7 / 32
第7話・気持ち近付く少女達
しおりを挟む
ティアとユキ、2人による日替わり師匠が全て終わった翌日。
いつもの様に早い時間帯に目覚めた俺は、昨日のティアとの修行で残っていた疲れを引きずったままで上半身を起こした。しかし疲れとは言っても、そのほとんどは昨日のティアが行った修行後の正座と尋問が原因だけど。
「あぐっ! まだ足が痺れてる感じがするな……」
足の痺れはとっくに消えているはずなのに、昨日の事を思い出すとまた足の痺れが甦ってくる感じがする。
俺はその感覚を気のせいだと頭を左右に何度か動かす事で振るい落とし、ベッドの下へと両足を下した。
いつもならここで日替わり師匠が始まってから寝食を共にしていたティアとユキの2人を起こすところなんだけど、2人には昨晩、別の部屋に泊まってもらった。
2人に別の部屋に泊まってもらう事を提案した際、ユキはその事に対して特に反対はしなかったが、ティアからは当然の様に猛反対をされた。しかし、どちらを師匠に決めるかの結論を出す為に1人になってじっくり考えたい――と言うと、流石のティアもそれ以上は何も言わなかった。
だが、どちらを師匠に決めるかを考えたいから――と言うのは俺の2人に対する建前で、本当のところはまったく違う事を考えていた。
「はあっ……どうすればこれからも2人から師事を仰げるのかな……」
そう。俺のずっと考えていた事は、この先もティアとユキの2人から師事を仰ぐ為にはどうすれば良いだろうか――という事だった。
ティアから師事を仰いでいる時にはティア以上の師匠は居ないと思っていた俺だったが、実際にユキからの指導を受けて色々と感じさせられた事は多かった。何よりユキからの教えは、俺の視野を確実に広げてくれた。故にこれからも、できる事ならユキからの師事も仰ぎたい。
俺はそれを可能にする為にエオスのモンスタースレイヤー協会に対して質問状を送り、『2人のモンスタースレイヤーを師匠に持つのは駄目なのでしょうか?』と聞いてみた。
その質問状に対してエオスのモンスタースレイヤー協会が送って来た回答は、『2人のモンスタースレイヤーの称号を持つ者が、同一の弟子を持つ事に関して特に問題はありません』との事だった。つまりこれは、ティアとユキが俺の師匠になる事に関して特に問題は無いと言う事になる。
俺はこの回答を得た事で嬉々としてそれを2人に話したのだが、2人は俺のダブル師匠になる事をすぐさま拒否した。その理由はと言うと、ティアは『お兄ちゃんと2人がいいから』で、ユキは『他の師匠なんて修行の邪魔になるから』と言っていた。
ティアとユキが出会ってからの俺を弟子にする為の諍いを考えれば、2人がお互いの事を良く思わないのは分かる。だが、弟子の俺としてはなんとしても2人からの師事を仰ぎたい。
そこでなんとか2人がお互いを認め合う事はできないだろうかと、ずっと今日まで考えを巡らせていたわけだが、ついにその為の具体的な答えは出ずにこの日を迎えてしまった。
「……とりあえず朝食でも摂りに行くか」
のらりくらりと出掛ける準備をし、俺は部屋を出て街の食堂へと向かい始めた。
俺が2人に対して答えを出すお昼までは残り6時間ほど。その間に何か上手い具合に2人を師匠にできる方法を思いつきたかった。
『モンスター警報! モンスター警報! 第三結界内にモンスターの侵入を確認。街に滞在しているモンスタースレイヤー、及び、戦力を有する者は、直ちにモンスターの討伐に向かって下さい。繰り返します――』
そんな事を考えている最中、静かな朝の街に感応石を用いた警報アナウンスが鳴り響いた。
「第三結界がモンスターに破られた!?」
