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第19話・可愛い2人のお手伝い
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シャルロッテさん達の経営する宿屋で起こっていた盗難事件が解決し、2週間が経った。
俺達によって窃盗の罪が暴かれたおじさん2人は、この街の治安維持組織に連行され、そこで全てを話す事となった。
それによりライバルだった宿屋がそのおじさん2人を差し向けた事が判明し、それによって過去の窃盗事件まで遡って調査が行われた結果、芋づる式にその事件に関わった者達が光の下に引き摺り出され、シャルロッテさん達が着せられていた『泥棒家族』という汚名は、一気に晴らされた。
そしてそれが切っ掛けになったのか、あれからこの宿屋には、沢山のお客さんが訪れる様になった。
しかし誤解が解けたとは言え、街の人達がシャルロッテさん達の事を泥棒家族呼ばわりしていた事を考えれば、俺としては素直に喜べないところもある。だがそれは、あくまでも俺の個人的感情であって、それをシャルロッテさん達は許したのだから、俺がそれをどうこう言う筋合いは無い。
「エリオス君! この料理を203号室のお客さんにお届けしてっ!」
「了解ですっ!」
美味しそうな料理が盛られたお皿。俺は急いでそれを指定された部屋へと持ち運び始める。
こういった事をした経験が無かった俺は、最初こそ戸惑ったものだが、それも3日も経てば自然と慣れてくる。それに普段はモンスタースレイヤーになる為の修行ばかりをしているからか、こういった事をするのは大変だけど、俺としては非日常的でちょっと楽しかった。
「あっ! お兄ちゃん! それが終わったら昼食を食べて修行に行くからねっ!」
「分かったよ! ティア!」
階段の上へと向かう途中で下の階に居るティアにそう言われ、俺は大きく頷きながら返事をした。
宿泊客である俺達がなぜ、シャルロッテさん達の宿屋のお手伝いをしているのかと言えば、増え始めたお客さんの数にシャルロッテさん達だけでは対応できず、少しの間でいいからお店を手伝ってほしい――と、シャルロッテさんに頼まれたからだ。
それならとっとと従業員を雇えばいいじゃないかと思われるだろうけど、過去に起きた窃盗事件では、ライバルだった宿屋に金品を使って買収をされ、シャルロッテさん達を貶めた従業員も何人か居たと聞いた。そんな話を聞けば、シャルロッテさんが新たな従業員を雇うのに慎重になる気持ちも分かる。
だが、俺達も修行という目的があってこの街に滞在しているわけだから、安易にその願いを聞き入れる事はできない。
しかし、俺達はシャルロッテさん達の事情も知っているから、そのお願いを無下にもできない。そこで俺達3人は話し合いをし、四六時中は無理だが、お昼と夜の少しの時間帯だけでいいならお手伝いをすると決め、それをシャルロッテさんに伝えた。
そして俺達のそんな申し出に対し、シャルロッテさんはとても喜びながらその案を受け入れてくれた。と言うわけで俺達3人は、シャルロッテさんの指示に従って宿屋のお仕事をしているわけだ。
こうしてお昼のお仕事を終えたあとで昼食を摂ってから修行へと出掛け、俺はティアとユキによる厳しい修行に耐えながら、今日の修行をなんとか乗り越えて宿屋へと戻った。
「あっ、お帰りなさい。エリオス君、ティアちゃん、ユキちゃん」
「ただいま。シャルロッテさん」
「たっだいまー!」
「ただいま。エリオス、私はこのままお風呂へ行くわね」
「あっ、私も行くっ!」
「一緒に行くのはいいけど、お風呂で私を巻き込んで遊ぶのは止めてちょうだいね?」
「ええっ!? お風呂に入って遊ばないなんて勿体ないよ」
「私はね、お風呂に遊びに行くわけじゃないの。遊ぶなら独りで遊びなさい」
「ちえっ……ユキは意地悪だなあ。それじゃあお兄ちゃん、またあとでね」
「ああ」
俺は一階の奥にある大浴場へと向かうティアとユキを見送り、ふうっと息を吐いた。
「ふふっ。それにしても、今日もボロボロだね、エリオス君は」
「ははっ。まあ、いつもの事ですから」
最近はティアとユキの修行も厳しさを増してきているから、以前より生傷も増えてきている。
