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鳴動の章
決戦〜衝動
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迫り来る腕を退けること数分。早くも斧の腕を退去させることに成功していた。しかし意外にも杖の腕がよく動く。というのも、他の腕が傷つけば回復、自分が狙われたらバリア、距離が離れたら魔法攻撃という具合に、非常に厄介な相手だ。大太刀の腕と連携を取ろうものなら、回避するので精一杯という状況は認めるしかなかった。
回ったり、退いたり、上昇したりとできるだけ一箇所にとどまることなく動き回り、ガイアの腕を繰り出す驚異的な一打を上手くやり過ごす。
「うるさい、うるさすぎるぞ。ゴミがぁ」
「お生憎様、私は体力には自信があるのよ」
装甲が薄い分早く動ける。私は隙の大きい鎚に狙いを定め接近する・・・と見せかけて、ゼニルとハーキーを瞬時に合体、変形させアローフォームとなったジュピトリアを杖に向ける。
そして渾身の一矢を撃ち放つ。とても早く、強く杖の腕を穿つ。
「これで二つ。面倒なのがいなくなってやりやすくなったわね」
「勝ち誇るにはまだ早かろう。前座を消化しきってからにしてもらおうか」
やはり本体はあの盾を持っているせいか、ガイアは余裕がある様子だ。あの盾にはきっと何かあるのだろうが、近くわけにはいかない。
「やっぱ、やり辛いままね。ゼニルモードガンマ」
ハーキーを右手に、ケルベロスを展開し煌刃を生やしたゼニルを左手に、あの余裕の正体を炙り出すとしよう。
ケルベロスが牽制をするが無駄のない軌道で腕らは攻撃を回避する。その間を縫うように、私は太刀の腕を狙い接近し強烈な一撃を叩き込んだ。崩れるように太刀の腕は海上へ落下していった。
これであと三本。相変わらずガイアの本体とは一定の距離を保たれたままである。まだあの盾を使わないと私は何故か焦燥感に囚われている。おそらくこの不安は、無知であるという事実と未知であるという存在感からくるものだと思う。
「気になるけど、迂闊には・・・ブラフかもしれないけれど」
一か八か、ブラスターで手を出してみるのも悪くないのかもしれない。
大きく上昇し、自由落下するタイミングと合わせてブラスターフォームの引き金に指をかける。そしてすれ違う寸前まで近づいて、ブラスターは火を噴いた。ズガガガと無数の弾がばら撒かれ、ガイアは盾を構えた。その矢先次々と直撃コースの弾は盾に埋め込まれた宝石に回収されていく。そして次々と回収された弾が宝石から発射しだして、急ぎ私は防御姿勢をとるが間に合わず足や腹部に弾がかすめて行った。
「うぐっ、・・・まさか、自分の攻撃で怪我をする日が来るとはね」
これは宝石を避けて攻撃するか、盾を弾いてガイア自身に攻撃を当てないかぎり勝機はないだろう。・・・けれどあの宝石が吸収しきれないほどのエネルギーを叩き込められたとしたらあるいは・・・・・。
試してみる価値はありそうだ。しかし、その余力が残っていればの話になりそうだ。
「残りは剣と槍、それから鎚。落とすなら、うりゃああああああ」
動きの遅い鎚をケルベロスとのコンビネーションで微塵に刻んだ。加えて私のすぐ近くにいて狙いやすかったこともあり。あっさりと鎚は巨大な飛沫を上げて海底に沈んでいった。
「こやつらが残ったかまあ良い。盾との取り回しは良かろう」
ガイアはぶつくさと呟く何かをしようとしているが、彼女のことだから何が起こってもおかしくない。
それはすぐにわかる。ガイアは巨人から抜け出すと盾の宝石を先程まで、ガイアがいた。左胸辺りにねじ込むと、巨人は水を得た魚のように独立して動き出したしかも、ご丁寧に浮遊していた腕がいつのまにか巨人の腕となっている。
巨人は槍と盾を構え、ガイアは剣を握っている。どうやら、剣はガイアに合わせて大きさが変化しているみたいだ。