街中に響く警報アナウンス。それを聞いた街の人々は一気に目を覚ましたらしく、静かだった朝の街はあっと言う間に阿鼻叫喚の様相を見せ始めた。
エオスにある街はモンスターから取り戻した生活圏に円形状の結界を三重に張り巡らせ、モンスターの進入を防いでいる。だがその結界にも欠点があり、広く張り巡らせるほど部分的に防御力が弱まる箇所が出てしまう。
並のモンスターなら問題は無いけど、一定以上の力や能力を持つモンスターにそこを狙われると、あっさりとその結界を崩されて突破されたりもする。だからそんな時の為に結界を三重にしているわけだが、それも同じ結界である以上は防御壁として完璧ではない。
それに結界を突破されたと言う事は、人類全体の生活圏を奪われる事にも繋がる。だからモンスタースレイヤーや戦う力を持つ者は、どこの街に居てもその力を振るわなければいけない。例えそれが、俺の様な未熟者だったとしてもだ。
迫っているモンスターがどんな奴等かは分からないけど、俺だってモンスタースレイヤーを目指す者の端くれだから、倒せないまでも師匠達が来るまでの足止めくらいはできる自信はある。
それにここで臆していては、師匠達の様な強いモンスタースレイヤーになれるはずもない。俺は意を決して走り始め、迫り来るモンスター達のもとへと向かった。
街中で流れていたアナウンスの追加情報によりモンスターの群れが街の北側から迫って来ている事は分かっていたから、俺は全力で北へと向かい、第一結界を越えて第二結界の手前でモンスターがやって来るのを待っていた。
周りにはまだ誰の姿も無く、この場には俺1人しか居ない事が分かる。
この状況で俺だけが結界を越えてモンスターを迎え撃つのは無謀だ。ここは第二結界内でモンスターが来るのを待ち、姿が見えたら結界の外に出て攻撃、いざとなれば結界内に入ってモンスターの攻撃を防ぐのが得策だろう。俺だって命は無駄にしたくないし、俺だけでモンスターの群れを倒せるなんて思ってもいないのだから。
そんな事を思いながら結界内部から外を見ていると、遠くに凄まじい砂埃が立ち上るのが見え始めた。
「10、20、30、40、50――くそっ! 数が多過ぎて把握できない!」
こちらへと迫って来ているモンスターの群れは、先日の雑技団を追っていたモンスターの規模とはまるで違う。その正確な数は分からないけど、ぱっと見でも余裕で100匹は超えている様に見える。
――あんな数のモンスターの足止めなんて俺にできるのか? いや! 他に食い止める人が居ないんだから、俺がやらなきゃいけないんだっ!
俺は圧倒的な数で迫って来るモンスターの群れを前に自分を奮い立たせ、結界の外に出てモンスターの足止めを開始した。
「ダークハンドスワンプッ!」
モンスターの群れの前にティア直伝の闇魔法を撃ち込む。
俺の手から放たれた闇魔法はそのまま大きく円形状の沼となって地面に広がり、そこからいくつもの闇の手が伸び始める。
そして闇の沼の中から伸びた無数の黒い手が差し迫るモンスターに向かい、モンスターの身体を無作為に掴む。するとその闇の手は一瞬にして伸ばしていた手を引っ込め、モンスターの叫び声すらも完全に飲み込む闇の沼の中へと引き摺り込み、この世界からその存在を消した。
俺はそんな闇の沼に引き摺り込まれて行くモンスター達を見ながら思ってしまった。これなら師匠達が来るまでに、もっと数を減らせるかもしれない――と。
しかしそれは俺の心の緩みが生んだ油断だった。この時の俺はモンスターが闇の沼に飲み込まれる事に意識が集中してしまい、他の所へと向ける意識が完全に途絶えていた。
「はっ!? しまった!!」
右側面から飛んで来ていた魔法の火球に俺が気付いた時にはもう、避け様がなかった。タイミング的にも防御のしようがない。
――駄目だっ!!
