7 / 11
ナターシャとの好感度上昇
第七話
しおりを挟む
ナターシャが、ここのところ顔を出さない。
急に寒くなったので、体調でも崩したのだろうか。
ナターシャがどうなろうと俺はかまわないが、彼女は村の大切な食糧源(の生産者)だ。かと言って見舞いに行こうにも、森の中では普通の人間はおいそれと見に行くこともできない。
「・・・だから、ね? 神父様。頼むよ。ほかの男じゃ、信用出来ないからさ」
村の食堂の店主がそう言って、俺に見舞いに行くように頼んできた。俺が護衛するのでいっしょに来るかと聞いたが、聞いただけでぶるってしまった。狼男のくせに、どうしてこう臆病なのか。
村の人々の見舞い品を持って、ナターシャの家まで歩く。
森の中に小さな小屋と井戸があり、なるほど畑には幾つかの作物が生えている。何の野菜なのか、俺にはあまり分からないが。
ナターシャの姿はない。小屋をノックしてみる。
「ナターシャ。私です。神官です」
返事がない。どこかに遠出しているのだろうか。もしかしたら、入れ違いになったという可能性もある。厩もなく、手掛かりになるようなものはない。まあ、女性の一人暮らしの家に厩があるはずがないが。
すると、物音がして、ドアが開いた。
ああ、やはり、顔が赤く、のぼせている。
「体調が悪いのですか?」
「ううう、ずみ゛ま゛ぜん…。温泉を掘り当てたので、調子に乗って長湯したら風邪を引いてしまって」
何ともナターシャらしい理由である。
「入りますよ」
「えっ」
彼女の静止を聞き流しながら、小屋に入る。
隙間風だらけの、粗末な小屋だ。確か狩人が建てたと言っていたか。服や食器が散乱している。
「例の狩人は今どちらに?」
「ええと…、彼は死にました」
「死んだ?」
「その…色々あって」
彼女がもごもごと濁す。病人から色々問い質す訳にもいかない。今はとにかく休んでもらおう。
「寝ていて下さい。何か作りましょう」
「え。そんな…」
「大丈夫、任せてください。手先は器用なんです。あなたは(村にとって)大事な人なんですから」
「ふえぇ…!?」
卵粥に、ミルクスープに、薬草を幾つか。あとはお見舞いにもらったお菓子をナターシャに食べさせた。
「今夜は外のサイロで休みます。何かあったら呼んでください」
「神父様」
「何でしょう」
「あ…ありがとうございます」
彼女の顔はまだ熱を帯びているようだ。俺はナターシャの頬に手を触れ、熱いことを確認した。ほうっと熱に浮かされた表情をするナターシャ。
「ほんとうに…罪作りな人ですね」
「私が? 神のしもべである私が罪を犯す訳がないでしょう。変な人ですね」
きっと、熱に浮かされて意味不明な言葉を口走ったのだろう。彼女は困ったように笑い、眠りに落ちた。こうして見れば、彼女は町娘らしからぬ美貌の持ち主と気付くことができる。雪のように白い肌と髪、ぷっくりと形よく血色のある唇は、どんな男も虜にするに違いない。
無論俺は違うし、貧乏農家の家に長居する趣味はない。彼女の美しい顔から視線を上げ、ひとつため息をついた。
「ったく、なんで俺がこんなこと…」
とぼやきつつ、村の生命線のために、狭い納屋生活がその後2日も続いたのだった。
急に寒くなったので、体調でも崩したのだろうか。
ナターシャがどうなろうと俺はかまわないが、彼女は村の大切な食糧源(の生産者)だ。かと言って見舞いに行こうにも、森の中では普通の人間はおいそれと見に行くこともできない。
「・・・だから、ね? 神父様。頼むよ。ほかの男じゃ、信用出来ないからさ」
村の食堂の店主がそう言って、俺に見舞いに行くように頼んできた。俺が護衛するのでいっしょに来るかと聞いたが、聞いただけでぶるってしまった。狼男のくせに、どうしてこう臆病なのか。
村の人々の見舞い品を持って、ナターシャの家まで歩く。
森の中に小さな小屋と井戸があり、なるほど畑には幾つかの作物が生えている。何の野菜なのか、俺にはあまり分からないが。
ナターシャの姿はない。小屋をノックしてみる。
「ナターシャ。私です。神官です」
返事がない。どこかに遠出しているのだろうか。もしかしたら、入れ違いになったという可能性もある。厩もなく、手掛かりになるようなものはない。まあ、女性の一人暮らしの家に厩があるはずがないが。
すると、物音がして、ドアが開いた。
ああ、やはり、顔が赤く、のぼせている。
「体調が悪いのですか?」
「ううう、ずみ゛ま゛ぜん…。温泉を掘り当てたので、調子に乗って長湯したら風邪を引いてしまって」