「これで本当のニ対一か。ちょっとまずいかもね」
さあて、どうしようかしらね。あの巨人の戦闘力によって、私の立ち回りも変わってくるのだが、とその時、胸の奥が熱くなるのを感じる。
「アツっ、ううっ」
私は目を疑った。
「これは、ゼロの扉」
「おやッ、悪いが手をそちらから引いてはくれまいか。こちらからは出られそうになくてな」
扉の奥にいたのは、ティータイムを楽しんでいるもう一人の私、過去の私だった。
手を扉に入れると彼女の少しひんやりとした手を握り、思い切り引っ張りだすと、少しきつめの瞳が私の顔を覗いている。
「こうして肉体を持って会うのは久しいな」
「そうね。それであなたの武器は」
「持ち合わせていない。どちらか貸せ」
じゃあとゼニルを手渡すと、煌刃をブンブンと振り剣の握りを確かめている。
「軽いな。まあ良い、切れるのならなんでも良いか」
相変わらずだと思うが、今は頼もしい味方であることは間違いない。
「どっちと戦うの」
「今更何を聞くかと思えば、私はでかい獲物を狙うに決まっているだろう。お前は奴と決着をつけるが良いわ」
いうが早いか、彼女は次の瞬間には巨人の盾を斬りつけている。
やれやれ血気盛んという言葉がよく似合う。黒塗りの甲冑姿の私は紫電とともに閃光を撒き散らす。
「フン。一人で奴の相手が務まるものか。五分と持つまい」
「それでもいいのよ。彼女はあの子は怒れるゼウスそのものよ。そう簡単にやられるたまじゃないわ」
「だといいがな。雌雄を決するとしよう。我が正しいか、貴様が正しいか」
「どちらが正しいかなんてどうでもいいの、いま私がすべきと思ったことを全力でやり遂げる。あなたを救うために」
ハーキー・ジィアン。私の心を表す剣よ、私に飛ぶ勇気をくれたこの翼と共に真の姿を・・・。
宝石が紅く熱を持ち輝く。これはまさか以前の姿を取り戻しつつあるのか、刀身は煌めき、温かさを感じる。この包まれるような感覚は、そうだ、この剣を握り戦ったあの頃を思い出す。
「これは、なんだ」
ガイアは目を腕で庇い慄く。
「この輝きはあらゆる願いを受けた輝き。おかえり、ハーキー。この集った願いは、人も動物も植物、全てのものが唯一つのことを願っている」
「願い・・・だと」
「『地球を救いたい』という願いがここに集っている」
「そんなものが神を超えて行けると思うな」
どんなに間違っても、いつだって私たちがこの星を見捨てたりなんてしない。何故ならば、私たちはこの星に生まれた仲間なのだから。
ガイアは天を突くような大剣をふりかざす。私はハーキーを構え狙いを定める。
「はあああ、コレが・・・・・貴様らの罪の重さだああああ」
「あなたを救う輝く一撃、『Candenti Salutem Gratia』」
初撃で大剣を打ち砕き、バラバラと私を捉えることなく大剣は海中に沈んで行く。茫然と私を見据えるガイアの懐にすかさず入り込み、もう一発お見舞いする。しかしガイアは光に包まれているが私を一度睨むと手を伸ばしてきて、肩を強く摑みかかると光が赤黒い何かに変わる。
「ヒルデ、離れてッ」
横からきた何者かに引っ張られたが、今は何故か体が思うように動かない。だが私を退避させたのは、美麗のようだ。
「うぐっ、ガイアさんを本当のガイアさんを返してください」
「お前は気づいていたようだな。ならば、道連れにするにはちょうど良い」
ガイアはそのまま美麗の手首を掴み、そのまま消え去った。
「ミレーーーイ」
伸ばした手は空をすくい。彼女の手を取ることはできなかった。すぐに追いかけないと。
隣ではゼウスと、ガイアの眷属は激しい攻防の真っ最中。応援は望めそうにない。そうこう思案していると、また何かが近づいてきた。
「なんだろう、このウサギみたいな生き物」
「ああ、姉様。ご無事で何よりでございます。ところで美麗様はこちらにいらしゃいませんか」
「えーと、コリオスでいいのよね」
「はい。コリオスですよ」
「美麗はさっきガイアに攫われたわ。何とかして探さないと。何かいい方法はあると思う」