そう思って両目を閉じた次の瞬間、俺の身体が何かに持ち上げられる様にしてふわっと浮き、その後すぐに重力によって地面に足が着いた。
「「大丈夫?」」
目を瞑っていた俺の両脇から聞き慣れた声がし、俺は閉じていた目を開いた。
「し、師匠!? それにユキ!」
「まったくもう。お兄ちゃん、モンスターと戦うのはいいけど、今のは何? 完全にモンスターからの魔法が見えてなかったでしょ?」
「まったくだわ。エリオス、モンスターとの戦いでは常に広い視野を持ちなさいと教えたでしょ? 忘れたの?」
「あ、あの……すみません。師匠、ユキ」
呆気に取られながらもそう口にすると、2人は俺を支えていた手を離した。
「とりあえず、お兄ちゃんが無事で良かったよ。後は私に任せて!」
そう言うとティアは携えていた剣を手に取ってから迫り来るモンスターの群れへと走り始め、その剣でモンスターを次々と斬り捨てて行った。
「まったく……あんな猪突猛進な戦い方は美しくないわね。それとエリオス。この戦いが終わったら、もう一度修行のやり直しよ。私から教えを受けたあなたがあんな無様な戦いをする様じゃ、私の沽券に関わるから」
ユキは静かにそう言うと、モンスターの群れに向かって歩き始めた。
「多くの命に仇なす怪物達よ。せめて最期はその醜悪な姿を純潔の象徴たる白薔薇で着飾ってあげるわ。ホワイトローズスコール!」
ユキがその両手を高く空へかかげると、そこに魔力で作られた無数の白薔薇が現れ、地上に居るモンスターの群れに降り注いだ。
そしてまるで激しい雨の様に降り注いだその白薔薇は、一瞬にしてその下に居た多くのモンスター達へと突き刺さり、その姿を白一色へと染め上げた。
「す、すげえ……」
白薔薇姫ことユキの実戦を見るのはこれが初めてだけど、その圧倒的な強さに俺は驚いた。おそらくここまで圧倒的な力でモンスターの群れを倒せるのは、ティアとユキくらいしか居ないと思う。
「ちょっと! 魔法を使うならもっと気を付けて使ってよねっ! 私にも刺さるところだったじゃない!」
「あら。私はあなたなら余裕で避けられると思って使ったんだけど、見込み違いだったかしら? それならごめんなさい。次はちゃんと予告して使うから」
「そんな事ありませんー! 私にはこんな攻撃を避けるなんて超余裕なんですぅー!!」
「そう。だったら文句を言ってないで、さっさとモンスターを倒しなさい」
「言われなくても分かってますぅー!」
こんな時にでも平気で諍いをする余裕があるんだから、この2人は本当に凄いと思う。
そして2人はこんな感じで諍いを続けながらもモンスターを倒し続け、20分も経つ頃にはやって来ていたモンスターを全滅させていた。
「ふうっ……まあ、こんなところかな。大丈夫だった? お兄ちゃん」
「あ、はい。大丈夫です。と言うか、師匠やユキこそ大丈夫なんですか?」
「うん、大丈夫だよ。全然平気」
「私も特に問題は無いわね」
確実に100は超えていたはずのモンスターの群れ。それを相手にして全滅させたと言うのに、2人して涼しい表情をしている。
俺はそんな2人を見て、モンスタースレイヤーへの道がまだまだ遠い事を実感してしまった。
「……とりあえずモンスターも全滅したみたいですし、街に戻ってから急いで結界師を呼んで来ますね」
「いいえ。それは待って、エリオス」
「そうだね。まだ本命がどこかに居るはずだから」
「えっ? 本命ですか?」
「そうよ。エリオスも知ってのとおり、エオスにある街には三重の結界が張られている。でもそれは、並のモンスターでは突破はおろか破壊もできない。だけど私達が倒したモンスターの中には、それを可能にする様な力を持ったモンスターは居なかった」
「てことは、つまり……」
「そうだよ、お兄ちゃん。結界を壊した本命はまだ生きている。だからそいつを倒さなきゃ、結界師を呼んでもまた壊されちゃうの」
