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第1章
第2話 女神登場
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「うわー!」
理希は叫びながら勢いよく上半身を起こした。
ガツン!
硬いものが額に当たり、跳ね返る。そのまま後方に倒れて後頭部を強かに打ち付けた。
身体を丸め、頭を抱えて転げまわる。
「●×▼…」
声を押し殺して痛みに耐えていると、唐突に近くで呻きのような音が聞こえた。
理希は涙目になりながら目を開けたが、辺りを包んでいる白い光が眩しすぎて状況が分からなかった。
『あれ? 生きてる?』
まだ川の中にいるのだろうか?
天に向かって両腕を伸ばすと、右手に何かが触れた。
『助かるかもしれない!』
そう思った理希は、右手に渾身の力を籠めてその何かを掴んだ。
「●×▼!」
呻きのような音が強まる。
「あ、くそ! 暴れるな」
上方に向かって引っ張られ、手が滑りそうになる。
「●×い、 痛い、痛い…」
「絶対に離すもんかー!」
生か死かの極限状態にあることを完全に思い出した理希は、自分の右手首を左手で掴みさらに力を籠めた。
「痛いってば!」
顎の先端辺りを右から左にかけて衝撃が走った。同時に意識が遠のいていく。
『なんだ、やっぱりだめなのか…』
命をつなぐ希望の手が離れると、理希は力なく倒れた。
※
『…』
どのくらいの時間が過ぎたのだろう…
『いい加減に…』
まだ脳が揺れているような気がする。
「起きなさい」
頭をはたかれたような気がした理希は、ゆっくりと目を開いた。
「…誰?」
視界を塞ぐようにこちらの顔を覗き込んでいる見知らぬ女性と目が合った。
「信じられないかもしれないけど、私は女がぐわぁ…」
名乗りかけた女性の顔を手で払いのけると、理希は上半身を起こした。首を巡らし周囲を確認する。
「ここは…、どこだ?」
壁も床も天井も、全てが白い。窓もない。部屋の中央に置かれた白い台の上で、寝かされていたようだ。少なくとも病院ではないことだけは分かった。
「こ、ここは、追い出し部…、じゃなかった」
『オイダシベ?』
「コホン。ここは狭間の空間」
引きつった笑みを浮かべながら、そう言い直した女性の顔を理希はまじまじと確認した。
「お前はなんなんだ? くそっ、いったい何が起きたんだ?」
右手で襟元を掴むと、乱暴に引き寄せた。
訳が分からず不安な気持ちが膨らんでくる。そんな自分を笑われたような気がして、怒りのような感情が爆発した。
「だから私は女神で…」
女性は目を逸らしながらそう答えた。こめかみの辺りが何故か赤い。
「女神…? 冗談だろ? 狭間ってなんだ? 僕は死んだのか?」
気ばかりが焦り、矢継ぎ早に質問する。
「ふ、不良っぽく振る舞いながら僕…って」
一人称を『僕』と言ってしまったことをすぐに後悔した。吹き出しそうになっている自称女神を、理希は睨む。
高校に入って『俺』に替えたのに、まだ使い慣れていないから間違えた。
「…ええと、ゴクリ」
握りしめて震えている理希の左拳に気が付いたのか、女神は息を飲み込むと、すぐに真顔になった。
「貴方は死にました」
「死…」『死…』
反響し心を引き裂きながら身体の中を通り抜ける。
理希は力なく襟から手を離した。
この何もない部屋を見た時から、どこかで覚悟はしていたが、その言葉が持つトゲは予想以上に痛かった。
呆然としてる理希を気にする様子もなく、女神は乱れた襟を整えると話を続けた。
「貴方は選ばなければならない」
「選ぶ…、なにを?」
「ここで残りの108年を過ごすか、異世界に転生して世界を救うか」
理希は叫びながら勢いよく上半身を起こした。
ガツン!
硬いものが額に当たり、跳ね返る。そのまま後方に倒れて後頭部を強かに打ち付けた。
身体を丸め、頭を抱えて転げまわる。
「●×▼…」
声を押し殺して痛みに耐えていると、唐突に近くで呻きのような音が聞こえた。
理希は涙目になりながら目を開けたが、辺りを包んでいる白い光が眩しすぎて状況が分からなかった。
『あれ? 生きてる?』
まだ川の中にいるのだろうか?
天に向かって両腕を伸ばすと、右手に何かが触れた。
『助かるかもしれない!』
そう思った理希は、右手に渾身の力を籠めてその何かを掴んだ。
「●×▼!」
呻きのような音が強まる。
「あ、くそ! 暴れるな」
上方に向かって引っ張られ、手が滑りそうになる。
「●×い、 痛い、痛い…」
「絶対に離すもんかー!」
生か死かの極限状態にあることを完全に思い出した理希は、自分の右手首を左手で掴みさらに力を籠めた。
「痛いってば!」
顎の先端辺りを右から左にかけて衝撃が走った。同時に意識が遠のいていく。
『なんだ、やっぱりだめなのか…』
命をつなぐ希望の手が離れると、理希は力なく倒れた。
※
『…』
どのくらいの時間が過ぎたのだろう…
『いい加減に…』
まだ脳が揺れているような気がする。
「起きなさい」
頭をはたかれたような気がした理希は、ゆっくりと目を開いた。
「…誰?」
視界を塞ぐようにこちらの顔を覗き込んでいる見知らぬ女性と目が合った。
「信じられないかもしれないけど、私は女がぐわぁ…」
名乗りかけた女性の顔を手で払いのけると、理希は上半身を起こした。首を巡らし周囲を確認する。
「ここは…、どこだ?」
壁も床も天井も、全てが白い。窓もない。部屋の中央に置かれた白い台の上で、寝かされていたようだ。少なくとも病院ではないことだけは分かった。
「こ、ここは、追い出し部…、じゃなかった」
『オイダシベ?』
「コホン。ここは狭間の空間」
引きつった笑みを浮かべながら、そう言い直した女性の顔を理希はまじまじと確認した。
「お前はなんなんだ? くそっ、いったい何が起きたんだ?」
右手で襟元を掴むと、乱暴に引き寄せた。
訳が分からず不安な気持ちが膨らんでくる。そんな自分を笑われたような気がして、怒りのような感情が爆発した。
「だから私は女神で…」
女性は目を逸らしながらそう答えた。こめかみの辺りが何故か赤い。
「女神…? 冗談だろ? 狭間ってなんだ? 僕は死んだのか?」
気ばかりが焦り、矢継ぎ早に質問する。
「ふ、不良っぽく振る舞いながら僕…って」
一人称を『僕』と言ってしまったことをすぐに後悔した。吹き出しそうになっている自称女神を、理希は睨む。
高校に入って『俺』に替えたのに、まだ使い慣れていないから間違えた。
「…ええと、ゴクリ」
握りしめて震えている理希の左拳に気が付いたのか、女神は息を飲み込むと、すぐに真顔になった。
「貴方は死にました」
「死…」『死…』
反響し心を引き裂きながら身体の中を通り抜ける。
理希は力なく襟から手を離した。
この何もない部屋を見た時から、どこかで覚悟はしていたが、その言葉が持つトゲは予想以上に痛かった。
呆然としてる理希を気にする様子もなく、女神は乱れた襟を整えると話を続けた。
「貴方は選ばなければならない」
「選ぶ…、なにを?」
「ここで残りの108年を過ごすか、異世界に転生して世界を救うか」
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