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observer
2年後
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<あと500メートルを左に、2つ目の建物の屋上から見えるはずだ>
「了解」
私がこの世界に来て2年が経とうとしていた。
今となっては、この通り若田利彦の足となり目となるべく天使の観測ポイントへとひた走る。
目的地の屋上から町は一望出来るけど、毎回同じ場所での観測ではない、天使に気づかれない位置を若田が選びガイドする。それから天使の観測に入る。
<北西の方にタワーがあるだろ。その右どなりの建物の屋上に何か見えないか>
私は目を凝らし言われた方を見る。いた。しかし会社員風の中年の男が隣にいる。するとその男は、屋上の柵を越え端に立って、今にも飛び降りようとする。
「ねぇ、若、緊急事態よ。あれを使うわ」
<待ってお嬢さんあれはまだ調整不足で>
「じゃあ何のために持たせたのよ。こういう時に使うためでしょ」
少しの沈黙の後、「仕方ないか」と、若が溜め息を吐く。
<装着の仕方を説明する>
「そう来なくっちゃ」
<背面の真ん中のボタンを押す。それから出てきた2本のベルトを肩に巻いて、背中の装置に付ける>
「んっ、翼が生えないぞ」
<そんなはずはない>
その時、体が急上昇を始めある程度の高さで停止した。背中を見ると、黒く光る翼が生え装置は上手く作動してくれたようだ。
「若、作動した。安定してるからこのまま現場に向かう」
<試運転だし、気おつけてくれ>
「わかっているわ。任せなさいな」
私は、空を飛んだ事は今までなかったが、思ったより思い通りに動ける。加えて何故だか懐かしいような気がしている。
「行ける」
屋上の端にいる男はすでに柵から手を離していて、いつでも飛び降りれる体制に入っていた。
翼は私の意志を理解したかのように速度は増し目標へと向かう。あと少し、
「あら、珍しいお客さんだこと」
「何をしている」
男は落ち着きなく、私と天使を交互に見ている。「もちろん、迷える子羊を導いていましたのよ」
「何処へ導くというの?」
私は足音を鳴らしながら男の前に立ち、告げる。
「お前、幸せって何か知っている?」
「そりゃあ、金持ちで、家族がいて」
男は俯きながら、ボソボソと言う。
「はぁー。全然わかってないな。いいか、幸せというのは、己が生きていること自体が奇跡に近しい幸せなことなんだ。それをお前は、自ら不幸になろうとしているんだぞ」
天使が割って話し出す。
「そんな情け、この男には必要無いのだわ。死ぬことがこの者の願い。なら無理に引き止めるのは酷な話でなくて」
私は、怒りをこらえて聞いていたが、そろそろ限界の様だ。
命の重みを知らない者の言いそうなこどだと、無視出来るほど私は、臨機応変に出来ていない。
「それが、それが天使の言葉なのか。やはりただの人形か」
「なぁに、私にたてつく気なのかしら。いいわ、今に見てなさい。天界に住まう者に逆らうことは、どういうことか」
静かにしていた男が、いきなり立ち上がり、再びビルの端に立っていた。
今度は何のためらいもなく飛び降りたが、私は見逃さなかった。
男の口元が落ちる瞬間に、「タスケテ」と震えながら、私に伝えようとしたのを見過ごしはしない。
私は背中に付けっぱなしだった飛行用擬似翼の翼を広げ、ビルを飛び降りた。ビルの高さは、50階相当。男はだいたい68Kgほど。だから、だから、だから、アァもう、間に合うなら何でもいい、間に合えぇぇぇ。
「おい、何か降って来るぞ」
「あれ、人じゃね」
「キャアア、人が落ちてくるわ」
「あれ、消えた」
下にいる民衆は、上空で起こっている出来事を口々に驚嘆の言葉を連ねる。
どうにか間に合った。
男は気絶しているだけで、心臓は生きようとしていたのを確認した後、私はビルの屋上に戻って来るなり、天使が驚愕の眼差しを私に向ける。