「それじゃあ、その本命を捜さないといけないって事になりますよね?」
「確かにそうなんだけど、その必要は無いみたいだよ。お兄ちゃん」
「えっ?」
そう言ったティアが指し示した方を見ると、その方向から1匹のモンスターがやって来るのが見えた。
「ダ、ダークカラーのドラゴン!?」
こちらへと向かって来るダークカラーのドラゴンを見た時、俺は思わずユキの方を見た。なぜならダークカラーのドラゴンは、ユキの大切な義兄さんを喰い殺した憎きモンスターなのだから。
「ユキ!」
「大丈夫よ。私は落ち着いてる。それによく見てみなさい。あいつの額には傷が無いわ」
流石はモンスタースレイヤーの称号を持つ者だけあって、私怨を持つ中にも冷静さがある。
「でも、ダークカラーのモンスター、特にドラゴンを見ていると、無性に殺したくなっちゃうのよね」
「ちょ、ちょっとユキ? 大丈夫か?」
「大丈夫よ。ちょっとアイツを殺して来るだけだから」
口調こそいつもと変わらないものの、その言葉はいつものユキとは違って荒い。
「私も行くよ。いくらあなたでも、ダークカラーが相手だと1人じゃ辛いでしょ?」
「ありがとう。でも、ここは手を出さないでくれるかしら?」
「むっ! こんな時にまでお兄ちゃんに格好付けるところを見せ付けるつもりなの!? そうはいかないんだからねっ!」
「お願いだから手を出さないでっ!!」
ティアに対して激しい口調でそう言うと、ユキは凄まじい早さでダークカラーのドラゴンの方へと向かい始めた。
そしてユキはあっと言う間にドラゴンとの距離を詰めると、そこから激しい戦いを見せ始めた。
「あ、あの子、急にどうしたの? さっきまでとは戦い方が全然違う」
「師匠、実は――」
ユキが1人でダークカラーのドラゴンと戦いを繰り広げる中、俺は掻い摘んでユキがあんな風になった理由を話した。
「そっか。あの子の義兄さんが、額に傷のあるダークカラーのドラゴンに殺されたんだ。それであんなにダークカラーのドラゴンに対して怒ってるんだね……」
「まあ、そう言う事なんですよ」
「あの子に悪い事を言っちゃったかな……」
ティアはそう言いながら、ダークカラーのドラゴンと戦うユキを見つめた。
そしてユキが戦いを始めてから30分後。ユキは見事にダークカラーのドラゴンを討ち取った。
「ユキ! 大丈夫か?」
「ええ。少し手傷は負ったけど大丈夫よ」
「とりあえず早く治療をしないと」
「これくらい大丈夫よ」
「駄目だよっ! ほら、早く背中におぶさって」
「そ、そんな事をしなくても自分で歩けるわよ」
「それは嘘だよ。ダークカラーのドラゴンと1人で戦って平気なわけがないんだから。だからここは、素直にお兄ちゃんの厚意に甘えるといいよ。今だけは許してあげる。今だけだからね?」
「…………分かったわ。それじゃあ、お言葉に甘えさせてもらうわ」
そう言うとユキは素直に俺の首元に両手を回し、俺の背中へと身体を預けた。
「それとあの……さっきはごめんなさい。義兄さんの事を知らなかったから……」
「……別にいいわ。気にしてないから。それよりも、早く結界師を呼んで来た方がいいんじゃないかしら? 次のモンスターの進入を許す前に」
「あっ、そうだね。それじゃあ、私は一足早く街に戻って結界師を呼んで来るよ。お兄ちゃん、その子の事は任せたよ?」
「はいっ! しっかりと街まで送り届けます」
「うん! それじゃあ2人共、また後でねっ!」
そう言ったティアは素早く街のある方へと駆け出し、進入したモンスターの全滅報告と結界師の要請をしに向かった。
「……思ってたよりも良い子みたいね。あの子」
「もちろんだよ。ティアは俺の自慢の師匠だから」
「ふふっ。私、黒を纏うものって大っ嫌いなんだけど、あの子の事は大丈夫になるかもしれないわね」
「そっか。それなら後でティアとじっくり話してみるといいよ。本当に良い子だからさ」
