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holy war
邪神
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「おお、お嬢さーん。心配したんだよ。こんな真夜中までどこにいたの」
「ヒルデさん、その怪我早く手当てしないと」
オロオロと慌てふためく、若と真理亜をじっと見つめる。コイクリシスターズ。
「少し、落ち着け若、真理亜」
「「落ち着いていられないでしょ」」
息ぴったりな2人、しかし空気を読まず、私の中に眠る腹の虫が消費したエネルギーの回復を要求してくる。
「真理亜、なんだ、その夕食は残っているか。お腹、すいたのだが」
意外にも大きな音が鳴ったので、顔が少し熱くなる。
「もちろん、ちゃんとヒルデさんの分作ってあるんだから、心配御無用」
えっへんと、得意げな表情を見せ真理亜は、台所へ向かった。
それにしても、どうしたものか。あの女を倒すにしても、やはり武器がなしといわけにはいくまい。かと言ってまた、運良くオケアノスが現れることもないだろし、レプリカの聖剣だけでは少し、心許ない。
「ふむ」
「どうされましたか、姉様」
「いや、ちょっと、ね」
クリオスは、首を傾げて見せる。そんなクリオスに、貰ったのか、借りたのかはわからないが、とりあえず聖剣のレプリカを見せてやる。
「なんですの、これ」
「これは聖剣ですよ。クリオス」
台所から、カレーのスパイスの香りを漂わせながら戻ってきたコイオスが、私の前にカレーの入った皿を持ってきてくれた。
「どうぞ、姉様。め・し・あ・が・れ」
両手で形どったハートを左右に揺らして、最後に私の顔の近くまで突き出した。
「はい」
「真理亜殿が、この儀式を行うと良いと申されたので」
「よしよし、かわいい、かわいい」
「全くもって不愉快です」
と言いつつも、表情は、なんとも嬉しそうだ。
「それはさておき、なぜ聖剣を」
「ああこれ、神だって威張る。嫌な奴からもらったのよ。そうそう、でもこれ偽物らしいわ」
ムムッと、目を細めて聖剣のレプリカを眺める。
「やはり、これは本物ですね」
「コイオス、私にも説明下さい」
「この剣から感じる霊力は、まさしく精霊たちが鍛え上げたもの、幻想も幻影にも表すことのできない、この世にただ1つ剣です」
「つまり、あんた達が真似出来ないってこと」
「その通りです」
思いがけないことに驚き、聖剣を落としてしまった。はわわわわ。どうしよう本物、本物。クリオスは怯えた顔をしてコイオスの背中に隠れ、こちらを恐る恐る伺う。
「クリオス?」
「姉様、私はもう必要無いのですね。だから聖剣で私をお切りになるのですね」
何を言っているんだか。呆れて物も言えない。そのまま私は、落とした聖剣を拾って鞘に収めた。そして、カレーを一口頬張って、食事を始めた。
いつも通り真理亜の手料理は、とても私好みな味付けでとても美味しかった。軽く体を流して、自分の部屋へ行くと、見慣れた奴が、窓をコツコツと叩いて、開けるように催促する。
「何よ、もう寝たいんだけど。あんたの寝床なんか無いわよ」
「私のことはどうでもいい、だが私の妹は、どうやら短気なようでな。呑気に寝かせてはくれないらしい」
「どういうこと、あまり状況が見えてこないのだけれど」
「んっ、分からなかったのか?つまり敵襲に備えろということだ」
すると、背負っていた剣を引き抜くと、振り返って迫り来る無数の矢を断ち切る。
「私が引きつけておく。その間に移動しろ」
「えっ」
「人間が巻き込まれるぞ。クッ」
降り注ぐ矢の一本が、オケアノスの肩を掠める。じっとしているわけにはいかない。私がここにいると、状況が悪くなる。とにかく、急いでこの場を離れよう。玄関に回ってイカロスを起動させ、若田邸から飛び出した。