「どうして、どうしてあなたが人間を助けるの」
「私は自分のしたことが、正しいとか間違ってるとかはどうでもいい。でも自分にしか出来ないことがあるのなら、私は自分の行いに誇りを持って心のままに行動する。それだけのことよ」
天使はその場にへたり込んでいる。
何はともあれ大惨事にならなくて良かった。
「angel No.7observe complete」
天使の頭上に雷の閃光が走り、天使の体を砂に変えてしまう。この光景はこれで7度目。
どうも慣れない。
可哀想とか痛そうというのとは、ちょっと違ってただ散るのは、一瞬で儚いものだと毎度のこと思うのである。
「おかえり」
私は若の待つ事務所へと戻って来た。
時刻はすでに夕方の6時半、こちらの世界に来たのもこの時間帯だった。
そろそろ若と出会って2年になる。
つくづく時が経つのは早いものだ。たが、この光景は全く変わり映えしない。
そもそもことの始まりは、2年前に若の使っているパソコンに差出人不明、日付け無しのメールが不定期に届くようになったという。そして私と出会い、天使を観測することになるわけだが、その天使の位置も謎のメールで送られてくる。
ただし今回は特殊なことに、郵送で私の使っていた飛行用擬似翼の設計図とパーツが1週間ごとに届いた。
誰が何のためにこんなことをするのかは未だによくわかってないし、若自身調べるつもりもないらしい。
「いやぁ、誰だかわからないけど、こんな設計図を送ってくれるなんて、こいつは高く売れそうだ。なっ、お嬢さん」
「え、ああ、お金には私、あまり興味ないわ」
私としては、早く飛行用擬似翼の調整をして万全の態勢で次に備えたいのだけれど・・・。
若は、昼寝してばっかりで毎日コツコツと私がこの装備を組んだのだ。しかし、どういうわけかこの事務所の資金は上向きで、私たちはそれとなく贅沢な昼食を取っていた。
まぁ、それはおいといて。
次に天使が現れるのはいつなのか、ただ待つことしか出来ないのは、なんとももどかしい。
「そんな難しい顔してもすぐには終わらないさ。コール(降臨)通知のメールを待つことしか、今は出来ないんだから」
それもそうだが、そのコール(降臨)通知も今のところ正確だからいいものの、誤差が生じればどうなることか。
「そのメールによると、霊感の無い、言わば普通の人間には自然災害に感じるのでしょう。それに私がこの眼で確認しなければ、天使は活動し続けるときた。なら少しは焦りもするわ」
若は真面目な顔をして言う。
「いや、ここは焦った方の負けだよ。可能性はいくつも分岐している。
例えば、観測しても活動し続ける天使や、実力行使で戦わなくちゃいけない天使が今後コール(降臨)するかもしない」
そんなことわかってる。と言いたくなるが私は口を紡ぐ。
いつかそういう時がくるかもしれないことは。でも私は人間じゃない
天使でもない。
若は、「君がなんであれ、心がちゃんとあるんならそれでいいじゃないか」と言ってくれたが、私は悪魔と呼ばれてきたことに変わりはない。
人が願うから天使はコール(降臨)される。なら私はやはり、その願いを破壊する悪魔でしかないのかもしれない。
この世界に来てから天使を観測するようになって、私はこの類いの自問自答を幾度となく繰り返すようになっていた。
「まぁ、じっくり腰を据えて待とう、風林火山の心意気でね」
「そうだな。それはそうと少しは、こっちも手伝え」
私は装備を示して悪態をつく。
「ごめん、ごめん。それ<イカロス>って言う名前みたいだよ」
「その名前、縁起悪そうね」
「擬似的な翼だからじゃないかな。おっと、そろそろ時間だ」
若はそう言うと、慌てて帰宅する準備を整えてこの部屋を出ていった。
「鍵は掛けといくれ。調整はちゃんと済ませておくから、じゃあまた明日」
若には両親を早くに亡くした中学生の姪がいるのだとか。
「家族か」
