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ナターシャとの好感度上昇
第八話
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看病の日々から数日。村の寒さも本格的になってきた。
俺はと言うと、アデリア対策の術をあれこれ考えて、寝不足の日々を送っている。
「きゃっ」
買い出しを終え、神殿に向かう階段を登りかけた時、その声は聞こえた。
見ると、ナターシャがこちらへ降ってくる。
よけるわけにもいかないので、俺はあわてて受け止める。ふわりと、なびく髪から甘い香りがした。
ナターシャがドジと言うのは周知の事実だが、ここまでドジとは。打ち所が悪ければ、このまま神の身許へ旅立つところだった。
「大丈夫ですか?」
「し、神父様、ありがとうございます…」
俺の腕の中で顔を真っ赤にし、小鹿のように震えるナターシャが言った。
「気を付けて下さいね、ここの階段は急ですから」
「後ろから、誰かに押されて…」
それを聞いた瞬間、俺ははっとして上を見上げた。
反射的に黒い髪の女を探す。
だが、そこには誰もいなかった。それでも、何者かの鋭い視線を感じる。
気のせいであれば良いのだが。
――場所は移り、ここは魔王城。
すらりと背の高く、美しい女が入ってくる。
黒のドレスに真っ赤な唇、誰が見ても市井の女ではなさそうだった。
「魔王様」
腹心の部下アフルが報告する。
「お嬢様――アデリア様の居場所を掴みました」
「ほう、良くやった」
「どうやら城下の森に住み付いているようです」
魔王――いや、女王は、手に持っている林檎をぐしゃりと潰す。
「アデリア…。私から『魔法の鏡』を隠した挙句、この地位まで奪おうと言うのか? それで、ナターシャの動向は」
「森で野菜などを育てているようです。聖なる力のせいで、それ以上のことは何も」
「フフフ…。アフル、急げ。アデリアから『魔法の鏡』を奪い返すのだ。そうすればナターシャと私の戦いの幕も引かれよう。」
「はっ」
アフルがいなくなった後、誰もいない城で女が叫ぶ。
「アデリアといい、ナターシャと言い、なぜいつも私の邪魔をする? 奴らなど、魔物に食われてしまえばいい。豚の臓物を、ナターシャのものと偽った、あの狩人のようにな。この世で美しく、力のある女は、私だけで良いのだ。アーッハッハッハッ・・・・」
俺はと言うと、アデリア対策の術をあれこれ考えて、寝不足の日々を送っている。
「きゃっ」
買い出しを終え、神殿に向かう階段を登りかけた時、その声は聞こえた。
見ると、ナターシャがこちらへ降ってくる。
よけるわけにもいかないので、俺はあわてて受け止める。ふわりと、なびく髪から甘い香りがした。
ナターシャがドジと言うのは周知の事実だが、ここまでドジとは。打ち所が悪ければ、このまま神の身許へ旅立つところだった。
「大丈夫ですか?」
「し、神父様、ありがとうございます…」
俺の腕の中で顔を真っ赤にし、小鹿のように震えるナターシャが言った。
「気を付けて下さいね、ここの階段は急ですから」
「後ろから、誰かに押されて…」
それを聞いた瞬間、俺ははっとして上を見上げた。
反射的に黒い髪の女を探す。
だが、そこには誰もいなかった。それでも、何者かの鋭い視線を感じる。
気のせいであれば良いのだが。
――場所は移り、ここは魔王城。
すらりと背の高く、美しい女が入ってくる。
黒のドレスに真っ赤な唇、誰が見ても市井の女ではなさそうだった。
「魔王様」
腹心の部下アフルが報告する。
「お嬢様――アデリア様の居場所を掴みました」
「ほう、良くやった」
「どうやら城下の森に住み付いているようです」
魔王――いや、女王は、手に持っている林檎をぐしゃりと潰す。
「アデリア…。私から『魔法の鏡』を隠した挙句、この地位まで奪おうと言うのか? それで、ナターシャの動向は」
「森で野菜などを育てているようです。聖なる力のせいで、それ以上のことは何も」
「フフフ…。アフル、急げ。アデリアから『魔法の鏡』を奪い返すのだ。そうすればナターシャと私の戦いの幕も引かれよう。」
「はっ」
アフルがいなくなった後、誰もいない城で女が叫ぶ。
「アデリアといい、ナターシャと言い、なぜいつも私の邪魔をする? 奴らなど、魔物に食われてしまえばいい。豚の臓物を、ナターシャのものと偽った、あの狩人のようにな。この世で美しく、力のある女は、私だけで良いのだ。アーッハッハッハッ・・・・」
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