「うーん。こちらの敵勢力は弱体しつつあります。しかし空・地・海のいづれかが崩れれば、敵も持ち直してしまうでしょう。ですので私はここを動けません」
「そう、よね」
落胆はしない。わかっていたことなのだし、むしろありがたい程だ。皆んなのおかげで、私はガイアと真正面から対峙できたわけなのだから。
とすれば、いい方法、いい方法。見つけるのではなく。違ったアプローチの仕方があるはずだ。何処へでもいける何か・・・・・。
「そうだ」
私は閃いた。
「ゼロの扉よ美麗の場所まで」
理屈は簡単だ。今まで行ける場所が場所だと勝手に思い込んでいたが、それを人を座標に指定すればその人の近くに行けるはずだと読んだが、どうやらあたりのようだ。
荘厳で重鈍な扉はゴゴゴとその口を開けて行く。ちらりとゼウスを見やるとしのぎを削り会いながらも、私の方を一瞥して、不敵に笑いアゴで「行け」と促してくれている。
私は、ハーキーを強く握りしめ覚悟を決めて扉に飛び込んだ。
「ここは、エデンの園。どうして」
「こんなところまで追ってくるとはな。見上げた闘志」
「ここで戦っても意味ないと思うんだけど」
「そうさな。ここでは誰も傷つかない。傷つけられない世界ならばどうして戦えようか」
やはりこの違和感は美麗の口にしていたことと関係があるらしい。
「美麗はどこ」
「奴はそこだ」
ガイアが指差す方を見ると、戻しの和泉に横たわる美麗の姿を見つけた。
「美麗」
「出すでないぞ。其奴を人に戻してやっているのだからな。感謝こそすれ、咎を受けることでもないと思うのだがな」
私は今ある疑問を率直に言葉にする。彼女は本物だという確信を得るために。
「あなたは、本当のガイアだよね」
ガイアはふっと自分の顔に手をかざすと、表情が以前と異なりとても柔らかい優しい女性の顔を現す。そして口元を抑えてクスクスと笑っているのが、何故だか上品さがあるが、違和感はなくむしろ板についているようだ。
「わかってしまうか、やはり我とあやつとでは違いがあるようだな」
「そうですね。あなたは美麗を絶対に殺せない。むしろ助ける行動をとると思っていました。案の定あなたは美麗を助けた。私にゼロの扉を使わせるために最後の一手で私を捕まえようとした。全部計算尽くだったんじゃないんですか」
「そうさな。どこから言い訳をしたものか。私は奴に裏の私に消されかけていた本来の地球を運営するガイアだ。人間たちだけでなく、すべてのものを等しく管理するものだった・・・のだがな。いつからか、憎しみという一つの感情に飲まれてしまった。今こうしてここにいられるのは、我が奴との繋がりを束の間だが切り離せたことにある。その瞬刻をこの和泉で過ごし私はかろうじて、元の私に戻ることができた。こちらの時間が本来の時間と年単位での差があったことに私は救われた。お前の放ったあの光、確かに美しいものだった。強く優しく、気高い暖かさがそこにはあった。
・・・・・ありがとう我が子よ」
ガイアは言葉を切るそして和泉の方をちらりと覗く。私もつられて後方を確認すると、美麗が立ち上がらんと膝に力を入れていた。服装も髪型も違っていたが、私はその姿を知っている。あのロケットの写真と同じ姿と服装だったからだ。
私は美麗に駆け寄り肩を貸す。
「ありがとう。ヒルデ」
美麗は尊いものを見るときのような眼差しをガイアに向けて、言葉を選んでいるようだ。その証拠に口元がむず痒そうに震えているのだ。
「美麗、どうして出てしまったのだろうか。私の尊き者よ・・・・・大人しくその和泉で眠っていてくれさえすれば、私や此奴らとの辛き記憶も消え去るというのに」
「わた・・・しは、私はあなたにずっと感謝していました。だから忘れたくないんですッ。ヒルデとも他のみんなとの思い出も、再会したときの奏花ちゃんと華蓮ちゃんの嬉しい言って私のために泣いてくれたことも、確かに辛い時もあった。あなたを憎むこともあった、それでも進んでいくことしか人にはできないから、どんな思い出も私にとっては大切なんですッ」
