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第五章 歴史
第38話 ウェールズ国 1485年 歴史書
しおりを挟むバレリアに歴史書の解析をしてもらった。一通りページをめくり目を通し、全体をスキャンして材質、時代測定、隠し資料の有無などを調べた。
「文章の誤字・脱字が各所にあります。時代は百年前のものです。材質は紙を使っています。隠し資料はありません。次に内容……」
私はすかさず口を挟んだ。
「バレリア、ポイントを分かりやすく……お願い!」
「はい。古の民の記述です。古の民が害獣の被害から救ってほしいと神に祈ることから始まり、五十年ごとに襲来する厄災から町を守るため、祈りはやがて生贄の風習へと変貌しました。厄災は人の町を好んで現れ、蹂躙していく。どこに現れるか不明な厄災から町を守るべく、その対価は食物から動物、やがて人間へと過激化し、忌まわしい伝統として定着していったのです。ある日、生贄が生き返り神の言葉を伝えました――『生贄をしても厄災はなくならない。すべてを捨て、新しい土地に移り住みなさい』――と。害獣と神について書かれています。」
定番のおとぎ話系だな。あまり参考になるものはない。
「次は魔王についてです。スコットランド北部のエルフ自治国に、魔力が異常に高く狂暴な上位エルフが誕生しました。半年でスコットランドを統治し、人間を奴隷にして財産を強奪しました。ウエールズも征服され、イングランドは南で防衛戦を張り抵抗を続けましたが、一年で兵士の三割を失い降伏しました。魔王グリーンの魔力が大陸を制したのです。」
さすが魔王……って、エルフ族?魔族じゃないのか?
「一方で北アイルランドの神父は、魔王に対抗するすべを神に祈り続け、百日目に共に祈る神父の一人に言葉を伝えました。彼は三日間昏睡状態の末に目覚め、その言葉をすべて羊皮紙に書き記し、亡くなりました。神父たちはその内容があまりにも危険なもので口外できないと判断し、特定の者にのみ伝えました。そして神父とその仲間、ごく限られた者たちでそれを実行し、勇者を召喚したのです。別の記述には、召喚で若い神父二十名が消滅したと書かれています。」
怖いな……やり方は不明だが、二十名死んだのか?
「次は魔王討伐です。魔王軍はアイルランドを征服して北上しました。大軍が展開しづらい狭い場所で勇者が奇襲し、首を落としました。魔王軍は崩壊し、世界は統一されました。要約するとこんな感じです。」
えっ!そんな短いのか。
「はい。ページ数は一番多いのですが、戦闘関係は魔法に関係ないので、別の記述として――魔王はかなり性欲が強く、いろんな場所に子供を作っています。それと魔王は子供のように背が低い。勇者はイングランドで生涯を終えています。」
「ほー……興味深い!次は。」
「二代勇者ハルコンは女性ですね。彼女は害獣退治をして、褒美を得て帰国しています。北アイルランドの話になります。」
「北アイルランド、ここだね!詳しく。」
「アイルランドに現れた害獣は、大聖堂に向かって進行していました。神父は勇者を召喚し、彼女は光る聖剣で害獣を両断しました。勇者は『怪獣退治したから約束守ってよ』と言って光と共に帰還しました。別の記述では、当時の教会は男性が権力を誇示しており、女性の象徴は邪魔だったと書かれています。」
「害獣でなくて怪獣?……(沈黙)教会か、厄介だな。」
「三代勇者ゼノンはスコットランドで召喚され、害獣討伐後にウエールズで建国しました。」
「あぁ、この国のこれはたいした情報なさそうだな。」
「はい。後半は全部、この国はいかに素晴らしい国かということを長々と書いていました。」
「四代勇者のことは、書いてある?」
「はい。アイルランドの女王は魔力というより、人を誑かす能力を持っていたと記されています。イザベルが拉致した男の女性版のように描かれています。周囲の兵士、将軍、男たちを虜にするカリスマ……そんな感じです。王女は勇者の死後、財務大臣の妻に刺されて死亡しています。」
「いるんだな、女版革職人。……もし二人が出会ったらどうなっていたろう?」
「以上になります。国内で調べることは王都でこと足りますが、その他はどうしますか?ダミーを置いて私たちが国外で調べるか、ここを拠点としてアバターとアンドロイドを使用して調査するかです。」
「深く探るとなると、私たちが行った方が問題解決は早いよね!」
「そのとおりです。鍛冶に関しても、こちらで聖剣を作ることはないと思います。こちらにダミーとアバター状態を置けば問題ないでしょう。」
私とバレリアは国内から始め、スコットランドのエルフ、北アイルランドの教会、アイルランドの王女関連、そして最後にイングランドの初代勇者関連を調べる旅を計画した。
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