「お嬢さん、こんな遅くにどうしたんだい。あっ、行っちゃた」
玄関から出たと同時に、上昇して、どこへ向かおうかと思案する。やはり人気のないところがいいが、港はどうも私が、破壊した大型クレーンの撤去が、行われているようだし、となるとあとは、山ぐらいしかない。山に逃げ込もう。山ならば木々が矢の遮蔽物になってくれるはずだ。
北の方角の山の峰に降り立つと、思った通りの、森林が月明かりを遮るほど生い茂り、辺りは、闇で覆われていた。しかし、このまま身をさらしておくのも危ないだろと思い、隠れられ場所探しに歩き出した。
「あいつ、大丈夫かしら」
ふと、オケアノスの心象世界を思い出した。あちらは昼間だったが、こんなふうに、木々が生い茂り生命の限りを感じさせる場所であった。ここも昼になると、神秘的に感じるのかもしれないなどと考えながら歩くこと数分、一軒の教会を見つけた。
「灯りはなし、人の気配もなし、ここでいいか」
ギィィと、扉の錆びた音が室内に響く。中に入ると、天井に直径2メートルくらいの穴が空いき、教会という特殊な雰囲気も相まって、妖艶に月光が教会の祭壇、十字架をハッキリと照らし出していた。
「なんか、不気味ね。幽霊とか怖くないんだから」
バンッ、ドサッ。
「ヒャッ」
正面の扉から誰か来たのかと、祭壇の下から覗くと、オケアノスが倒れている。咄嗟に祭壇から出て、駆け寄るて安否を確かめる。
「オケアノス。こんなに血が、動かないで止血するわ」
「私のことは・・・いい。君は、逃げろ」
「あんたはまた、また、人のことばっかり考えて」
目が熱くなって、涙が溢れる。
「自分のことも、たまには考えなさいよ」
「どうして君が泣くんだ。そら、我が妹がやってきたぞ」
私は、妙な怒りに襲われた。オケアノスが自分を大切にしないことにも、彼の妹が、彼を手負いにしたことにも、腹の底から煮え繰り返る。キッと、教会の入り口の門から、ゆっくりと歩み寄ってくる邪神の女を睨み付けると、
「あんたは、ここで待ってて」
鞘に手をかけて剣を引き抜く。
「まさか、グアッ、君ではまだ未熟すぎる」
「今のあんたに言われたくない」
私は、酷い言い方をしたと思う。だけど、もう我慢できない。私のせいで誰かが傷つくのを見たくなかった。
「大丈夫。少しは私を信じなさいよね。これまで窮地は何度だって潜り抜けてきたわ。あいつの狙いが私なら、私がなんとかしなくちゃね」
抜いた剣を構え直す。相手もまたお得意の弓を限界まで引き絞る。私が走り出すのと、相手が矢を放つのは、ほとんど同じであり、それが戦いの幕開けの合図だった。
相手までの距離はあと僅か、稲妻のように、矢の嵐の中を疾駆する。確実急所に当たる矢を斬り伏せ、掠める程度の矢は、無視して走る。今度こそ外さない。
「ヤァア」
邪神の女は、黒く染まった翼で空中へ飛び退くと、矢ではない何かを放つ。
「聖槍」
驚嘆の声を漏らす私をよそに、矢継ぎ早に矢を放つ。
「鬱陶しい、私だって空は飛べる」
イカロスの出力を最大まで引き上げ、
月が支配する夜空を、流星のように飛行していた。
「haaaaaーーーー」
邪神は、動き回る私を捉えられず、怒りに叫んでいた。すると左手が疼き出した。日も変わってしまっているだろけど、朝から不思議な輝きを灯した左手の痣が、再び煌々と黄金に輝いているのだ。
「我、ここにありしかの命、原初の光は真理の中に、誉れの力はこの剣に、今こそ邪を絶ち、義を正せ」
口から、意識もせずに、詠唱めいた言葉が発せられる。しかも、体は動きを止めて、ただ、堂々と相手の方を向き剣を振りかざしている私がいた。邪神の女との距離はかなりあるのに、眩しい光を纏った聖剣は、振り下ろせと言わんばかりに、光を増してゆく。もうダメだ。腕が、
「Candenti Salutem Gratia(光り輝く救いの一撃)」
