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第17話
しおりを挟むそれから、夕方になってヴェルスガの街が見えてきた。
馬車が街中へと入っていく。
やがて、広場へとついたところで馬車が止まった。
「いやぁ、途中助かったよ! ありがとね!」
馬車から降りたところで、御者がそうエリックに言ってきた。
「いや、別にいいんだ。それより少し聞きたいんだが、ここから北に出る馬車は知らないか?」
「……え? き、北に行くのかい?」
「ああ、何か問題でもあるのか?」
エリックの言葉に御者と冒険者たちは顔を見合わせていた。
困った様子の彼らに私も首をひねっていると、冒険者のリーダーが口を開く。
「……たぶん今馬車は動いていないと思いますよ?」
え、なんで?
「どういうことだ?」
「ここから北の平地に、魔物が大量発生してしまったんです。ですから、それが落ち着くまでは北の街行きの馬車は出発しないと思いますが」
……魔物が大量発生。たぶん、それって私が祈らなくなってしまったからだよね。
それに、昨日の祈りは失敗してしまっているので、今日しっかりと祈らないとこれからさらに被害は甚大なものになっていく。
私が小さくため息をついていると、冒険者たちは頬をかいた。
「てっきり、エリックさんとアーニャさんもその戦いに参加される冒険者だと思っていたんですけど」
「いや、違うんだ。そうか、とにかくありがとう」
「いえ、こちらこそ。それではまたどこかで」
冒険者たちは手を振り、去っていった。
「どちらにせよ。もう暗い。一度宿に向かおうか」
「そうですね」
それにしても、北で魔物大量発生かぁ。
まさか、こんなところで足止めをくらうとは思っていなかった。
「どうする? 迂回していくか、それとも馬でも借りるか?」
「……私乗馬は無理です」
「二人で乗れば良いでしょう」
「酔っちゃうんです」
少し恥ずかしい。それでも努めて冷静な様子で私がそういうと、エリックが腕を組んだ。
「……なら、徒歩か」
「す、すみません。重ねて否定するのは心苦しいのですが、私運動は苦手でして。体力ほとんどないので、たぶん一キロも歩いたら動けなくなりますよ」
「そこから俺背負って移動、か」
「そ、それはエリックへの負担が大きくなります。却下です」
「冗談に決まっているだろ。俺もいくら女性とは言え、人一人を抱えて旅なんて無理だ。……なら迂回するしかないかもしれないな」
「……迂回するにしても、かなりの迂回になってしまいますよね」
「そうだな。二週間、うまく乗り継いで良ければ一週間で行けるかもしれないが」
「……少し街に滞在して様子を見ましょうか」
急ぐ旅でもない。
私は国外追放といわれたけど、騎士によって強制的な連行とかではない。
「分かった。それじゃあ宿に泊まるか」
「はい」
私はエリックとともに宿へと向かった。
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