死ぬほど暇なので転生することにしました。(仮)

テル

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第1章

第3話 残念な真相

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 ※

あれから3日ほど経過けいかしたのだろうか。昼も夜もなく、時計もないから実際じっさい経過時間けいかじかんは分からない。

死んでいるからだろうか、お腹はらず、ねむくもならない。ひまをつぶすものもない。

そう、ここには何もない…

退屈たいくつで死にそうだ。

考えることもないので、仕方しかたなく、女神との会話を思い返す。

するとふたいかりがげてくる。



「…死んだって? あの時、おれはどうなったんだ?」

狭間はざま空間くうかんってなんなんだ…、みんな死んだらこんなふざけた場所ばしょに来るのか?」

「108年もここにいるか、異世界いせかいすくうかだって? 冗談じょうだん言わないでくれ」

理希コトキ混乱こんらんする思考しこうそのままに、まくし立てた。

「いや、まぁ…、とにかく一度いちどいて」

どこから出してきたのか、そう言って女神は湯呑ゆのみを差し出した。

憮然ぶぜんとしながら受け取ると、一気いっきに飲みす。水なのか、お茶なのか、味も分からなかったが、幾分いくぶんか楽になった気がした。

「死んだ人は普通ふつう…、日本人に分かりやすく言うと『あの世』に行く」

「…じゃあ、おれ普通ふつうじゃなかったと?」

「そうね。貴方あなたは死ぬ運命うんめいになかった」

運命うんめいになかった…、それなのに死んだ?」

「そういう人がたまにいるの」

「それじゃあ…、のこり108年というのは…」

さっしがいいわね。本来ほんらい寿命じゅみょう世界一せかいいち記録きろくあつめた本にることができたのに残念ざんねん

「世界一? いや…、ちょっとて」

N〇Kみたいな言い回しが少し気になったがそれどころではない。

「なぜ死んだ? なにがあったんだ?」

そういえばあの時、だれかにされたような気がする。

「それは…、知らない方がいい」

女神は顔をせた。泣いているのかかたふるえている。

「い、いや、知りたいんだ」

ぼ…、おれのために泣いてくれている? なんだかこれまでの態度たいどきゅうずかしくなった。

貴方あなたのためだから…」

かたふるえがした。

心配しんぱいしてくれるのはうれしいけど。どうしてもおしえてしいんだ」

理希コトキは頭を下げてたのんだ。

「あら? なんだかきゅうにしおらしくなったわね」

意外いがいそうに女神が顔を上げた。何故なぜ満面まんめんみをたたえている。

「…」

「いい心がけね。私は女神様なんだから、そうやってもっとうやうやしく。あがたてまつるべきなのよ」

「あがめたてまつる…?」

元来がんらい、話すこともゆるされない、運命うんめいつかさど偉大いだい存在そんざいなの」

「ちょっとて…、運命うんめいつかさどる?」

「そうそう、思い出した。女神の鼻に頭突ずつきをらわして、アイアン・クローをめる、貴方あなたのような無礼者ぶれいものは初めてよ」

女神はこちらにかってゆびをさした。

「まずは土下座どげざしてゆるしをいなさ、いたっ?」

理希コトキ無言むごんで女神の頭をたたいていた。

『あいんあんくろー?』なんだそれは。いちいち言い回しが古臭ふるくさいのも気にさわる。

「あ、あまつさえとおといい私の頭をたたくなんて…」

頭を両手でかかえ、ほほふくらませながら女神が抗議こうぎの声を上げた。

運命うんめいつかさどるって言ったな」

顔を近づけにらみつける。

「…、え、ええ」

「お・ま・え・の・せ・い・か!」

両のっぺたをつかった。

「ち、ちがっ、ちょっ、やめ…」

「なにが知らない方がいいだ! かくしたかっただけじゃないのか?」

「だから、ご、誤解ごかいだってば!」

手足をバタバタとさせ、女神は抵抗ていこうはじめた。

理希コトキは両手に力をめ、さらにほほる。

「あ、ったな!」

「ひゃにゃたが先に手を出したのでしょう!」

しばらく時間をわすれて、不毛ふもうあらそいがつづいた。

しんじられない…、絶対ぜったいにバチが当たるから覚悟かくごしなさい」

「これ以上のバチがあるのか?」

ちからのない笑い声が、身体からだおくかられた。

「話が全然ぜんぜんすすまないじゃない。転生前てんせいまえがこんなに長い物語なんてありえないから」

意味いみが分からん」

理希コトキはため息をいた。

「それで…、なにがあったんだよ?」

「いいのね? 本当ほんとうに言っていいのね?」

「もうそれはいいから」

話がすすまないのは女神のせいな気がしてきた。

「じゃあ、おしえてあげる。あの日…、貴方あなたはネコに気付きづかず、そのままとおぎるはずだった」

「え? それじゃあ、ぼ…、おれではなくネコが死ぬハズだったのか?」

無理むりして『おれ』を使つかわなくていいから」

女神は苦笑くしょうして話をつづける。

「それもちがう。残酷ざんこくだけど。貴方あなたたすけようとしなければ、ネコも死なずにすんだ」

「ネコも?」

「あの時、はこから階段かいだんまでギリギリだったけど、ネコはジャンプできる距離きょりにあったの」

『そうか…、無駄死むだじにどころか、たすかるはずのネコも死なせてしまったのか…』

声にならず、目をつむっててんあおいだ。

ぼく余計よけいなことをしたから、ネコをこわがらせてうつるタイミングをうしなった…、あっ…?」
横着おうちゃくをしてちかくにいた貴方あなたの上に着地ちゃくちしてしまったから、一緒いっしょに川に落ちて…、えっ…?」

会話かいわかさなり、女神へと顔をけると目が合った。

「じゃ、じゃあ、なにか? あの時、だれかにされたと思ったのは間違まちがいで、川に落ちたのはネコがぼくの頭にったのが原因げんいんだと?」

「そうなるわね」

女神はそう言うと、かたふるわせて笑い出した。

貴方あなたもネコも、近年きんねんまれに見るマヌケ…」

理希コトキふたた無言むごんで女神の頭をたたいていた。
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