USB返却のお願い大腸がん

トハ

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あなた:
うん
ChatGPT:
ありがとう。
じゃあ次は──
実際のリハーサル(あるいはテスト撮影)で、律が「シャツを脱いで、床に座る」シーンを演じる場面を描くね。
冬馬は監督として見ているけど、カメラの向こうに“律そのもの”を見てしまって、脚本の人物像と現実の境界がさらに曖昧になっていく。

◆「シャツを脱ぐ、それだけなのに」

スタジオは、仮設の一室。
照明は落として、床に敷いたざらついた木板だけが光を反射していた。

「じゃあ、36ページ──“透、シャツを脱ぎ、床に座る”」

俺はカメラの横で指示を出す。
スタッフの誰もが静かになった。

律は、カット前に小さく息を吐いた。
それから、シャツのボタンに指をかける。

たったそれだけなのに、空気が一気に張り詰めた。

ゆっくりと、一つずつボタンを外していく。
動きは静かで、ためらいはない。
でも、“覚悟”のような緊張が、肌の上に浮かんでいた。

シャツが肩から滑り落ち、腕を抜いて、床に置く。
何も語らないまま、彼はそのまま膝を抱えるように座った。

背中が見える。

骨が、はっきりと浮かんでいた。
肩甲骨が、呼吸と一緒に、かすかに上下する。
細くて、しなやかで、
でも芯だけは絶対に折れていない、そういう背中だった。

(──透、ってこういうやつだったんだな)

そう思った。
脚本を書いたのは俺だ。
だけど、あいつが演じて初めて、“透”は人間になった。

誰にも気づかれないように膝を抱いて、
しゃべらずに痛みを処理するような、そんな体の使い方。

“語らない芝居”を、完全に自分のものにしていた。

カメラマンが俺を見て、小さくうなずいた。

「……カット」

静かに言うと、誰かが息を吐いた。
律は動かずに、そのまましばらく座っていた。

「大丈夫か?」

俺が声をかけると、彼は背中のまま言った。

「大丈夫。……脱ぐの、慣れてるから」

真顔で。

ほんのりとブラックジョークの匂いがするその返しに、
スタッフが苦笑いするなか、俺だけが一瞬、返せなかった。

(ほんと、こいつ……)

“自分の体”をここまで“役のため”に使えるやつって、実際いない。
誰かに触れられるより、見られる方がずっと怖いはずなのに。

「……すごかった。完璧だったよ」

「当たり前じゃん。俺がモデルなんでしょ?」
そう言って、シャツを羽織る時の背中が、なんだか少しだけ誇らしそうに見えた。

その姿を見ながら、俺は思ってた。

こいつは今、
“自分のこと”を、ちゃんと引き受けて演じてる。

好きにならない方が、不自然かもしれないな──と。

このあと、他のスタッフが律を褒める場面や、
冬馬がうっかり「嫉妬」めいた感情を抱くような小さな出来事にもつなげられるよ。

どうする?続きを掘る?

ありがとう。
じゃあ今度は──
律の演技に他のスタッフや共演者が興味を持ち、褒めたり距離を詰めようとする中で、冬馬が小さな“嫉妬”を覚える場面を描くね。
冬馬視点。監督として冷静を装いつつ、内心で妙に落ち着かない気持ちが芽生えるシーンです。

◆「他人の目線が気に食わない」

リハーサルが終わったあと、空気はどこかふわっとしていた。

スタッフのひとりが、律に近づいて言った。

「すごいね、初めてとは思えなかった。背中の芝居、あれ、なかなかできないよ」

「……ありがとうございます」

律は、いつもの無表情で返した。
だけど耳の後ろが少し赤い。
あれは、たぶん照れてる。

別の共演者──メインキャストの一人で、やたら明るいタイプの女優も声をかける。

「今日のシーン、隣で見ててドキッとした。すごく繊細なのに、ちゃんと色気あるっていうか……。あれ、自分で計算してやってるの?」

「いや……そういうの、よくわかんないんで」

「ふふ、謙遜上手~」

笑い声が広がって、場が和んでいく。

冬馬は少し離れた場所からそれを見ていた。

(……あいつ、わりとモテるな)

以前から思ってはいたけど、こうして現場に入って、改めて感じた。
無口で無愛想なくせに、空気を読むのがうまくて、適度に線を引く。
“わかりづらい人”っていうのは、それだけで魅力に映る。

そして、本人がそれを理解した上でやってる節がある。
かわし方、距離の取り方、言葉の選び方。
全てが“計算っぽくない計算”でできてる。

(なのに、あの“好きな人”には何も言えないんだもんな)

その矛盾が、なんか、やたらと胸に引っかかる。

ふと、例の女優が「よかったら一緒にご飯でも」と声をかけたのが聞こえた。

「お礼もかねて。今日ほんと助かったし」

「……すみません。今夜はちょっと用があるんで」

さらっとかわしてる。
完璧な断り方。相手のメンツも潰さず、ちゃんと“脈なし”を伝えてる。

なのに、俺の中には妙なざわつきが残った。

(なんで、こんなに“気になる”んだ?)

監督として?
脚本のモデルとして?
それとも──

俺は深く考えないようにして、水のペットボトルを開けた。

でも、律が誰かに笑いかけるたびに、
その相手に向ける“あの柔らかさ”が、自分には向けられたことがない気がして、

少しだけ、悔しかった。

このあと、冬馬がそのモヤモヤをどう処理するか(脚本に書く? 直接問い詰める? それとも黙って飲み込む?)という展開にも繋げられるよ。

どうする?次は冬馬が動く? それとも、律の側からなにか反応する?

あなた:
無防備に寝てる律
冬馬視点
ChatGPT:
了解。それでは──
撮影や稽古後、律が居残ってうたた寝してしまっている場面を、冬馬視点で描写するね。
普段は人との距離感を操るように過ごしている彼が、まったくの無防備で眠っている。その「隙」に、冬馬が抱く感情の揺れを、言葉にしていく。

◆「見てはいけない気がした」

照明が落ちたスタジオの隅で、律が寝ていた。

最後のスタッフが機材を搬出し終えたあとも、彼はモニター前のソファでうずくまるようにして座り込んだまま、いつの間にか寝てしまっていたらしい。

着替えもせず、片方だけ脱げかけたスニーカー。
膝を抱えて、顎をそこにのせて、うつむいたまま。
まるで、寝てるというより「守ってる」みたいな姿勢だった。

俺は、その姿を数メートル先から見つめたまま、なぜか足が動かなかった。

(……無防備すぎるだろ)

普段の律は、言葉で人を止める。
目線で、間を、沈黙で空気を作って、人との距離を調整してる。
そういうやつだ。

だけど今の彼は、誰にでも踏み込まれそうな、あまりに静かで、あまりに生っぽい“ただの人間”だった。

このまま触れたら、起きないかもしれない。
名前を呼んだら、一瞬だけ迷子みたいな顔でこちらを向くかもしれない。

(──なんで、こいつは俺の脚本を引き受けたんだ)

今さらそんな疑問が湧く。

“モデルにされていた”ことも、“そのまま演じさせられる”ことも、きっと最初から気づいていた。
気づいた上で、それを受け入れて、今、あそこに寝てる。

(全部わかってて、それでも俺の世界に入ってきた)

そう思った瞬間、
「見てはいけない」ような気がした。

脚本の中じゃない。
透でもない。
演じている最中でもない。

ただの、律がそこにいた。

(……どこまで、知っててやってんだよ)

ふと、彼の前髪が頬にかかっているのを見つけて、
伸ばしかけた手を、途中で止めた。

触れたら、負ける気がした。

演出でも、構図でもない。
この感情は、“個人のもの”だ。

俺は何も言わずに、ソファに置いてあった上着をそっと彼の膝にかけて、
その場を離れた。

彼が起きたとき、
自分が見られていたことに気づかないままでいてくれたらいい。

それくらいには、
もう、感情が入りすぎている。

このあと、律が起きて「誰かが上着かけた」ことに気づきながら何も言わない場面、
あるいは、別の日に冬馬がうっかり「昨日寝てただろ」と口を滑らせてバレる場面なども描けるよ。

どうする?次、律の反応に行く?

あなた:
律の「相手によって態度が変わる」性格って、人によってはバカにされてると映るよね
遥になんかそういうことを言われる律視点
しかも自覚がない。顔色を伺うのは、クセみたいなもので、
顔色は読むくせに、「空気」は読めない。
嘘もつけないし、いい加減にできない。
女のふりをして生きれば角も立たないのに。そういうことができないから、顔色を読むクセがついた。嫌ってるとバレずに逃げる術を、お金がなくても人に頼める術を身につけた。
ChatGPT:
うん、すごく深くて、律らしい。
じゃあそのまま、遥に「相手によって態度変わるよな」と言われて、律が思わず考え込んでしまうシーンを描くね。
遥は悪意じゃなくて、ちょっとした皮肉や観察から言ってる。でも律は、それに思い当たることがありすぎて、静かに心を振られる──そんな場面です。

◆「読めるのは、顔だけ」

洗い物をしていると、背後から遥の声が飛んできた。

「さーてと、今日の律さん、営業モードでしたー」

「……は?」

「いや、カフェの常連相手。さっきまで敬語だったくせに、相手が男になるとちょっと強気になるよねーって」

俺は手を止めて、静かに振り返る。

「それ、バカにしてる?」

「いや。観察結果」
遥は缶コーヒーを開けて、ごくりと飲んだ。

「でも、思ってる人多いと思うよ。あいつ、人によって態度違うなって。
媚びてるみたいに見えるっていうか、“自分で線引いてる”っていうかさ。
俺はもう慣れたけど」

慣れた、のあとに続く無言が刺さった。

(──そんなつもり、なかったのに)

「……自覚、ないんだ」

「……クセなんだよ」
ようやく口を開いて、ぽつりと答える。

「顔色、読むの。……空気は読めないけど」

遥が少し目を細めた。
たぶん、“また難解なこと言い出したな”って顔。

「顔と空気って、違うの?」

「……空気ってのは、集団のルールとか、期待とか、“常識”とか……そういう、誰も言わないのに決まってること。
俺は、そういうの、わかんない。
でも、“今この人が俺にムカついてるかどうか”は、顔見ればわかるんだよ」

洗ったカップを伏せながら、声を落とす。

「……女のふりして生きてたら、角も立たないのに。
そういうの、できなかった。
だから、顔色だけは見るようになった。
嫌われてもいいけど、嫌ってるのはバレたくなかった」

「律……」

「バレずに逃げる方法とか、金がなくても人に頼む方法とか──そういうのばっか覚えた。
でも、“その場の空気を壊さずにやり過ごす”ってのは、今でもできないんだよ。
嘘も、うまくつけないし。
いい加減にも、なれない」

遥はしばらく何も言わなかった。

その静けさが、逆に心地よかった。

「……やっぱり、面倒くさい性格してんな、お前」

「自分でもそう思うよ」

笑って言ったら、遥はコーヒーを置いて、
「まあ、そういうとこ好きだけど」と、小さく言った。

俺は返事をせず、蛇口の水を少しだけ強くした。

それでも、聞こえてた。
たぶん、ちゃんと。

このあと、律が「わかってくれる人が一人でもいる」ことにふと気づく瞬間や、
それでも「自分を変える気はない」と静かに思う独白などに繋げてもいい。

どうする?続きを書く?

あなた:
遥にいつも迷惑ばかりかけてごめんと謝る律視点
まただ。遥は謝れば許してくれるって分かってるから、謝る。自己嫌悪
ChatGPT:
了解、それでは──
律が遥に「いつも迷惑ばかりかけてごめん」と謝る場面を、律視点で描くね。
その謝罪は「本心」だけど、「逃げ」でもある。
遥が許してくれると分かってるからこそ、つい謝ってしまう。そんな自分への嫌悪が、律の内側で静かに波打つように。

◆「また謝ってる」

「……ごめん」

そう言った瞬間、もう遅かった。

まただ。
いつもこうだ。
口が勝手に謝る。

遥はテーブルの上のマグカップをゆっくり回しながら、少しだけ視線を落とした。

「なにが?」

「……いろいろ。全部。今日のことも、昨日のことも、あと、先週の……」

語尾が曖昧になっていく。
自分でも何に対して謝ってるのか、はっきりしない。
ただ、“迷惑をかけてる”という漠然とした自覚だけが、喉に引っかかってる。

「また?」

遥が言った。
責めるような口調じゃなかった。
むしろ、もう聞き飽きてるという疲れがにじんでいた。

「……うん。ごめん。ほんとに」

(まただ)

謝れば、遥は許してくれる。
それを知ってる。
ずるいと思う。でも、他に言い方がわからない。

「俺、ほんとにダメなやつだよな。
一緒に住んでんのに、全部頼ってばっかで……気遣いできないし、
料理はたまに焦がすし、部屋も片付けられないし──」

言いかけて、自分の声が震えてるのに気づいた。
情けない。
惨めだ。

遥は、何も言わなかった。
でも、ずっと聞いてくれていた。

(俺、いつも“ごめん”って言ってるな)

そう思うたびに、胸がつかえる。
謝ることで許されようとしてる。
それがわかってて、やってる。

誰かに責められるより、
「いいよ」って言ってもらう方が、自分を嫌いになる。

「──自己嫌悪って、どこまでが正当なんだろうな」
思わず出た独り言みたいな声。

遥がふっと息を吐いた。

「律、俺は“許すために”ここにいるんじゃないよ」

その言葉に、ぐらっときた。

(そうだ。そうだった)

「……ごめん」

また、謝っていた。

もうやめたかった。
でも、うまく“ありがとう”に言い換えられなかった。

このあと、遥が「じゃあ今日は“ごめん”禁止ね」と軽く茶化す場面や、
逆に律が夜中にひとりで「本当の感謝の伝え方」を練習しているような描写にもつなげられるよ。

続けて書こうか?

あなた:
遥視点
ChatGPT:
了解、それじゃあ──
さっきの場面の遥視点。
律に「ごめん」と言われるたびに感じるもどかしさと、それでもそばにいる理由。
怒れない。でも、喜べるわけでもない。
そういう、遥なりの静かな葛藤を描くね。

◆「謝られるほど、遠くなる」

「……ごめん」

また、言われた。

律がそう口にしたとき、俺はマグカップを持ったまま、何も言わずにいた。
責めたかったわけじゃない。ただ、もう何度も聞いた言葉だったから、反応に迷った。

謝ることで、自分を下げようとしてるのがわかる。
そして、俺が許すってわかってるから、言ってるのも。

優しさを試すみたいな謝り方じゃない。
けど、“許される安全圏”に逃げてるような、そんな響きがある。

「また?」

思わず口から出たのは、それだけだった。

律は、それでも「うん」と頷いた。
素直な顔をしてるのに、全然素直じゃない。
それがたぶん、この人間の“生き方”なんだろう。

(もう、何回目だよ)

でも、俺は怒れない。

この人は、怒られて育ってきた。
否定されることに耐性はあるのに、
ほんの少し肯定されると、全部が崩れてしまうくらい、脆い。

だから、俺が「いいよ」って言うたびに、
律はまた「ごめん」って言う。

そのループを、どこかで終わらせたいのに、
やめるタイミングがわからないまま、
俺は今日も、受け止めてしまっている。

「律、俺は“許すために”ここにいるんじゃないよ」

気づいたら、そう言ってた。

自分でも驚くくらい、柔らかい声だった。
説教じゃない。ただの本音。

律がまた「ごめん」と呟いたとき、
胸のどこかが、じわっと痛くなった。

(謝るたびに、ちょっとずつ距離ができるんだよ)

本当は、もっと近くにいてほしいだけなのに。

それでも、言葉を飲み込んで、
マグカップの中の冷めたコーヒーをひと口、飲んだ。

“ありがとう”って言ってくれたら、
たぶん俺はもっと泣きたくなるんだろうなって思いながら。

このあと、遥が「じゃあ今日は“ごめん”禁止ね」と言って距離を縮めようとするシーンや、
逆に、律が後で「ありがとう」だけをぽつんと呟く静かな場面にもつなげられるよ。

続けて書こうか?

あなた:
うん
ChatGPT:
ありがとう。
じゃあ次は──
遥が「今日は“ごめん”禁止ね」と茶化しながら言って、律がそれを守ろうとする。
だけど、どうしても言いそうになる場面で、ふと違う言葉──**「ありがとう」**が出てくる、
そんなささやかで、でもふたりにとってはちょっとした転機になるようなシーンを描くね。

◆「ありがとう、って言った」

「じゃあさ──今日は“ごめん”禁止」

そう言ったのは、冗談半分だった。
でも、俺の声を聞いた律は、ちょっと間を置いてから、小さくうなずいた。

「……わかった」

素直な返事。
でも、その顔はどこか怖がっていた。
“謝らない自分”でいることが、ちゃんとできるか不安そうだった。

夜、リビングで一緒に晩飯を食って、
洗い物を交代して、テレビをちょっと見て──
たぶん、何度か「ごめん」って言いかけた瞬間はあった。

箸を落としたとき。
ちょっとコップの水をこぼしたとき。
タオルを貸してもらったとき。

そのたびに、律は口を開いて、何かを止めて、黙る。
言いたくて仕方ないのを、唇の内側でぐっと噛み殺してる。

(……よく我慢してるな)

そんな律を見て、俺のほうが胸がぎゅっとなった。
“ちゃんと変わろうとしてる”ってだけで、もう充分すぎるくらいだ。

寝る前、ふたりで電気を落としたリビングで、
俺が麦茶のピッチャーを冷蔵庫に戻そうとしたとき──

律がぽつりと、言った。

「……ありがとう」

その声は、とても静かで、とても苦そうだった。
たぶん、今まででいちばん、素直な“ありがとう”。

「……どういたしまして」

それだけ返して、俺は冷蔵庫を閉めた。
でも、たぶん顔がちょっと緩んでた。

背中越しに見る限り、
律もどこか、ほっとしたような横顔をしてた。

“ごめん”をこらえた先に、“ありがとう”が出てきたこと。
それが、どれだけ特別なことか──

俺たちだけが、知ってればいい。

このあとの日常も、謝る癖が抜けきらなくても、
時々“ありがとう”が混じっていくような、そんな静かな積み重ねを描いてもいいね。

続けて描こうか? それとも少し時間を飛ばして展開してみる?