振り下ろされた聖剣から、溢れる光と温かさ。その瞬間に垣間見る懐かしい光景。それは、つかの間であったが確かに感じた。邪神も同じく、見る見る邪気が祓われて、表情はとても嬉しそうだ。「帰って来た」と呟いて、金の塵となって、夜風に吹かれて流れていった。
「終わったの?」
教会の入り口に降り立つと、暗い教会の庭に、数え切れない花が咲いていた。そして、その花畑の中を脇腹を押さえてやってくるオケアノス。
「心配には及ばない。だいぶマシになってきたところだ」
真剣な顔をして、傷の具合を話すオケアノスが、少しおかしく見えた。
「ププッ、アハハ、ハハハ」
「なぜ笑う?」
「だって、顔も体も傷だらけなのに、まだ強がっているのだもの、ハァー、ふう」
痛くなったお腹を落ち着かせて、改めて辺りを見回すと、庭だけじゃない。森の木々にも、色とりどりな花や果実が実っている。
「今日は明るいのね」
「ああ、確かに。冬だというのに果実が実るなどと」
「またやりすぎちゃったかしら」
「いや、これぐらいが丁度いい手向けになるだろう」
目を細めて遠くを見つめるオケアノスの横顔が、いつに無く悲愴に満ちていた。
山を下り、若と連絡を取って無事を報告し、コイオスとクリオスに迎え頼んだ。その後、まだヨタヨタと、歩くオケアノスを見兼ねて近くの公園のブランコに座らせた。ベンチも無いのでは仕方ない。
「大丈夫?しっかりしなさいよ。意識無くなっちゃったら、私はあんたを抱えられないんだから」
「承知している」
動けないんじゃどうしようもないし、いい機会だから聖剣のことでも聞いてみるか。
「ねぇ、ちょっといいかしら」
「何かな」
「これ、本物よね」
腰に下げた鞘に収まっている聖剣を見せる。
「これ?ああ、聖剣のことか。いかにも、本物だ」
「なんで、レプリカって言ったの?」
「君が、本物か確かめるためだ。だが今日その結果が得られた」
オケアノスは、嬉しそうに微笑する。
「それで、私は本物ってことでいいのかしら」
「答えることはできない」
「なんでよ」
彼は、やれやれと首振って、憐れみの眼差しを私に向ける。
「君なぁ、本物と言われて何の本物か理解できるのか」
「できないわよ」
「そういうことだ。どうやら君の記憶は、デリートされている。そして新たに記憶し出したのが、2年前。性格というのは、天性のものであるから消去までには、至らなかったようだが。その性格をデリートしてくれればと思うと」
「何よ。こんな性格で悪かったですね」
「仲睦まじいのは」
「たいへん結構です」
「ひゃん」
耳元で、冷ややかな声が、頭にぬぅと、入ってくる感覚に驚き、身構える。
「どうも」
「姉様」
「あんた達もっとマシな登場の仕方があるでしょう」
ジーとっ見つめてくるオケアノス。
「何ボーっとしてんのよ」
彼は、咳払いをして、「何でもない」とまた元の堅物そうな顔に戻った。
「お久しぶりです」
「兄様」
「ああ、久しぶりだな。弟達よ」
んっ、何かの聞き間違いか。オケアノスは、今あの二人に、弟と言わなかったか。
「あっ、姉様が困っていらっしゃる」
「説明して差し上げて、クリオス」
「いいでしょう。コイオス」
「お困りの姉様のために、簡単にこの私めが、ご説明致しましょう」
驚きはしたが、困ってはいないぞ。そんな心の反論も虚しく、クリオスの話が始まってしまった。なんだかんだと、クリオスは、一度口を開けば落語家のように、饒舌に語るのだ。しかし何か思い立ったのか、両手を合わせてパンッと鳴らした。
「コイオス、私は、そろそろ頃合いだと思うのですが」
「ふむ、そうですね。話してしまいましょうか。良いですか兄様?」
「やむおえまい」
一人蚊帳の外で話についていけない。その間、勝手に話が進んでいくことだけは、分かった。
「私たちは、性別という概念から外れた存在なのです」
