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13.魔王の記憶(1) *
しおりを挟む俺たちの重すぎる愛情を一身に受けて。
意識を飛ばして眠りについている愛しい魔導師の寝顔を見ながら、涙で少し赤くなった目元を指でなぞる。
伝えられずにいた想いを、思う存分ぶつける事が出来た麗しの国王陛下は、その水色に光り輝く髪を、愛おしそうに指で梳いていた。
外はまだ薄暗く、朝日は昇っていないが、眠る事はできなかった。
目の前にいる愛しい彼と、100年振りに触れ合えた高揚感を、まだゆっくり感じていたかったからだ。
レオニスが、リオの蕾に侵入したとき。
リオが、俺たち以外と交わりが……もしもあったなら、きっともっとふかふかで、レオニスの凶器は簡単に吞み込まれた筈だ。
だが、リオの身体は久し振り過ぎる凶器の侵入に驚き、慄いている様で。
なかなかレオニスを侵入させてはくれなかったのだ。
『……ッ、リ、オ……!すま、ない……指で、ほぐした筈、だが……足りなかった、ようだ……っ、ぅ、あ……っ!』
『……っ、い、……っ!……レオニ、ス……!ん、ん、……っ、ご、めん……!ずっと、じ、……っ、ん、……!い、しか……!』
俺は……キスに夢中で(勿論、魔力吸引を重点的にしてはいたが、やはり愛しい彼との口付けには前のめりになるだろう?こればっかりはリオが可愛いのが悪い。どうか許してほしい。)、その時のリオの台詞をイマイチ聞き取れてはいなかったのだが……。
あれはきっと、自慰、と言ったんだろう。
なんてことだ。
あんなにも可愛く、綺麗で、麗しい。
絶対的に引く手数多な……あの、魔塔主様が。
俺たちと繋がって以降、誰とも繋がっていなかったなんて。
「……100年……100年だ。この子はその長い間、他に見向くことも無く、俺たちをずっと想ってくれていた。……堪らないな。愛しくて、しょうがない。」
「……全く……愛しくて……おかしくなりそうだ。……しかし、いまだに……信じられない。私が、貴方の片割れだなんて。……でも、貴方に手を掴まれた瞬間、不思議な感覚と共に、貴方の過去の映像が一瞬、脳裏に巡った。」
リオの涙を手で掬い上げたレオニスを見て、胸が焼ける感覚のままに目元をなぞった手を掴んだ瞬間。
" この男は、俺だ " と、ハッキリと認識した。
「……私は、全てを知りたい。オウミ、貴方の記憶を、私にもう一度、流してくれないか……?」
ゆっくりと、リオの横にいたレオニスが起き上がる。
そして、俺の前へ手を差し出した。
俺は、リオの頬に軽く口付けをして、リオを挟んで俺もベッドに腰掛ける。
「……構わないが、結構しんどいぞ?……でも、ひとつだけ、言える事がある。全てを受け入れた時……リオの事が……もっと愛しく、なる。」
「……ははっ。それは、私にとっては最高の事だが……リオにとっては、重さが増してしまうかもな。……では、よろしく、頼む。」
ゆっくりと俺の前に出された大きな手に、俺の手を絡める。
さっき感じた懐かしさが、俺の中を巡る。
嬉しくて、悲しい。
苦しくて、幸せな、不思議な、感覚。
俺が転移したこの時に、リオの近くにレオニスがいてよかった。
もし、レオニスとしてではなく、別の時代の何者でもない人間に転生していたら。
きっと、俺たちは完全にはなれなかっただろう。
レオニスと俺は、ふたりでひとり。
レオニスは、俺が魂の錬成を構築した際に切り離した……光の属性。
もうひとりの、魔王なのだから。
「……ふぁ。あーねむ。……じゃ、アステルフォードへ行ってくる。戻りは夕方の予定だ。」
魔族として生まれて。
物心ついた頃には父、母、家族と呼べる様な対象もいなくて。
殺らなきゃ、殺られる。そんな世界で生きていた。
その日の食事は、その日に狩った動物や同族。
その日暮らしで飢えを何とか凌ぐ日々。
気付いたら、その当時の魔族の長を狩っていて……俺はなりたくてなったわけでもない魔族の長というものになってしまった。
今までずっとひとりで過ごしてきた俺が急に群れて、そのトップを、なんて……性に合うわけもなく。
隙を見て抜け出していたら、流石にそれはやめて欲しいと俺の参謀的な魔族に泣きながらお願いをされてからは、言付けて魔の森の奥、人間がいるアステルフォードへ足を伸ばす様になった。
人間の営みは、俺にとって面白いモノばかりだった。
魔国にはない食事や、文化、娯楽……刺激的なモノが多くて、俺は人間という存在に自然と興味を惹かれていった。
いずれは、閉鎖的な魔国にもこの人間達の営みを、すべては難しいかもしれないが取り入れたい、そう思っていて。
頭にある黒いツノさえ隠してしまえば、人間と何ら遜色ない見た目の俺は、アステルフォードへ毎日の様に訪れていたのだ。
「主様……!また、外界へ行かれるのですか……?!もし魔族だと気付かれでもしたら……!」
「……お前は、俺の力を侮っているのか……?俺がバレるとでも……?」
「もっ!申し訳、ございません……!侮ってなど……!ただただ、心配で……!お気を付けて、いってらっしゃいませ……!」
空間移動の陣を編む俺の指には、紫色の光が纏う。
行き先は、いつも向かう露店。
ここに毎日通い始めて、3か月が経とうとしていた。
そこに、同じ時間に訪れる、俺の興味を最大級に引く少年がいる。
俺の足元に紫色の魔法陣が浮かび上がり、ゆっくりと、下から上へ陣は移動した。
「……さて。……今日は、どんな話を……しようか。」
人間の事を知るために訪れていたアステルフォードのお忍び訪問は、いつの間にか形を変えて俺の日課になっていた。
ひょんな事から知り合った大魔導師の孫。
エリオス・カナライト・ノクティス。
彼との出逢いが、俺の運命を変えた。
彼と逢ってたわいも無い会話をして、楽しい時間を過ごしたい。
ただ、それだけのために。
特に約束もしていないのに、同じ時間に同じ店に向かう。
そう。あの日も。
ただ、それだけのつもりだったのに。
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