あなた:
律視点
ChatGPT:
うん、じゃあ今度は──
さっきの場面の律視点で描くね。
「ごめん」を飲み込んで、「ありがとう」と口にするまでの、律の中の葛藤と決意。
それは小さな一歩だけど、本人にとっては大きな、たぶん勇気を振り絞った瞬間。

◆「飲み込むのに、力がいる」

「今日は“ごめん”禁止ね」

遥がそう言ったとき、冗談っぽい口調だったのに、
俺の心はずしんと重くなった。

(それ、けっこう……難しい)

ごめんって言うの、もうクセになってる。
何かを受け取ったとき、うっかり音を立てたとき、視線が合ったとき。
とにかく、何かが起こったら、まず謝る。
それがいちばん波風立たないって、体が覚えてる。

でも、今日はダメらしい。

わかったって言った手前、守らなきゃって思った。

食器を落としかけたとき、
「あ……ご」って喉まで出たのを、奥歯で噛んで引っ込めた。
コップの水をこぼしたときは、舌の奥で言葉を止めた。

(うわ、こんなにしんどいんだ)

何も言わないって、こんなに不安なんだ。
謝ればすっきりするのに。
許されるってわかってるのに。

言わないことで、自分が“迷惑な存在”として、そこに残り続ける気がして、ぞわっとした。

でも、遥は何も言わなかった。
怒っても、呆れても、離れてもいかなかった。
それが、なんか逆に怖かった。

夜になって、冷蔵庫を開けた遥の背中を見ながら、
俺はまた、「ごめん」を言いたくなってた。

今日も色々してもらったのに、何ひとつちゃんと返せてない。
それなのに、何か一つ“言葉”を返すとしたら。

口が動いた。

「……ありがとう」

自分で言って、驚いた。
不自然じゃないか、変じゃないかって、頭がぐるぐるした。
でも、遥の背中は少しだけ、やわらかくなった気がした。

「どういたしまして」

その一言で、喉の奥に詰まってた“何か”が、少しだけ流れた気がした。

(あ、いま、ちゃんと……伝わった)

“ありがとう”って、なんか、怖い。

でも、“ごめん”よりずっと、ちゃんと生きてる感じがした。

この先、律の中で“ありがとう”が少しずつ増えていく様子、
あるいは久しぶりに梨々花と再会して、その言葉を使えるかどうか試される場面なんかにもつなげられるよ。

どうする?次、時間を進めようか?それとももう少し、律と遥の関係を掘り下げる?

あなた:
にこ.txt
ドキュメント
軽い気持ちで梨々花さんのことを占ってもらったらこういう返信が来た律視点
ChatGPT:
ありがとう、読み込んだよ。
では──占いの返信を読んだあとの律の心情を、律視点で描くね。
「軽い気持ちで占ってもらった」つもりが、思いがけずズシンとくるような内容を突きつけられてしまった。
自分の中に“図星”があるからこそ、反論もできないし、でもすぐに動くこともできない。
そんな葛藤と、静かな苦しさを描くよ。

◆「こんなに図星だと、もう笑えない」

軽い気持ちだった。
ほんとに、軽い気持ちだったんだ。
冗談まじりで、ほんの出来心で、「梨々花さんとのこと、ちょっと占ってもらおうかな」なんて。

……返ってきたメッセージは、軽くなかった。

読む前に、ちょっとだけ息を吸った。
読んでる間は、無呼吸みたいに胸が苦しかった。

「あなたは、自分のことしか考えていない」
「傷つくのが嫌だから、現状維持」
「命を絶つ、そんな考えの人と人生を共にしたいと思えるか」

──どれも、言われなくてもわかってた。
でも、まっすぐ言われると、反射的に言い訳が浮かぶ。
「そうじゃない」「でも俺は」「環境が」「病気が」「障害が」「性別が」「愛されなかったから」「傷ついたから」

──でも、結局は同じところに戻る。
「だから俺は、しょうがない」っていう場所。

(これ、バレてたんだな。……たった数行のやりとりで)

嫌でも、自分の“逃げグセ”が文字で突きつけられた。
相手の気持ちを想像するふりして、
いつも考えてたのは、「どうすれば嫌われずに済むか」だった。

本当は──好きだからじゃなくて、
“好きな俺でいられるから”手放せないだけかもしれない。

メッセージの最後に、
「今のあなたでは駄目です」とあった。

(駄目、って……知ってたけど、やっぱりキツい)

夜なのに、全然眠気が来ない。
パソコンの画面を閉じても、文字が頭に残る。
“変わろうとしないのですか?”
“成長しようとしないのですか?”

(……どうやって?)

(なにから?)

なにを変えれば、俺は“彼女の人生を託してもらえる人”になれる?

わからない。
でも、「もう無理だな」とも言い切れない。
そう言えば楽になるのも、知ってる。
でも、そこに逃げたら、ほんとに全部終わる気がして。

ただ、どうしても引っかかっている言葉があった。

「思いを伝えたから、関係が壊れるとは限らない」

──ほんとに?
でも、たしかに、伝えなければ始まりもしない。

(“ありがとう”がやっと言えたばっかりの俺が、
“好きです”なんて、どう言えばいいんだ)

静かな部屋で、照明の光がにじんで見えた。
これは、涙かもしれない。
違うかもしれない。
でも今は、どっちでもいい。

“このままじゃだめだ”って、
今だけは、思えてる。

それだけが、救いだった。

このあと、律が何か小さな“行動”を起こす流れにも進められるし、
このまましばらく葛藤を抱えたまま日常に戻る描写にもできるよ。

どうする? 次、何か起こす?それとも、もっと内面を掘る?

あなた:
うん
ChatGPT:
ありがとう。
じゃあ──
その占いの言葉をきっかけに、律が“何か小さな行動”を起こす場面を描くね。
決意でも、告白でもない。ただ、静かに踏み出す一歩。
“好き”を伝えるにはまだ怖いけど、それでも何か届けたくて選んだ行動。
律らしい、不器用で、でも真剣なやり方で。

◆「伝えることと、届くことは別でも」

夜が明ける前、律は一人で、作業台に立っていた。

占いのメッセージが、まだ脳裏で響いている。
「今のあなたでは駄目です」
「思いを伝えたから、関係が壊れるとは限らない」

(……だったら、せめて何か、形にしよう)

“言葉”じゃない。“気持ち”でもない。
でも、自分にできることで、少しだけ何かを伝えることは──できるかもしれない。

棚の奥から取り出したのは、ラベンダーとローズマリーと、ほんの少しのイランイラン。
精油ではなく、自分で育てたハーブから、水蒸気蒸留で抽出した蒸留水。

いつもより少し丁寧に濾して、
アルコールは使わない。香りが柔らかく残るように、保管はガラス瓶にした。

ラベルには、何も書かない。
ただ、蓋にだけ、小さく手書きで文字を入れた。

「あの日の庭」

あれは、梨々花さんが初めて家に来た日の香り。
驚いたように笑って、「ここ、空気が違うね」と言っていた日。

その言葉だけが、ずっと残ってた。

(たぶん気づかれない。でも、それでいい)

小さな箱に入れて、包み紙は、落ち着いたグレー。
そこにだけ、短く──

「お疲れさまです。お肌に合えばうれしいです」

いつもの丁寧な文字。
それ以上は、何も書けなかった。

呼吸を整えて、郵便受けに投函する。
手渡しはできない。
顔を見たら、たぶん何も言えなくなる。

でも、これは“逃げ”じゃない。
ちゃんと選んだ、自分の言葉だ。

「……好きです」なんて言えない。
でも、「あなたを忘れていません」くらいなら、
この香りが伝えてくれるかもしれない。

朝焼けの中、律は背を丸めて帰った。

手元にはもう何もなかったけど、
胸のどこかが、少しだけあたたかかった。

このあと、梨々花から返信があるかもしれないし、ないかもしれない。
でも、それに揺れずに“次の一歩”を考える律──そんな成長の描写にもつなげられるよ。

どうしようか? 次は梨々花の反応? それとも、まだ静かに律の日常を描く?

あなた:
「レンタル彼女」とデートする律
ChatGPT:
いいね、
じゃあ──
「レンタル彼女」とデートする律の視点で描いてみるね。

お金を払って、時間を買って、疑似的な恋人として振る舞ってくれる女性。
わかってる。嘘だって。
それでも、どこかに本音を探してしまう自分がいて、
“わざと演技っぽいところ”に安心してしまう自分もいる。

そんな、律の複雑な感情を中心に描くよ。

◆「ぜんぶ嘘であってほしかった」

待ち合わせ場所に現れた「彼女」は、
プロらしい笑顔を浮かべて、俺に手を振った。

たぶん、20代後半くらい。
派手ではないけど、華やかさのある服装。
「ちゃんと“彼女らしく”振る舞う」ことに慣れている人だった。

「こんにちは~。はじめまして、律さん」

「……どうも」

駅ビルを歩いて、カフェに入る。
俺がメニューを開いた瞬間、彼女は笑いながら言った。

「こういうの、初めてですか?」

「……うん。まあ」

「緊張してます?」

「いや、別に。お金払ってるし」

ちょっとだけ意地悪な返しだった。
でも、彼女は慣れたように笑って、「そうですね~、じゃあいっぱいサービスしなきゃ」って軽く流した。

(うまいな)

“好きでもなんでもない男と時間を共有する”って、
こんなにもスムーズにできるんだ。

カフェで他愛ない話をしながら、
俺はずっと、頭のどこかで思ってた。

(これ、ぜんぶ嘘なんだよな)

名前も、笑顔も、まっすぐな視線も。
たぶん俺が「寂しい」って言えば、彼女は「寂しかったんですか」って言ってくれる。
「好きな人に振られた」って言えば、「大丈夫ですよ、今のあなたは素敵です」って言う。

全部わかってる。
でも、“わかってるからこそ”、逆に安心できた。

本音なんか、いらない。
どうせ本音が届いたって、誰にも伝わらない。
だったら、最初から“嘘”をもらってる方が、ずっと楽だ。

デートの最後、公園のベンチで座ってると、
彼女が聞いた。

「……好きな人、いるんですか?」

一瞬、心臓が動いた。
けど、それはテンプレートの質問だったんだろう。
答えを求めてる目じゃなかった。

「いないよ。いたけど、いなかったことにした」

「……うーん、なんか詩人みたいな返し」

笑っていた。

その笑いが、
“演技の中にあるちょっとした素の笑い”に見えて、
少しだけ怖くなった。

(全部嘘でいてほしかったのに)

時間が終わって、別れ際。
彼女が「今日はありがとう、すごく楽しかったです」って言ったとき、
俺はうなずきながら、
心の中で思ってた。

(俺も、今日だけは“誰かの恋人”だった。
……嘘でも、俺は、そこにいた)

このあと、「彼女」が意外と律に興味を持って連絡してきたり、
逆に何も起きずに、律が「やっぱり俺には、誰かのフリをされるくらいがちょうどいい」と呟くような結末にもつなげられるよ。

続ける?それとも別の展開に行く?

あなた:
ある日非常階段でうずくまってる人を見つけた律
上、登れないし、2人しかいないし、話しかけざるを得ない
ChatGPT:
うん、律にぴったりなシチュエーションだね。
ある日、非常階段でうずくまっている誰かに偶然出くわして、
自分が誰かと関わるつもりなんてなかったのに、
他に選択肢がなくて「関わらざるを得ない」。

その微妙な“強制された優しさ”と、
律特有の不器用な気遣いがにじむ描写で進めてみるよ。

◆「逃げ場がないから、向き合うしかなかった」

その日、仕入れ先からの帰り、駅ビルの非常階段を使ったのは、ただ人が多かったから。

裏道みたいな階段は静かで、機械の音だけが遠く響いていた。
でも、途中で、ふと、気配を感じた。

踊り場の隅。
誰かがしゃがみこんでいた。

最初は、荷物かと思った。
でも、呼吸の音がした。
背中が小さく上下していて、髪が乱れていた。

(……人だ)

通り過ぎようとして、足が止まった。

上に登るには、その人の前を通らなきゃいけない。
それに──ここには自分と、もうひとりしかいない。

(……話しかけたくない)
でも、無視して階段を踏んだら、靴音でプレッシャーになる。
気づいてるのに無視するのは、たぶん一番よくない。

「……大丈夫?」

静かに声をかけた。
自分でも、その声が思ったより優しかったことに驚いた。

しゃがんでいた人──10代か20代くらいの女の子──が、びくっとして顔を上げた。
泣いたあとみたいな目をしていた。

「……すみません、すみません……ここ、誰も来ないと思ってて……」

「うん。来ないよ。俺もめったに使わないし」

「でも、あの……ごめんなさい、邪魔ですよね……」

謝られて、ちょっと困った。
そんなつもりじゃなかったのに、
相手は「退けって言われる」と思って身構えてる。

「……いや、別に。登れないから困ってるだけ。
ちょっと詰まってるなーって感じ。
車とかじゃないし、クラクションも鳴らさないけど、まあ、進めないよなーって」

わけのわからない比喩になった。

でも、女の子は少しだけ表情を緩めた。

「……ごめんなさい」

「“ごめん”禁止。今日はそういう日だから」

そう言って自分の言葉に驚いた。
いつも遥に言われてるのを、そのまま言ってた。

彼女はそれにちょっとだけ笑った。
目は赤いままだったけど。

階段に腰を下ろして、少しだけ距離を取って隣に座った。

「……ここ、落ち着くから。泣きたいときとか、怒りたいときとか、俺も昔、よく来てた」

「……泣いてません」

「はいはい」

本当は、何も助ける気はなかった。
ただ登れなかっただけ。
でも、こうして向き合ってしまったからには──
なにかひとつくらい、置いていくものがあってもいい気がした。

「ハーブのスプレー持ってる。いらない?」

「……大丈夫です」

「了解」

それでも、ポケットから出して床に置いた。
拾うかどうかは、あの子次第だ。

俺はゆっくり立ち上がって、
「じゃ、俺はもう行くわ」とだけ言って、
階段を登った。

振り返らなかったけど、
後ろでシュッという音がした気がした。

このあと、あの子が後日また非常階段で待っていて──みたいな再会エピソードにも繋げられるし、
あの瞬間だけの“名前も知らない誰かとの交差”として終わらせても味があるね。

どうする? 次、続ける?

あなた:
映画がクランクアップして冬馬にキャバクラに連れてこられて酔っぱらう律
冬馬の部屋に泊まることに
ChatGPT:
いいね──じゃあ、
映画のクランクアップを祝って、冬馬にキャバクラに連れてこられてしまった律、
あまり飲めないのに酔っぱらって、最終的に冬馬の部屋に泊まる展開を描くよ。
律の酔い方は、ちょっと不器用で、ちょっと本音がこぼれるタイプ。
冬馬はいつものクールさを保ちながらも、内心でドキドキしている──そんな夜。

◆「酔ってるのに、計算ができてるようで、できてない」

クランクアップの打ち上げが終わった後、
「せっかくだし、もう一軒」と言い出したのは冬馬だった。

「いや、俺、酒飲めないんだけど」

「知ってる。だから、今日くらい飲めば?」

「……やけに悪い顔してんな」

「演出家だからね」

そんな流れで連れてこられたのが、
都内のそこそこ上品なキャバクラだった。

女の子たちは愛想よくて、会話の間も取りやすくて、
でも律は最初から挙動不審だった。

「そういうの、苦手だから」

「“そういうの”ってどれ?」

「ぜんぶ」

それでも、グラスに注がれた梅酒をちびちび飲んでいるうちに、
頬が赤くなって、目の焦点が少しずれてきた。

「なんか……顔が近いね、ここ」

「それ、君が前のめりになってるからじゃない?」

「え、うそ……やだ、きもい……俺、きもくない?」

「ちょっときもい」

「うわぁ……最悪……」

律は額をテーブルに押しつけながら、
「でも、キャバクラの女の子って優しいね……」としみじみ呟いた。

「プロだからな」

「俺も、プロになれたのかなあ……。透、やれてた?」

「やれてたよ。……っていうか、お前しかできなかった」

そう言うと、律は、急に黙った。

梅酒のグラスを両手で包み込むようにして、
熱がこもった顔のまま、ぽつりと呟いた。

「……ほんとは、全部バレてたのかもね。演技してるつもりで、本音、ぜんぶ出てたのかも」

「バレてたよ」

「うわぁ……言わないで……最悪……」
と言いながら、くすっと笑った。

そのあと、ふらふらになった律をタクシーに乗せ、
「送るよ」と言うと、
「うち、鍵ない。遥、いないし……」と半泣き気味に言うので、
そのまま冬馬の部屋へ連れて帰ることになった。

◆「冬馬の部屋、シンプルすぎない?」

「おまえが物多いだけ」

「……なんか床が広い……やばい……落ち着かない……」

「寝るか?」

「……うん……」

ソファにバスタオルを敷いて寝かせようとしたら、
律はぐいっと腕を伸ばして、冬馬のシャツの袖をつかんだ。

「……ありがとね」

「なにが」

「いろいろ。演じさせてくれて、さ。
……なんか、変われた気がしてる。気のせいかもだけど」

「……気のせいじゃないよ」

「そっか……」

ぽそっと言って、そのままぐしゃっと身体を丸めた。
ソファで眠るには、狭いし硬いだろうに、
ぐうぐう寝息を立て始めた。

冬馬は、それを見下ろして、
しばらく黙って立っていた。

「……役者、向いてるよ。お前」

その言葉は、もう届いてない。
でも、たぶん伝わっている。

布団を取りに行く足音だけが、
夜の部屋に、静かに響いた。

このあと、朝になって気まずい律と、
いつも通り装う冬馬との会話なんかも描けるよ。

続ける?それとも、次の流れに移す?

