1 / 2
ブルーノ戦記 第一話
しおりを挟む俺は今、山賊の元頭と行動を共にしている。逃亡の末にたどり着いたのは、海を渡ったポルトガル王国の王都リスボン。ここに潜伏していたのは五年前からだ。アラゴン王国の廃村を根城にして商人を襲い、全てを奪うことが彼らの仕事だった。同じ民族の中でも勤勉で優秀だと自慢していたが、その日は突然やってきた。
「ブルーノ! 逃げるぞ、お宝全部持ってこい! チキショー、全員やられた!」
かなりイラついている。今日は説教かな……。金品をまとめて頭の所へ向かった。見た瞬間――
「ウッ!」
生々しい傷と血。耐性のない俺は吐き気を覚えたが、ここで倒れたら殺されるかもしれない。グッとこらえ、慌てて水と傷薬と布を探し、頭の元へ急いだ。
「別の拠点にすぐ向かう、急げ。」
簡単な処置をして東の拠点へ移動した。こじんまりしたそこは見張り兼用の使い捨て拠点。そこで本格的に傷の手当と回復の時間をとった。傷口を水で洗い秘薬を振りかけると、悲鳴と同時に傷口が小さくなっていく。奇跡の瞬間を目撃した。何度か見たが、すごい薬だ。この特別な回復薬は毒草から作る秘薬だという。
数日後、あの深い傷もふさがり、血の量も戻りつつあった。動ける状態になり――
「この国から出るぞ。」
その言葉で行動することになった。俺は頭のお世話係。そして現在に至る。
◆◇◆◇◆◇◆◇
もともと神社の仕事をしていた俺が、イレーネ姉さんの件をきっかけに親類の金物店で働くことになったのが始まりだった。ヘルマン伯父さんとは人格が違うから同じようにはならないと思っていたが、両親は違う考えだった。真面目に働いて数ヶ月、おじさんと隣町へ商品を運んでいる時に山賊に襲われた。おじさんは抵抗して槍に刺され、動かなくなった。俺は腰を抜かし、後ろから殴られて気絶した。
気がつくと俺は裸で、首に鎖を巻かれ固定されていた。
「かしらー、こいつ食っていいか?」――ゲー!食われる!
「あほう、若いし売るからダメだ。」
奴隷……こいつら、ゲッ!レッドエルフ(別名・劣等エルフ)の嘘つきで、凶暴な連中だ。しかも赤い髪の女が山賊の女親分と噂の「赤蠍」かもしれない。
「ちょっとだけ……かしら、アレ……」
「ちょっとだけ……だぞ。」
「やめれ~~~!」
◆◇◆◇◆◇◆◇
「おめー、大したもんだ。これだけの女を……俺も久しぶりに満足した。」
俺は山賊のおもちゃ決定だ。かしらが俺を見てニタニタしながら言う。
「お前、アッチ(M)だな。責められて喜んでただろ……どこで覚えた? 俺はドSだし、気に入ったよ。死なずに済んだな。手下には俺のもんだと宣言する。」
俺はハッとした。イザベルのお陰で死なずに済んだ? たぶん……。
◆◇◆◇◆◇◆◇
はじまりは、六歳のころ。イザベルが言った。
「ねえ、ブル吉! 女子の大切な所、見たことある? 見たい?」
「……いいよー、見たくな……」
「ほーらー……見て! 見て! ……なによ(怒り)、下むいちゃって!」
「イテ、イテ、イテ……足けらないで、見るから。」(沈黙)
「見たね。」コクリと頭を下げた。
「ブル吉、アンタも見せな(ニタニタ)。早く!(激)」
俺はイザベルが怖くて、急いで見せた。
「ブル吉……オマタにタケノコ生えてるよ。タケノコ。はっはっは!」
それがはじまりだった。数日後、その日がきた。俺はおしっこが我慢できなくて林の陰で用を足していたら、後ろからイザベルが俺のあそこを掴んだ……。激しい痛みはその時分からなかったが、あれが大量に出ていた。
今でもその時の手形がアザとして残る負の思い出。それからイザベルが怖くてそばに寄れないが、寄りたいという複雑な気持ちだった。
俺は怒られることは平気だ。自分の過ちを指摘されて良い方向に導かれるのはアドバイスだと思っている。だから注意は心地よいと認識していた。だけど、心の中では怒られて気持ちよくなる自分がいた。
二十歳の時、イザベルが王都に向かう時――
「ああー、もうイザベルは俺のこといじってくれない。寂しい!」
そう思い、悲しくて涙を流してしまった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「おいブルーノ、逃走して頭呼ばわりはやめな。俺にはクララっていう可愛らしい名前があるんだから、それで呼ぶことを許す。呼び捨てで呼べ。お前の方が三歳年上だしな。分かったか!」
俺の心が「呼び捨てで呼べ」と叫んでいる。
「おい、クララ!」――こちらを睨みながら。
「あー(怒り)」怒ってる。心臓のあたりがキューッと締め付けられ、幸福な感情を抱いた。
「おめー、自分のためにわざとしたな~。今夜お仕置きだから覚悟しな。」
俺は変態だ。嬉しい。
