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第26話
しおりを挟む「ニャルネ、無事か!?」
「け、ケイナン……っ! せ、聖女の間にいる大精霊が……! 私の体を痛めつける……の……があ!?」
心配そうに腕を伸ばしてきたケイナンだったが、私の体には触れられず吹き飛ばされる。
「くそ……忌々しい呪いだ……! 手を貸せ!」
「は、はい!」
ケイナンが近くのメイドに呼びかけると、私の体が担ぎ上げられた。
それから、ケイナンとともに聖女の間へと移動する。
ついてすぐだった。ケイナンが声を荒らげる。
「おい、大精霊! オレ様の可愛いニャルネに何をしやがる! くそ! 出てこい!」
『なんだ?』
「わ!?」
大精霊はケイナンを一瞥してから、私の方を見てきた。
『ようやく来たか。さっさと祈りを捧げろ』
「だ、黙れ……け、ケイナン! こいつが大精霊です!」
お願い、なんとかして……! そんな思いとともに私が指さすと、ケイナンは胸を張った。
「そうか。おい、大精霊。オレ様はこの国の王子だ。そして、もうすぐ国王となる。この国で一番偉いんだぞ。分かるか?」
『わからん』
「分かれ! このオレ様に逆らうのなら、おまえなんてすぐに牢屋にぶちこんでやる!」
『何やら一人盛り上がっているところ悪いが、オレは霊体だ。その体をどうやって閉じ込めておくんだ?』
「そんなものは騎士たちが考えることだ」
『……はぁ、そうか。なるほど、おまえが無能王子か』
「……無能だと?」
ケイナンは腰に差していた剣を抜く。
「ふん……これでもオレは騎士学園を首席で卒業しているんだ。ここで切り刻まれたいか?」
『どうせ、権力で脅して得た首席だろう?』
「……何か言ったか、大精霊?」
苛立った様子でケイナンが眉尻を吊り上げ、剣を振り下ろす。大精霊の体がぶわりと揺れた。
……霊体には、など剣を振っても当たらない。
「黙って言うことを聞け、卑怯者が!」
『立場を理解していないようだな。オレがこの国への手助けをしなくなったらどうなるか……分からないわけではないだろう?』
「立場を理解していないのはおまえだ! 大精霊がなんだ! ただ国の守護霊とか勝手に言われているだけだろう! 実際は何もしていない! オレは聞いたことないからな!」
『……無知とは恐ろしいな』
大精霊があきれた様子でそう言った。
『こんな奴のためにこの国を守り続けていたアーニャが可哀想でならないな』
大精霊の言葉に、私だけではなくケイナンも少し苛立った様子だった。
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