クリオスが、静かに語り出した。
「私たち、コイオスとクリオスは、一度消滅しました。ですが、どういうわけか。再び、この地に足をつけることが叶いました。そして生前私たちの性別は、男だったようですが、今では無性別というカテゴリに属します。このことに関しては、兄様から」
「了解した。無性別についてだな。そもそも神というモノの存在は、実に抽象的であり、空想的な物なのだ。人あってこその神、皮肉なことに人が神を創り、神が人を作る。神とは、力だ。ならその力に性別はいるか?」
「・・・」
「そう、力があれば、男だろうと女だろうと、どちらでもいい。ただ、救いに関しては別だ。男の救いには、駆け引きにおいての勝利が内在しているが、女の救いには、愛情や美の追求などが、含まれている。つまり、その点において人間は、男と女の区別を必要とした。私の場合、古来より勝利と栄光を願われ、男として人間たちの祈りに答えている」
オケアノスは、コイオスとクリオスを一瞥して話を続ける。
「この子たちは、今まさに女として人々に願われ始めている。相変わらず私は男のままだがな」
しかし、私は疑問に思った。
「一つ分からないんだけど、何で性別転換する必要があるの?」
「それは、・・・・」
クリオスが胸に手を当てて、言葉を濁す。すると、コイオスがクリオスの方に手を置き代わりに説明しだした。
「私たちは、先程クリオスが申した通り、一度消滅しました。男の方々の信仰を十分に得られなくなったからです。嘗ては、男の方は野心という幻想を成就するために私たち、いいえ、本来の私たちコリオスは、求められてきたのです。しかし、時代が進むにつれ男の方々は、理想ではなく、現実を求めるようになり、私たちは、存在意義をなくしてしまったのです。ですが、今回は新たに、少女という幼子たちが私たちに救いを求めました。幼い少女は純粋です。故に、コリオスほどの大きな体では、どうにも都合が悪かった。ですので、幻覚のコイオス。幻影のクリオスに、一を二に分けたのです」
なるほど、だから小学生くらいの体つきをして、子供らのニーズに応えようとしているのか。そう思うと、何だか立派に見えてきてしまう。
「健気なやつらめ」
「「はい」」
二人は嬉しそうにはにかむ。
「でっ、あんたなんかお父さんしてます。みたいな雰囲気出さないでよね」
「ん、私か?」
「あんた以外に男いないでしょうが」
「いや、なに、ほほえましいと思っただけだよ。実のところ心配していたのだ。神にとって、必要とされなくなることは、人間でいう死刑宣告のようなものだからな。私は、まだ経験したことはないが、コリオスがあそこまでになるとはと・・・・・。フッ、この話はまた別の機会にするとしよう」
コリオスがどうかしたのだろうか、まだこの話には色々と裏がありそうだが、今はオケアノスが、乗り気じゃなさそうだし、追及しない方が良いかもしれないな。
「はぁぁ!?」
「どうした」
クリオスが慌てた顔をして、何かを思い出した風だ。
「姉様、大事なことづてを若様より預かっていたのをすっかり忘れておりました。コホン『お嬢さんに悪いけど家穴だらけだし今週いっぱいは、事務所で暮らすことになりそうだから、帰っても誰もいないから、あと、できればお昼の買い出しをしてから事務所に戻っていてもらえると助かる。じゃあまた事務所で、片付けして待ってるよ』だそうです」
私は、驚いた。声だけでなく、雰囲気や年老いのような、面影までそっくりそのままの若だった。にしても随分と長いことづてね。そしてオケアノスを睨む。
「おや、何か私がまずったかな」
「かなりね」
どこかでやったことのあるやり取りを、逆の立場で再現するは目になったことは、邪神に勝利したことで水に流すとするか。
「ぷっははは、さぁ、帰りましょう」
