あなたが俺の番ですか?

ミルクルミ

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バレてました②

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「卯田って、お前の事が好きなんじゃねぇの?」
「そ、そんなはずないよ!」
「だって俺、お前と話してると卯田に睨まれるぜ?」
「それは、恋人の振りをしているからで……」
「してない時の話なんだけど?」

 この三人だけでいる時は恋人の振りをせず、颯珠も素で話す。だがその時の颯珠はいっつも不機嫌そうで、確かに一朔の事を睨んでいた。

「にしても、抱く抱かない、ね……良かったじゃねえか。お前って抱かれたい方だろ? 抱かれてくれば?」
「簡単に言わないでよ! それに俺には好きな人が……!」
「顔も知らない人の何を好きになるってんだよ」

 ジトっとした視線を一朔は琥陽に向けた。
 琥陽はアルファとして入学しているが、本当のバースはオメガだ。オメガは小柄が多いので今までバレたことはないが、一緒に生活する颯珠にはいつもバレやしないかと冷や冷やしている。

「顔が分かんなくても良い人だよ! とっても良い香りがして、囁く声も透き通っていて、強引だけど優しくて……早く会いたいな、俺の番!」

 にへらと夢見ながら、琥陽は押し入れから布団を敷き、寝る準備を整える。
 オメガとアルファの特殊な繋がりである番。それはアルファがヒート中のオメガのうなじを噛むことによって成立する。
 一度番ったら解消するのは困難なので、普通慎重に行われる事が多い。だが街中で急遽ヒートを起こしたオメガのフェロモンにアルファが誘われ、レイプのように無理やり番う事件もある。
 最初のヒートでそんな被害に遭った琥陽は、後ろからされたので顔も見えず、気が付いたら病院で、番われた後で。自分の状況を思い一気に顔が青ざめた。
 年齢も、男か女かさえも、どんな性格なのか、どこに住んでいるのか、何もかも知らない相手。
 最初の頃は絶望し、食事も喉を通らなかった。自分は今後どうなってしまうのだろうと想像し、夜な夜な涙を流した。
 だが琥陽は今、悲観することなくこうして自分の番に夢見ている。
 いつか会いに来てくれると信じて、待ち続けているのだ。

「んなその日一日だけの相手を待ってるより、目の前にいる自分を好きそうな奴と関係を持ってみた方が確実だろ。卯田なら、お前がオメガって知っても受け入れてくれるんじゃねぇ?」
「でも……颯ちゃんだって、オメガだし」
「オメガとオメガでくっついてもいいじゃねえか、恋愛は自由だよ」

 胡坐をかいて布団の上に座る琥陽の髪を、一朔はわしゃわしゃとかき乱した。

「それに、オメガとくっついて抱く抱かないで揉めないのは珍しいだろ? お前は抱かれたい、卯田は抱きたいでお似合いのカップルじゃねえか」
「そ、そんな生々しい話しないでよ!」
「そんな話をしてきたのはお前だろうが」

 何を今更、と一朔は琥陽の額を指で弾く。
 呻く琥陽に背を向けると、「じゃあ」と手を振った。

「俺はそろそろ部屋に行くわ。鍵、閉め忘れんなよ」
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