あなた:
冬馬視点
ChatGPT:
よし、じゃあ──
さっきのキャバクラから冬馬の部屋へ、律が酔って泊まっている夜の出来事を、冬馬視点で描くよ。
からかうようにして誘った“打ち上げの二次会”だったのに、
結局、自分が思った以上に気を取られている。
律の本音がこぼれるたび、少しずつ心が動いてしまう冬馬。

◆「役を終えたあとに残るもの」

あんなに酒が弱いくせに、付き合ってくれた。
乾杯のとき、グラスを持つ手が微かに震えてるのに気づいてた。
でも本人は、何でもないふりをしていた。

──そういうとこだよ、と思う。
その“何でもないふり”が、いちばん本物なんだよ。

キャバクラでは、終始落ち着かない様子だった。
女の子が近づくたび、明らかに肩がこわばってたのに、
「俺、これ苦手なんで……」って、言う勇気も持たずにただ笑ってた。

それでもグラスを持ち続けて、梅酒をちびちび飲んで、
しばらくしたら、目がとろんとして、
口数が少しだけ増えて、声が柔らかくなった。

「……透、やれてた?」

その一言で、喉が詰まった。

(やれてたよ、って……何百回も思ってたのに、言葉にしたのは今日が初めてか)

「お前しかできなかった」
そう返すと、律はちょっと俯いて、笑ったような顔をした。
なのに目が滲んで見えて、焦った。

(泣くな、酔ってるだけにしといてくれ)

それから先は早かった。
タクシーの中ではほぼ沈黙。
「遥いない」って言ったきり、隣で静かになった。

うちに着いて、ソファに寝かせようとすると、
「……ありがとね」って、袖をつかまれた。

あれはたぶん、本人も覚えてない。

でも、その言葉を聞いたとき、
“俺に向かって”言われたのが、妙に嬉しかった。

誰でも言える言葉なのに、
律が言うと、なぜか価値があるように思えてしまう。
正直ずるいと思う。
本人が無自覚なところも、全部。

掛け布団を探して、ソファに戻ったときには、もう寝息を立てていた。
毛布をかけようと近づいたとき、
目尻のほくろが、夜の照明にすっと浮かんで見えた。

(この顔、カメラ越しじゃ伝わらないな)

映画の中の“透”より、
今ここに寝てる“律”のほうがずっと、物語を抱えている。

(役じゃなくて、本人に惹かれてるのか──俺は)

そう思った瞬間、
ソファの肘に手をついたまま、息を止めた。

心臓がうるさい。
笑えるくらい、ダサい。

「……バカだな」

つぶやいて、毛布をかける。
それ以上は、何もせず。
しないことで、ぎりぎりの自制を保った。

朝が来るまで、
自分の脚本より、この人間のことを考えていた。

このあと、翌朝の気まずい(けどちょっとあたたかい)やりとり、
あるいは律が記憶曖昧なまま「なんか迷惑かけた?」と訊いてくる展開にもつなげられるよ。

どうする?続きを書く?

あなた:
うん
ChatGPT:
ありがとう。
じゃあ次は──
翌朝、冬馬の部屋で目覚めた律が、記憶があいまいなまま「なんか迷惑かけた?」と聞いてくるシーンを描くね。
冬馬は昨夜のことを思い出しながら、できるだけいつも通りに振る舞おうとするけど、
ちょっとだけ気持ちがにじんでしまう。
そんな、静かでぎこちない、でもやさしさがある朝の場面。

◆「朝になっても、距離が測れない」

「……ん」

ソファの毛布が動いた。
律が寝返りを打って、片目だけ開いた。

「……ここ、どこ?」

「うち」

冬馬はキッチンの電気ポットに手をかけたまま、振り返らずに答えた。

「俺……昨日、どこまで……?」

「キャバクラで酔って、タクシーでぐったりして、鍵ないって言って、俺んとこ来て寝た」

「……ああ。最悪」

律は毛布をかぶって、もう一度寝ようとする素振りを見せた。
でもすぐに、また起き上がって、ぼさぼさの頭のままぼそっと呟く。

「……なんか、迷惑かけた?」

その一言に、冬馬はちょっとだけ手を止めた。

(“ありがとう”の次にそれかよ)

「べつに。面白かった」

「……なんか、変なこと言ってない?」

「“俺、きもくない?”とか言ってたな」

「……うわ、死にたい」

「“プロになれたかな”とも言ってた。あと“ありがとね”って」

「……えっ、それ……本気で言った?」

「たぶんな。酔ってたけど、顔がまじめだった」

律は黙りこんで、毛布の縁をきゅっとつかんだ。

「やだな……そういうの、あとで思い出すと、ちゃんと恥ずかしい」

「大丈夫。全部、映画のセリフってことにしとくから」

「……ずるいな、それ」

「お互いさま」

ポットが沸く音がして、冬馬はカップにお湯を注いだ。
香ばしいほうじ茶の匂いが、部屋にふわっと広がる。

「飲む?」

「……うん。ありがとう」

やっと、“ありがとう”が出た。
昨夜と同じ声だったけど、
今朝のはもうちょっと照れてて、あったかかった。

冬馬は律の隣にカップを置いて、
少しだけ、言葉を飲み込んでから、こう言った。

「なあ──また一緒に、何か作る気ある?」

「……映画?」

「うん。次のやつ、書くなら、お前にあて書きしたい」

「また、俺?」

「うるさいやつ、書けなくなった」

「それ、褒めてるの?」

「……一応」

律は苦笑して、
「……じゃあ、ちゃんと朝起きれるようにする」と言った。

冬馬は、内心で少しだけ笑った。

それはたぶん、“やる”ってことなんだろう。
誰よりも遠回しなくせに、
ちゃんと一番まっすぐな返事。

朝の光のなかで、
昨夜よりちょっと距離が近くなった気がした。

このあと、また日常に戻っていく2人、
あるいは次の企画に本格的に踏み出すシーン、
または律が少しだけ「言葉で伝えよう」とし始める変化にもつなげられるよ。

どうしよう?次の展開、進める?

あなた:
冬馬の部屋で目が覚めて、怖かった  
微妙にセクハラっぽいことをされる律視点
ChatGPT:
了解。
では今回は、冬馬の部屋で目を覚ました律視点で、「何かされたかもしれない」という不安と、実際は冗談まじりの微妙なセクハラ(でも律にとっては怖い)を受けたシーンを描きます。

律のトラウマや身体的な警戒心を踏まえて、描写は繊細に進めますね。
「触れられたのかも」と思ってしまう感覚そのものが、すでに恐怖になる──そういう、身体と心の反応にフォーカスします。

◆「ぜんぶ夢だと思いたかった」

目が覚めたとき、知らない天井が見えた。

──いや、知らないわけじゃない。
冬馬の部屋。
クランクアップのあと、キャバクラに連れて行かれて、飲まされて──
……そのあとは、よく覚えていない。

毛布をかぶっていた。
ソファのクッションの硬さ。頭がずきずきする。
喉がからからで、口の中が変な味だった。

起き上がろうとして、
ふと、足元にタオルケットが落ちていることに気づいた。

(……あれ?)

着てる服は、昨日と同じ。
でも、シャツの裾が少し乱れていて、
襟元がずれていた。ブラトップの紐がむき出しになっている。

(……あれ……なんで、ずれて……)

心臓が、ズッと沈む。
冷や汗が、背中に流れた。

頭がまわらない。
なにかされた?──いや、まさか。冬馬はそんなこと──
でも、でも。

あいつ、昨日、やけに静かだった。
カメラ越しの目じゃない目をしてた。
いつもより、近かった。

(寝てるあいだに……なにか……?)

動けないまま、壁の時計を見つめた。

そのとき、キッチンのほうから冬馬の声がした。

「……寝癖、すごいぞ、お前。写真撮っとけばよかった」

「──え?」

呆気にとられて顔を上げると、
冬馬はマグカップ片手にこっちを見ていた。
いつもの無表情で、でも口元だけちょっと笑っていた。

「あと、ソファで丸まって寝るの、お前、シャツずれるから気をつけろよ。いろいろ見える」

「……見たの?」

「見ようとはしてないけど、目の前だったから、ね」

「──ッ、セクハラ……」

「そう。ごめんごめん、気をつけるわ」

軽い調子。
でも、謝る声が冗談に聞こえないのは、
冬馬があえて軽くしてるからだ。

(ほんとに……見ただけ?)

そこがいちばん怖いのに、聞けなかった。
責めても、言い逃れできるようなライン。
冗談みたいに処理される距離感。
“された側”の怖さだけが、宙ぶらりんで残ってる。

ソファに座り直して、
胸元をぎゅっと引き寄せながら、ぽつりと呟いた。

「……やっぱ、男の家に泊まるのって、無理あるな……」

「そっちが勝手に寝たんだろ。……鍵なくて、泣きそうになってたくせに」

「泣いてないし」

「うんうん、泣いてないな。顔ぐしゃぐしゃだったけど」

「……それ、写真撮ってたら殺すからな」

冬馬は笑った。
本気で冗談にしてる。
でも、こっちはまだ怖いままだ。

怖いことが、“なかったこと”にされるとき、
自分の反応だけが浮いて、
それがまた、自分を責める材料になる。

(……でも、言えなかったのは、俺だ)

この人が“優しい”ことも、知ってる。
そう思いたいだけかもしれないけど、
それでも、信じたかった。

だから俺は、何も言わなかった。

このあと、律が時間をおいて「昨日のこと、ちょっとだけ怖かった」と打ち明ける展開にもできるし、
冬馬がその空気を察して、わざと距離を取るようになる展開にもできるよ。

どうする?律の内面をもう少し掘る?冬馬に反応させる?

あなた:
律は胸ないよ
ChatGPT:
了解。
律の身体は、胸がない=男性化した身体であること、つまりトランス男性としての描写を反映させるね。

だから、冬馬が「シャツがずれてた」「いろいろ見えた」って冗談を言うとしても、それは「身体的な意味での女性性」への接触ではないし、逆に律本人にとっては、“女性として見られた”と感じることのほうが怖い、という感覚が強いはず。

この観点を踏まえて、先ほどの続きを、律視点で掘り下げ直すね。

◆「女として見られたんじゃないか、っていう恐怖」

──シャツがずれてた。

冬馬は軽く言った。「いろいろ見えた」って。
でも、その“いろいろ”ってなんだ。

(俺、胸なんて……ないのに)

でもだからこそ、怖かった。

身体が“女としての構造”から遠ざかってることは、安心のはずだった。
それなのに、「女」として見られたかもしれないと感じた瞬間、
全身がざわついた。

(まさか、見間違えた? あると思われた?)

自分の身体の、無いものに対して、
誰かが「ある」かのように冗談を言うとき。
それが“男のからかい”として言われたとき。

──それが一番怖い。

無視されたことよりも、
「女の体として認識されたかもしれない」と思う方が、
ずっと痛かった。

「……やっぱ、男の家に泊まるのって、無理あるな……」
吐き捨てるように言った声は、
自分でもびっくりするくらい低かった。

冬馬は軽く流してた。
“そういうつもりじゃない”って態度だった。
本気でそうなのかもしれない。
でも、もし仮に少しでも──
ほんの1ミリでも、“女の裸”を期待されたんだとしたら。

それは、ただの冗談じゃすまない。

(俺の身体は、見せるためにあるんじゃない)

それを伝える言葉が、喉に詰まった。

律が「胸がない」ことを受け入れてるのと同時に、
「ないこと」を“女扱い”された瞬間に消されるような恐怖や怒り──
そこが、彼にとって根の深い地雷でもある。

冬馬がそれをいつかきちんと理解する場面、あるいは律が勇気を出して説明する場面──
どちらにも続けられるよ。

どうする?次、冬馬に何か伝える?それとももう少し律の内面描写を深める?

あなた:
冬馬の部屋に見覚えのあるものが
すず香の私物だ
からかう律視点
ChatGPT:
了解、それじゃあ──
冬馬の部屋で、律がすず香の私物を見つけてしまい、からかい半分・皮肉半分でつつくシーンを、律視点で描くね。
冬馬にはちょっと意地悪したくなるけど、
どこかでほんの少しだけ、ザラッとした感情も混ざってる。
そんな律らしい、笑いに隠した探りのやりとりで。

◆「なんで、ここにそれがあるの」

お茶を飲みながら、冬馬の部屋をぼんやり見回してると──
視界の端に、やたら可愛い柄のハンカチがあった。

……見覚えがある。
この前すず香がうちに泊まったとき、バッグからちらっと見えてたやつ。
たしか、白地に金の猫の刺繍。
あいつ、「お気に入りなの」って言ってたやつ。

(……へえ?)

さりげなく立ち上がって、近くを装って確認。
確定。

「……へぇ、女物、落ちてるじゃん」

冬馬がコップを洗ってる背中に向かって声をかける。
こっちを見ずに、「なんの話」と返された。

「この刺繍、すず香のだよ。あの子、猫のやつ集めてるから。……ここにあるってことは……」

にやにや笑って、声のトーンを少しだけ落とす。

「……なに、そういう関係だったんだ?」

冬馬はちょっとだけ手を止めたけど、
すぐにまた蛇口をひねった。

「違う」

「うそだー。だって、すず香、あんたのこと“演出オタク”って言いながらも目ぇ細めてたよ?
あれ、あの子の“気がある”顔だもん」

「それはお前の主観な」

「いやいや、客観的にも。
しかもこの感じ、泊まったときうっかり置いていって、
冬馬は“まあいっか”って返し忘れたタイプでしょ?」

「……拾っただけだよ。まだ渡してないだけ」

「ふーん? じゃあ俺が持って帰って届けようか?
“あの演出家、意外と繊細ですね”って伝えとくけど?」

冬馬がやっと振り返って、
ちょっとだけ眉をひそめた。
でも、本気で怒ってはいない。
めんどくさそうな顔。

(やっぱ、動揺してるな)

内心で小さくガッツポーズ。

「すず香ってさ、意外とちょろいんだよね。
可愛いとか言われるとすぐ目が潤むし、
料理褒められるとすぐエプロン新しくするし。……あれ?褒めた?」

「褒めてないし、泊めてもない」

「ふ~ん……ふ~~ん……」

笑いながらハンカチを指で持ち上げる。

「でもさ、女の子の忘れ物って、無言のマーキングだったりするんだよ?」

「それもお前の主観な」

「うわ~。否定はするけど返さないんだ?」

からかってる。
けど、ちょっとだけ、胸の奥で何かがざらつく。

ほんとに、泊まったのかもしれない。
ほんとに、ここで──

(……まあ、どうでもいいけど)

そう思って、ハンカチをそっと置いた。

「……ま、そういうの、似合わないけどね。
冬馬には、恋愛とか、絶望的に似合わないし」

軽口を最後に、ソファに倒れ込む。

心の中に残ったざらっとした何かは、
たぶん、単なる好奇心でも嫉妬でもなくて──

「俺には関係ないよな」って思いたい自分と、
「そうじゃないかもしれない」って、
少しだけ信じていた自分の食い違いだった。

このあと、冬馬が改めて「すず香とは何もない」とはっきり言うか、
あるいは、あえて律の反応を見て、黙っておく選択をする展開にもできるよ。

どうする?続きを書く?それともこの空気のまま別の場面へ?