そんな逃走の中で、港からポルト行きに乗り、そこから陸路でリスボンに向かった。そこには頭の伝手があるらしい。俺は自分の性癖を満たしてくれる頭についていくしかない人生を選んだ。
リスボンに着いて、伝手に直接会わずに手紙のやり取りをして、宿の近くの酒場で会うことになった。変装しているが、レッドエルフの女がやってきた。
「姐さん、ご無沙汰しております。おい、挨拶しないか(怒り)」
俺は久しぶりの強い酒を堪能していたが、丁寧に挨拶した。
「ふーん。これが例のドワーフか? あたしはロレナよ。東地区で娼館やってる。」
そう言って俺のあそこを凝視している。
「姐さん、検品は店の方で……」――えっ、売られるの? 俺は急に悲しくなって泣きはじめた。
「なんだ、こいつ変な妄想してんじゃないよ(怒)」……(沈黙)
「面白い子ね~。クララのおもちゃ取り上げたりしないから!」
俺はその言葉を聞いて、ニコニコしながら泣いてしまった。
「クララから面白い提案があってね。その提案にテストが必要よ。合格したら、これからクララのために稼いでもらう。貴方を今まで食べさせた恩返しをしないとね。分かるよね。」
◆◇◆◇◆◇◆◇
俺はロレナの後をついていった。周りには左右に二名ずつ、計四名の警護がいて、東地区へと向かう。
店は大きな店構えで、以前見た商業ギルドほどの大きさがあり、派手な色使いの内装だった。営業前で静かで、不気味な空気の中を進み、奥の左の部屋に入った。
「さあ、検証しましょう。例の三名を呼んできて。」
俺は覚悟を決め、合格を目指した。
「想像以上ね……人間なの? 獣か?……ちょっと待って……」
三十分後。
「……分かった。参った。合格よ……やめて……」
こうして俺は、クララと働くことになった。クララはロレナの警備を務めた。
10
あなたにおすすめの小説
戦国鍛冶屋のスローライフ!?
山田村
ファンタジー
延徳元年――織田信長が生まれる45年前。
神様の手違いで、俺は鹿島の佐田村、鍛冶屋の矢五郎の次男として転生した。
生まれた時から、鍛冶の神・天目一箇神の手を授かっていたらしい。
直道、6歳。
近くの道場で、剣友となる朝孝(後の塚原卜伝)と出会う。
その後、小田原へ。
北条家をはじめ、いろんな人と知り合い、
たくさんのものを作った。
仕事? したくない。
でも、趣味と食欲のためなら、
人生、悪くない。
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。
ご都合主義のハッピーエンドのSSです。
でも周りは全くハッピーじゃないです。
小説家になろう様でも投稿しています。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
恋愛
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
「お前みたいな卑しい闇属性の魔女など側室でもごめんだ」と言われましたが、私も殿下に嫁ぐ気はありません!
野生のイエネコ
恋愛
闇の精霊の加護を受けている私は、闇属性を差別する国で迫害されていた。いつか私を受け入れてくれる人を探そうと夢に見ていたデビュタントの舞踏会で、闇属性を差別する王太子に罵倒されて心が折れてしまう。
私が国を出奔すると、闇精霊の森という場所に住まう、不思議な男性と出会った。なぜかその男性が私の事情を聞くと、国に与えられた闇精霊の加護が消滅して、国は大混乱に。
そんな中、闇精霊の森での生活は穏やかに進んでいく。
主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから
渡里あずま
ファンタジー
安藤舞は、専業主婦である。ちなみに現在、三十二歳だ。
朝、夫と幼稚園児の子供を見送り、さて掃除と洗濯をしようとしたところで――気づけば、石造りの知らない部屋で座り込んでいた。そして映画で見たような古めかしいコスプレをした、外国人集団に囲まれていた。
「我々が召喚したかったのは、そちらの世界での『学者』や『医者』だ。それを『主婦』だと!? そんなごく潰しが、聖女になどなれるものか! 役立たずなどいらんっ」
「いや、理不尽!」
初対面の見た目だけ美青年に暴言を吐かれ、舞はそのまま無一文で追い出されてしまう。腹を立てながらも、舞は何としても元の世界に戻ることを決意する。
「主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから」
※※※
専業主婦の舞が、主婦力・大人力を駆使して元の世界に戻ろうとする話です(ざまぁあり)
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる