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あれから⑤
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「どう? お口に合うかしら」
未だ戸惑いながらも、母が柊の恋人・実川楽に聞くと彼は「はい。おいしいです」と控えめに答えた。
彼は口数が少ない性格なのか、それともただ単に緊張しているのか、聞かれた事しか話さなかった。
昨日はすぐに飛び出してしまったし、帰ったらこの恋人も部屋に案内された後で会えなかったし。
だからまともに会うのは、これが初めてということになる。
「あ、あの……僕は篠宮悠衣で、柊兄の弟です。よろしくお願いします」
いくら柊兄の恋人で目にするたびに苦しい思いになると言っても、それはこの人にとっては良い迷惑なだけだ。
柊兄の弟は不愛想などと思われたくない、柊兄の迷惑にはなりたくない、その一心で悠衣は礼儀正しく挨拶をする。
すると楽も見た目とは違い礼儀正しく、悠衣に返した。
「実川楽です。オレは、えっと、柊さんの恋人……です……」
歯切れ悪く俯いて楽は言い、それから柊の裾を掴んだ。
柊は楽の頭を撫でると悠衣を見て、「遅刻してしまいますよ?」と席へと座る事を促す。
楽の向かいに座った悠衣は、母に運ばれてきたトーストにジャムを付けて、楽の様子を伺っていた。
綺麗に染められた金色の髪に吊り上がった瞳、一見してヤンキーにも見えるが、性格は大人しめで、柊の後ろにすぐに隠れたがる。
男にしては低めの身長に、丸くて童顔の顔、そして時々柊を見つめては頬を染め、それを気づかれて頭を撫でられる。
そうすると彼の後ろに尻尾が見えるのではないかと思う程彼は分かりやすく赤をもっと深め、柊は笑顔を作り出す。
まるで恋人、いや……彼らは恋人だったと、また悠衣の心臓はギュッと苦しくなった。
「母さん。父さんは、いつ来れそうですか?」
「父さん? 今週末には、一旦帰ってくる予定だったけれど」
「それはちょうど良かったです。早く、楽の事を紹介したいので」
楽の隣に座った柊、いつもならばこういう時自分の隣に来てくれるのにと落ち込みかけたが、恋人の隣に行くのは当然だろうと思いなおし、悠衣はパンに口を付けた。
「柊、貴方……紹介って、結婚を考えてる、とかじゃ……ないわよね?」
「考えてますよ? そのために、楽を連れてきたのですから」
悠衣の手から、パンが滑り落ちた。
結婚……その単語が中々理解できなくて、頭の中を繰り返し流れ続ける。
「結婚って……何?」
だが理解するよりも先に、口が動いていた。
「それは……」
その答えが柊の口から出る前に、悠衣は立ち上がる。
「僕、そろそろ学校行くね。ごめんこれ、もういいから」
食べかけのパンを押し付けるように母に渡した悠衣は、制止の声も聞かずに早歩きでリビングを出た。
部屋に戻るとドアを背中に雪崩れ込み、膝を抱えて上を見る。
未だ戸惑いながらも、母が柊の恋人・実川楽に聞くと彼は「はい。おいしいです」と控えめに答えた。
彼は口数が少ない性格なのか、それともただ単に緊張しているのか、聞かれた事しか話さなかった。
昨日はすぐに飛び出してしまったし、帰ったらこの恋人も部屋に案内された後で会えなかったし。
だからまともに会うのは、これが初めてということになる。
「あ、あの……僕は篠宮悠衣で、柊兄の弟です。よろしくお願いします」
いくら柊兄の恋人で目にするたびに苦しい思いになると言っても、それはこの人にとっては良い迷惑なだけだ。
柊兄の弟は不愛想などと思われたくない、柊兄の迷惑にはなりたくない、その一心で悠衣は礼儀正しく挨拶をする。
すると楽も見た目とは違い礼儀正しく、悠衣に返した。
「実川楽です。オレは、えっと、柊さんの恋人……です……」
歯切れ悪く俯いて楽は言い、それから柊の裾を掴んだ。
柊は楽の頭を撫でると悠衣を見て、「遅刻してしまいますよ?」と席へと座る事を促す。
楽の向かいに座った悠衣は、母に運ばれてきたトーストにジャムを付けて、楽の様子を伺っていた。
綺麗に染められた金色の髪に吊り上がった瞳、一見してヤンキーにも見えるが、性格は大人しめで、柊の後ろにすぐに隠れたがる。
男にしては低めの身長に、丸くて童顔の顔、そして時々柊を見つめては頬を染め、それを気づかれて頭を撫でられる。
そうすると彼の後ろに尻尾が見えるのではないかと思う程彼は分かりやすく赤をもっと深め、柊は笑顔を作り出す。
まるで恋人、いや……彼らは恋人だったと、また悠衣の心臓はギュッと苦しくなった。
「母さん。父さんは、いつ来れそうですか?」
「父さん? 今週末には、一旦帰ってくる予定だったけれど」
「それはちょうど良かったです。早く、楽の事を紹介したいので」
楽の隣に座った柊、いつもならばこういう時自分の隣に来てくれるのにと落ち込みかけたが、恋人の隣に行くのは当然だろうと思いなおし、悠衣はパンに口を付けた。
「柊、貴方……紹介って、結婚を考えてる、とかじゃ……ないわよね?」
「考えてますよ? そのために、楽を連れてきたのですから」
悠衣の手から、パンが滑り落ちた。
結婚……その単語が中々理解できなくて、頭の中を繰り返し流れ続ける。
「結婚って……何?」
だが理解するよりも先に、口が動いていた。
「それは……」
その答えが柊の口から出る前に、悠衣は立ち上がる。
「僕、そろそろ学校行くね。ごめんこれ、もういいから」
食べかけのパンを押し付けるように母に渡した悠衣は、制止の声も聞かずに早歩きでリビングを出た。
部屋に戻るとドアを背中に雪崩れ込み、膝を抱えて上を見る。
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