何ともナターシャらしい理由である。
「入りますよ」
「えっ」
彼女の静止を聞き流しながら、小屋に入る。
隙間風だらけの、粗末な小屋だ。確か狩人が建てたと言っていたか。服や食器が散乱している。
「例の狩人は今どちらに?」
「ええと…、彼は死にました」
「死んだ?」
「その…色々あって」
彼女がもごもごと濁す。病人から色々問い質す訳にもいかない。今はとにかく休んでもらおう。
「寝ていて下さい。何か作りましょう」
「え。そんな…」
「大丈夫、任せてください。手先は器用なんです。あなたは(村にとって)大事な人なんですから」
「ふえぇ…!?」
卵粥に、ミルクスープに、薬草を幾つか。あとはお見舞いにもらったお菓子をナターシャに食べさせた。
「今夜は外のサイロで休みます。何かあったら呼んでください」
「神父様」
「何でしょう」
「あ…ありがとうございます」
彼女の顔はまだ熱を帯びているようだ。俺はナターシャの頬に手を触れ、熱いことを確認した。ほうっと熱に浮かされた表情をするナターシャ。
「ほんとうに…罪作りな人ですね」
「私が? 神のしもべである私が罪を犯す訳がないでしょう。変な人ですね」
きっと、熱に浮かされて意味不明な言葉を口走ったのだろう。彼女は困ったように笑い、眠りに落ちた。こうして見れば、彼女は町娘らしからぬ美貌の持ち主と気付くことができる。雪のように白い肌と髪、ぷっくりと形よく血色のある唇は、どんな男も虜にするに違いない。
無論俺は違うし、貧乏農家の家に長居する趣味はない。彼女の美しい顔から視線を上げ、ひとつため息をついた。
「ったく、なんで俺がこんなこと…」
とぼやきつつ、村の生命線のために、狭い納屋生活がその後2日も続いたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい
咲桜りおな
恋愛
オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。
見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!
殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。
※糖度甘め。イチャコラしております。
第一章は完結しております。只今第二章を更新中。
本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。
本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。
「小説家になろう」でも公開しています。
最近のよくある乙女ゲームの結末
叶 望
恋愛
なぜか行うことすべてが裏目に出てしまい呪われているのではないかと王妃に相談する。実はこの世界は乙女ゲームの世界だが、ヒロイン以外はその事を知らない。
※小説家になろうにも投稿しています
私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~
あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。
「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?
婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです
【長編版】悪役令嬢は乙女ゲームの強制力から逃れたい
椰子ふみの
恋愛
ヴィオラは『聖女は愛に囚われる』という乙女ゲームの世界に転生した。よりによって悪役令嬢だ。断罪を避けるため、色々、頑張ってきたけど、とうとうゲームの舞台、ハーモニー学園に入学することになった。
ヒロインや攻略対象者には近づかないぞ!
そう思うヴィオラだったが、ヒロインは見当たらない。攻略対象者との距離はどんどん近くなる。
ゲームの強制力?
何だか、変な方向に進んでいる気がするんだけど。
ヒロインだと言われましたが、人違いです!
みおな
恋愛
目が覚めたら、そこは乙女ゲームの世界でした。
って、ベタすぎなので勘弁してください。
しかも悪役令嬢にざまあされる運命のヒロインとかって、冗談じゃありません。
私はヒロインでも悪役令嬢でもありません。ですから、関わらないで下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる