、時に厳しくて。
まるで、俺の母さんみたいな存在だ。


ヤスが優しさの塊だと初めて感じたのは、休憩所で東雲部長の話をしている時。
それまで、普通に優しい人だと思ってはいたけど、部長を思い遣っての発言がめちゃめちゃ俺に刺さって。
胸に込み上げるモノがあって、思わず抱きしめてしまった。

抱きしめた時、なんか、表現しにくいんだけど。
抱き心地が……恐ろしく、良過ぎた。
何よりヤスの匂いが……なんていうか……めちゃめちゃ、良かった。語彙力なくて上手く表現できないのがツラい。
落ち着くっていうか、安心するっていうか。

彼女を抱きしめても得られない高揚感がハンパない。

ヤスの抱き心地を何度も感じたくて、事ある毎にヤスを抱きしめるのが当たり前になっていって。

きっとあの安心感は家族に対する情みたいなモノで。
だから彼女を抱きしめても、あの高揚感は感じないし、ヤスでしか得られないモノなんだろうな、と、そう、思っていた。

あの時、までは。


次の商談の為の資料を作るのに、地下のあまり誰も使用しない資料室に向かった時だった。

次の商談相手は、古くから付き合いのある所で。
古くからの付き合いすぎて、決め手に欠けていた箇所を調べる為に、先輩にあそこならその資料があるんじゃ、と助言を貰ってそこへ行ったのだ。

ほんとに、たまたま。

あの2人が、いるなんて、知らず。




しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

オメガなパパとぼくの話

キサラギムツキ
BL
タイトルのままオメガなパパと息子の日常話。

お客様と商品

あかまロケ
BL
馬鹿で、不細工で、性格最悪…なオレが、衣食住提供と引き換えに体を売る相手は高校時代一度も面識の無かったエリートモテモテイケメン御曹司で。オレは商品で、相手はお客様。そう思って毎日せっせとお客様に尽くす涙ぐましい努力のオレの物語。(*ムーンライトノベルズ・pixivにも投稿してます。)

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

ナイショな家庭訪問

石月煤子
BL
■美形先生×平凡パパ■ 「いい加減、おわかりになりませんか、進藤さん」 「俺、中卒なんで、キビとかカテとか、わかんないです」 「貴方が好きです」 ■イケメンわんこ先生×ツンデレ美人パパ■ 「前のお宅でもこんな粗相を?」 「まさか。そんなわけありませんって。知永さんだから……です」 ◆我が子の担任×シングルファーザー/すけべmain◆ 表紙イラストは[ジュエルセイバーFREE]様のフリーコンテンツを利用しています http://www.jewel-s.jp/

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

仕事ができる子は騎乗位も上手い

冲令子
BL
うっかりマッチングしてしまった会社の先輩後輩が、付き合うまでの話です。 後輩×先輩。

泣き虫だったはずの幼なじみが再会したら僕を守るために完璧超人になっていた話。

ネギマ
BL
気弱で泣き虫な高校生、日比野千明は、昔からいじめられっ子体質だった。 高校生になればマシになるかと期待したが状況は変わらず、クラスメイトから雑用を押し付けられる毎日を送っていた。 そんなある日、いつものように雑用を押し付けられそうになっている千明を助けたのは、学校中が恐れる“完璧超人”の男子生徒、山吹史郎だった。 文武両道、眉目秀麗、近寄りがたい雰囲気を纏う一匹狼の生徒だったが、実は二人は、幼い頃に離れ離れになった幼なじみだった――。

処理中です...