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第20話
しおりを挟む宿で眠りについていた私だったけど、なんだか体が揺さぶられる。
え、何事? もしかして地震!?
私が祈りを捧げなくなったことで災害までも発生してしまったのかもしれない。
私が驚きながら慌てて体を起こすと、ごつん、と額に何かがあたった。
あっ、痛い。
私がその程度に考えて近くを見ると、頭をおさえてうずくまるエリックがいた。
「石頭が……」
「あっ、エリックおはようございます。もしかして寝坊してしまいましたか?」
あれ、でも……そもそも別室にしていたはずなんだけど。
ていうか、外はまだ暗い……でも、なんだか騒がしかった。
とにかく、状況が分からなすぎたので私はエリックを見ていると、彼は涙目になったまま額を押さえていた。
「……アーニャ、頭硬いな」
「それは考え方が、でしょうか?」
「物理的にだ。寝起きのアーニャに簡単に状況を伝える。……魔物が街に襲い掛かってきた。飛行種の魔物が多いらしく、あちこちで被害が出ている。悪いと思ったが護衛として、鍵を開けてこうして起こしにきたというわけだ」
彼は親指で扉を指さす。そういえば、鍵開けは得意だったね。
……なるほど、魔物に襲われているんだ。
「どうする? このまま宿で待機するか。避難所に逃げるか、だ。どっちも100パーセントの安全は保障できないが」
「……魔物の討伐に協力しましょう」
私の提案にエリックが眉間をよせる。
「護衛としては危険が増えるから出来れば止めたいが……理由を聞いてもいいか?」
「今回の魔物大量発生は大聖女の私が原因の可能性があります。ですから、出来る限り協力したいのです」
「でも、もうアーニャは関係ないだろう」
「はい。ですが……私は少なくともこの街の人たちが傷つく姿は見たくありません」
私の言葉に、エリックが頭を書いた。
「お人よしだな」
「それはエリックもでしょう」
「俺は違うぞ」
「それでは、私も違います」
ぽりぽりとエリックは頭をかいた。
「そうだな。確かに街がなくなってしまえば、この後もどうにもならないしな」
「そうですね」
「ただ、自ら危険な空間に飛び込む必要もないだろう。あくまで、騎士や冒険者が対応できていない街に降りた魔物を倒していくぞ」
「……街にも魔物は降りているのですか?」
「ああ。魔物たちはかなり統率のとれた動きをしていてな。飛行種の魔物に合わせ、ゴブリンなどが乗りこんできているそうだ。中には、オークなどの巨大な魔物もいるらしい」
「……知能の向上を抑制するのも大聖女の祈りには関係ありました」
「それじゃあもしかしたら、新しい大聖女がまだうまく言っていない可能性があるな」
「……そう、ですね」
……大聖女というのは選定が難しい。
最低五年、そして次の後継者が見つかるまで数十年と続ける場合もある。
私の前の大聖女様は、14歳のときに大聖女になり、それから58歳までずっと大聖女としての仕事をしていて、私に新たな大聖女を譲って亡くなった。
私はもう権利をニャルネに譲渡しちゃったけど、やっぱりニャルネは力が足りていなかったのかもしれない。
とにかく、私たちは宿の外へと飛び出した。
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