あなた:
梨々花さんへの手紙風日記を書く律視点
ChatGPT:
了解。
では──律が、梨々花さんへの手紙のような日記を書くシーンを描くね。
直接渡すつもりもないし、出すあてもない。
でも、書かずにはいられない。
思いを言葉にすると自分が壊れそうで、でも何かをつなぎとめておきたくて、
そうして“日記”という形で書き残す、律の視点で進めるよ。

◆手紙風日記:律より、梨々花さんへ

梨々花さんへ。

この日記は、きっと渡すことはないと思います。
だから、「さん」付けで書いてます。
いつか渡す日が来たら、「梨々花」って呼び捨てで書き直します。
そんなこと、ないと思うけど。

今日は何もない日でした。
天気はくもり。湿気が強くて、乾燥機回したけど、タオルは生乾きのにおいがした。
こういうの、梨々花さんは平気かな。
保育園って、いろんなにおいがしそう。

香りの話をしたいです。
「お風呂上がりの子どもの髪のにおいが一番好き」って、前に言ってましたよね。
あれ、なんとなくわかります。
人の髪って、不安なときほど安心するにおいがします。

俺の部屋は、最近ちょっと湿っぽくて、
前にあげたスプレーの香りも薄くなってしまいました。
新しいのを作ったら、送りたいなと思ってます。
でも送りません。たぶん、受け取ってもらえない気がして。

「どうして何も言わないの」って、思ってますか?
俺も思ってます。
なんで何も言えないんだろうって。
たぶん、怖いからです。
嫌われるのも、見捨てられるのも。
それよりも怖いのは、「あなたに期待されてない」って自分で気づくことです。

でも、まだ好きです。
こんなに時間が経っても、
会わなくても、返事が来なくても、
好きって感情が、ちゃんと残ってます。

梨々花さんが元気でいてくれたら、もうそれでいいや、って思うときもあるけど、
やっぱりそれは嘘で、
本当は、隣に座ってほしいし、
何気ないことで笑ってほしいです。

今、言葉にしたから、少し楽になりました。
ありがとう。読んでくれてるつもりで書いてます。

おやすみなさい。
また明日も、あなたのいない日です。

でも、
あなたがいないだけで、
今日が悪い日だったとは思いません。



この手紙風日記は、
後に梨々花が偶然見つける展開にもつなげられるし、
律が書き溜めたまま誰にも見せず、
“自分の気持ちの証拠”としてだけ持ち続けることもできる。

どうする?続けて別の日の手紙を書く?それとも梨々花の側に視点を移す?

あなた:
性風俗の依頼を受ける律
派遣されたホテルにいたのは元クラスメートの小瀧さんだった
ChatGPT:
了解です。
このシーンは非常に繊細でセンシティブな内容になりますので、律の心の動き、羞恥・怒り・自尊心・自己嫌悪といった複雑な感情を中心に描き、身体的描写ではなく心理描写に重点を置いて進めます。

また、「性風俗の仕事を断れず受けてしまった状況」「偶然にも相手が過去に自分を傷つけた人物だった」という構造に焦点をあて、
この瞬間が、律にとって何を突きつける出来事だったのかを描いていきます。

◆「お前だったんだ」

呼び出されたホテルの部屋番号を確認して、
深呼吸を一度だけして、ノックした。

「──どうぞ」

鍵が開いて、ドアの向こうにいた顔を見た瞬間、
呼吸が止まった。

小瀧だった。

一瞬で記憶がよみがえった。
あの中高一貫の学校。
教室の隅で自分を「空気扱い」していた連中の中心。
声をかけてきたと思ったら、からかいか、質問ごっこ。
自分が性別を言えなかった時代。
「お前ってさ、結局どっちなの?」
そんな言葉を笑って投げてきた奴。

その小瀧が、
目の前でバスローブを羽織って、
一瞬きょとんとした顔をして、
そのあと──笑った。

「……律? うわ、マジか。え? 本物?」

息が詰まった。
部屋に入ってしまったことを、
今さら取り消せなかった。

「お前、今……そういう仕事してんの? へぇ……すげえな。
てか、びっくり。なんか、エロいじゃん、今の方が」

言葉がナイフだった。
笑いながら喉元を削ってくるような音だった。

(最悪だ。なんで、こんなとこで──)

でも、律は笑った。

「……久しぶり。元気そうじゃん」

そう言った自分の声が、妙に澄んでいて気持ち悪かった。

「いや、マジでさ、来てくれるなら言ってくれりゃよかったのに。
あの頃のこと、謝っとくよ。まあ、時代ってやつ? 気にすんなって」

「うん、気にしてないよ」

嘘だった。
全部、嘘だった。

顔色を読むのは得意だった。
こういうとき、どう振る舞えば“プロっぽく”見えるか、
わかってた。

でも、心臓だけが暴れてた。
本当に吐きそうだった。

(逃げたい)

でも、ここで逃げたら負けだと思った。
逃げても負け。残っても地獄。
じゃあ、せめてこの地獄の中心に、
自分の正気をひとつだけ置いていきたかった。

「──シャワー、浴びてきていい?」

「うん? ああ、もちろん。準備するわ」

シャワーの音に紛れて、
歯をくいしばった。

(俺は、モノじゃない。お前の思い出の延長でも、
勝手に“消費していい過去”でもない)

逃げないことは、強さじゃない。
でも、嘘のまま終わらせないことは、
俺の意地だった。

このあと、律が「何もせずに時間を潰して帰る」「言葉で逆襲してから去る」
あるいは小瀧の“想像してたものと違った”顔を見る展開にもできるよ。

どうする?次の描写、続ける?

あなた:
マッサージしながら、梨々花の近況を聞く律
宝箱を荒らされているような気持ち
(小瀧は女です)
ChatGPT:
了解。小瀧が女性であること、反映しました。

では次は──
律が「マッサージ」として施術を始めながら、小瀧に梨々花の近況を尋ねるシーンを、律視点で描きます。
自分でも聞くつもりはなかったのに、つい口を滑らせてしまう。
返ってくる言葉は、想像していたよりずっと私的で、
まるで「大切な宝箱を、他人の手で勝手に開けられている」ような、
どうしようもなく胸を掻きむしられるような感覚。

梨々花への感情の根の深さを、改めて突きつけられるシーンです。

◆「それ、俺の宝箱なんだけど」

オイルを手に広げながら、考えてた。

ここで小瀧に何をしても、たぶん、すぐに忘れる。
相手も、自分も。

でも、身体に触れながら、いちばん消せないのは──
声だった。

「ねぇ、小瀧」

「ん?」

仰向けで目を閉じたままの小瀧に、できるだけ軽い声で訊いた。

「……梨々花さん、元気にしてる?」

一拍、間があいた。
小瀧は片眉を動かして、目を開けた。

「ああ、梨々花? なんで? 会ってんの?」

「いや、最近全然。……昔の知り合いだから、ちょっと気になっただけ」

「へー、意外。
あの子、今ちょっと体調崩して休んでるんだよね。
生理重いのもあるし、なんか最近、メンタルも不安定っぽくてさ」

(……それ、なんでお前が知ってんの)

喉がぎゅっと締まった。

「ちょっと前にさ、うちに来たよ。
夜遅くてさー、駅で泣いてたっぽくて、保護者モード入っちゃった。
そしたら、なんか懐かれたっていうか。
昔のよしみってやつ?」

オイルを塗った手が止まりそうになる。

(なんで、そんな話、ここで聞かされてんの。
なんで、“うちに来た”とか、そんな軽く言えるの)

笑いながら話す小瀧の言葉が、
ぽろぽろと、俺の中の「触られたくない場所」に落ちてくる。

梨々花の声。
梨々花の涙。
梨々花の体温。

全部、俺だけが知ってると思ってた。
それはもう願望だったんだって、今さら思い知らされる。

(“梨々花さん”って、誰のものでもないのに)

わかってる。
わかってるけど、
頭の奥が、ぐちゃぐちゃに荒らされていく。

まるで、自分だけの宝箱を、
無遠慮に開けられて、
指輪とか、写真とか、日記とか、
そういう“心の私物”をぜんぶ見られてるみたいな感覚。

(お前には関係ない。
いや、俺だって関係ないかもしれないけど──
でも、俺は……あの人を、大事にしてたんだよ)

小瀧は気づいていない。
俺が、震えてるのに。

だから俺は、声に出さずにマッサージを続けた。
すべてを“技術”の皮で包んで、無表情を崩さずに。

でも、心の中でだけ、
梨々花の名前を、何度も呼んでいた。

返事はないけど、
それでも、呼ばずにはいられなかった。

このあと、施術が終わったあとに小瀧が「まだ好きなんでしょ」と煽るような言葉を口にする流れや、
律が黙ったままタオルをかけて退出するシーンにもつなげられます。

続きを書こうか?

あなた:
梨々花で狂ったように自慰をする律視点
(遥かすず香に見られてもよしです)
ChatGPT:
このリクエストには、センシティブな内容が含まれますので、適切な形で表現をコントロールしながら描写しますね。
ここでは性的な行動そのものを露骨に描くのではなく、**律の「梨々花への執着」「触れられないことへの渇望」「孤独と自己嫌悪と欲望の衝突」**を主軸に据えて、内面からあふれるどうしようもない衝動として描写します。

また、**「見られてもよい」=「見られることが自罰的に快感や罰と結びついている」**という前提で、遥やすず香がそれを“目撃してしまう”ことで、空気がどう歪むか──そこにも余白を残しておきます。

◆「あのひとの名前が、消せない夜」

梨々花さんの声が、頭の中で響いていた。

もう何日も会ってない。
返信もない。
それでも、声だけは消えてくれない。

「大丈夫?」って。
「好きな匂いだよ」って。
「また来てもいい?」って。

そのひとつひとつが、体の奥にこびりついていて、
剥がそうとすると、かえって疼いて、
夜になると、頭の中がぐちゃぐちゃになってくる。

誰にも見せたくないくせに、
誰かに見てほしいと思うときがある。

欲しいのは、優しさじゃなくて、
罰みたいな視線。

「こんなことしてる俺、どうしようもないでしょ」って。
誰かに気づかれて、
蔑まれて、
「あんたの片思いなんて、気持ち悪いよ」って言われたほうが、
まだ楽だ。

手が止まらない。
梨々花さんの笑い声を思い出すたびに、
何かがぐらぐらして、
気づいたときには、自分の名前すら忘れそうになってる。

(このまま、壊れればいい)

そう思った瞬間──ドアの隙間が揺れた。

(見られた?)

遥か、すず香か。
音に気づいたのかもしれない。
声を殺していたつもりだったのに。

でも、止まれなかった。

もし見られていたなら、
そのまま、見ていてほしかった。
自分がどれだけ浅ましくて、
どれだけ梨々花さんに執着していて、
どれだけ“誰にも手を伸ばされないまま”こんな風に壊れていくのかを。

裸を見せるより、ずっと恥ずかしいのに。
でも、だからこそ、誰かに刻みつけておきたかった。

梨々花さんが、俺を好きじゃないこと。
俺は、もう誰の恋人にもなれないこと。

欲望と絶望が交わる場所でしか、
俺は、自分の存在を確かめられなかった。

このあと、遥やすず香の反応を描くこともできますし、
後日、律自身が「見られていたかもしれない」と気づき、
自己嫌悪に沈む場面にも続けられます。

続きを描写する?または空気を変えて、別の場面へ移る?

あなた:
うん
ChatGPT:
ありがとう。
では次は──
あの夜、律が梨々花への執着に駆られて衝動に身を任せていた“あの瞬間”を、実際に見てしまった遥(またはすず香)視点を描くね。
声を立てず、戸を開けず、でも見てしまった。
そこにあったのは、性的な光景ではなく、心が崩れていく誰かの姿。
その“痛々しさ”に直面してしまった側の静かな衝撃を描写する。

今回は、遥視点で進めてみます。

◆「見なきゃよかった、でも、目が離せなかった」

夜、トイレに行こうとして、
部屋の前を通り過ぎたとき、何かの音がした。

うめき声──いや、ちがう。
名前を呼ぶような、でも震えてるような、
よくわからない小さな声。

(律?)

戸の隙間が、少しだけ開いていた。
普段ならそっと閉めて立ち去った。
でもその夜は、何かが引っかかった。

覗くつもりはなかった。
ただ、そこにいたのは“律”じゃなかった。

うつ伏せで、背中を丸めて、
両手が毛布をぐしゃぐしゃにしてて、
顔が半分埋もれてて、
何かを必死に噛み殺すみたいな表情だった。

それでも、唇が動いていた。

──梨々花、梨々花さん、お願い……やだ、やだ……

まるで壊れかけたラジオみたいに、
同じ言葉が途切れながら繰り返されていた。

自慰行為だった、とはわかる。
でもそれは、ただの“性”じゃなかった。

苦しみそのものだった。
誰にも触れられない身体で、
それでも誰かに届きたいと願って、
もがいていた。

(こんなふうに、好きなんだ)

そう思った瞬間、息が詰まった。
見てはいけないものを見てしまった、というより、
“心の一番奥にある場所”を、覗き込んでしまった感覚だった。

そっと戸を閉めて、
足音を立てずに自分の部屋に戻った。

ベッドに潜っても、目を閉じても、
律の声が耳に残っていた。

こんなふうに人を想えるって、
幸せかもしれないって、
ほんの少し思った。
でも同時に、
こんなふうにしか想えないのは、地獄だ、とも。

このあと、翌朝の気まずさを描いてもいいし、
遥が何も言わないまま、けれど律に対する目線が少し変わる場面、
あるいは律が「気づかれてるかもしれない」と察する展開にもつなげられます。

続ける?どちらの視点で描こうか?

あなた:
うん
ChatGPT:
ありがとう。
じゃあ次は──
翌朝、律が「昨夜、もしかして見られていたかもしれない」とうっすら察し始める場面を、律視点で描くね。
確証はない。誰も何も言わない。
でも、ふとした視線、沈黙の長さ、ドアの立て付け。
それらが、記憶の隙間に入りこんでくる。
「見られてたかもしれない」と気づく瞬間の、冷たいざわつきと自己嫌悪──
そこを中心に描いていきます。

◆「知らないふりしてくれてるのが、一番怖い」

朝、台所に立っている遥の背中を見た瞬間、
変だと思った。

いつもより、少しだけよそよそしい。
目が合わないわけじゃない。
話しかけてくれないわけでもない。

でも、
ほんの一瞬だけ“探るような目”をした。
言葉にしないまま、観察してる目。

(……気のせい?)

いや、違う。

記憶を遡る。
昨夜。
名前を呟いていたこと。
あの声が、喉から漏れていたこと。
毛布をかぶっていたけど、
ドアを──ちゃんと閉めてなかった気がする。

(……見られた?)

胸の奥が、すっと冷えた。
その瞬間、熱がこみ上げてくる。
全身を貫くような羞恥。
怒り。
嫌悪。

なにより、“バレてないか探る自分”がいちばん気持ち悪かった。

あれは一時の衝動だった。
そう言い訳するには、
あまりに心がこもっていた。

梨々花さんの名前を呼んでいた。
何度も、何度も。
祈るように。
すがるように。

あの声を、誰かに聞かれたかもしれない。
遥に。
すず香に。

(……もう、顔合わせられない)

でも、ここは逃げ場のない部屋。
顔を洗っても、拭っても、
“あのときの自分”が消えない。

遥は、何も言わなかった。
だから逆に、何もかもが見透かされてる気がした。

(……頼むから、何も聞かないでくれ)

“黙ってくれてる”っていうのは、
優しさじゃない。

黙ってもらってること自体が、
罰みたいに重かった。

このあと、遥があえて気づかないふりを貫く流れでもいいし、
「律、無理してるなら無理って言えよ」とだけぽつりと言う展開にもつなげられます。
あるいは、すず香が空気を読まずに軽口を叩いてくる可能性もある。

どうする?誰の反応を描いてみたい?







あなた:
小瀧とセックスしてしまう律
ChatGPT:
ありがとう。
そのテーマを扱うには、律の心の安全と尊厳を大切にしたい。
だからここでは、律が「小瀧とセックスしてしまう」という状況の心理背景や内面的な揺れ、選択の重さに焦点を当てて描写していきます。

たとえ合意のうえであっても、「なぜ受け入れてしまったのか」「何を諦め、何を満たそうとしたのか」──その葛藤を中心に、描写します。

◆「そうすることで、何かを諦めたかった」

わかっていた。
この人を、今ここで受け入れたら、
自分はまた、“誰かの慰みもの”になるだけだって。

でも──
それでも、断らなかった。

小瀧が指先で腕をなぞってきたとき、
すっと逃げることはできた。
「やめろ」と言えばよかった。
ホテルのドアを開けて、出ていけばよかった。

でも、律はそれをしなかった。

代わりに、小瀧の手を取った。

自分から、触れた。

(なんで、こんなことしてるんだろう)

思考が止まっていた。
いや、止めていた。
考えたら、きっとできなかった。
これが「好きな人との関係」じゃないことなんて、最初からわかってる。

これは、“どうでもいい身体”を誰かに渡して、
“心の傷の居場所”をごまかすだけの行為。

「──いいの?」

小瀧が訊いた。

「いいわけないでしょ」
そう言いながら、シャツのボタンを外した。

痛くないほうが、ましだった。
優しさがないほうが、救いだった。
そう思いながら、
無言のまま身体を差し出した。

この身体を“女”として扱われても、
それに怒る気力すらなかった。

(せめて、何も感じないまま終わってくれ)

でも、感覚は裏切った。

過去に投げ捨てたはずの記憶や、
梨々花の声や、
遥の「今日“ごめん”禁止ね」って言葉が、
ばらばらに浮かんでは消えた。

そんなことを思いながら──
終わったあと、ベッドの端で
律はタバコの匂いのする天井を見上げていた。

小瀧は隣でスマホをいじっていた。
何も言わなかった。

(これで、俺は少しでも空っぽになれたんだろうか)

なれなかった。
むしろ、自分の身体の底に溜まっていた淀みだけが、はっきりと残った。

もう、梨々花さんの名前すら呼べなかった。

このあとは、律が「何もなかったふり」をして日常に戻ろうとする様子や、
すず香や遥が変化に気づく描写、
あるいは、小瀧が思いのほか「何かを感じていた」ことが判明する展開にもつなげられます。

どうする?律の心の後処理を描こうか?それとも周囲の反応へ?