ここにいてもすることが無いため、夜の街に繰り出そうとドアを開け外に出た。
「冷えるな」
そろそろ秋を告げる夜風に吹かれ、私はまだまだ寝静まらない街へと歩き出した。
「了解」
私がこの世界に来て2年が経とうとしていた。
今となっては、この通り若田利彦の足となり目となるべく天使の観測ポイントへとひた走る。
目的地の屋上から町は一望出来るけど、毎回同じ場所での観測ではない、天使に気づかれない位置を若田が選びガイドする。それから天使の観測に入る。
<北西の方にタワーがあるだろ。その右どなりの建物の屋上に何か見えないか>
私は目を凝らし言われた方を見る。いた。しかし会社員風の中年の男が隣にいる。するとその男は、屋上の柵を越え端に立って、今にも飛び降りようとする。
「ねぇ、若、緊急事態よ。あれを使うわ」
<待ってお嬢さんあれはまだ調整不足で>
「じゃあ何のために持たせたのよ。こういう時に使うためでしょ」
少しの沈黙の後、「仕方ないか」と、若が溜め息を吐く。
<装着の仕方を説明する>
「そう来なくっちゃ」
<背面の真ん中のボタンを押す。それから出てきた2本のベルトを肩に巻いて、背中の装置に付ける>
「んっ、翼が生えないぞ」
<そんなはずはない>
その時、体が急上昇を始めある程度の高さで停止した。背中を見ると、黒く光る翼が生え装置は上手く作動してくれたようだ。
「若、作動した。安定してるからこのまま現場に向かう」
<試運転だし、気おつけてくれ>
「わかっているわ。任せなさいな」
私は、空を飛んだ事は今までなかったが、思ったより思い通りに動ける。加えて何故だか懐かしいような気がしている。
「行ける」
屋上の端にいる男はすでに柵から手を離していて、いつでも飛び降りれる体制に入っていた。
翼は私の意志を理解したかのように速度は増し目標へと向かう。あと少し、
「あら、珍しいお客さんだこと」
「何をしている」
男は落ち着きなく、私と天使を交互に見ている。「もちろん、迷える子羊を導いていましたのよ」
「何処へ導くというの?」
私は足音を鳴らしながら男の前に立ち、告げる。
「お前、幸せって何か知っている?」
「そりゃあ、金持ちで、家族がいて」
男は俯きながら、ボソボソと言う。
「はぁー。全然わかってないな。いいか、幸せというのは、己が生きていること自体が奇跡に近しい幸せなことなんだ。それをお前は、自ら不幸になろうとしているんだぞ」
天使が割って話し出す。
「そんな情け、この男には必要無いのだわ。死ぬことがこの者の願い。なら無理に引き止めるのは酷な話でなくて」
私は、怒りをこらえて聞いていたが、そろそろ限界の様だ。
命の重みを知らない者の言いそうなこどだと、無視出来るほど私は、臨機応変に出来ていない。
「それが、それが天使の言葉なのか。やはりただの人形か」
「なぁに、私にたてつく気なのかしら。いいわ、今に見てなさい。天界に住まう者に逆らうことは、どういうことか」
静かにしていた男が、いきなり立ち上がり、再びビルの端に立っていた。
今度は何のためらいもなく飛び降りたが、私は見逃さなかった。
男の口元が落ちる瞬間に、「タスケテ」と震えながら、私に伝えようとしたのを見過ごしはしない。
私は背中に付けっぱなしだった飛行用擬似翼の翼を広げ、ビルを飛び降りた。ビルの高さは、50階相当。男はだいたい68Kgほど。だから、だから、だから、アァもう、間に合うなら何でもいい、間に合えぇぇぇ。
「おい、何か降って来るぞ」
「あれ、人じゃね」
「キャアア、人が落ちてくるわ」
「あれ、消えた」
下にいる民衆は、上空で起こっている出来事を口々に驚嘆の言葉を連ねる。
どうにか間に合った。
男は気絶しているだけで、心臓は生きようとしていたのを確認した後、私はビルの屋上に戻って来るなり、天使が驚愕の眼差しを私に向ける。
「どうして、どうしてあなたが人間を助けるの」