「そう。それなら今日のディナーにでも誘って話をしてみるわ。エリオスがそこまで言うほどの良い子なのか、私が直々に確かめてあげる」
「うん。そうしてみて」
こうして結界を破り街を襲いに来ていたモンスターの群れは2人のモンスタースレイヤーによって退治され、その後、ティアが呼んだ結界師によって結界も直り、街はいつもの平安を取り戻した。
いつもの様に早い時間帯に目覚めた俺は、昨日のティアとの修行で残っていた疲れを引きずったままで上半身を起こした。しかし疲れとは言っても、そのほとんどは昨日のティアが行った修行後の正座と尋問が原因だけど。
「あぐっ! まだ足が痺れてる感じがするな……」
足の痺れはとっくに消えているはずなのに、昨日の事を思い出すとまた足の痺れが甦ってくる感じがする。
俺はその感覚を気のせいだと頭を左右に何度か動かす事で振るい落とし、ベッドの下へと両足を下した。
いつもならここで日替わり師匠が始まってから寝食を共にしていたティアとユキの2人を起こすところなんだけど、2人には昨晩、別の部屋に泊まってもらった。
2人に別の部屋に泊まってもらう事を提案した際、ユキはその事に対して特に反対はしなかったが、ティアからは当然の様に猛反対をされた。しかし、どちらを師匠に決めるかの結論を出す為に1人になってじっくり考えたい――と言うと、流石のティアもそれ以上は何も言わなかった。
だが、どちらを師匠に決めるかを考えたいから――と言うのは俺の2人に対する建前で、本当のところはまったく違う事を考えていた。
「はあっ……どうすればこれからも2人から師事を仰げるのかな……」
そう。俺のずっと考えていた事は、この先もティアとユキの2人から師事を仰ぐ為にはどうすれば良いだろうか――という事だった。
ティアから師事を仰いでいる時にはティア以上の師匠は居ないと思っていた俺だったが、実際にユキからの指導を受けて色々と感じさせられた事は多かった。何よりユキからの教えは、俺の視野を確実に広げてくれた。故にこれからも、できる事ならユキからの師事も仰ぎたい。
俺はそれを可能にする為にエオスのモンスタースレイヤー協会に対して質問状を送り、『2人のモンスタースレイヤーを師匠に持つのは駄目なのでしょうか?』と聞いてみた。
その質問状に対してエオスのモンスタースレイヤー協会が送って来た回答は、『2人のモンスタースレイヤーの称号を持つ者が、同一の弟子を持つ事に関して特に問題はありません』との事だった。つまりこれは、ティアとユキが俺の師匠になる事に関して特に問題は無いと言う事になる。
俺はこの回答を得た事で嬉々としてそれを2人に話したのだが、2人は俺のダブル師匠になる事をすぐさま拒否した。その理由はと言うと、ティアは『お兄ちゃんと2人がいいから』で、ユキは『他の師匠なんて修行の邪魔になるから』と言っていた。
ティアとユキが出会ってからの俺を弟子にする為の諍いを考えれば、2人がお互いの事を良く思わないのは分かる。だが、弟子の俺としてはなんとしても2人からの師事を仰ぎたい。
そこでなんとか2人がお互いを認め合う事はできないだろうかと、ずっと今日まで考えを巡らせていたわけだが、ついにその為の具体的な答えは出ずにこの日を迎えてしまった。
「……とりあえず朝食でも摂りに行くか」
のらりくらりと出掛ける準備をし、俺は部屋を出て街の食堂へと向かい始めた。
俺が2人に対して答えを出すお昼までは残り6時間ほど。その間に何か上手い具合に2人を師匠にできる方法を思いつきたかった。
『モンスター警報! モンスター警報! 第三結界内にモンスターの侵入を確認。街に滞在しているモンスタースレイヤー、及び、戦力を有する者は、直ちにモンスターの討伐に向かって下さい。繰り返します――』
そんな事を考えている最中、静かな朝の街に感応石を用いた警報アナウンスが鳴り響いた。