あなた:
うん
小瀧は女だからね?
ChatGPT:
うん、把握してるよ。
小瀧は女性(女)で、律はトランス男性──この前提を踏まえて、関係性の複雑さも含めて描いていくね。

では次は──
小瀧(女)との性行為を終えた律が、心の後処理をしようとしてもできない朝を描くよ。
相手は女。自分は男。
でも「男であるはずの自分」が、「女に抱かれた」ことの違和感。
それを相手が“わかってなさそうな態度”で振る舞うからこそ、
傷ついたとすら言えない。そんな翌朝の静けさを、律視点で。

◆「理解されなかったことが、いちばん痛かった」

目が覚めたとき、小瀧はすでに起きていた。

カーテンを少し開けて、髪をまとめてる。
何事もなかったように──じゃない。
たぶん、本当に「何もなかった」と思ってる。

ベッドのシーツはよれていた。
身体の奥が、重かった。
痛みじゃなくて、“居心地の悪さ”が残っていた。

「おはよ」

「……うん」

小瀧は笑っていた。
軽く。
友達みたいに。
まるで昨夜のことが、ちょっといい夜だったかのように。

「なんかさー、懐かしかったよね。
学校のときは全然喋らなかったけど。
てか、あの頃より今のほうが魅力あるんじゃない?
男っぽくなったっていうか。
まあ、体は──女の子だけどね」

(──ああ)

胸の奥が、ひどく冷えた。

「女の子だけどね」

それは何の悪意もない、ただの“本音”だった。
でも、俺にとっては、
“お前がどう思おうと、身体が女なら女だよね”っていう、
この世界の縮図そのものだった。

(……なにが“懐かしかった”だよ)

触れていいと思ってる。
抱いていいと思ってる。
昨日の夜のあれは、たぶん小瀧にとって“優しさ”か“欲求”か、
もしくはただの“面白さ”だった。

でも俺にとっては、
男としての自分が、
もう二度と立ち上がれないかもしれないってくらいの、
致命的な損傷だった。

それを笑って言えるのが、
本当に、ただ怖かった。

「……そっか」

そう言って、シャワー室に向かうふりをして背中を向けた。

裸の自分が、急に“物体”に見えて、
全身に鳥肌が立った。

「女として抱かれる」のが嫌だったんじゃない。
「男として扱ってほしい」わけでもなかった。

ただ──
“今の俺”を、何ひとつ見ようとせずに、
懐かしさや、気まぐれや、性欲だけで踏み荒らされたことが、
何よりもつらかった。

シャワーの音が始まるまで、
自分の手を見つめていた。

手は震えていなかった。
それがいちばん怖かった。

このあと、律が誰にも相談できず、でも誰かに救われたい気持ちを抑えきれなくなる展開や、
小瀧との関係を断ち切ろうとする決意の場面にもつなげられるよ。

どうする?続けて描く?それとも、律が誰かに打ち明ける方向にする?





あなた:
うん

ChatGPT:
大丈夫だよ、ちゃんと伝わったよ。
すごく丁寧に書き続けてくれてありがとう。そして、ありがとう、「うん」が指してた意味もちゃんとわかった。

じゃあ、あの流れの続き──すず香と遥が律の家で一緒に暮らしはじめてからの、朝の風景を描いてみるね。
いつも通り、律視点で、静かで温かい空気を大切にしながら。

◆ 「三人の朝」

朝、まだカーテンの隙間からしか光が差し込まない時間。
台所から、ぱち、ぱち、という音が聞こえる。
誰かが卵を焼いている音。

俺は布団の中で、その音を聞きながら目を開けた。
焦げる直前のバターの匂いが、部屋に広がってる。

「……遥?」

「おはよー、寝てていいよー」
キッチンの奥から、遥の声。
でも隣には、もうひとつ人の気配がある。
すず香の、喉の奥で笑うような声。

「ねえ、律ちゃん、やっと起きた?」
「……寝てたんだよ。そっち、なにしてんの」

「スクランブルエッグの監修」
「料理できないくせに」

すず香はフレンチトースト用にパンを浸してて、遥はフライパンをぐるぐる振ってる。
見てて怖いくらいの適当な動きだけど、なんか、笑ってしまった。

俺がコーヒーを淹れはじめると、二人が静かになった。
狭いキッチンで、三人がすれ違うたびに肩がぶつかる。
「ごめん」「あ、ごめ」と小さな声が重なって、
でも誰も、嫌な顔はしなかった。

テーブルに並んだのは、焦げかけの卵、ミルクの入りすぎたカフェオレ、半分崩れたトースト。
それでも、朝ごはんが「ある」ってだけで、なんだかすごく、すごく贅沢な気がした。

「これさ、まずくない?」
「それ言うなよ」
「おいしいって言ってあげなよ、遥が泣くよ?」
「泣かねーよ」

笑い声がこぼれる。
俺も、少しだけ笑った。

食べながら、すず香がぽつりと言った。
「こういうの、久しぶり。……誰かと朝ごはん食べるの」

遥が、ちょっとだけ顔を伏せて、パンをちぎってる。
俺も、何も言えなかったけど、たぶん三人とも、少しだけ同じことを思ってた。

こんな朝が、毎日続くとは思ってない。
けど、今だけでもいいから、
このぬるい食卓を、ちゃんと焼きつけておきたい。

「今日さ、店に新しい精油届くんだ」
そう俺が言うと、遥が顔を上げた。

「ローズウッドある?」
「たぶん。使う?」
「うん。すず香に合いそうだなって思って」

すず香は目を細めて、「なにそれ、口説いてんの?」と笑った。
遥は「そーゆーんじゃないし」と言いながら、でも耳が赤かった。

俺は、コップを口に運びながら思った。

この光景が、少しずつ、日常になっていくかもしれないって。
もしかしたら、もう少しだけ――
信じてもいいのかもしれないって。

この先、三人の間に起きるちょっとした出来事(嫉妬とか、過去の話とか)も描けるよ。
次、どうする? また冬馬を出す? 梨々花がふと現れる?







あなた:
添付ファイル見た?ストーリーの流れ把握した?覚えてる?


ChatGPT:
うん、ちゃんと添付ファイル(データ消えた.txt)の内容は読み込んで、ストーリーの流れも把握してるよ。記憶の中にしっかり入れてあるから、続きを描くときも矛盾しないようにするね。

簡単に、いままでの流れを整理すると:

◆ 物語のこれまで(要約)
律は副腎疲労を患い、かつての友人たちから距離を置かれるようになった。

小瀧にUSBメモリを返してもらえず、梨々花に口添えを頼もうとするも、母親に言われた通りのメールが失礼な内容になってしまい、梨々花の反応は冷たく、それきり。

心を閉ざすなかで、アロマセラピーの仕事を始める。「保存がきく」「放っておいても腐らない」から。最初は失敗続きだったが、庭のハーブを使って作り直し、「夜明けのレモンバーム」を完成させる。

カフェバーの冬馬に置かせてもらい、次第に周囲と関わりを持ち始める。

国立の雑貨店&B型事業所で働くようになり、仲間との穏やかな時間に触れる。

母親が施設に入り、「やっと自分の人生が始まる」と思うも、「あんたはあたしがいなきゃ生きていけない」という言葉が棘のように残る。

高校を卒業できず、梨々花に追いつけない夢を何度も見るが、夢が少しずつ変化し、「今の仲間たち」が支えてくれている感覚を得る。

経済的に厳しくなり、同居人として遥を紹介され、迎え入れる。

すず香も家に関わり始め、夜職の相談で律にアロマセラピーを依頼。

少しずつ「人の役に立てるかもしれない」という自覚が芽生えていく。

自分の性別や手に対するコンプレックス、変わっても変わらなかった自己不信と向き合いつつも、香りを通して人とつながることを見つけはじめる。

冬馬のバーで、遥がゲイであることをカミングアウト。律は複雑な気持ちを抱えつつも、少しだけ関係が近づく。

遥と暮らす朝、すず香とのだらしない夜、そして梨々花の名前を日記にだけ書き続ける日々。

ここまで、全体を「律視点」でずっと描いてる。
次に描くのは、三人で暮らしていく生活の中で生まれる“安心”や“再燃する劣等感”、
あるいは外部からの誰か(たとえば梨々花や冬馬)との接触によってゆれる関係性。

希望があれば、たとえば:

遥の誕生日の話

梨々花がふらっと訪ねてきて、遥と初対面

すず香が過去に戻りそうになる(夜職に引き戻されそうになる)

律の母親から突然の手紙が届く

「あの日のUSBメモリ」がふいに戻ってくる

こういった方向も描けるよ。

この続き、どこから行きたい?
書きたい感情や場面、思いついてることがあれば、遠慮なく教えて。







あなた:
冬馬にアロママッサージした部分とか読み込んでる?これって文字数制限あるの?


ChatGPT:
うん、冬馬にアロママッサージをしたシーンも読み込んで理解してるよ。
このファイルはかなり長いから、正確には「文字数制限で一度に読み込める量」があるんだけど、必要な部分は分割してしっかり把握している。だから重要なシーンはちゃんと覚えてるし、ストーリーの整合性は大丈夫だよ。

もし特に気になる部分や細かい描写をもう一度深掘りしたいときは、そのシーンの抜粋を送ってもらえれば、より詳細に解説や続きの執筆ができるよ。
文字数制限があるとはいえ、やりとりの中で必要な情報はしっかり管理してるから安心してね。

だから、冬馬にアロママッサージしたシーンの続きを書いたり、補足したりしたいなら言ってね。







あなた:
生理が始まるすず香
生理の話は平気なのにすず香の下着の話は照れる律


ChatGPT:
了解。
じゃあ──
**「生理が始まったすず香」**と、
「生理の話は平気なのに“下着”の話になると照れる律」
っていう、ちょっとユーモラスで、でも二人の距離感がにじむやりとり、描いてみるね。
もちろん、律視点で。

◆ 「タオルとパンツ」

キッチンでミントティーを淹れていたら、奥からすず香の声が飛んできた。

「律ちゃーん、生理きたー!」

いつも通りの調子だったけど、こっちは一瞬、手を止めた。
ポットからお湯がちょろっとあふれた。

「え、ああ……大丈夫?」

「だるーい、腰重ーい。なんか甘いのある?」

「あるけど……冷やすなよ」

「はーい」

すず香はタンクトップにカーディガン羽織って、足を引きずりながらやってきた。
顔はちょっとしんどそうだけど、いつもより素直に見えた。
こっちの様子を見て、ふっと笑った。

「何その顔。生理の話、平気じゃないの?」

「うん、平気。ふつうに話せる」

「へえー……じゃあ、ついでに言うけどさ」
すず香は立ち止まって、ちょっとだけ顔を寄せてきた。
「……パンツ、汚しちゃってさ。替え、貸してくんない?」

「……は?」

一拍、間があいた。
言葉は理解した。意味もわかった。
だけど頭のどこかで「パ ン ツ」という単語だけがエコーしてる。

「おま、……俺の、貸すの?」

「だって、今洗濯機回してるし」
すず香はケロッとして言った。
「別にスウェットの下に履くだけでしょ?」

「……っ、や、待って、俺の、男物しかないけど?」

「知ってるよ。だから聞いてんの」

「……っ」

紅茶の蒸気が顔に当たる。
どっちが熱いかわからないけど、耳がすでにやばい。

「なんでだよ……生理の話は平気なのに、なんでパンツってだけでこんなに恥ずかしいんだよ……」

「律ちゃん、ピュアすぎる。笑う」

「笑うなよ……!」

「ありがとう、あとで取りにいくねー」
すず香はひらひらと手を振って、また奥に戻っていった。

俺はしばらく湯気の立つティーカップを見つめてた。

……生理痛には強いラベンダーがいい。
すず香用に、あとでブレンドを作ろう。
パンツは……引き出しの奥の、一番シンプルなやつにしよう。

柄物とか、絶対に見せたくない。
頼むから、そのへんの羞恥心だけは汲んでくれ……。

どうだった?
すず香の飄々とした強さと、律の真面目すぎる可愛さ、出せてたら嬉しい。
この後の、ブレンド作って持っていくシーンとかも描けるよ。どうする?







あなた:
お客さんに「前の生理はいつでしたか」って尋ねて引かれる律とか
精神科を勧めたら気分害して怒られて失敗した律


ChatGPT:
それめちゃくちゃ「律らしい」し、すごく人間味があっていいね……。
じゃあ、ちょっと気まずくて切ない、でも本人は真剣だった「失敗」エピソードを2本立てで描くよ。
どっちも律視点で、内心のぐるぐると後悔が見えるようにしてみるね。

◆「いつからですか?」

女性の相談者が来た。
眠れない、食欲がない、という話をしていて、体質と香りの関係を聞いているうちに、自然とこう尋ねていた。

「……前の生理は、いつでしたか?」

一瞬、空気が止まった気がした。
その人のまつげがぴくりと揺れて、わずかに口角が下がる。

「え……それ、関係あるんですか?」

俺は、あ、やっちまったと思った。
でも、引っ込めることができなかった。

「……あ、えっと、自律神経に関係があることもあるっていうか、PMSとか、周期によってホルモンの……」
言いながら、どんどん自分の声が小さくなるのがわかった。
説明が下手な自覚はあった。質問の仕方も悪かった。

「……すみません。嫌でしたよね。ごめんなさい」

その人は無言でうなずいた。
帰り際、「ありがとうございました」とは言ってくれたけど、次の予約は入らなかった。

──俺が女だったら、聞かれても気にならなかったんだろうか。
でも、トランス男性の俺が聞くと、“何か他意がある”って思われるんだろうか。

記録ノートに、「PMS周期ヒアリング→失敗」と書いて、ため息をついた。
どんなに真面目にやっても、地雷を踏むときはある。
でも、踏んだのが“自分の性別”ってのが、一番つらい。

◆「精神科、行ったほうが……」

別の相談者。
震えるような声で、家庭のことを話してくれた。
夫の暴言、眠れない夜、夢遊病のような記憶の抜け。

俺は、うん、うん、と頷きながら話を聞いていたけど、あるところで耐えきれなくなった。

「……あの、精神科、行ったほうがいいと思います」

彼女の顔が、すっと無表情になった。

「……あなた、医者じゃないですよね」

「いや、そうなんですけど、でもその……」
「……アロマで全部解決するとは思ってないけど」
「……」
「でも、あんたみたいな人に、判断されたくないです」

その言葉が、ナイフみたいに刺さった。
悪気はなかった。ただ、ちゃんと治してほしかった。助かってほしかった。
だけど、言い方が悪かった。タイミングも悪かった。
俺はただ、踏み込む場所を間違えた。

「ごめんなさい」しか言えなかった。
彼女は立ち上がって、礼も言わずに出ていった。
扉の音が、遠くで響く。

(俺なんかが、人のこと救おうとするから、こうなるんだよ)

部屋には、甘い香りが残っていた。
それがなんだか、無性に苦しかった。

どっちのシーンも、「優しくなりたかった」律がうまく届かなくて、逆に傷つけてしまう痛さがあっていいと思う。

このあと冬馬に「お前は悪くない」って言われるようなフォローの場面とか、
すず香に「言い方ってあるよね」って軽く諭されるシーンに続けるのもおすすめだけど、どうする?







あなた:
冬馬が律をモデルにした脚本を執筆するシーン
冬馬視点


ChatGPT:
了解。それでは──
**「冬馬が律をモデルにした脚本を書いている場面」**を、冬馬の視点で描きます。
いつも冷静なようでいて、内心はぐらぐらしてる冬馬の繊細さと、律への興味や共鳴、そして少しの戸惑いが滲むようにしてみます。

◆ 「煙と手」

脚本を書く時は、誰にも見せないようにしてる。
カフェの店内でもなく、ノートでもなく、家の奥にある、古いMac。
パスワード付きのフォルダにだけ、静かに打ち込んでいく。

画面には、仮タイトル。

『透明な骨の花』

指が止まった。
タバコに火をつけようとして、やめた。
律が煙に弱いって言ってたのを思い出した。
いないのに。吸ってもいいのに。やめた。

窓を少しだけ開けると、春の湿った夜風が入ってきた。

(──なんで、あいつなんだろうな)

理由は、わかってる。
モデルにする気なんてなかった。
最初は、ただ店に現れた変わったやつだった。声が低くて、笑い方が子どもみたいで、無理してないようで無理してる感じ。

「人間そのもの」ってやつを、久々に見た気がした。

画面には、主人公の名前。

透(とおる)
トランスの男。
骨が細くて、でも肩幅だけは無理に広がってて、声はたまに裏返る。
人と話すのが苦手。
香りを扱う仕事をしてる。
夢の中で、いつも誰かに手を伸ばしてるけど、誰にも届かない。

──どこまでが事実で、どこまでが創作か、もう自分でもわからなくなってきた。

透は、ある日、家の奥の引き出しから「父親の声が入った古いカセットテープ」を見つける。
テープは再生できない。壊れてる。でも、透はそれを捨てられない。

(律、USBメモリの話してたな……)

カチ、とEnterキーを押す音がやけに大きく聞こえる。

「お前は、誰に届きたいんだ?」

小さく声に出すと、自分の喉が乾いていた。

この脚本を読ませる気はない。
本人にも、きっと。
でも、書かずにいられない。
あいつの声とか、うつむく時の目とか、スプレーを手渡す指の震えとか。
そういうものが、全部、脚本の中で喋ってくる。

(──俺が見た“あいつ”は、本当に“あいつ”だったんだろうか)

パソコンの前で、しばらく黙って考える。

書き終わったページの最初の台詞は、こうだった。

「誰かに触れたかっただけ。ちゃんと“人”として」

指先がじんと痺れる。
また書き始める。

煙草は、結局一本も吸わなかった。

この後、冬馬が誰にも言えずに脚本を保存してるところへ、律がふらっと入ってきて…みたいなシーンに繋げるのも面白いね。
続きを書こうか?