私以外の三人は、何のことかわからないという顔をしているが、そんなことは気にせず、日もすっかりてっぺんに登ってしまった坂道を私は、下りだすのだった。
「ヒルデさん、その怪我早く手当てしないと」
オロオロと慌てふためく、若と真理亜をじっと見つめる。コイクリシスターズ。
「少し、落ち着け若、真理亜」
「「落ち着いていられないでしょ」」
息ぴったりな2人、しかし空気を読まず、私の中に眠る腹の虫が消費したエネルギーの回復を要求してくる。
「真理亜、なんだ、その夕食は残っているか。お腹、すいたのだが」
意外にも大きな音が鳴ったので、顔が少し熱くなる。
「もちろん、ちゃんとヒルデさんの分作ってあるんだから、心配御無用」
えっへんと、得意げな表情を見せ真理亜は、台所へ向かった。
それにしても、どうしたものか。あの女を倒すにしても、やはり武器がなしといわけにはいくまい。かと言ってまた、運良くオケアノスが現れることもないだろし、レプリカの聖剣だけでは少し、心許ない。
「ふむ」
「どうされましたか、姉様」
「いや、ちょっと、ね」
クリオスは、首を傾げて見せる。そんなクリオスに、貰ったのか、借りたのかはわからないが、とりあえず聖剣のレプリカを見せてやる。
「なんですの、これ」
「これは聖剣ですよ。クリオス」
台所から、カレーのスパイスの香りを漂わせながら戻ってきたコイオスが、私の前にカレーの入った皿を持ってきてくれた。
「どうぞ、姉様。め・し・あ・が・れ」
両手で形どったハートを左右に揺らして、最後に私の顔の近くまで突き出した。
「はい」
「真理亜殿が、この儀式を行うと良いと申されたので」
「よしよし、かわいい、かわいい」
「全くもって不愉快です」
と言いつつも、表情は、なんとも嬉しそうだ。
「それはさておき、なぜ聖剣を」
「ああこれ、神だって威張る。嫌な奴からもらったのよ。そうそう、でもこれ偽物らしいわ」
ムムッと、目を細めて聖剣のレプリカを眺める。
「やはり、これは本物ですね」
「コイオス、私にも説明下さい」
「この剣から感じる霊力は、まさしく精霊たちが鍛え上げたもの、幻想も幻影にも表すことのできない、この世にただ1つ剣です」
「つまり、あんた達が真似出来ないってこと」
「その通りです」
思いがけないことに驚き、聖剣を落としてしまった。はわわわわ。どうしよう本物、本物。クリオスは怯えた顔をしてコイオスの背中に隠れ、こちらを恐る恐る伺う。
「クリオス?」
「姉様、私はもう必要無いのですね。だから聖剣で私をお切りになるのですね」
何を言っているんだか。呆れて物も言えない。そのまま私は、落とした聖剣を拾って鞘に収めた。そして、カレーを一口頬張って、食事を始めた。
いつも通り真理亜の手料理は、とても私好みな味付けでとても美味しかった。軽く体を流して、自分の部屋へ行くと、見慣れた奴が、窓をコツコツと叩いて、開けるように催促する。
「何よ、もう寝たいんだけど。あんたの寝床なんか無いわよ」
「私のことはどうでもいい、だが私の妹は、どうやら短気なようでな。呑気に寝かせてはくれないらしい」
「どういうこと、あまり状況が見えてこないのだけれど」
「んっ、分からなかったのか?つまり敵襲に備えろということだ」
すると、背負っていた剣を引き抜くと、振り返って迫り来る無数の矢を断ち切る。
「私が引きつけておく。その間に移動しろ」
「えっ」
「人間が巻き込まれるぞ。クッ」
降り注ぐ矢の一本が、オケアノスの肩を掠める。じっとしているわけにはいかない。私がここにいると、状況が悪くなる。とにかく、急いでこの場を離れよう。玄関に回ってイカロスを起動させ、若田邸から飛び出した。
「お嬢さん、こんな遅くにどうしたんだい。あっ、行っちゃた」