「第三結界がモンスターに破られた!?」
街中に響く警報アナウンス。それを聞いた街の人々は一気に目を覚ましたらしく、静かだった朝の街はあっと言う間に阿鼻叫喚の様相を見せ始めた。
エオスにある街はモンスターから取り戻した生活圏に円形状の結界を三重に張り巡らせ、モンスターの進入を防いでいる。だがその結界にも欠点があり、広く張り巡らせるほど部分的に防御力が弱まる箇所が出てしまう。
並のモンスターなら問題は無いけど、一定以上の力や能力を持つモンスターにそこを狙われると、あっさりとその結界を崩されて突破されたりもする。だからそんな時の為に結界を三重にしているわけだが、それも同じ結界である以上は防御壁として完璧ではない。
それに結界を突破されたと言う事は、人類全体の生活圏を奪われる事にも繋がる。だからモンスタースレイヤーや戦う力を持つ者は、どこの街に居てもその力を振るわなければいけない。例えそれが、俺の様な未熟者だったとしてもだ。
迫っているモンスターがどんな奴等かは分からないけど、俺だってモンスタースレイヤーを目指す者の端くれだから、倒せないまでも師匠達が来るまでの足止めくらいはできる自信はある。
それにここで臆していては、師匠達の様な強いモンスタースレイヤーになれるはずもない。俺は意を決して走り始め、迫り来るモンスター達のもとへと向かった。
街中で流れていたアナウンスの追加情報によりモンスターの群れが街の北側から迫って来ている事は分かっていたから、俺は全力で北へと向かい、第一結界を越えて第二結界の手前でモンスターがやって来るのを待っていた。
周りにはまだ誰の姿も無く、この場には俺1人しか居ない事が分かる。
この状況で俺だけが結界を越えてモンスターを迎え撃つのは無謀だ。ここは第二結界内でモンスターが来るのを待ち、姿が見えたら結界の外に出て攻撃、いざとなれば結界内に入ってモンスターの攻撃を防ぐのが得策だろう。俺だって命は無駄にしたくないし、俺だけでモンスターの群れを倒せるなんて思ってもいないのだから。
そんな事を思いながら結界内部から外を見ていると、遠くに凄まじい砂埃が立ち上るのが見え始めた。
「10、20、30、40、50――くそっ! 数が多過ぎて把握できない!」
こちらへと迫って来ているモンスターの群れは、先日の雑技団を追っていたモンスターの規模とはまるで違う。その正確な数は分からないけど、ぱっと見でも余裕で100匹は超えている様に見える。
――あんな数のモンスターの足止めなんて俺にできるのか? いや! 他に食い止める人が居ないんだから、俺がやらなきゃいけないんだっ!
俺は圧倒的な数で迫って来るモンスターの群れを前に自分を奮い立たせ、結界の外に出てモンスターの足止めを開始した。
「ダークハンドスワンプッ!」
モンスターの群れの前にティア直伝の闇魔法を撃ち込む。
俺の手から放たれた闇魔法はそのまま大きく円形状の沼となって地面に広がり、そこからいくつもの闇の手が伸び始める。
そして闇の沼の中から伸びた無数の黒い手が差し迫るモンスターに向かい、モンスターの身体を無作為に掴む。するとその闇の手は一瞬にして伸ばしていた手を引っ込め、モンスターの叫び声すらも完全に飲み込む闇の沼の中へと引き摺り込み、この世界からその存在を消した。
俺はそんな闇の沼に引き摺り込まれて行くモンスター達を見ながら思ってしまった。これなら師匠達が来るまでに、もっと数を減らせるかもしれない――と。
しかしそれは俺の心の緩みが生んだ油断だった。この時の俺はモンスターが闇の沼に飲み込まれる事に意識が集中してしまい、他の所へと向ける意識が完全に途絶えていた。
「はっ!? しまった!!」
右側面から飛んで来ていた魔法の火球に俺が気付いた時にはもう、避け様がなかった。タイミング的にも防御のしようがない。
――駄目だっ!!