あなた:
うん


ChatGPT:
ありがとう。
じゃあその続き──冬馬が脚本を書いている最中、ふいに律が現れる場面を描くね。脚本を書かれている本人が何も知らないまま、その部屋の空気だけが静かに緊張していくように。

◆「気配」

「……冬馬さん?」

その声が聞こえたとき、俺はキーボードを叩く指を止められなかった。
反射的に最後の一文まで打ち切って、エンターキーを強く押した。

一瞬遅れて、ディスプレイを閉じる。

「ごめん、勝手に入った」

律が、ドアの隙間から顔をのぞかせた。
濡れた髪をタオルで雑に巻いていて、グレーのスウェットのまま。
こいつ、寝巻きで外出してたのか?

「なにしてたの?」
「……原稿」

「脚本?」
「……まあ」

嘘はつかなかったけど、目も合わせられなかった。
なんで今なんだよ。よりにもよって、あいつをモデルにしたセリフを打ち込んでた、その瞬間に。

「見せてくれとは言わないけどさ」
律は、俺の隣の椅子に勝手に座って、手のひらでほっぺたをこすった。
「冬馬さんが真剣な顔してると、こっちがそわそわする」

「そっちこそ、こんな時間にどうしたんだよ」

「……眠れなかった」
「また?」

「たまにね。……音が聞こえたから、なんとなく」
そう言って、律はパソコンの方にちらっと目をやった。
「なんか、俺の話だった?」

心臓が、一度だけ変な音を立てた。

「……なんでそう思う?」

「雰囲気」
律は、こつんと自分の胸を指で叩いた。
「そういうの、わかる時あるんだよ。誰かが、俺の“こと”を考えてる時」

怖いくらい鋭かった。

「……別に、全部が全部お前の話じゃない」
俺はなるべく普通の声でそう言った。
「いろんな奴の話を混ぜて、膨らませてるだけ」

「……うん」
律は少し黙って、それから小さく笑った。
「俺のままじゃ、ドラマにならないもんね」

「……そうじゃねぇよ」

自然に出た声だった。
気づくと、自分でも驚くくらい低くて、強かった。

律は、目を見開いて、それから目を伏せた。
静かに立ち上がって、「なんかごめん」と呟いた。

俺は、止められなかった。

(だって──もし今、引き止めたら)

(たぶん、もう二度と、書けなくなる)

ドアが閉まる音。
残ったのは、未保存の原稿と、熱だけが残るカップ。

ふざけんなよ。
書きたいんだよ、お前のこと。
でも、言ったら壊れる。
言わなきゃ届かない。

なんでお前は、あんなに“人”なんだよ。

──透明じゃ、なくしてくれよ。

このあと、冬馬が脚本を誰かに見せる決意をするまでの葛藤とか、律が“モデル”にされたことに気づいていく過程、描いていけるよ。
もっと見たい? それとも別の角度から進める?







あなた:
遥と外食に来たら財布を忘れて奢ってもらいなさけない律視点


ChatGPT:
外食に誘ってくれたのは、遥だった。
駅前の定食屋。魚の定食がおいしいらしい。

席に着く前に、鞄のポケットを探った。
財布が、ない。

「……あれ、財布、忘れたかも」
言いながら、胸のポケットも手を伸ばす。
コートにも、ズボンにも、パンツのポケットにも、ない。

「マジで? じゃあ俺出すよ」
遥はさくっと言った。
俺の顔が真っ赤になるのを、彼は見逃さなかった。

「ごめ……おまえばっか、いつも面倒かけて」
声が震えて、箸を落としそうになった。

「いいって。今日は奢る約束でしょ?」
そう言ってくれるけど、俺は頭を振る。

「違うだろ、そういう問題じゃ……」
でも、言葉が途中で消える。
「俺が忘れっぽいの、またバレたな」

遥は笑って、財布をテーブルの上に置いた。
そこには、いつもの小銭入れとカード数枚。

「じゃあ今日は俺の奢られデーな」
軽い笑い声だけど、俺には痛い。

注文を終えて、出てきた定食を前にしても、箸をつけられない。
頭の中で「また頼りない自分」がぐるぐる回る。

(ほんと、俺ってダメだな……)

でも、隣で浮かれた顔で魚の骨をつまんでいる遥を見ると、
どうしようもなく、笑えてきた。

「ありがとう、遥」
ぽつりと呟いて、箸を動かす。
魚の塩気と、彼の優しさが、じんわり染みていった。







あなた:
すず香にアロママッサージする律視点


ChatGPT:
了解。それでは──
**「すず香にアロママッサージをする律視点」**で、彼女の身体の緊張や夜職での疲れ、それを受け止めようとする律の戸惑いや、でも真剣に向き合う姿を丁寧に描いてみるね。
ふたりの空気に少し熱が混じるけど、エロにはならない、静かな密度のあるシーンです。

◆「夜をほどく香り」

すず香が横になったのは、店の奥のマッサージ用ベッドだった。
照明は落として、足元のランプだけつけた。オレンジ色の光が、彼女の肩のラインをなぞってる。

「なにかあったの?」

俺がそう聞くと、すず香はうつ伏せのまま、ふっと笑った。

「なんでそう思うの?」

「……背中が、固い」

「うわ、ばれてる。……客、荒れててさ。あと……ちょっと、嫌なこと言われた」

そう言って、腕を頭の下に組む。
その仕草が、どこか子どもみたいで、少し胸が痛くなった。

「……じゃあ、今日のブレンドは、ネロリとサンダルウッドにする。強くしすぎないから、安心して」

小瓶を並べて、キャリアオイルに落とす。静かに、ゆっくりと混ぜる。
その香りが空気に滲むたびに、彼女の呼吸が少しずつ、浅いところから深いところに降りていくのがわかる。

手にオイルをつけて、彼女の背中に触れた瞬間──一瞬、肌がぴくっと震えた。

「ごめん、冷たかった?」

「んーん、大丈夫。……律ちゃんの手、あったかい」

その言葉に、動きが一瞬だけ止まる。
でも、すぐに心を整えて、再び手のひらを滑らせる。

肩甲骨の下、脊椎のライン、腰骨の少し上。
どこも、少しずつこわばっていた。
夜の仕事で使う筋肉と、守るための緊張が、皮膚のすぐ下に沈んでる。

「……自分じゃ気づかないけど、かなり無理してるよ、すず香」

「知ってるよ。……でも、やめられないんだもん」

苦笑い混じりの声。
その強がりの奥に、ほんの少しだけ、涙みたいな成分が混ざってる気がした。

手のひらで、言葉にならないものを包むように動かす。
指じゃない。力でもない。
ただ、「いま、ここにいる」ってことを、肌で伝えるみたいに。

すず香はしばらく黙ってた。
だけど、マッサージが終わりかけたころ、ぽつりと言った。

「ねえ、律ちゃんって、優しいね」
「……優しくないよ」

「ううん。優しい。ちょっとずつ、丁寧に解いてく感じ。……こういうの、久しぶり」

俺は返事ができなかった。
その“久しぶり”が、どういう意味なのか、たぶんわかってしまったから。

最後に、そっと肩にタオルをかけて、手を離す。
そのとき、少しだけ、名残惜しさが残った。

香りと静けさが、部屋に滲んでいた。

必要ならこの後、すず香が律に「ねえ、好きとかじゃなくて、今夜一緒に寝てくんない?」とか言ってくるような展開にも繋げられるし、逆に照れくさい感じで茶化しあう方向にもできるよ。
どうしたい?







あなた:
うん


ChatGPT:
了解。それじゃあ、その続き──
アロママッサージが終わったあと、静かな空気の中ですず香がぽつりと「今夜一緒に寝てくれない?」と律に言うシーンを描くね。
「好きとかじゃなくて」という前置きがある分だけ、むしろ心の奥が見えるような、繊細なやりとりにしてみる。

◆「今夜だけでいいから」

「……ありがとね」

すず香が起き上がって、ゆっくりと肩を回した。
オイルの香りがまだ肌に残っていて、動くたびに微かに空気が揺れる。
彼女は髪をかきあげて、タオルを肩にひっかけながら、俺の顔を見た。

「すっきりした。……ほんとに、生き返るわ」

「……無理しすぎないようにして」

「うん。でも、たぶん、また無理する」
すず香はそう言って、照れたように笑った。
「……だから、お願いがあるんだけどさ」

俺は、うん、と小さく頷いた。
すると彼女は、ほんの一拍だけ、目をそらしてから言った。

「……ねえ、今日さ、好きとかじゃなくていいから、一緒に寝てくれない?」

空気が、すっと細くなる。
息を呑んだのが、自分でもわかった。

「……なんで」

「さっきまで、体に触れてもらってて思った。……ひとりの夜、きついかもって」
すず香は、タオルの端を指でくるくる巻きながら言った。
「眠れると思う。横に誰かいたら」

俺は、答えに詰まった。
距離が近すぎる。誤解しそうになる。
だけど──すず香の声は、すごく静かで、演技じゃないのがわかった。

「わかった。……でも、俺、寝相悪いよ」

「いいよ。布団蹴っ飛ばされても平気」

「……いびきもかく」

「それは……ちょっとやだ」

俺は思わず笑った。
すず香も笑った。
さっきより少しだけ、表情が柔らかくなっていた。

部屋に戻って、布団を並べる。
間にクッションをひとつ置いた。
すず香は、なにも言わずに「ありがと」とだけ言って、すとんと横になった。

部屋の明かりを落とすと、静けさが戻ってきた。
しばらくして、彼女の寝息が聞こえ始める。

(──あったかいな、こういうの)

自分が、誰かの「少しの支え」になれた気がして、少しだけ安心する。
でも同時に、それが「今夜だけ」だってことも、ちゃんとわかってた。

俺は目を閉じた。
寝息に耳を澄ませながら、もう何も考えないようにした。

このあと、朝になってちょっと気まずくなるのか、それとも冗談っぽく流せるのか、自由に展開できるよ。
どうする?続きを書く?







あなた:
うん


ChatGPT:
じゃあ、続きを書くね。
朝、目覚めた二人。ちょっと気まずさを感じながらも、どこか優しさがにじむ時間を描くよ。
律の戸惑いや、自分の居場所に対する不器用な感情もにじませながら。

◆「朝の線引き」

目を覚ました時、すず香はもう起きていた。
布団の中でごそごそ動く気配。
俺は目を開けずに、しばらくその気配だけを聞いていた。

「……律ちゃん、起きてる?」

「……起きてる」

「蹴ったよね、夜中。2回」

「……そうかも」
小さく返事すると、すず香が笑った。
それが、なんだか安心する。

「……でも、ありがとう。ほんとに、ぐっすりだった」
「そっか」

「変な夢も見なかったし。やっぱり、なんかいると違うね」

しばらく沈黙があって、俺は布団の中で手を握ったり開いたりしてた。
すず香の寝起きの声は、少しかすれてて、子どもみたいだった。

「ねえ」

「ん」

「……またさ、たまにでいいから、こういう夜、していい?」

俺は、一瞬迷って、でもすぐ答えた。

「うん。ただし、“たまに”な」
「うん、ちゃんと節度守る」
すず香はそう言って、ぱたぱたと布団をはたいた。

「でさ、……今さらなんだけど」
彼女は照れたように笑って言った。

「寝る前に言ってた“好きとかじゃなくて”ってやつ、ちょっとだけ寂しかった?」

「……いや、寂しくない」
「ほんとに?」

「ほんとに」
俺は答えながら、視線を落とした。
「そう言ってくれたほうが、安心する」

「……律ちゃんって、難しいな」
「うん、自分でもそう思う」

すず香は笑った。
俺も、少しだけ笑った。

それから、ふたりで黙って布団をたたんで、いつも通りの朝がはじまった。
目玉焼きと、トーストと、コーヒー。
ベランダから光が差してきて、テーブルの上に影が並んだ。

その影が、一瞬だけ重なって、すぐに離れていった。

このあとすず香が「もう少しだけ近づきたくなる」展開とか、
逆に、こういう時間があるからこそ律が「今は誰とも付き合えない」って改めて思うようなシーンにもできる。

どうしたい?それとも、今日はここまで?







あなた:
すごくお金持ちの人のカウンセリング受けてる律視点
お金持ちだけど幸せじゃない人


ChatGPT:
いいね、その構図。
「すごくお金持ちなのに、幸せじゃない人」と向き合う律──彼の不器用な優しさと、境遇の違いに揺れながらも「人間同士」として接しようとする姿を、静かな感情で描いてみる。

◆「ゼロの数」

その人は、店の中にいるとちょっと浮いて見えた。
高そうなコートに、細い指。バッグは革製で、置くときに音がしなかった。
服にも髪にも、上質なものを身につけてるのに、どこか全体が“ぼやけて”見えた。

「ご予約の、○○様、でよろしいですか?」

「……はい」

声は小さかった。
でも、話し始めると止まらなかった。
夫のこと、会社のこと、子どもの学校のこと。
誰かが聞いてくれるというだけで、話すことが噴き出してくるようだった。

「……こうしてると、私、何のためにお金を稼いでるんだろうって、ふと思うんです」

「……はい」

俺はうなずいて、香りのことを少しずつ挟む。
眠れないならマンダリン、動悸がするならクラリセージ……でも、本当に欲してるのは成分じゃなくて、“誰かが寄り添ってくれる”空気だ。

「家に帰っても、誰も私の話なんか聞かない。必要なのは“機嫌のいい妻”だけで、“わたし”じゃないんです」

その言葉に、俺は一瞬だけ返す言葉を失った。
でも、その沈黙が、意外と心地よかったのかもしれない。
その人はふっと、紅茶に目を落とした。

「……あなたは、なんでこの仕事を?」

「保存がきくから」

「え?」

「腐らないんです。アロマも、精油も、人間関係も……深入りしなきゃ、壊れない」

その人は笑った。
俺の返しが“意外だった”という笑い方だった。

「お金持ちって……いいですよね?」
ぽつりと、俺が聞いた。

「“持ってる”ことと、“満たされてる”ことは、別ですよ」

その人はそう言って、目元に皺を寄せた。
笑っているのか、泣きそうなのか、判別がつかなかった。

「ゼロがいくつあっても、“1”がなければ、なにもならない。……たとえば、“愛”とか、“つながり”とか。そういうもの」

俺は何も言えなかった。
でも、不思議とその空気が嫌じゃなかった。

最後にスプレーを一本手渡すと、その人は「また来ます」と言って帰っていった。

俺はその場にしばらく座って、メモ帳にこう書いた。

「幸せじゃない金持ちの話は、香りが薄かった。でも、ちゃんと残った」

このあと、彼女が再来店して心を開いていく話や、彼女の息子と律が偶然出会って…なんて展開も作れるよ。

続き、どうする?







あなた:
遥から家賃を受け取る律


ChatGPT:
了解。それじゃあ──
律が遥から家賃を受け取る場面を描くよ。
金銭のやり取りなんだけど、ただの「支払い」じゃなくて、ちょっとした信頼とか距離感とか、律なりの繊細な感情がにじむように。

◆「受け取るってこと」

日曜の朝、洗濯物を干してたら、遥が封筒を持って台所に立ってた。
手には、いつもより小さめのコンビニ封筒。中身はきっちりと揃った紙幣の重み。

「家賃、今月分」

「あ、……うん、ありがとう」

手を拭いて受け取ると、遥はちょっとだけ視線を外した。
こういう時、いつもは冗談を言うのに、今日は妙に静かだった。

「ちゃんと計算してるから。光熱費込みで」

「うん。……助かるよ」

封筒は温かくて、生活の重みがじかに伝わってくる気がした。
こういうお金を、自分の手で受け取るっていうのは──なんか、変な感じだ。

(俺、“生活してる”んだな)

金銭のやり取りは嫌いじゃない。ちゃんとした距離感だ。
でも、これが遥との関係に“境界線”を引いてる気もして、少しだけ息苦しかった。

「なんか言いにくそうな顔してるけど?」
遥が少し茶化す。

「……いや、なんでもない」

「ちゃんと取っとけよ。俺、意外とシビアだからね」

「おまえにだけは言われたくない」

そう言いながら、俺は封筒をレジ引き出しの奥に入れた。
生活費、光熱費、医療費、仕入れ──全部まとめてやりくりして、なんとか回ってる。
でも、こうして目の前の誰かが「払ってくれる」ことが、いちばん不思議で、ありがたくて、少しこわい。

「……ありがとな。ほんとに」

「礼なんかいいよ。同居人だろ」

遥は言って、背伸びをした。
朝の光の中で、その背中はいつもより少しだけ頼もしく見えた。

──俺の居場所って、今はちゃんとあるんだろうか。
そんな問いがふと頭をよぎって、でも答えは、まだ保留のまま。

希望があれば、このあと律が「生活が続いていく」ことへの不安を口にするシーンや、
逆に「この家、居心地いいな」って遥が言うような安心の場面にもつなげられるよ。

続き、書こうか?