玄関から出たと同時に、上昇して、どこへ向かおうかと思案する。やはり人気のないところがいいが、港はどうも私が、破壊した大型クレーンの撤去が、行われているようだし、となるとあとは、山ぐらいしかない。山に逃げ込もう。山ならば木々が矢の遮蔽物になってくれるはずだ。
北の方角の山の峰に降り立つと、思った通りの、森林が月明かりを遮るほど生い茂り、辺りは、闇で覆われていた。しかし、このまま身をさらしておくのも危ないだろと思い、隠れられ場所探しに歩き出した。
「あいつ、大丈夫かしら」
ふと、オケアノスの心象世界を思い出した。あちらは昼間だったが、こんなふうに、木々が生い茂り生命の限りを感じさせる場所であった。ここも昼になると、神秘的に感じるのかもしれないなどと考えながら歩くこと数分、一軒の教会を見つけた。
「灯りはなし、人の気配もなし、ここでいいか」
ギィィと、扉の錆びた音が室内に響く。中に入ると、天井に直径2メートルくらいの穴が空いき、教会という特殊な雰囲気も相まって、妖艶に月光が教会の祭壇、十字架をハッキリと照らし出していた。
「なんか、不気味ね。幽霊とか怖くないんだから」
バンッ、ドサッ。
「ヒャッ」
正面の扉から誰か来たのかと、祭壇の下から覗くと、オケアノスが倒れている。咄嗟に祭壇から出て、駆け寄るて安否を確かめる。
「オケアノス。こんなに血が、動かないで止血するわ」
「私のことは・・・いい。君は、逃げろ」
「あんたはまた、また、人のことばっかり考えて」
目が熱くなって、涙が溢れる。
「自分のことも、たまには考えなさいよ」
「どうして君が泣くんだ。そら、我が妹がやってきたぞ」
私は、妙な怒りに襲われた。オケアノスが自分を大切にしないことにも、彼の妹が、彼を手負いにしたことにも、腹の底から煮え繰り返る。キッと、教会の入り口の門から、ゆっくりと歩み寄ってくる邪神の女を睨み付けると、
「あんたは、ここで待ってて」
鞘に手をかけて剣を引き抜く。
「まさか、グアッ、君ではまだ未熟すぎる」
「今のあんたに言われたくない」
私は、酷い言い方をしたと思う。だけど、もう我慢できない。私のせいで誰かが傷つくのを見たくなかった。
「大丈夫。少しは私を信じなさいよね。これまで窮地は何度だって潜り抜けてきたわ。あいつの狙いが私なら、私がなんとかしなくちゃね」
抜いた剣を構え直す。相手もまたお得意の弓を限界まで引き絞る。私が走り出すのと、相手が矢を放つのは、ほとんど同じであり、それが戦いの幕開けの合図だった。
相手までの距離はあと僅か、稲妻のように、矢の嵐の中を疾駆する。確実急所に当たる矢を斬り伏せ、掠める程度の矢は、無視して走る。今度こそ外さない。
「ヤァア」
邪神の女は、黒く染まった翼で空中へ飛び退くと、矢ではない何かを放つ。
「聖槍」
驚嘆の声を漏らす私をよそに、矢継ぎ早に矢を放つ。
「鬱陶しい、私だって空は飛べる」
イカロスの出力を最大まで引き上げ、
月が支配する夜空を、流星のように飛行していた。
「haaaaaーーーー」
邪神は、動き回る私を捉えられず、怒りに叫んでいた。すると左手が疼き出した。日も変わってしまっているだろけど、朝から不思議な輝きを灯した左手の痣が、再び煌々と黄金に輝いているのだ。
「我、ここにありしかの命、原初の光は真理の中に、誉れの力はこの剣に、今こそ邪を絶ち、義を正せ」
口から、意識もせずに、詠唱めいた言葉が発せられる。しかも、体は動きを止めて、ただ、堂々と相手の方を向き剣を振りかざしている私がいた。邪神の女との距離はかなりあるのに、眩しい光を纏った聖剣は、振り下ろせと言わんばかりに、光を増してゆく。もうダメだ。腕が、
「Candenti Salutem Gratia(光り輝く救いの一撃)」
振り下ろされた聖剣から、溢れる光と温かさ。その瞬間に垣間見る懐かしい光景。それは、つかの間であったが確かに感じた。邪神も同じく、見る見る邪気が祓われて、表情はとても嬉しそうだ。「帰って来た」と呟いて、金の塵となって、夜風に吹かれて流れていった。