ガイアは目を閉じて、静かに美麗の言葉の一言も漏らさぬように、またそれらを大事そうに耳にしまう。
私たちはその様子を見守る。するとガイアはやけに意味ありげな笑顔をこちらに見せ、「さらばだ」と声にもならない声で告げるのだった。
回ったり、退いたり、上昇したりとできるだけ一箇所にとどまることなく動き回り、ガイアの腕を繰り出す驚異的な一打を上手くやり過ごす。
「うるさい、うるさすぎるぞ。ゴミがぁ」
「お生憎様、私は体力には自信があるのよ」
装甲が薄い分早く動ける。私は隙の大きい鎚に狙いを定め接近する・・・と見せかけて、ゼニルとハーキーを瞬時に合体、変形させアローフォームとなったジュピトリアを杖に向ける。
そして渾身の一矢を撃ち放つ。とても早く、強く杖の腕を穿つ。
「これで二つ。面倒なのがいなくなってやりやすくなったわね」
「勝ち誇るにはまだ早かろう。前座を消化しきってからにしてもらおうか」
やはり本体はあの盾を持っているせいか、ガイアは余裕がある様子だ。あの盾にはきっと何かあるのだろうが、近くわけにはいかない。
「やっぱ、やり辛いままね。ゼニルモードガンマ」
ハーキーを右手に、ケルベロスを展開し煌刃を生やしたゼニルを左手に、あの余裕の正体を炙り出すとしよう。
ケルベロスが牽制をするが無駄のない軌道で腕らは攻撃を回避する。その間を縫うように、私は太刀の腕を狙い接近し強烈な一撃を叩き込んだ。崩れるように太刀の腕は海上へ落下していった。
これであと三本。相変わらずガイアの本体とは一定の距離を保たれたままである。まだあの盾を使わないと私は何故か焦燥感に囚われている。おそらくこの不安は、無知であるという事実と未知であるという存在感からくるものだと思う。
「気になるけど、迂闊には・・・ブラフかもしれないけれど」
一か八か、ブラスターで手を出してみるのも悪くないのかもしれない。
大きく上昇し、自由落下するタイミングと合わせてブラスターフォームの引き金に指をかける。そしてすれ違う寸前まで近づいて、ブラスターは火を噴いた。ズガガガと無数の弾がばら撒かれ、ガイアは盾を構えた。その矢先次々と直撃コースの弾は盾に埋め込まれた宝石に回収されていく。そして次々と回収された弾が宝石から発射しだして、急ぎ私は防御姿勢をとるが間に合わず足や腹部に弾がかすめて行った。
「うぐっ、・・・まさか、自分の攻撃で怪我をする日が来るとはね」
これは宝石を避けて攻撃するか、盾を弾いてガイア自身に攻撃を当てないかぎり勝機はないだろう。・・・けれどあの宝石が吸収しきれないほどのエネルギーを叩き込められたとしたらあるいは・・・・・。
試してみる価値はありそうだ。しかし、その余力が残っていればの話になりそうだ。
「残りは剣と槍、それから鎚。落とすなら、うりゃああああああ」
動きの遅い鎚をケルベロスとのコンビネーションで微塵に刻んだ。加えて私のすぐ近くにいて狙いやすかったこともあり。あっさりと鎚は巨大な飛沫を上げて海底に沈んでいった。
「こやつらが残ったかまあ良い。盾との取り回しは良かろう」
ガイアはぶつくさと呟く何かをしようとしているが、彼女のことだから何が起こってもおかしくない。
それはすぐにわかる。ガイアは巨人から抜け出すと盾の宝石を先程まで、ガイアがいた。左胸辺りにねじ込むと、巨人は水を得た魚のように独立して動き出したしかも、ご丁寧に浮遊していた腕がいつのまにか巨人の腕となっている。
巨人は槍と盾を構え、ガイアは剣を握っている。どうやら、剣はガイアに合わせて大きさが変化しているみたいだ。
「これで本当のニ対一か。ちょっとまずいかもね」
さあて、どうしようかしらね。あの巨人の戦闘力によって、私の立ち回りも変わってくるのだが、とその時、胸の奥が熱くなるのを感じる。
「アツっ、ううっ」
私は目を疑った。
「これは、ゼロの扉」
「おやッ、悪いが手をそちらから引いてはくれまいか。こちらからは出られそうになくてな」