2人のそんな厳しい修行に対し、たまには弱音を吐きたくもなる。だけど、決して弱音は吐かない。俺が目指す理想のモンスタースレイヤーは、まさにティアとユキの様な、弱さを見せない強いモンスタースレイヤーなのだから。
「意外とティアちゃんユキちゃんは厳しいんだね」
「ええ、まあ。それよりも、これはいったい何の準備ですか?」
この宿屋の一階は、無駄とも思えるくらいに広い。
そしてそんな広い空間に、俺達が出掛ける前までは無かった沢山の木製テーブルや椅子が並べられていた。
「ああ。これはね、酒場の準備をしてるの」
「酒場ですか?」
「うん。この宿はね、お父さん達が亡くなる前は1週間に一度、こうして盛大に酒場を開いていたんだよね。だから今夜は、お試しで酒場を再開してみる事にしたの」
「なるほど。でも、こんなに沢山の椅子が埋まるくらいお客さんが来たら、絶対に俺達だけじゃ捌けませんよ?」
「そこは心配しなくても大丈夫。今日は私の知り合いが何人か手伝いに来てくれる事になってるから」
「ああ、そういう事ならなんとかなりそうですね」
「うん。だからエリオス君、今夜は久しぶりの酒場復活だから、よろしく頼むね」
「分かりました。それじゃあ俺も、さっさとお風呂に入って来ますね」
「うん。それと夕食を用意してるから、お風呂から出たら食べておいて。酒場が始まったら食べる暇なんて無いと思うから」
「了解です。それじゃあ、またあとで」
俺は持って出ていた道具袋をしっかりと持ち直し、三階にある部屋へと戻った。
そして部屋に道具袋を置いたあとで一階にある男性用の浴場へと向かい、そこで今日かいた汗をしっかりと洗い流した。
こうして汗を洗い流してさっぱりとした俺は、着替えを済ませてからシャルロッテさんの用意してくれた料理を食べ、酒場の開店準備を始めた。
「ふうっ……これだけ数があると、テーブルを拭いて回るのも一苦労だな……」
「お兄ちゃん! お待たせっ!」
「おおっ!」
沢山あるテーブルを拭いて回るのに疲れてきていた俺の後ろからティアの声がし、俺は後ろを振り返った。するとそこにはいつもの服とは違った、白と水色のエプロンドレスを身に纏ったティアとユキと、いつものシャルロッテさんの姿があった。
シャルロッテさんが2人に、『今日の為に用意した特別な衣装があるんだ』と言っていたけど、この衣装がシャルロッテさんの言っていた特別な衣装なんだろう。
「どお? お兄ちゃん。似合ってるかな?」
「うん! 凄く似合ってて可愛いよ、ティア」
「えへへっ♪ お兄ちゃんがそう言うなら、たまにはこんな服を着るのもいいかな~♪」
膝まであるひらひらのスカートをひらめかせながら、ティアは嬉しそうにそう言う。昔っからこういう衣装が好きだったティアには、おあつらえ向きの衣装と言えるだろう。
しかしそんなティアとは対照的に、ユキはとても恥ずかしそうにしながら俺から視線を逸らしている。
「ユキも似合ってるよ」
「そ、そんな言葉は私には必要無いわよ……それにこんな格好、恥ずかしいだけだから……」
俺の言葉に対し、普段では見られない様な動揺と赤い顔を見せるユキ。
2人共、衣装的には普段着ているドレスと大差無いはずなんだけど、ユキにとってこのエプロンドレス姿は、とても恥ずかしいものらしい。
「昔この宿で使っていた衣装を2人用に手直ししてみたんだけど、ティアちゃんもユキちゃんも素材がいいから、衣装も抜群に映えるね。そう思わない? エリオス君」
「ええ。俺もそう思います」
「だよねー! 私も苦労して手直しをした甲斐があったよ。ウンウン」
ティアとユキの2人を交互に見ながら、満足そうに何度も頷くシャルロッテさん。以前、服を作ったりするのが好きだと言っていたから、こういった衣装を作ったり手直ししたりする事には慣れているんだろう。
「それにしても、本当に可愛いなあ。お姉さん的には、このまま2人をお人形さんにして飾って置きたいくらいだよ」
「ははっ。まあ、シャルロッテさんの気持ちは分からないでもないですよ」
「でしょお? ああ、なんだか2人用の別の衣装も作りたくなってきちゃったなあ」
「ちょ、ちょっと待ちなさい! こんな衣装を着るのは今夜だけよっ!? 私は#金輪際__こんりんざい__、こんな衣装は着ないから!」
「私は別にいいと思うけどなあ」
「だったらあなただけ着てればいいじゃない!」
「えー!? そんなのつまらないよ。ユキも一緒に着ようよー」
「嫌よっ! 私は絶対に着ないからっ!」
