あなたが俺の番ですか?

ミルクルミ

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バレてました①

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 琥陽にはこの学校に来て以来習慣としている事があった。
 それが、夜部屋で寝ないという事だ。
 今日も今日とてさっと大浴場で風呂を済ませると、枕を手に部屋を出ようとドアノブに手を掛ける。
 だが後ろから腕を掴まれ、遅かったかと顔を引き攣らせた。

「どこ、行くの?」
「お、俺が夜部屋にいないのなんて、いつもの事でしょ?」
「それをオレが引き止めるのも、いつもの事だよね?」

 小さいくせに、颯珠は力が強い。強引に颯珠の方を向かせられた琥陽は、バンっと自身の身体の横につけられた手を見て「ひっ」と小さく悲鳴を上げた。

「だ、だから言ってるじゃん! 俺、夜になるとフェロモンが不安定になるから、颯ちゃんと一緒にいれないんだって! お、襲っちゃうかもしれないでしょ!?」
「別に、琥陽にだったらどうされてもいいけど?」
「そ、そういう話じゃなくて!」
「あ、琥陽は抱くのと抱かれるの、どっちがいい? 普通はアルファが抱く方だと思うけど、オレ琥陽を抱きたいんだよね。このまま引き止めれば、抱かせてくれる?」
「……そ、そういう話じゃ、なくて……」

 抱くとか抱かれるとか生々しい。そもそも本当に付き合っているわけでもないのに、冗談でもそういう話はしないでほしい。

「それとも琥陽は、オレが抱けるの?」

 わざとらしく誘うような声で言ってきて、颯珠は首に手を回しそのまま身体の位置を入れ替えた。

「いいよ、琥陽……抱いてみる?」

 背伸びをして、琥陽の髪を耳に掛ける。反対の手が首に触れそうになった瞬間、琥陽は颯珠の肩に思い切り力を入れ、ドアをバンっと開けた。

「残念、逃げられた」

 そんな声を背に、全速力で二階から一階の階段を下りていく。
 そのまま廊下を突っ切り目的地である寮監室の隣の部屋に行こうとしたのだが、途中で服を掴まれ首が締まり、「ぐえっ」と変な声が出てしまった。

「待て、どうした?」
「い、一朔いっさ~」

 誰だと振り返ったら見知った顔がいて、思わず琥陽は風呂上りらしき一朔に飛びつく。

「颯ちゃんが、颯ちゃんがっ……」
「またからかわれたのか。正直、お前がそんな反応をするから面白がってるんだと思うぞ?」
「でも……っ」
「とにかく、移動しよう。卯田に見つかるとまずいだろ?」
「う、うん」

 背中を叩かれながらとぼとぼと歩き、ポケットから鍵を出すと部屋に入った。
 一朔は琥陽の幼馴染だ。それこそ物心つく前から一緒にいて、何でも言い合うような仲である。
 早速今日の愚痴を首にかけているタオルで髪を拭いている一朔にぶつくさと言っていると、一朔は「はぁ~」と盛大にため息を吐いた。
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