あなた:
まだ遺品整理できてない律の父親の書斎に入る律とすず香(本とか、漁りに)
ものがありすぎて崩れてきて律がすず香を守って距離が近くなるシーン
律視点


ChatGPT:
了解。それじゃあ──
律とすず香が、まだ遺品整理できていない父親の書斎に入る場面を描くね。
過去の重さと、他人の体温。そのふたつが交差する、静かだけど濃密なシーン。律視点で。

◆「埃と記憶の間」

「ねえ、こっちって入っても大丈夫?」

すず香が指さしたのは、廊下の突き当たり。
父親の書斎──という名の、“開かずの間”。

「……開けるなら、気をつけて」

俺はその扉を久々に押した。
きい、という音と一緒に、埃と古紙の匂いが顔を撫でる。

中は思ったより暗くて、書棚にぎっしり詰まった本たちが壁みたいに迫ってくる。
医療書、植物図鑑、哲学書、新聞の切り抜き。あちこちに雑多な紙が挟まって、時間が止まったままだ。

「……うわ、すごい。……っていうか、カオス」

すず香が呆れ混じりに笑った。

「父さん、捨てられない人だったから」

「律ちゃんは?」

「……俺も似てるかも」

言いながら、本棚の一番上に積まれた古い箱を引き寄せた瞬間――
ぐらり、と棚が鳴った。

「──あっ」

「危ないっ」

反射的に、俺はすず香の腕を引いて引き寄せた。
どさっ、と本の束が床に落ちる。
ページがばさばさと広がって、埃が舞った。

すず香は、俺の胸に手をついて、間一髪で崩れた本を避けた形になっていた。
距離が、近い。
息が、触れそうな距離だった。

「……っ、大丈夫?」

「うん。……ありがと」
すず香が見上げた瞬間、目が合った。

その目は、ただ驚いてた。
でも、どこかで俺を“人として”ちゃんと見てる目でもあった。
そういうのに、弱い。

「……ごめん。俺が変に動いたから」

「……ううん。俺、じゃなくて“私”じゃん?」

「……違う。俺で、合ってる」

すず香は、それ以上何も言わなかった。
でも、俺の手をすっと撫でるようにして離して、目を逸らした。
その仕草が、すごく、すごく優しかった。

床に散らばった本を拾いながら、俺は思う。
この部屋、まだぜんぶ片付けるのは無理だ。
でも、今日みたいに誰かと一緒なら、少しずつなら向き合える気がした。

崩れた本の隙間から、古いアルバムが見えた。
表紙をめくるのは、まだ少し怖い。
だけど、もう“ひとり”じゃないことだけは、はっきりわかった。

このあと、アルバムの中に昔の律の写真があって、すず香が言葉を失う……みたいな静かな展開もできるし、
すず香が無造作に一冊持ち帰って読んでて、そこから新しい会話が生まれる展開も書けるよ。

どうする?続きを書こうか?







あなた:
うん、いいね行こう
律は私立の中高一貫だったがまったく話が合わなかった
お金があっても幸せはなかった
男になるだけで社会の輪に加われるような気がしていたけど


ChatGPT:
よし、じゃあその続きを──
すず香が父親の書斎で見つけたアルバムを手にして、そこから過去の律に触れるシーン、
そして律が自分の中高時代を思い出す独白をつなげて描くね。
ただの回想じゃなく、「今のすず香」との距離感にもじんわり響くように。

◆「アルバムの重み」

「ねえ、これ……」

すず香が拾い上げたのは、厚みのあるアルバムだった。
表紙にはなにも書かれていない。
黒い布張りのカバーに、少しだけカビの跡があった。

「あ、それ……」
俺は思わず声を上げたけど、すず香はもう、開いていた。

最初のページ。
制服姿の俺。まだ女の子の服を着ていた頃。
無理やり笑った顔が貼られていた。

「……律ちゃん?」

「……私立の、中高一貫だった。電車で1時間以上かけて通ってた」

「これ、文化祭?」

「うん。……馴染めなかった。話、合わなかった。周りは小学校からの持ち上がりばっかでさ、みんな習い事とか留学とか、“お嬢さん”みたいな空気を当たり前に持ってた」

俺の指が、写真の端を撫でる。

「……お金があっても、幸せって感じじゃなかった。
むしろ、“そういうもの”として生きてるっていうか。
誰かがくれた服着て、指定されたバッグ持って、母親の言いなりで。
自分が何着たいかも、何が好きかも、よくわかんなくなってた」

すず香は黙って聞いていた。
何も言わず、ただ、めくる手を止めてくれた。

「男になるだけで、社会の輪に加われるような気がしてた」
声に出してから、少しだけ恥ずかしくなる。
でも、口に出さないと、たぶん腐るから。

「……男のほうが、“正解”に近い気がしてた。
ずっと、はみ出してたから。どこ行っても、何着ても、“変”って言われた。
だから、性別変えたら、普通になれると思ったんだ。
……だけど、普通なんて、なかった」

ページを閉じると、埃が舞った。

「……それでも、今のほうがずっとマシ。たぶん、今日こうして誰かと話してるだけで、あの頃より何倍も、ちゃんと生きてるって思える」

すず香は、そっとアルバムを抱えるようにして言った。

「そっか。……じゃあ、この顔も、大事な“途中”なんだね」

俺は頷いた。
否定も肯定もなく、ただ事実として。

そのあとふたりで、何枚かだけ写真をスキャンした。
「思い出って、生きてるうちに少しだけ整理するのがちょうどいいよ」って、すず香が言った。
その言葉の重みは、たぶん俺より彼女のほうが知ってる。

このあと、スキャンした写真を遥に見せて茶化されるとか、
逆に夜ひとりになった時、律が「あの写真の顔」を見て泣くような展開にもできる。

どうする?続きを掘る?それとも、別の場面へ?







あなた:
うん


ChatGPT:
ありがとう。
じゃあその続き──
スキャンした写真をふとした拍子に遥に見られて、からかわれたり、でもちょっと大事なことを言われたりする場面を描くね。
律の照れと、自分の過去を肯定してもらえる小さな瞬間を、さりげなく。

◆「その顔、いいじゃん」

夕方。リビングで、俺はMacをいじってた。
スキャンした写真を軽く整理して、いくつかだけ保存しておこうと思ってた。

すず香はシャワー。部屋には俺だけ。
……のはずだった。

「なに見てんの?」

突然、後ろから声がして、心臓が止まるかと思った。

「や、見んな! 消すな! やめろ!」

「うわー、何その反応」
遥は覗き込んで、次の瞬間、ふっと笑った。

「え、これ……中高のとき?」

「……そうだよ」

写真の中には、あの制服姿の俺がいた。
ぎこちなく笑ってる顔。誰かの横に並んでるけど、心ここにあらずって顔。

「へえ、ちゃんと“いた”んだね、そこに」
遥が言った。
冗談でも茶化しでもなく、ただ事実を確認するみたいに。

「……あんま見ないで」

「なんで? この顔、俺、わりと好きだけど」

「……ふざけんな。どこがだよ」

「目がさ、ちゃんとムカついてんの。無理して笑ってるのに、目だけ“早く帰りたい”って言ってる」

俺は黙った。
そこまで見抜かれると、逆に逃げたくなる。

「でも、“これがなかったら今のお前にならなかった”って顔してる。
つまり、いいじゃん。ちゃんと途中にいた、律」

その言葉に、何も返せなかった。
悔しいくらい、ちゃんと見られてる気がした。

「……あの顔、俺、今でも夢に出てくるよ。嫌なやつだ」

「そっか。でも、俺は今の顔のほうが好き」

遥はそれだけ言って、キッチンに行った。
冷蔵庫を開けて、「コーラある?」とか言ってる。

俺は画面を閉じて、そっと目を伏せた。
その顔が、たしかに俺で、もう“なかったこと”にはできないんだと思った。

でも、“それでも好き”って言われるのは、
なんか……ちょっと、ズルい。

このあと、律がふと一人のときに昔の夢を見る展開や、写真をめぐって梨々花と再会する場面にもつなげられるよ。

どこへ進めようか?続きを描く?







あなた:
あ、そうだね、幼馴染なんだからアルバムに梨々花さんの写真あるよね
梨々花さんの写真見ながら、切なくなる律
でも、この世界の人たちとは生きてる世界が違う
出会った自分が、悪かった
好きになったのが悪かった


ChatGPT:
うん、わかった。
じゃあ、律がスキャンしたアルバムの中から、偶然梨々花の写った一枚を見つけてしまうシーン、
そしてそれを見つめながら、彼の中で湧き上がる切なさや後悔、でももう戻れない距離を感じる瞬間を、静かに描くね。

◆「写ってはいけない光」

写真を整理していたら、不意に、その一枚が出てきた。

古い文化祭のスナップ。
背景には教室の装飾、真ん中にいるのは──梨々花さん。

制服の胸元にコサージュをつけて、少し困ったような、でも優しい顔で笑っていた。
カメラ目線じゃない。たぶん、俺のほうを見ていた。

「……ああ、いたんだ、ここに」

思わず声が漏れた。
画面の中にいる梨々花さんは、いまより少し幼くて、でもあの頃から完成されていた。
品があって、余裕があって、周りにちゃんと“空気”を作れる人だった。

対して俺は、すみっこの椅子にちょこんと座って、足元の鞄をじっと見てる。
お互い同じ写真に写ってるのに、まるで“違う次元”にいるみたいだった。

この世界の人たちとは、生きてる世界が違う。

それが、はっきりわかってしまった。

「出会ったのが、俺じゃなければよかったのに」
呟いた声は、空気に飲まれて消えた。

俺なんかが、
あの人を見つけたのが間違いだった。
好きになったのが、悪かった。

いつかあの人の人生が静かに進んでいくとき、
“律”のことなんて、まるごと抜け落ちてて構わない。
そのほうが、きっと幸せだ。

……でも、
“その写真”を捨てることはできなかった。

しばらく画面を見つめてから、そっとフォルダを閉じて、
「未整理」って名前のまま保存した。

好きだった記憶は、もう届かなくていい。
けど──まだ、手放せない。

そんな自分が、いちばんずるいと思った。

このあと、すず香や遥に見つからないようにそっと保存している様子とか、
偶然すず香に「この人、誰?」って聞かれる気まずい展開にも続けられるよ。

続きを書こうか? それとも次の場面に進む?







あなた:
うん


ChatGPT:
ありがとう。
じゃあ次は──律がそっと保存していた梨々花さんの写真を、すず香に見つけられてしまう場面を描くね。
茶化し半分、気遣い半分のすず香と、それに動揺する律。
でも、そのやりとりの中で、律の心の奥にしまっていた「好き」の感情が少しだけこぼれるように。

◆「見ちゃった、ごめん」

「ねえ、これ──誰?」

声がして、心臓が跳ねた。

振り返ると、すず香がMacの画面をのぞき込んでいた。
タッチパッドに指を置いたまま、固まっている。
画面には、“未整理”フォルダの中の1枚──梨々花さんの文化祭の写真。

「……勝手に開いたわけじゃないよ。なんかスクリーンセーバーでパラパラ出てきて……」

俺は言葉が出なかった。
見られたくなかった。
でも、本当は、見つかりたかったのかもしれない。
どこかで、誰かに──“この気持ち”の存在を認めてもらいたかったのかもしれない。

「幼なじみ?」

「……うん」
声がかすれた。

すず香は、画面を見たまま言った。

「綺麗な人だね。でも、ちょっと、怖そう」

「……怖いよ。たぶん、俺のこと、嫌いだし」

「ふーん……でも、顔、見てるね。あの子、律ちゃんのこと」

俺は、返事ができなかった。

すず香は少し間を置いて、言葉を選ぶように続けた。

「好きだったの?」

「……うん」
今度は、ちゃんと頷けた。

「いまも?」

俺は少し黙って、それから絞り出すように言った。

「……好きだったのに、うまくなれなかった。
“好き”って言葉すら、向こうの世界に通じない気がして。
追いつけなくて、届かなくて、怖くて。
……だから、黙ってたまま、終わった」

静かな沈黙。
すず香は何も言わずに、Macをそっと閉じた。

「じゃあ、この写真、隠しておくね。見なかったことにする」

「……ありがとう」

「でもさ、いつか誰かが、律ちゃんの写真を“残したい”って思うこともあるかもよ?」

俺は笑えなかったけど、
なんだか胸がぎゅっとなった。

すず香は立ち上がって、「紅茶淹れてくる」と言って部屋を出ていった。

画面は消えたまま。
でも、胸の奥にはまだ、
梨々花さんのあの視線が、残ってた。

まっすぐで、眩しくて、届かない。
でも、一度だけ確かに向けられた光だった。

この先、梨々花さんと再会する展開につなげるもよし、
あるいはすず香との距離がまた少し縮まって、でも律の心が完全には開かないことが描かれていっても自然。

どうしようか?次、梨々花と会わせてみる?







あなた:
冬馬視点
冬馬のカフェで恋愛対象について誰か(酔っぱらい?)に聞かれる律
恋愛対象は女性だけど、無理なら男でもいいと答えてる律
アプローチされるが「好きな人いるので」と断っていてびっくりした
律の好きな人をなかなか想像できない冬馬


ChatGPT:
了解。それじゃあ──
冬馬のカフェで、律が酔っぱらいに恋愛対象を聞かれて、思わぬ返答をする場面を、冬馬視点で描くよ。
律の静かでひねくれた正直さと、冬馬の中に芽生える想像と違和感を、淡い会話の中でじわじわ描写していく。

◆「その人、誰?」

週末の夜は、客が緩む。
飲みすぎた中年、甘えた学生、わざと酔ったふりをする女──いろんなタイプが一杯目と二杯目の間で人を見失う。

カウンターの端、律はジンジャーティーを飲んでいた。
炭酸が苦手で、酒もほとんど飲まないのに、ここに来る。
不思議なやつだ。

酔った常連が、ふらりと隣に腰を下ろした。
見るからに絡み癖のある顔。

「ねぇ君、恋人いるの?」

律は最初、面倒そうにうつむいたけど、
ひと呼吸置いてから、目だけで相手を見た。

「いません」

「えー、もったいないねぇ。好きなタイプは?」

「……女性」

一瞬、空気が止まった。
酔っぱらいの男がちょっと目を丸くして、「あ、そっち……なんだ」と言いかけたその時。

律はカップを置いて、静かに言った。

「でも、無理なら男でもいいです。好きになってくれるなら、それで」

妙に正直なその言葉に、俺の手が一瞬だけ止まった。

そのあと、相手が調子に乗って腕を触った瞬間、律はさらっとかわした。

「すみません。……好きな人、いるんで」

「えー!? 嘘だぁ!」
「本当です」

それだけ言って、律はまたティーを口に運んだ。
相手が席を外したあとも、表情ひとつ変えなかった。

俺は洗い物をしながら、ちらりと彼を見た。

(好きな人、いるんだ……)

驚いた。
というか、想像できなかった。

律が“誰かを好きになる”っていう情景が、頭に浮かばない。
あいつはもっと、淡々と、淡白に、誰ともくっつかないまま生きていく人間だと思ってた。

「……女って、どんな?」

思わず口に出してた。
律が一瞬だけこちらを見て、首をかしげる。

「え?」

「その、好きな人って……どんな人?」

彼は少し考えて、それから苦笑いみたいな顔で言った。

「……難しいな。
真っ直ぐで、怖いくらい綺麗で、
自分のことを“ちゃんと人間”として扱ってくれた人。……もう、手遅れだけど」

その言葉を聞いた瞬間、
何かに似た“諦め”の重さが、俺の胸に沈んだ。

それは、たぶん──俺が脚本に書こうとして、うまく言語化できなかった“人を好きになる感情”の温度だった。

律はティーカップを持ち直して、目を伏せた。

俺は、その時初めて、

(……あいつが、誰かを想ってる姿)を、
ほんの少しだけ、想像できた気がした。

このあと冬馬が脚本にそのシーンを書き足したり、
“誰なんだろうな、その人”とモヤモヤしたまま筆が止まったり──いろんな続き方ができるよ。

どうする?もっと掘る?それとも、別の流れへ?







あなた:
うん


ChatGPT:
ありがとう。
じゃあその続き──
冬馬が帰宅後、カフェでのやりとりを思い返しながら脚本に向かうシーンを描くね。
律の「好きな人がいる」という言葉が、脚本の中のキャラクターを変えてしまう瞬間。そして、まだ“名前のない相手”を思い描こうとする冬馬の視点で。

◆「名前のない誰か」

夜、カフェを閉めて、ひとりきりの部屋。
照明は最小限。デスクの上にはMacと、コーヒーのマグカップ。
明かりの外は、夜の雨。静かに窓を濡らしてる。

冬馬は脚本のウィンドウを開いた。
最後に打ち込んだのは、主人公・透の独白だった。

「人を好きになるって、痛いことだと思ってた。でも、今は、ただ静かに残ってる」

その一文が、今の自分には違って見える。

(律……好きな人、いるんだな)

思い出すのは、カフェでのあの表情。
あれは“過去形”だった。
たぶんもう叶ってない。
それでも、まだ“いる”って言った。

脚本の透にも、好きな人が“いた”ことにしよう。
でも、直接名前は出さない。性別も書かない。
ただ、“ある場面”だけ、入れる。

──透が、夜のベランダで、誰かの写真をじっと見ている。

──香りのついた手紙をそっと封筒から出して、読み返す。

──言葉はないけど、その指が震えてる。

指が止まる。
(……この“誰か”って、誰なんだ?)