そう思って両目を閉じた次の瞬間、俺の身体が何かに持ち上げられる様にしてふわっと浮き、その後すぐに重力によって地面に足が着いた。
「「大丈夫?」」
目を瞑っていた俺の両脇から聞き慣れた声がし、俺は閉じていた目を開いた。
「し、師匠!? それにユキ!」
「まったくもう。お兄ちゃん、モンスターと戦うのはいいけど、今のは何? 完全にモンスターからの魔法が見えてなかったでしょ?」
「まったくだわ。エリオス、モンスターとの戦いでは常に広い視野を持ちなさいと教えたでしょ? 忘れたの?」
「あ、あの……すみません。師匠、ユキ」
呆気に取られながらもそう口にすると、2人は俺を支えていた手を離した。
「とりあえず、お兄ちゃんが無事で良かったよ。後は私に任せて!」
そう言うとティアは携えていた剣を手に取ってから迫り来るモンスターの群れへと走り始め、その剣でモンスターを次々と斬り捨てて行った。
「まったく……あんな猪突猛進な戦い方は美しくないわね。それとエリオス。この戦いが終わったら、もう一度修行のやり直しよ。私から教えを受けたあなたがあんな無様な戦いをする様じゃ、私の沽券に関わるから」
ユキは静かにそう言うと、モンスターの群れに向かって歩き始めた。
「多くの命に仇なす怪物達よ。せめて最期はその醜悪な姿を純潔の象徴たる白薔薇で着飾ってあげるわ。ホワイトローズスコール!」
ユキがその両手を高く空へかかげると、そこに魔力で作られた無数の白薔薇が現れ、地上に居るモンスターの群れに降り注いだ。
そしてまるで激しい雨の様に降り注いだその白薔薇は、一瞬にしてその下に居た多くのモンスター達へと突き刺さり、その姿を白一色へと染め上げた。
「す、すげえ……」
白薔薇姫ことユキの実戦を見るのはこれが初めてだけど、その圧倒的な強さに俺は驚いた。おそらくここまで圧倒的な力でモンスターの群れを倒せるのは、ティアとユキくらいしか居ないと思う。
「ちょっと! 魔法を使うならもっと気を付けて使ってよねっ! 私にも刺さるところだったじゃない!」
「あら。私はあなたなら余裕で避けられると思って使ったんだけど、見込み違いだったかしら? それならごめんなさい。次はちゃんと予告して使うから」
「そんな事ありませんー! 私にはこんな攻撃を避けるなんて超余裕なんですぅー!!」
「そう。だったら文句を言ってないで、さっさとモンスターを倒しなさい」
「言われなくても分かってますぅー!」
こんな時にでも平気で諍いをする余裕があるんだから、この2人は本当に凄いと思う。
そして2人はこんな感じで諍いを続けながらもモンスターを倒し続け、20分も経つ頃にはやって来ていたモンスターを全滅させていた。
「ふうっ……まあ、こんなところかな。大丈夫だった? お兄ちゃん」
「あ、はい。大丈夫です。と言うか、師匠やユキこそ大丈夫なんですか?」
「うん、大丈夫だよ。全然平気」
「私も特に問題は無いわね」
確実に100は超えていたはずのモンスターの群れ。それを相手にして全滅させたと言うのに、2人して涼しい表情をしている。
俺はそんな2人を見て、モンスタースレイヤーへの道がまだまだ遠い事を実感してしまった。
「……とりあえずモンスターも全滅したみたいですし、街に戻ってから急いで結界師を呼んで来ますね」
「いいえ。それは待って、エリオス」
「そうだね。まだ本命がどこかに居るはずだから」
「えっ? 本命ですか?」
「そうよ。エリオスも知ってのとおり、エオスにある街には三重の結界が張られている。でもそれは、並のモンスターでは突破はおろか破壊もできない。だけど私達が倒したモンスターの中には、それを可能にする様な力を持ったモンスターは居なかった」
「てことは、つまり……」
「そうだよ、お兄ちゃん。結界を壊した本命はまだ生きている。だからそいつを倒さなきゃ、結界師を呼んでもまた壊されちゃうの」
「それじゃあ、その本命を捜さないといけないって事になりますよね?」
「確かにそうなんだけど、その必要は無いみたいだよ。お兄ちゃん」
「えっ?」
そう言ったティアが指し示した方を見ると、その方向から1匹のモンスターがやって来るのが見えた。