扉の奥にいたのは、ティータイムを楽しんでいるもう一人の私、過去の私だった。
手を扉に入れると彼女の少しひんやりとした手を握り、思い切り引っ張りだすと、少しきつめの瞳が私の顔を覗いている。
「こうして肉体を持って会うのは久しいな」
「そうね。それであなたの武器は」
「持ち合わせていない。どちらか貸せ」
じゃあとゼニルを手渡すと、煌刃をブンブンと振り剣の握りを確かめている。
「軽いな。まあ良い、切れるのならなんでも良いか」
相変わらずだと思うが、今は頼もしい味方であることは間違いない。
「どっちと戦うの」
「今更何を聞くかと思えば、私はでかい獲物を狙うに決まっているだろう。お前は奴と決着をつけるが良いわ」
いうが早いか、彼女は次の瞬間には巨人の盾を斬りつけている。
やれやれ血気盛んという言葉がよく似合う。黒塗りの甲冑姿の私は紫電とともに閃光を撒き散らす。
「フン。一人で奴の相手が務まるものか。五分と持つまい」
「それでもいいのよ。彼女はあの子は怒れるゼウスそのものよ。そう簡単にやられるたまじゃないわ」
「だといいがな。雌雄を決するとしよう。我が正しいか、貴様が正しいか」
「どちらが正しいかなんてどうでもいいの、いま私がすべきと思ったことを全力でやり遂げる。あなたを救うために」
ハーキー・ジィアン。私の心を表す剣よ、私に飛ぶ勇気をくれたこの翼と共に真の姿を・・・。
宝石が紅く熱を持ち輝く。これはまさか以前の姿を取り戻しつつあるのか、刀身は煌めき、温かさを感じる。この包まれるような感覚は、そうだ、この剣を握り戦ったあの頃を思い出す。
「これは、なんだ」
ガイアは目を腕で庇い慄く。
「この輝きはあらゆる願いを受けた輝き。おかえり、ハーキー。この集った願いは、人も動物も植物、全てのものが唯一つのことを願っている」
「願い・・・だと」
「『地球を救いたい』という願いがここに集っている」
「そんなものが神を超えて行けると思うな」
どんなに間違っても、いつだって私たちがこの星を見捨てたりなんてしない。何故ならば、私たちはこの星に生まれた仲間なのだから。
ガイアは天を突くような大剣をふりかざす。私はハーキーを構え狙いを定める。
「はあああ、コレが・・・・・貴様らの罪の重さだああああ」
「あなたを救う輝く一撃、『Candenti Salutem Gratia』」
初撃で大剣を打ち砕き、バラバラと私を捉えることなく大剣は海中に沈んで行く。茫然と私を見据えるガイアの懐にすかさず入り込み、もう一発お見舞いする。しかしガイアは光に包まれているが私を一度睨むと手を伸ばしてきて、肩を強く摑みかかると光が赤黒い何かに変わる。
「ヒルデ、離れてッ」
横からきた何者かに引っ張られたが、今は何故か体が思うように動かない。だが私を退避させたのは、美麗のようだ。
「うぐっ、ガイアさんを本当のガイアさんを返してください」
「お前は気づいていたようだな。ならば、道連れにするにはちょうど良い」
ガイアはそのまま美麗の手首を掴み、そのまま消え去った。
「ミレーーーイ」
伸ばした手は空をすくい。彼女の手を取ることはできなかった。すぐに追いかけないと。
隣ではゼウスと、ガイアの眷属は激しい攻防の真っ最中。応援は望めそうにない。そうこう思案していると、また何かが近づいてきた。
「なんだろう、このウサギみたいな生き物」
「ああ、姉様。ご無事で何よりでございます。ところで美麗様はこちらにいらしゃいませんか」
「えーと、コリオスでいいのよね」
「はい。コリオスですよ」
「美麗はさっきガイアに攫われたわ。何とかして探さないと。何かいい方法はあると思う」
「うーん。こちらの敵勢力は弱体しつつあります。しかし空・地・海のいづれかが崩れれば、敵も持ち直してしまうでしょう。ですので私はここを動けません」
「そう、よね」
落胆はしない。わかっていたことなのだし、むしろありがたい程だ。皆んなのおかげで、私はガイアと真正面から対峙できたわけなのだから。
