悪役貴族に転生した俺が鬱展開なシナリオをぶっ壊したら、ヒロインたちの様子がおかしいです

木嶋隆太

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第37話

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 ゲーム通りならば、倒す魔王は四名。残っている三名の魔王は人間に友好的であり、説得してどうにかなるものだった。
 もしかしたら、やり方次第で四名の魔王たちにも交渉の余地がある者もいるかもしれないがな。

 ……憤怒の魔王だけは、徹底的悪として描かれているから交渉はまず無理だろう。

 どんなやり方でもいい。俺としては、勇者の命が狙われないような環境を作れれば、それが俺にとってのクリアだ。

「魔王を、倒せますの……? 魔王たちは、どれほどの攻撃を受けても傷一つありませんのよ? ダメージを与えられるのは、勇者の力がなければだめ、と言われていますわ」
「どうなるかは、分からない。でも、俺としては勇者を待っているつもりはないんだ」

 妹に過酷な人生を歩ませるわけにはいかないからな。
 一応、ゲーム通りならダメージ自体は通ることは分かっている。
 ここまで、少なくともすべてゲーム知識でなんとかなってきている。
 だから、大丈夫だとは思う。

「勇者を待てない、ですの?」
「……そうだ。今も……この世界のどこかで魔族がやってきて、人々に絶望を振り撒いている。……俺は、そんな悲しむ人々を見たくないんだ。……勇者はいつ現れる? ……それを待っている間に、どれだけの人が苦しむ? ……それを、考えていたら、いてもたってもいられなくなってな」

 ここまで言っておけば、まさか妹が心配だから、なんていう理由だとは誰も思わないだろう。

 魔王と戦う前になんとかして魔族と戦いたいんだよなぁ。
 魔族たちは、魔王の加護を受けているので、魔王と同じオートリジェネ状態だ。
 そいつらをぶっ倒せれば、俺の予想が確信に変わるので、魔王とも希望を持って戦えるんだけどなぁ。

 ただ、魔族たちだって人間界にずっといるわけではないので、なかなかそういうチャンスは訪れない。

「…………ルーベストさんは……凄い、ですわね」
「別に、凄くはない。まだ俺は、何も成し遂げてないんだしな。街で色々な人と話、人々を救っているアイフィのほうが、よっぽど凄いよ」

 彼女が普段から街のあちこちで、市民と話しているのは知っている。
 ゲームでも、かなり慕われていたからな……。
 そんな彼女のおかげで、心を救われている人もたくさんいるはずだ。

「……ッ。……ありがとう、ございますわ。……私も、これからも……もっと、頑張りますわね。……あなたの隣に並ぶ者として……っ」
「ん? ……ああ、まあ頑張ってくれ」

 ただ、今のアイフィはリハビリ含めて色々とやることが多いから、そういった諸々に関しての宣言なんだと思う。

 アイフィが強くなってくれれば俺もラクできるかもしれないし、是非とも頑張ってくれ。

 彼女がどうなるかは分からないが、彼女の足が動くようになったことで、悪影響になるということはないだろう。

「私も、もちろん頑張りますね」

 やる気満々のアイフィをみてか、サーシャも拳を固めながら笑顔を浮かべている。
 ……とりあえず、二人に負けてはいられないし、俺ももっと頑張らないとな。



 それからしばらくはサーシャとともに迷宮に行ったり、実戦形式での訓練を行っていたのだが、今日は朝から治療をする予定になっていた。
 
 ゴルシュさんの知り合いに、何人か魔族にやられて傷を負った人たちがいるそうで、今日はその人たちの治療予定だ。

 屋敷の一室。俺とゴルシュさんが部屋で待っていると、やがて三名の人がやってきた。

 男性一名、女性二名だ。
 全員、腕や目をやられているようだ。
 俺はその三人を見た瞬間にどこか見覚えがあるな、と思った。

「ゴルシュさん、急に呼び出してどうしたんだ?」

 男性が代表者のようで、ゴルシュさんに問いかける。

「いきなりで悪かったな、エルド。少し用事があってな……」

 エルド、か。
 そういえば、ゲームにもいたキャラクターだな。
 エルド、ルビー、ブルーナ。この三人は、アイフィの部下として魔族と戦うメンバーだった。

 それほどの役割はない。勇者を逃がすための戦いに参加し、魔族を足止めして殺されるくらいだった。

 アイフィが雇ったわけではなく、もともとはゴルシュさんとの繋がりがあったのか。

「用事? 何か仕事の依頼とかか?」

 ……今のエルドたちは、何をしているんだろうな? レジスタンスとして活動しているのか、あるいは一冒険者なのか。
 エルドの問いかけに、ゴルシュさんは苦笑を浮かべている。

「まあ、似たようなものだな」
「別に仕事の依頼はいいけど、あんまり面倒なのは勘弁してくれよ? オレたち、この前のでこの有様なんだからな」
 
 エルドは笑顔とともに失った左腕の部分を示すように少し体を動かす。
 ……エルドは明るく振る舞っていたが、それはかなり痛々しいものだ。
 ゴルシュさんは申し訳なさそうに目を伏せている。
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