「終わったの?」
教会の入り口に降り立つと、暗い教会の庭に、数え切れない花が咲いていた。そして、その花畑の中を脇腹を押さえてやってくるオケアノス。
「心配には及ばない。だいぶマシになってきたところだ」
真剣な顔をして、傷の具合を話すオケアノスが、少しおかしく見えた。
「ププッ、アハハ、ハハハ」
「なぜ笑う?」
「だって、顔も体も傷だらけなのに、まだ強がっているのだもの、ハァー、ふう」
痛くなったお腹を落ち着かせて、改めて辺りを見回すと、庭だけじゃない。森の木々にも、色とりどりな花や果実が実っている。
「今日は明るいのね」
「ああ、確かに。冬だというのに果実が実るなどと」
「またやりすぎちゃったかしら」
「いや、これぐらいが丁度いい手向けになるだろう」
目を細めて遠くを見つめるオケアノスの横顔が、いつに無く悲愴に満ちていた。
山を下り、若と連絡を取って無事を報告し、コイオスとクリオスに迎え頼んだ。その後、まだヨタヨタと、歩くオケアノスを見兼ねて近くの公園のブランコに座らせた。ベンチも無いのでは仕方ない。
「大丈夫?しっかりしなさいよ。意識無くなっちゃったら、私はあんたを抱えられないんだから」
「承知している」
動けないんじゃどうしようもないし、いい機会だから聖剣のことでも聞いてみるか。
「ねぇ、ちょっといいかしら」
「何かな」
「これ、本物よね」
腰に下げた鞘に収まっている聖剣を見せる。
「これ?ああ、聖剣のことか。いかにも、本物だ」
「なんで、レプリカって言ったの?」
「君が、本物か確かめるためだ。だが今日その結果が得られた」
オケアノスは、嬉しそうに微笑する。
「それで、私は本物ってことでいいのかしら」
「答えることはできない」
「なんでよ」
彼は、やれやれと首振って、憐れみの眼差しを私に向ける。
「君なぁ、本物と言われて何の本物か理解できるのか」
「できないわよ」
「そういうことだ。どうやら君の記憶は、デリートされている。そして新たに記憶し出したのが、2年前。性格というのは、天性のものであるから消去までには、至らなかったようだが。その性格をデリートしてくれればと思うと」
「何よ。こんな性格で悪かったですね」
「仲睦まじいのは」
「たいへん結構です」
「ひゃん」
耳元で、冷ややかな声が、頭にぬぅと、入ってくる感覚に驚き、身構える。
「どうも」
「姉様」
「あんた達もっとマシな登場の仕方があるでしょう」
ジーとっ見つめてくるオケアノス。
「何ボーっとしてんのよ」
彼は、咳払いをして、「何でもない」とまた元の堅物そうな顔に戻った。
「お久しぶりです」
「兄様」
「ああ、久しぶりだな。弟達よ」
んっ、何かの聞き間違いか。オケアノスは、今あの二人に、弟と言わなかったか。
「あっ、姉様が困っていらっしゃる」
「説明して差し上げて、クリオス」
「いいでしょう。コイオス」
「お困りの姉様のために、簡単にこの私めが、ご説明致しましょう」
驚きはしたが、困ってはいないぞ。そんな心の反論も虚しく、クリオスの話が始まってしまった。なんだかんだと、クリオスは、一度口を開けば落語家のように、饒舌に語るのだ。しかし何か思い立ったのか、両手を合わせてパンッと鳴らした。
「コイオス、私は、そろそろ頃合いだと思うのですが」
「ふむ、そうですね。話してしまいましょうか。良いですか兄様?」
「やむおえまい」
一人蚊帳の外で話についていけない。その間、勝手に話が進んでいくことだけは、分かった。
「私たちは、性別という概念から外れた存在なのです」
クリオスが、静かに語り出した。
「私たち、コイオスとクリオスは、一度消滅しました。ですが、どういうわけか。再び、この地に足をつけることが叶いました。そして生前私たちの性別は、男だったようですが、今では無性別というカテゴリに属します。このことに関しては、兄様から」