とすれば、いい方法、いい方法。見つけるのではなく。違ったアプローチの仕方があるはずだ。何処へでもいける何か・・・・・。
「そうだ」
私は閃いた。
「ゼロの扉よ美麗の場所まで」
理屈は簡単だ。今まで行ける場所が場所だと勝手に思い込んでいたが、それを人を座標に指定すればその人の近くに行けるはずだと読んだが、どうやらあたりのようだ。
荘厳で重鈍な扉はゴゴゴとその口を開けて行く。ちらりとゼウスを見やるとしのぎを削り会いながらも、私の方を一瞥して、不敵に笑いアゴで「行け」と促してくれている。
私は、ハーキーを強く握りしめ覚悟を決めて扉に飛び込んだ。
「ここは、エデンの園。どうして」
「こんなところまで追ってくるとはな。見上げた闘志」
「ここで戦っても意味ないと思うんだけど」
「そうさな。ここでは誰も傷つかない。傷つけられない世界ならばどうして戦えようか」
やはりこの違和感は美麗の口にしていたことと関係があるらしい。
「美麗はどこ」
「奴はそこだ」
ガイアが指差す方を見ると、戻しの和泉に横たわる美麗の姿を見つけた。
「美麗」
「出すでないぞ。其奴を人に戻してやっているのだからな。感謝こそすれ、咎を受けることでもないと思うのだがな」
私は今ある疑問を率直に言葉にする。彼女は本物だという確信を得るために。
「あなたは、本当のガイアだよね」
ガイアはふっと自分の顔に手をかざすと、表情が以前と異なりとても柔らかい優しい女性の顔を現す。そして口元を抑えてクスクスと笑っているのが、何故だか上品さがあるが、違和感はなくむしろ板についているようだ。
「わかってしまうか、やはり我とあやつとでは違いがあるようだな」
「そうですね。あなたは美麗を絶対に殺せない。むしろ助ける行動をとると思っていました。案の定あなたは美麗を助けた。私にゼロの扉を使わせるために最後の一手で私を捕まえようとした。全部計算尽くだったんじゃないんですか」
「そうさな。どこから言い訳をしたものか。私は奴に裏の私に消されかけていた本来の地球を運営するガイアだ。人間たちだけでなく、すべてのものを等しく管理するものだった・・・のだがな。いつからか、憎しみという一つの感情に飲まれてしまった。今こうしてここにいられるのは、我が奴との繋がりを束の間だが切り離せたことにある。その瞬刻をこの和泉で過ごし私はかろうじて、元の私に戻ることができた。こちらの時間が本来の時間と年単位での差があったことに私は救われた。お前の放ったあの光、確かに美しいものだった。強く優しく、気高い暖かさがそこにはあった。
・・・・・ありがとう我が子よ」
ガイアは言葉を切るそして和泉の方をちらりと覗く。私もつられて後方を確認すると、美麗が立ち上がらんと膝に力を入れていた。服装も髪型も違っていたが、私はその姿を知っている。あのロケットの写真と同じ姿と服装だったからだ。
私は美麗に駆け寄り肩を貸す。
「ありがとう。ヒルデ」
美麗は尊いものを見るときのような眼差しをガイアに向けて、言葉を選んでいるようだ。その証拠に口元がむず痒そうに震えているのだ。
「美麗、どうして出てしまったのだろうか。私の尊き者よ・・・・・大人しくその和泉で眠っていてくれさえすれば、私や此奴らとの辛き記憶も消え去るというのに」
「わた・・・しは、私はあなたにずっと感謝していました。だから忘れたくないんですッ。ヒルデとも他のみんなとの思い出も、再会したときの奏花ちゃんと華蓮ちゃんの嬉しい言って私のために泣いてくれたことも、確かに辛い時もあった。あなたを憎むこともあった、それでも進んでいくことしか人にはできないから、どんな思い出も私にとっては大切なんですッ」
ガイアは目を閉じて、静かに美麗の言葉の一言も漏らさぬように、またそれらを大事そうに耳にしまう。
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