「私は自分のしたことが、正しいとか間違ってるとかはどうでもいい。でも自分にしか出来ないことがあるのなら、私は自分の行いに誇りを持って心のままに行動する。それだけのことよ」
天使はその場にへたり込んでいる。
何はともあれ大惨事にならなくて良かった。
「angel No.7observe complete」
天使の頭上に雷の閃光が走り、天使の体を砂に変えてしまう。この光景はこれで7度目。
どうも慣れない。
可哀想とか痛そうというのとは、ちょっと違ってただ散るのは、一瞬で儚いものだと毎度のこと思うのである。
「おかえり」
私は若の待つ事務所へと戻って来た。
時刻はすでに夕方の6時半、こちらの世界に来たのもこの時間帯だった。
そろそろ若と出会って2年になる。
つくづく時が経つのは早いものだ。たが、この光景は全く変わり映えしない。
そもそもことの始まりは、2年前に若の使っているパソコンに差出人不明、日付け無しのメールが不定期に届くようになったという。そして私と出会い、天使を観測することになるわけだが、その天使の位置も謎のメールで送られてくる。
ただし今回は特殊なことに、郵送で私の使っていた飛行用擬似翼の設計図とパーツが1週間ごとに届いた。
誰が何のためにこんなことをするのかは未だによくわかってないし、若自身調べるつもりもないらしい。
「いやぁ、誰だかわからないけど、こんな設計図を送ってくれるなんて、こいつは高く売れそうだ。なっ、お嬢さん」
「え、ああ、お金には私、あまり興味ないわ」
私としては、早く飛行用擬似翼の調整をして万全の態勢で次に備えたいのだけれど・・・。
若は、昼寝してばっかりで毎日コツコツと私がこの装備を組んだのだ。しかし、どういうわけかこの事務所の資金は上向きで、私たちはそれとなく贅沢な昼食を取っていた。
まぁ、それはおいといて。
次に天使が現れるのはいつなのか、ただ待つことしか出来ないのは、なんとももどかしい。
「そんな難しい顔してもすぐには終わらないさ。コール(降臨)通知のメールを待つことしか、今は出来ないんだから」
それもそうだが、そのコール(降臨)通知も今のところ正確だからいいものの、誤差が生じればどうなることか。
「そのメールによると、霊感の無い、言わば普通の人間には自然災害に感じるのでしょう。それに私がこの眼で確認しなければ、天使は活動し続けるときた。なら少しは焦りもするわ」
若は真面目な顔をして言う。
「いや、ここは焦った方の負けだよ。可能性はいくつも分岐している。
例えば、観測しても活動し続ける天使や、実力行使で戦わなくちゃいけない天使が今後コール(降臨)するかもしない」
そんなことわかってる。と言いたくなるが私は口を紡ぐ。
いつかそういう時がくるかもしれないことは。でも私は人間じゃない
天使でもない。
若は、「君がなんであれ、心がちゃんとあるんならそれでいいじゃないか」と言ってくれたが、私は悪魔と呼ばれてきたことに変わりはない。
人が願うから天使はコール(降臨)される。なら私はやはり、その願いを破壊する悪魔でしかないのかもしれない。
この世界に来てから天使を観測するようになって、私はこの類いの自問自答を幾度となく繰り返すようになっていた。
「まぁ、じっくり腰を据えて待とう、風林火山の心意気でね」
「そうだな。それはそうと少しは、こっちも手伝え」
私は装備を示して悪態をつく。
「ごめん、ごめん。それ<イカロス>って言う名前みたいだよ」
「その名前、縁起悪そうね」
「擬似的な翼だからじゃないかな。おっと、そろそろ時間だ」
若はそう言うと、慌てて帰宅する準備を整えてこの部屋を出ていった。
「鍵は掛けといくれ。調整はちゃんと済ませておくから、じゃあまた明日」
若には両親を早くに亡くした中学生の姪がいるのだとか。
「家族か」
ここにいてもすることが無いため、夜の街に繰り出そうとドアを開け外に出た。
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