「了解した。無性別についてだな。そもそも神というモノの存在は、実に抽象的であり、空想的な物なのだ。人あってこその神、皮肉なことに人が神を創り、神が人を作る。神とは、力だ。ならその力に性別はいるか?」
「・・・」
「そう、力があれば、男だろうと女だろうと、どちらでもいい。ただ、救いに関しては別だ。男の救いには、駆け引きにおいての勝利が内在しているが、女の救いには、愛情や美の追求などが、含まれている。つまり、その点において人間は、男と女の区別を必要とした。私の場合、古来より勝利と栄光を願われ、男として人間たちの祈りに答えている」
オケアノスは、コイオスとクリオスを一瞥して話を続ける。
「この子たちは、今まさに女として人々に願われ始めている。相変わらず私は男のままだがな」
しかし、私は疑問に思った。
「一つ分からないんだけど、何で性別転換する必要があるの?」
「それは、・・・・」
クリオスが胸に手を当てて、言葉を濁す。すると、コイオスがクリオスの方に手を置き代わりに説明しだした。
「私たちは、先程クリオスが申した通り、一度消滅しました。男の方々の信仰を十分に得られなくなったからです。嘗ては、男の方は野心という幻想を成就するために私たち、いいえ、本来の私たちコリオスは、求められてきたのです。しかし、時代が進むにつれ男の方々は、理想ではなく、現実を求めるようになり、私たちは、存在意義をなくしてしまったのです。ですが、今回は新たに、少女という幼子たちが私たちに救いを求めました。幼い少女は純粋です。故に、コリオスほどの大きな体では、どうにも都合が悪かった。ですので、幻覚のコイオス。幻影のクリオスに、一を二に分けたのです」
なるほど、だから小学生くらいの体つきをして、子供らのニーズに応えようとしているのか。そう思うと、何だか立派に見えてきてしまう。
「健気なやつらめ」
「「はい」」
二人は嬉しそうにはにかむ。
「でっ、あんたなんかお父さんしてます。みたいな雰囲気出さないでよね」
「ん、私か?」
「あんた以外に男いないでしょうが」
「いや、なに、ほほえましいと思っただけだよ。実のところ心配していたのだ。神にとって、必要とされなくなることは、人間でいう死刑宣告のようなものだからな。私は、まだ経験したことはないが、コリオスがあそこまでになるとはと・・・・・。フッ、この話はまた別の機会にするとしよう」
コリオスがどうかしたのだろうか、まだこの話には色々と裏がありそうだが、今はオケアノスが、乗り気じゃなさそうだし、追及しない方が良いかもしれないな。
「はぁぁ!?」
「どうした」
クリオスが慌てた顔をして、何かを思い出した風だ。
「姉様、大事なことづてを若様より預かっていたのをすっかり忘れておりました。コホン『お嬢さんに悪いけど家穴だらけだし今週いっぱいは、事務所で暮らすことになりそうだから、帰っても誰もいないから、あと、できればお昼の買い出しをしてから事務所に戻っていてもらえると助かる。じゃあまた事務所で、片付けして待ってるよ』だそうです」
私は、驚いた。声だけでなく、雰囲気や年老いのような、面影までそっくりそのままの若だった。にしても随分と長いことづてね。そしてオケアノスを睨む。
「おや、何か私がまずったかな」
「かなりね」
どこかでやったことのあるやり取りを、逆の立場で再現するは目になったことは、邪神に勝利したことで水に流すとするか。
「ぷっははは、さぁ、帰りましょう」
私以外の三人は、何のことかわからないという顔をしているが、そんなことは気にせず、日もすっかりてっぺんに登ってしまった坂道を私は、下りだすのだった。
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