「エリオス君。2人の衣装だけど、次はどんなのがいいと思う?」
「ちょっとそこ! 勝手に話を進めないでちょうだいっ!」
こうして衣装の事でわいわいと騒ぐ中、この宿で久しぶりの酒場開店の時間は近付いて来ていた。
俺達によって窃盗の罪が暴かれたおじさん2人は、この街の治安維持組織に連行され、そこで全てを話す事となった。
それによりライバルだった宿屋がそのおじさん2人を差し向けた事が判明し、それによって過去の窃盗事件まで遡って調査が行われた結果、芋づる式にその事件に関わった者達が光の下に引き摺り出され、シャルロッテさん達が着せられていた『泥棒家族』という汚名は、一気に晴らされた。
そしてそれが切っ掛けになったのか、あれからこの宿屋には、沢山のお客さんが訪れる様になった。
しかし誤解が解けたとは言え、街の人達がシャルロッテさん達の事を泥棒家族呼ばわりしていた事を考えれば、俺としては素直に喜べないところもある。だがそれは、あくまでも俺の個人的感情であって、それをシャルロッテさん達は許したのだから、俺がそれをどうこう言う筋合いは無い。
「エリオス君! この料理を203号室のお客さんにお届けしてっ!」
「了解ですっ!」
美味しそうな料理が盛られたお皿。俺は急いでそれを指定された部屋へと持ち運び始める。
こういった事をした経験が無かった俺は、最初こそ戸惑ったものだが、それも3日も経てば自然と慣れてくる。それに普段はモンスタースレイヤーになる為の修行ばかりをしているからか、こういった事をするのは大変だけど、俺としては非日常的でちょっと楽しかった。
「あっ! お兄ちゃん! それが終わったら昼食を食べて修行に行くからねっ!」
「分かったよ! ティア!」
階段の上へと向かう途中で下の階に居るティアにそう言われ、俺は大きく頷きながら返事をした。
宿泊客である俺達がなぜ、シャルロッテさん達の宿屋のお手伝いをしているのかと言えば、増え始めたお客さんの数にシャルロッテさん達だけでは対応できず、少しの間でいいからお店を手伝ってほしい――と、シャルロッテさんに頼まれたからだ。
それならとっとと従業員を雇えばいいじゃないかと思われるだろうけど、過去に起きた窃盗事件では、ライバルだった宿屋に金品を使って買収をされ、シャルロッテさん達を貶めた従業員も何人か居たと聞いた。そんな話を聞けば、シャルロッテさんが新たな従業員を雇うのに慎重になる気持ちも分かる。
だが、俺達も修行という目的があってこの街に滞在しているわけだから、安易にその願いを聞き入れる事はできない。
しかし、俺達はシャルロッテさん達の事情も知っているから、そのお願いを無下にもできない。そこで俺達3人は話し合いをし、四六時中は無理だが、お昼と夜の少しの時間帯だけでいいならお手伝いをすると決め、それをシャルロッテさんに伝えた。
そして俺達のそんな申し出に対し、シャルロッテさんはとても喜びながらその案を受け入れてくれた。と言うわけで俺達3人は、シャルロッテさんの指示に従って宿屋のお仕事をしているわけだ。
こうしてお昼のお仕事を終えたあとで昼食を摂ってから修行へと出掛け、俺はティアとユキによる厳しい修行に耐えながら、今日の修行をなんとか乗り越えて宿屋へと戻った。
「あっ、お帰りなさい。エリオス君、ティアちゃん、ユキちゃん」
「ただいま。シャルロッテさん」
「たっだいまー!」
「ただいま。エリオス、私はこのままお風呂へ行くわね」
「あっ、私も行くっ!」
「一緒に行くのはいいけど、お風呂で私を巻き込んで遊ぶのは止めてちょうだいね?」
「ええっ!? お風呂に入って遊ばないなんて勿体ないよ」
「私はね、お風呂に遊びに行くわけじゃないの。遊ぶなら独りで遊びなさい」
「ちえっ……ユキは意地悪だなあ。それじゃあお兄ちゃん、またあとでね」
「ああ」
俺は一階の奥にある大浴場へと向かうティアとユキを見送り、ふうっと息を吐いた。
「ふふっ。それにしても、今日もボロボロだね、エリオス君は」
「ははっ。まあ、いつもの事ですから」
最近はティアとユキの修行も厳しさを増してきているから、以前より生傷も増えてきている。
2人のそんな厳しい修行に対し、たまには弱音を吐きたくもなる。だけど、決して弱音は吐かない。俺が目指す理想のモンスタースレイヤーは、まさにティアとユキの様な、弱さを見せない強いモンスタースレイヤーなのだから。
「意外とティアちゃんユキちゃんは厳しいんだね」