「ダ、ダークカラーのドラゴン!?」
こちらへと向かって来るダークカラーのドラゴンを見た時、俺は思わずユキの方を見た。なぜならダークカラーのドラゴンは、ユキの大切な義兄さんを喰い殺した憎きモンスターなのだから。
「ユキ!」
「大丈夫よ。私は落ち着いてる。それによく見てみなさい。あいつの額には傷が無いわ」
流石はモンスタースレイヤーの称号を持つ者だけあって、私怨を持つ中にも冷静さがある。
「でも、ダークカラーのモンスター、特にドラゴンを見ていると、無性に殺したくなっちゃうのよね」
「ちょ、ちょっとユキ? 大丈夫か?」
「大丈夫よ。ちょっとアイツを殺して来るだけだから」
口調こそいつもと変わらないものの、その言葉はいつものユキとは違って荒い。
「私も行くよ。いくらあなたでも、ダークカラーが相手だと1人じゃ辛いでしょ?」
「ありがとう。でも、ここは手を出さないでくれるかしら?」
「むっ! こんな時にまでお兄ちゃんに格好付けるところを見せ付けるつもりなの!? そうはいかないんだからねっ!」
「お願いだから手を出さないでっ!!」
ティアに対して激しい口調でそう言うと、ユキは凄まじい早さでダークカラーのドラゴンの方へと向かい始めた。
そしてユキはあっと言う間にドラゴンとの距離を詰めると、そこから激しい戦いを見せ始めた。
「あ、あの子、急にどうしたの? さっきまでとは戦い方が全然違う」
「師匠、実は――」
ユキが1人でダークカラーのドラゴンと戦いを繰り広げる中、俺は掻い摘んでユキがあんな風になった理由を話した。
「そっか。あの子の義兄さんが、額に傷のあるダークカラーのドラゴンに殺されたんだ。それであんなにダークカラーのドラゴンに対して怒ってるんだね……」
「まあ、そう言う事なんですよ」
「あの子に悪い事を言っちゃったかな……」
ティアはそう言いながら、ダークカラーのドラゴンと戦うユキを見つめた。
そしてユキが戦いを始めてから30分後。ユキは見事にダークカラーのドラゴンを討ち取った。
「ユキ! 大丈夫か?」
「ええ。少し手傷は負ったけど大丈夫よ」
「とりあえず早く治療をしないと」
「これくらい大丈夫よ」
「駄目だよっ! ほら、早く背中におぶさって」
「そ、そんな事をしなくても自分で歩けるわよ」
「それは嘘だよ。ダークカラーのドラゴンと1人で戦って平気なわけがないんだから。だからここは、素直にお兄ちゃんの厚意に甘えるといいよ。今だけは許してあげる。今だけだからね?」
「…………分かったわ。それじゃあ、お言葉に甘えさせてもらうわ」
そう言うとユキは素直に俺の首元に両手を回し、俺の背中へと身体を預けた。
「それとあの……さっきはごめんなさい。義兄さんの事を知らなかったから……」
「……別にいいわ。気にしてないから。それよりも、早く結界師を呼んで来た方がいいんじゃないかしら? 次のモンスターの進入を許す前に」
「あっ、そうだね。それじゃあ、私は一足早く街に戻って結界師を呼んで来るよ。お兄ちゃん、その子の事は任せたよ?」
「はいっ! しっかりと街まで送り届けます」
「うん! それじゃあ2人共、また後でねっ!」
そう言ったティアは素早く街のある方へと駆け出し、進入したモンスターの全滅報告と結界師の要請をしに向かった。
「……思ってたよりも良い子みたいね。あの子」
「もちろんだよ。ティアは俺の自慢の師匠だから」
「ふふっ。私、黒を纏うものって大っ嫌いなんだけど、あの子の事は大丈夫になるかもしれないわね」
「そっか。それなら後でティアとじっくり話してみるといいよ。本当に良い子だからさ」
「そう。それなら今日のディナーにでも誘って話をしてみるわ。エリオスがそこまで言うほどの良い子なのか、私が直々に確かめてあげる」
「うん。そうしてみて」
こうして結界を破り街を襲いに来ていたモンスターの群れは2人のモンスタースレイヤーによって退治され、その後、ティアが呼んだ結界師によって結界も直り、街はいつもの平安を取り戻した。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる