6 / 63
バレてました②
しおりを挟む
「卯田って、お前の事が好きなんじゃねぇの?」
「そ、そんなはずないよ!」
「だって俺、お前と話してると卯田に睨まれるぜ?」
「それは、恋人の振りをしているからで……」
「してない時の話なんだけど?」
この三人だけでいる時は恋人の振りをせず、颯珠も素で話す。だがその時の颯珠はいっつも不機嫌そうで、確かに一朔の事を睨んでいた。
「にしても、抱く抱かない、ね……良かったじゃねえか。お前って抱かれたい方だろ? 抱かれてくれば?」
「簡単に言わないでよ! それに俺には好きな人が……!」
「顔も知らない人の何を好きになるってんだよ」
ジトっとした視線を一朔は琥陽に向けた。
琥陽はアルファとして入学しているが、本当のバースはオメガだ。オメガは小柄が多いので今までバレたことはないが、一緒に生活する颯珠にはいつもバレやしないかと冷や冷やしている。
「顔が分かんなくても良い人だよ! とっても良い香りがして、囁く声も透き通っていて、強引だけど優しくて……早く会いたいな、俺の番!」
にへらと夢見ながら、琥陽は押し入れから布団を敷き、寝る準備を整える。
オメガとアルファの特殊な繋がりである番。それはアルファがヒート中のオメガのうなじを噛むことによって成立する。
一度番ったら解消するのは困難なので、普通慎重に行われる事が多い。だが街中で急遽ヒートを起こしたオメガのフェロモンにアルファが誘われ、レイプのように無理やり番う事件もある。
最初のヒートでそんな被害に遭った琥陽は、後ろからされたので顔も見えず、気が付いたら病院で、番われた後で。自分の状況を思い一気に顔が青ざめた。
年齢も、男か女かさえも、どんな性格なのか、どこに住んでいるのか、何もかも知らない相手。
最初の頃は絶望し、食事も喉を通らなかった。自分は今後どうなってしまうのだろうと想像し、夜な夜な涙を流した。
だが琥陽は今、悲観することなくこうして自分の番に夢見ている。
いつか会いに来てくれると信じて、待ち続けているのだ。
「んなその日一日だけの相手を待ってるより、目の前にいる自分を好きそうな奴と関係を持ってみた方が確実だろ。卯田なら、お前がオメガって知っても受け入れてくれるんじゃねぇ?」
「でも……颯ちゃんだって、オメガだし」
「オメガとオメガでくっついてもいいじゃねえか、恋愛は自由だよ」
胡坐をかいて布団の上に座る琥陽の髪を、一朔はわしゃわしゃとかき乱した。
「それに、オメガとくっついて抱く抱かないで揉めないのは珍しいだろ? お前は抱かれたい、卯田は抱きたいでお似合いのカップルじゃねえか」
「そ、そんな生々しい話しないでよ!」
「そんな話をしてきたのはお前だろうが」
何を今更、と一朔は琥陽の額を指で弾く。
呻く琥陽に背を向けると、「じゃあ」と手を振った。
「俺はそろそろ部屋に行くわ。鍵、閉め忘れんなよ」
「そ、そんなはずないよ!」
「だって俺、お前と話してると卯田に睨まれるぜ?」
「それは、恋人の振りをしているからで……」
「してない時の話なんだけど?」
この三人だけでいる時は恋人の振りをせず、颯珠も素で話す。だがその時の颯珠はいっつも不機嫌そうで、確かに一朔の事を睨んでいた。
「にしても、抱く抱かない、ね……良かったじゃねえか。お前って抱かれたい方だろ? 抱かれてくれば?」
「簡単に言わないでよ! それに俺には好きな人が……!」
「顔も知らない人の何を好きになるってんだよ」
ジトっとした視線を一朔は琥陽に向けた。
琥陽はアルファとして入学しているが、本当のバースはオメガだ。オメガは小柄が多いので今までバレたことはないが、一緒に生活する颯珠にはいつもバレやしないかと冷や冷やしている。
「顔が分かんなくても良い人だよ! とっても良い香りがして、囁く声も透き通っていて、強引だけど優しくて……早く会いたいな、俺の番!」
にへらと夢見ながら、琥陽は押し入れから布団を敷き、寝る準備を整える。
オメガとアルファの特殊な繋がりである番。それはアルファがヒート中のオメガのうなじを噛むことによって成立する。
一度番ったら解消するのは困難なので、普通慎重に行われる事が多い。だが街中で急遽ヒートを起こしたオメガのフェロモンにアルファが誘われ、レイプのように無理やり番う事件もある。
最初のヒートでそんな被害に遭った琥陽は、後ろからされたので顔も見えず、気が付いたら病院で、番われた後で。自分の状況を思い一気に顔が青ざめた。
年齢も、男か女かさえも、どんな性格なのか、どこに住んでいるのか、何もかも知らない相手。
最初の頃は絶望し、食事も喉を通らなかった。自分は今後どうなってしまうのだろうと想像し、夜な夜な涙を流した。
だが琥陽は今、悲観することなくこうして自分の番に夢見ている。
いつか会いに来てくれると信じて、待ち続けているのだ。
「んなその日一日だけの相手を待ってるより、目の前にいる自分を好きそうな奴と関係を持ってみた方が確実だろ。卯田なら、お前がオメガって知っても受け入れてくれるんじゃねぇ?」
「でも……颯ちゃんだって、オメガだし」
「オメガとオメガでくっついてもいいじゃねえか、恋愛は自由だよ」
胡坐をかいて布団の上に座る琥陽の髪を、一朔はわしゃわしゃとかき乱した。
「それに、オメガとくっついて抱く抱かないで揉めないのは珍しいだろ? お前は抱かれたい、卯田は抱きたいでお似合いのカップルじゃねえか」
「そ、そんな生々しい話しないでよ!」
「そんな話をしてきたのはお前だろうが」
何を今更、と一朔は琥陽の額を指で弾く。
呻く琥陽に背を向けると、「じゃあ」と手を振った。
「俺はそろそろ部屋に行くわ。鍵、閉め忘れんなよ」
0
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
【完結済】極上アルファを嵌めた俺の話
降魔 鬼灯
BL
ピアニスト志望の悠理は子供の頃、仲の良かったアルファの東郷司にコンクールで敗北した。
両親を早くに亡くしその借金の返済が迫っている悠理にとって未成年最後のこのコンクールの賞金を得る事がラストチャンスだった。
しかし、司に敗北した悠理ははオメガ専用の娼館にいくより他なくなってしまう。
コンサート入賞者を招いたパーティーで司に想い人がいることを知った悠理は地味な自分がオメガだとバレていない事を利用して司を嵌めて慰謝料を奪おうと計画するが……。
孕めないオメガでもいいですか?
月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから……
オメガバース作品です。
番解除した僕等の末路【完結済・短編】
藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。
番になって数日後、「番解除」された事を悟った。
「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。
けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。
運命じゃない人
万里
BL
旭は、7年間連れ添った相手から突然別れを告げられる。「運命の番に出会ったんだ」と語る彼の言葉は、旭の心を深く傷つけた。積み重ねた日々も未来の約束も、その一言で崩れ去り、番を解消される。残された部屋には彼の痕跡はなく、孤独と喪失感だけが残った。
理解しようと努めるも、涙は止まらず、食事も眠りもままならない。やがて「番に捨てられたΩは死ぬ」という言葉が頭を支配し、旭は絶望の中で自らの手首を切る。意識が遠のき、次に目覚めたのは病院のベッドの上だった。
こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡
なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。
あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。
♡♡♡
恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる