死ぬほど暇なので転生することにしました。(仮)

テル

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第1章

第22話 焔爆と氷瀑

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とともにきた理希コトキは、昨日きのう同様どうよういぬのゴーレムにって荒野こうやあるいていた。

となりていたミケは朝見あさみたらなかった。返事へんじもないから霊体れいたいもどってまだているのだろう。

とおくにぼんやりとえていたきた山脈さんみゃくは、だいぶはっきりとえるようになってきていた。

『そういえばまだ名前なまえけてなかったな…』

あとでミケにセンスのなさを指摘してきされそうで、おもいけどしょうがない。

名前なまえがないと不便ふべんだし、かなりお世話せわになっているのに不義理ふぎりをしているようでもうわけないし。

おぼえのある名前なまえは…、シロ…、コタロウ…、エアロ…、ムーコ…」

どうもしっくりこない。というか、名付なづけたらだれかにおこられそうながする。10ぷんくらいなやつづけて、唐突とうとつにひらめいた。

今日きょうからおまえは『ハチ』にしよう」

日本にほん一番有名いちばんゆうめい?ないぬ名前なまえだから、センスてきには大丈夫だいじょうぶだろう。

「エスト・トゥアー・ノーミネ、『ハチ』」

いぬのゴーレムは、あるいたままこちらにかおけてうなずいた。

こころなしか、ハチの足取あしどりがかるくなったようながする。

『ご主人しゅじん、おはようニャのニャ』

ミケはあさ挨拶あいさつをしながら、ハチのあたまうえ実体化じったいかした。

「うん。おはよう」

「ご主人しゅじん相変あいかわらずニャのニャね。ややこしいのニャ」

「え? ややこしい? なにが?」

きざまれてる数字すうじは『2』ニャのに、名前なまえは『8』ニャのニャ」

「……」

「よし。さきいそごう。今日中きょうじゅう北西ほくせいはし到着とうちゃくするぞ」

「うニャン!」

「ユベント・ハチ、フェスティーナ・モドゥス」

ミケがあたまうえにいるからなのか、ハチはすこしだけうなずくと、適度てきど速度そくどげた。





「あ~、お尻痛しりいたい」

「やわらかいクッションがしいニャね」

「ユベント・ハチ、システィト」

ゆるやかなおかのぼったところでまるようにめいじて、ハチからりた。

かたむはじめているけど、よるになるまでまだ時間じかんはありそうだ。

きた西にし山脈さんみゃくせまり、ふもともり眼下がんかひろがっている。

もりかくれていてえないけど、西にし山脈さんみゃくえるから、そのした間道かんどうがあるのだろう。

「ご主人しゅじん。どうしたのニャ? 盆地ぼんち出口でぐちはもうまえニャよ?」

盆地ぼんちるのは明日あしたにして、今日きょうはここでやすもう」

「うニャン? どこか具合ぐあいでもわるいのかニャ?」

「いや、もう元気げんきだよ。荒野こうやまえためしておきたいことがあるし、ちかくにひとなかった場合ばあいそなえてかり拠点きょてんつくっとこうとおもってね」

「こんニャ場所ばしょにかニャ? もりなかほうさそうニャけど…」

大丈夫だいじょうぶ。ちょっと魔法まほう使つかうからさがってて」

「うニャン!」

理希コトキとおってきたばかりの荒地あれちほうへとかえると、詠唱えいしょうはじめた。

「クインクエ・テネント・カエルム・ゾーナ」つのおびてんめる

「クァールム・ウーナ・カルスコ・センピテルノ・ソーレ・ルーベンス・エト・トルリダ・センペル・アブ・イグニ」そのひとつは永遠えいえんきらめく太陽たいようによりあかく、ほのおによりがる

5km程先ほどさきちいさくえるいわ目標もくひょうさだめた。

「フレイム・バースト」

熱気球位ねつききゅうくらいおおきさはあるだろうか。中空ちゅうくうあかひかたま出現しゅつげんした。

前方ぜんぽうかってすすむと目標もくひょう上空じょうくう停止ていしした。つぎにゆっくりと高度こうどげ、いわれたようにえた。

「こ、これはまずいかも…」

くらむほどの閃光せんこうはしる。

理希コトキをひるがえすと、ミケをひろげ、せをしているハチの背中せなかいてえた。

ハチのかげかくれるのと同時どうじ鼓膜こまくやぶれそうなほどの爆音ばくおんひびき、地面じめんれる。

衝撃波しょうげきは頭上ずじょうとおぎ、おくれて熱風ねっぷうけた。

「……、くさいな」

れがおさまるのをち、ミケをかかえたまま理希コトキがった。

「うニャニャニャ!」

ミケが驚愕きょうがくこえげる。

大地だいち円形えんけいおおきくくぼみ、けたつちにぶあかかがやいている。

灼熱しゃくねつ地獄じごくみたいだな…』

おかからえんはしまでは結構距離けっこうきょりがあるのに、かおねつかんじる。

大規模だいきぼになってしまったけど予想通よそうどお上手うまくいったので、理希コトキ満足まんぞくしていた。

「ご主人しゅじん魔法まほうはありあまった魔力まりょくがドバーてかんじで、どれも威力いりょくすごいニャね」

こわれた蛇口じゃぐちみたいにうなぁ…」

ふかさはそんなにないけど、直径ちょっけいだけならアメリカにある有名ゆうめいな『バリンジャー・クレーター』の数倍すうばいはありそうだ。

「じゃあべつ魔法まほう使つかうから」

そうってミケをハチのうえろした。

「ノーリ・フイーク・トランクィッリターティ・コンフィーデレ」このしずけさをしんじてはいけない

理希コトキ呪文じゅもんとなえながらあるき、『フレイム・バースト』の呪文じゅもんとなえた場所ばしょにもう一度立いちどたった。

「レペティティオー・アッシドゥア・グレイシャー・コンクリータ・アトクゥェ・インブリーブス・アトリス」くらこおりあめなく凝縮ぎょうしゅくかえ

クレーターの中心辺ちゅうしんあたりに視線しせんける。

「アイス・フォール」

キーン…、キーン…、キーン…、キーン…

みみいたいニャ…」

硬質こうしつおとひびわたり、みみごとあたまかかえてミケがうずくまった。

クレーターの上空じょうくう青白あおじろひかりかがやいている。

「これはまた、でっかい…」

ひかりえ、東京とうきょうドーム数十個分すうじゅっこぶんほどありそうな、巨大きょだい氷塊ひょうかい出現しゅつげんした。

そのまま落下らっかして地面じめん衝突しょうとつすると、大地だいち鳴動めいどうした。

理希コトキひざいて姿勢しせいひくくする。

水蒸気すいじょうきなのだろう。しろきりはしらのようにがり、クレーターの姿すがたおおかくしていく。

「うわっ、つめたっ!」

気持きもちいいのニャ」

上空じょうくうから水滴すいてきあめのようにそそいだ。かわいた地面じめんがあっというにぬかるみにわる。

「よっと」

どろハネをけるため、理希コトキはハチのうえり、ミケのよこすわった。

あめはやがてよわまり、水蒸気すいじょうき目隠めかくしも次第しだいうすまる。

「ご主人しゅじん神様かみさまみたいニャね」

ひだりからみぎにゆっくりとくびうごかして全景ぜんけい見渡みわたした。

「う~ん。なんかもうわらっちゃうくらいの規模きぼになっちゃったけど、まぁ…、いいか」

なにもなかった荒野こうやおおきなみずうみ誕生たんじょうしていた。

「じゃあ湖畔こはん移動いどうしようか」

「うニャン♪」
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