極上御曹司の純愛〜幼馴染に再会したら身も心も囲い込まれました〜

吉生伊織

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⭐︎突然の再会

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 私はやっと買えたドリンクを記念に写真に残したくて、大通りから駅へ向かう道すがら、鞄から器用に片手で携帯電話を取り出して起動させ、カメラを向けて撮影してみた。

 ところが下に向けて俯瞰で撮ると、足元と歩道のコンクリートが入って絵にならない。正面にすれば背後に人が映り込んで可愛く写らない。どうしたものか……。

 それならばと腕を上げ、夕暮れ時のグラデーションに色づく空をバックにカメラを向けてみると、夕日が水滴に反射し、層になったドリンクと相まってキラキラと光っている。

「か、かわいいぃ」

 うん、これだ! と嬉しくなって立ち止まり、撮影ボタンを押して見直すと、思いのほか上手く写すことができてさらに心が弾む。

 何枚か違った構図で撮ったあと、満足して画面を確認しながら腕を下ろした瞬間、突然左肩にドンッ! という衝撃を受け体がひるがえった。

「きゃあ!」

 前を見ていなかったせいで、誰かとぶつかってしまった。
 見るとサングラスをかけたスーツ姿の背の高い男性が目の前に立っている。

「すみません! 大丈夫です……か……」 

 言い終わる前にどこかでポトポトと鈍く滴る音が聞こえ、咄嗟に手に持っていたカップを見ると、プラスチックのドーム型の蓋がなくなっていた。

 そしてあろうことか、カップいっぱいに盛られていたクリームは見事に形をなくし、ぶつかった男性のスーツの胸から膝にかけてべったりとクリームが流れ落ちていた。

「ど、どうしよう! ごめんなさい!」

 両手を上げて汚れてしまった自らのスーツを見下ろしている男性。
 突然の災難に言葉を失い、眉間に皺を寄せている。

「本当にごめんなさい! あの、あの……とにかくなにか拭くものを」

 焦りで手をもたつかせながら、鞄の中からいつも持ち歩いているタオルを引っ張り出して男性に近寄った。

「いえ、大丈夫です!」

 咄嗟に身を引いて、手のひらを私に向けてわかりやすく拒絶されてしまった。

 怯みそうになるけれど、あきらかに胸には白い泡がこびりつき、カラフルな星やアラザンが可愛らしくゆっくり滴り落ちているのに、大丈夫なわけがない。

 見た感じ外国人だろうか。

 背が高く、ブラウンの髪にキリッとした眉と高い鼻梁。薄い唇は引き結ばれ、サングラスで確認できない瞳は怒りに見開いているだろう。
 ダークグレーのスリーピーススーツを着こなしている見た目は、モデルのようなスタイルの良さで、人目を惹く容姿をしている。

 そんな素敵な人に、私はなんてことをしてしまったんだろう。

 わかりやすく拒絶されたものの、やはりそのままで放置するわけにもいかず、失礼を承知でスーツに垂れているクリームを拭き取ろうとした。

「大丈夫ですから、本当に気にしないでください」

 今度は強めの口調で言われてしまい、泣きそうになる。だけど、気にしないでと言われても引き下がることはできない。

 私が前を見なかったせいで、男性のスーツをクリームまみれにしてしまったのだ。拭き取りを拒否されたのは相当怒りを抱いているからで、何もせず逃げていい理由にはならない。

「あの、でも、このままだとスーツに染みが広がってしまいます」
「本当にお気遣いなく。そんなことをしたら、あなたが汚れてしまいますから」

――え?

 てっきり、汚された怒りで拒否されているものだと思っていたのに、私に気を遣って遠慮してくれてたの?

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