「ええ、まあ。それよりも、これはいったい何の準備ですか?」
この宿屋の一階は、無駄とも思えるくらいに広い。
そしてそんな広い空間に、俺達が出掛ける前までは無かった沢山の木製テーブルや椅子が並べられていた。
「ああ。これはね、酒場の準備をしてるの」
「酒場ですか?」
「うん。この宿はね、お父さん達が亡くなる前は1週間に一度、こうして盛大に酒場を開いていたんだよね。だから今夜は、お試しで酒場を再開してみる事にしたの」
「なるほど。でも、こんなに沢山の椅子が埋まるくらいお客さんが来たら、絶対に俺達だけじゃ捌けませんよ?」
「そこは心配しなくても大丈夫。今日は私の知り合いが何人か手伝いに来てくれる事になってるから」
「ああ、そういう事ならなんとかなりそうですね」
「うん。だからエリオス君、今夜は久しぶりの酒場復活だから、よろしく頼むね」
「分かりました。それじゃあ俺も、さっさとお風呂に入って来ますね」
「うん。それと夕食を用意してるから、お風呂から出たら食べておいて。酒場が始まったら食べる暇なんて無いと思うから」
「了解です。それじゃあ、またあとで」
俺は持って出ていた道具袋をしっかりと持ち直し、三階にある部屋へと戻った。
そして部屋に道具袋を置いたあとで一階にある男性用の浴場へと向かい、そこで今日かいた汗をしっかりと洗い流した。
こうして汗を洗い流してさっぱりとした俺は、着替えを済ませてからシャルロッテさんの用意してくれた料理を食べ、酒場の開店準備を始めた。
「ふうっ……これだけ数があると、テーブルを拭いて回るのも一苦労だな……」
「お兄ちゃん! お待たせっ!」
「おおっ!」
沢山あるテーブルを拭いて回るのに疲れてきていた俺の後ろからティアの声がし、俺は後ろを振り返った。するとそこにはいつもの服とは違った、白と水色のエプロンドレスを身に纏ったティアとユキと、いつものシャルロッテさんの姿があった。
シャルロッテさんが2人に、『今日の為に用意した特別な衣装があるんだ』と言っていたけど、この衣装がシャルロッテさんの言っていた特別な衣装なんだろう。
「どお? お兄ちゃん。似合ってるかな?」
「うん! 凄く似合ってて可愛いよ、ティア」
「えへへっ♪ お兄ちゃんがそう言うなら、たまにはこんな服を着るのもいいかな~♪」
膝まであるひらひらのスカートをひらめかせながら、ティアは嬉しそうにそう言う。昔っからこういう衣装が好きだったティアには、おあつらえ向きの衣装と言えるだろう。
しかしそんなティアとは対照的に、ユキはとても恥ずかしそうにしながら俺から視線を逸らしている。
「ユキも似合ってるよ」
「そ、そんな言葉は私には必要無いわよ……それにこんな格好、恥ずかしいだけだから……」
俺の言葉に対し、普段では見られない様な動揺と赤い顔を見せるユキ。
2人共、衣装的には普段着ているドレスと大差無いはずなんだけど、ユキにとってこのエプロンドレス姿は、とても恥ずかしいものらしい。
「昔この宿で使っていた衣装を2人用に手直ししてみたんだけど、ティアちゃんもユキちゃんも素材がいいから、衣装も抜群に映えるね。そう思わない? エリオス君」
「ええ。俺もそう思います」
「だよねー! 私も苦労して手直しをした甲斐があったよ。ウンウン」
ティアとユキの2人を交互に見ながら、満足そうに何度も頷くシャルロッテさん。以前、服を作ったりするのが好きだと言っていたから、こういった衣装を作ったり手直ししたりする事には慣れているんだろう。
「それにしても、本当に可愛いなあ。お姉さん的には、このまま2人をお人形さんにして飾って置きたいくらいだよ」
「ははっ。まあ、シャルロッテさんの気持ちは分からないでもないですよ」
「でしょお? ああ、なんだか2人用の別の衣装も作りたくなってきちゃったなあ」
「ちょ、ちょっと待ちなさい! こんな衣装を着るのは今夜だけよっ!? 私は#金輪際__こんりんざい__、こんな衣装は着ないから!」
「私は別にいいと思うけどなあ」
「だったらあなただけ着てればいいじゃない!」
「えー!? そんなのつまらないよ。ユキも一緒に着ようよー」
「嫌よっ! 私は絶対に着ないからっ!」
「エリオス君。2人の衣装だけど、次はどんなのがいいと思う?」
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