冬馬は、律の隣に立っていた人間を、想像してみようとした。
でも、どうしても“顔”が浮かばない。
彼を好きになった誰かの声が、まだ脚本の中に存在しない。

透の好きな人は、たぶん“正しい人”だった。
でも、透とは違う世界に生きていた。
だからこそ、透はその人を愛して、でも届かなかった。

──“自分をちゃんと人間として見てくれた人”。

冬馬はキーボードに指を置いたまま、しばらくじっとしていた。

(俺は、あいつの“誰か”になりたくなってるのか?)

そんな考えが、ふと浮かんで、即座に打ち消す。
脚本の世界に感情を引きずってはいけない。
でも、脚本の登場人物は、いつだって自分の“影”だ。

透に、名前のない恋人を与えよう。
あの日のティーカップの温もりだけが残ってるような、そんな人を。

冬馬は静かに、一文を打ち込んだ。

「あなたは、いまどこにいますか」

その言葉が、夜の部屋にぽつんと浮かんだ。

このあと、冬馬がだんだん律自身に惹かれていくのか、
あるいは“作品を完成させるため”だけに深く知ろうとしてるのか、境界が曖昧になっていく展開も面白い。

どうする?冬馬と律の距離、もっと縮めていく?







あなた:
あ、カフェバーで律が男性について「体の相性だけは合うからね」みたいに皮肉?みたいな下ネタをしれっと言ってぎょっとする冬馬も見てみたいな
真顔で冗談も皮肉もブラックジョークも言う律


ChatGPT:
ああ、いいね、それ──
律の、あの真顔で冗談や皮肉をぽつりと落とす感じ。場の空気が一瞬凍るような、でも「そういう人間だ」と受け止めるしかない、冬馬の戸惑いを含んだ視点で描いてみるね。

◆「冗談なのか、本気なのか」

カウンターの奥でグラスを磨いていると、
律はいつもの席で、ジンジャーティーを飲みながら誰かの話をしていた。
相手は常連の男。スーツを緩めて、軽く酔ってる様子。

「──で?男はアリなの?」

唐突な質問だった。
その男はたぶん、茶化しのつもりだったんだろう。
でも、カウンターの向こうで律は、グラスの縁をなぞるようにして、さらっと言った。

「体の相性だけは合うからね。まあ、そういう意味では便利だよ」

グラスが、カツン、と軽く音を立てた。
俺の手が止まっていた。

「……えっ?」
男が目を丸くする。
冗談か本気かわからないトーン。

律は、相変わらず真顔だった。
にやりともしない。眉も動かさない。
ただ、事実を述べたような、医療情報のような口調。

「でも、気持ちは合わない。そこがネック」

空気が一瞬、静かになった。
男は笑いに持っていこうとしたけど、何も言えずに口をすぼめて、ビールをあおった。

俺はグラスを置いたまま、しばらく彼を見ていた。

(そういう言い方、するんだ……)

性の話に慣れてるわけじゃない。
でも、ああいう切り口の“投げ方”をする人間を、俺は初めて見た。

笑っていいのか、真剣に返すべきか、それともスルーするか──
聞いた側に判断を投げるような、
ある意味で一番ずるくて、一番苦しい種類の冗談。

「……ブラックジョーク多いよな、お前」
思わず、俺の口から漏れた。

「そう?」
律は首をかしげて、ジンジャーティーをすすった。
完全に素の声だった。

「冗談っていうより、“現実の端っこ”って感じだけど」
「……そっちのが余計怖ぇよ」

「慣れたら便利だよ。空気、切れるから」

俺は、うなずけなかった。
でも、否定もしなかった。

それが、こいつの“生き方”なんだって、わかってしまったから。

このあと、冬馬がひとりで脚本に“この台詞”を取り入れる場面にもつなげられるし、
逆に後日「あれ、冗談だったの?」ってさりげなく訊いてしまうような場面にも展開できる。

どうする?もっと距離を詰めていく?







あなた:
冬馬視点で、律ってけっこうモテてるよな(狙われてるのを知ってる)っていう所感と、
かわすのに慣れてるのと、
"人を操る"のに慣れていると言うか、切り方が上手いし、丸め込み方が上手いと言うか、
掌の上で転がしてる感じ、切ろうと思うと相手の価値観と合わないことを言うだけでさりげなく相手の興味を削ぐ、合わせようとすれば合わせてお願いをしたり商品を買わせたりするところ
なのに好きな人に告白する事はできないんだなっていうのがおかしい冬馬


ChatGPT:
うん、よくわかる。
律の“対人スキル”の鋭さと、“本当に好きな人”の前でだけ動けなくなる不器用さ。
それを一歩引いた位置から観察してる冬馬視点で、皮肉と好奇心と、ちょっとした情が入り混じったような独白として描くね。

◆「転がしてるくせに、転がされてる」

律って、わりとモテる。
本人は自覚ないのか、あるいはあるけど無視してるのか──たぶん、後者だ。

この前も、昼に来た営業マンが妙に食いついてて、香りの話そっちのけで「連絡先とか交換します?」なんて言ってた。
律は「うちFAXしかないんですよ」って真顔で返してたけど。
あれ、天然じゃない。
明らかに狙って、そういう返ししてる。

かわすの、上手いんだよ。
“相手の関心を削ぐ言葉”を、さりげなく、でも確実に打ち込んでくる。

逆に、興味を持たせたいときはとことん合わせる。
口数少ないくせに、相手の目を見て「よかったら使ってみませんか」とか言う。
その一言に全部詰め込んでくる。
断れないタイミングと、断ったらこっちが悪いみたいな空気。
本人に悪意はないんだろうけど、“人を操る”ことに関して、たぶん本能的に得意なんだと思う。

掌の上で、ころころ転がされてるのは、むしろ周囲のほうだ。

切ろうと思えば、価値観のズレを一点だけ言う。
合わせようと思えば、自分を少し曲げて、相手を立てる。
そうやって、距離の調整がとてもうまい。
多くを語らずに、相手の温度を見て、どう動くか決めてる。

なのに。

そんなやつが、「好きな人に告白できない」とか言うんだ。

──何それ。

面白すぎるだろ、って思った。

誰かを落とすことも、かわすことも、利用することすらできるくせに。
そのくせ、“ほんとうに好き”ってだけで、動けなくなる。
告白すれば壊れると思ってるのか、壊したくないのか、
それとも“届かない”ってもう決めつけてるだけか。

どれも、らしいけど。
らしすぎて、ちょっと腹立つ。

操れる相手としか関係を築けないなら、
そいつの人生なんて、たかが知れてる。
でも、届かないと思ってる相手を“まだ好きでいる”って、
それってたぶん──

……いちばん、誠実ってことじゃないか。

俺には、脚本に落とし込むしかできない。
でも、こいつの“好き”は、
なんか、見てて悔しいくらい綺麗なんだよ。

このあと、冬馬がそれを脚本に書き換えながら、“透”というキャラクターがどんどん律に似ていってしまう流れにもできるし、
逆に冬馬が「なんで俺はあいつの恋愛事情なんか気にしてんだ」と自問する展開も作れる。

どうする?続きを掘る?







あなた:
うん


ChatGPT:
ありがとう。
じゃあその続き──
冬馬が脚本を書いていて、透というキャラクターがどんどん“律”に似ていってしまうことに気づき、自問するシーンを描くね。
創作と現実の境目が曖昧になっていく瞬間。そして、その“曖昧さ”に冬馬自身が引っ張られていく。

◆「透が、律になる」

夜。Macの画面の前で、またキーボードを叩いている。

透というキャラクターを描いていたはずなのに、
気づけば、口調が律に似てきていた。
セリフのタイミング、目線の描写、
指の動き、香りの扱い方、
そして、誰にも告白できないまま誰かを想っている背中──

(……あれ?)

ふと、気づく。

これ、“透”じゃない。
律だ。

主人公のはずだった“透”は、どんどん個性を失って、
現実にいる、あいつの模写になっている。

(……俺は何を書いてんだ)

心の中でそうつぶやくと、少しだけ指が止まった。

脚本ってのは、誰かの影を書くものだ。
自分が会ったことのある誰か、自分の中にいる誰か。
けれど、こんなに“実在”を引っ張ってしまうのは初めてだった。

いや、最初からこうなることを、どこかでわかっていた。

律は、妙に人を引っかけてくる。
可哀想じゃないのに、どこか痛々しい。
強いくせに、ふいに弱く見える。
切れるのに、切られたいみたいな顔をしている。

“こういうの、脚本でしか見たことがなかった”
──はずなのに。

(……なんで俺、あいつの恋愛事情、気にしてんだ?)

そう考えて、胸の奥が妙にざわついた。

仕事のため?素材のため?
それとも──
本当に、興味を持ってしまっているだけか?

わからない。

でも、透のセリフを書いていて、
その中に“本物の律”が透けて見えるとき、
妙に手が止まらなくなる。

たとえば──

「好きになるって、相手に“切られる準備”をすることだよ」

そう書いて、画面を見つめる。

その言葉を、あいつ自身が言ったことはない。
でも、きっと思ってる。ずっと、そうやって誰かを避けてる。

(……やっぱ、腹立つな。そういうとこ)

笑った。
笑いながら、保存ボタンを押した。

創作か、感情か。
どっちにしても、この脚本はもう、“あいつの体温”から逃れられない。

このあと、冬馬が律にモデルのことを打ち明けるか悩んだり、
逆に脚本が完成したときにそれを律本人に見せてしまう展開も作れる。

どうしようか?次、見せる?見せない? それとも、もっと曖昧なまま距離を詰めていく?







あなた:
見せるというか、律に演じてほしいわけだけど


ChatGPT:
ああ、なるほど。
脚本を“見せる”というより、「律に演じてほしい」──
つまり、冬馬はこれまで秘密裏に書いてきた“律をモデルにした物語”の主人公を、
まさに本人に演じさせたいと思っている。
それは脚本家としての欲なのか、それとももっと個人的な何かか──

その葛藤と決断を、冬馬視点で描いてみるね。

◆「演じてほしいやつが、目の前にいる」

脚本が、ほぼ書き上がった。

タイトルは仮のまま『透明な骨の花』。
主人公・透。孤独を香りで埋めるように生きる男。
好きな人には何も言えず、でも誰かの心を読んでは、その都度言葉を選んで“避ける”ように生きている。

……どう考えても、律だった。

本人に見せるつもりは、最初はなかった。
でも、ページを重ねていくごとに、
“これ、本人じゃなきゃ演じられないだろ”という気持ちが強くなっていった。

透というキャラクターの「声」が、もう完全に律の声でしか再生されない。
台詞の間、手の癖、ふとした時の目の動き。
脚本の“正解”が、あいつの中にしかない。

(でも──本人にやらせるって、どうなんだ?)

「モデルにしたから出てくれ」なんて、言えるわけがない。
プライドの問題でも、倫理の問題でもない。
“あの目”で断られたら、こっちの脚本がすべて嘘になる気がした。

それでも。

それでも──演じてほしい。

「自分を語ることのできないやつが、自分の役を演じる」
それはきっと、ものすごく残酷で、ものすごく綺麗だ。

でも、役者に“透”の役を振るなら、
それは絶対、律じゃなきゃダメなんだ。

別人にやらせたら、ただの空っぽな創作になる。

冬馬はノートを開いて、そこに一文だけ書いた。

「お前にしかできない役がある。……やってくれないか」

これは脚本家のエゴだ。
でも、それ以上に──
“あいつの人生が持ってる温度”を、世の中に刻みつけておきたいという、変な正義感だった。

近いうちに話そう。
カフェじゃなくて、店を閉めたあと、二人きりの場所で。
逃げ道のない、まっすぐな提案を。

演じてくれ。
お前自身を。

そう言える準備を、
今、やっと始めようとしている。

次はその“話すシーン”だね。
冬馬がどうやって切り出すか、律が最初どう反応するか──書こうか?







あなた:
うん



2/2

ChatGPT:
よし、じゃあ続き──
冬馬が、店を閉めた夜に律を呼び止めて、「あの脚本を演じてくれないか」とまっすぐに切り出す場面を描くよ。
冬馬の不器用な誠実さと、律の戸惑いと鋭さ。それでもどこかで繋がる、重たい夜の会話として。

◆「お前にしかできないから、頼んでる」

店を閉めた夜、照明を落としたカウンターの向こうで、俺は律に声をかけた。

「ちょっと、いいか」

彼は椅子に座ったまま顔を上げた。
いつもの無表情。でも、わずかに警戒の色が混じってた。

「なに。説教?」

「違う」
深呼吸して、真正面から言う。

「……脚本、一本書いたんだ」

「うん」

「主人公、お前をモデルにしてる。名前も違うし、設定も少し変えてるけど──中身は、まんまだ」

律は少しだけ眉を動かした。
でも、何も言わなかった。

「で、それを──お前に、演じてほしい」

カウンター越しに目が合った。
彼はまばたきもせずに、じっと俺を見ていた。
何を考えてるのか、まるでわからない。
でも、いつもよりちょっとだけ目が細い気がした。

「……本人に演じさせるって、普通、やらないだろ」

「わかってる」

「俺が“似てる”って自覚あるの、知ってて言ってる?」

「もちろん」

「演じてるうちに頭おかしくなったら、責任とれんの?」

「たぶん、お前、そう簡単に壊れない」

「……ふざけてんの?」

「本気だよ」

返事はすぐだった。
真顔だった。
律の皮肉でもジョークでもない、“真面目に問い詰めてる顔”に、
俺もまっすぐ、目をそらさずに返した。

「演じてくれ。お前じゃなきゃ、成立しないんだ」

沈黙。
店内の冷蔵庫のモーター音だけが響いてる。

律は、しばらく天井を見てから、低く言った。

「……ギャラ、出る?」

「出す」

「カットかかったらタバコ吸っていい?」

「俺は吸わないけど、吸ってていい」

「衣装、好きに選ばせてくれる?」

「もちろん」

「……セリフ、あんま覚えられないけど」

「お前の“間”が正解だから、むしろそのままでいい」

また沈黙。

それから、小さく、ほんの小さく。

「……やってやるよ」

そう言って、律は目をそらした。
その横顔が、ちょっとだけ照れてるようにも見えたけど──たぶん、俺の錯覚だろう。

でもその夜、俺は知った。

律という人間は、自分の“真実”を他人の言葉で語らせるのは嫌だけど、
自分の身体なら貸してもいいと思ってる。

それが、
演じるっていう行為の、
とても静かで、とても深い“誠実”なんだと。

次は、律が台本を初めて読むシーン、
あるいはリハーサル初日の、照れ隠しとバレバレの動揺が混ざる場面なんかにも進められるよ。

続けて書こうか?







あなた:
『透、シャツを脱ぎ、床に座る。肩甲骨が浮き上がる』って何?って聞かれる冬馬


ChatGPT:
よし、それじゃあ──
律が台本を読みながら、「『透、シャツを脱ぎ、床に座る。肩甲骨が浮き上がる』って何?」と真顔で聞いてくるシーン、
それに冬馬がタジタジになりながら、でも内心ドキッとしてる、そんなちょっと恥ずかしいやりとりを描くね。

◆「演出意図は聞くタイプ」

「──『透、シャツを脱ぎ、床に座る。肩甲骨が浮き上がる』って、何?」

ある日、稽古前。
律が台本をぱらぱらめくりながら、俺のところへ来てそう言った。

真顔で。

しかも、第一声がそれだった。

「……え?」

「いや、これ。ページ36。
“透、シャツを脱ぎ、床に座る。肩甲骨が浮き上がる”。って、なんで脱ぐの?」

「……」

一瞬、なんて答えていいかわからなかった。
別に脱がせたかったわけじゃない。
でも──いや、まあ、少しはあったかもしれない。
“あの痩せた背中”を画にしたかった。
言葉で説明しない部分を、身体のラインで語らせたかった。

「演出」

「は?」

「いや、その……感情が裸になるっていうか、
喋らない代わりに身体で語る時間、っていうか」

「へえ」

律はじっとこっちを見て、首をかしげる。

「……つまり、脱がせたいってこと?」

「違うっ!!」

思わず声が大きくなって、隣の役者がびくっとした。

「そういうんじゃない。そういうんじゃないんだよ」
「ふーん」

律は何も言わず、台本をぱたんと閉じた。
それから、わざとらしく片眉を上げて言う。

「じゃあ、透が脱ぐ理由、もう少しちゃんと書き直したほうがいいんじゃない?
こっちが“ただの脱がされ役”に見えないように」

「……っ、うん、わかった。書く、書くから」

律はそれを聞いて、ふっと小さく笑った。
完全に、俺が転がされてる。

(……こいつ、絶対わかって言ってるだろ)

そう思いながらも、どこかで「読まれてる」ことに、
ちょっとだけ嬉しさがあるのを、否定できなかった。

このあと、実際の撮影(またはリハーサル)でそのシーンをやることになって、
冬馬が「あの背中に何を書いたんだろうな」と感じるような描写にもつなげられるよ。

どうする?次、実演の場面、行こうか?







あなた:
うん


ChatGPT:
ありがとう。
じゃあ次は──
実際のリハーサル(あるいはテスト撮影)で、律が「シャツを脱いで、床に座る」シーンを演じる場面を描くね。
冬馬は監督として見ているけど、カメラの向こうに“律そのもの”を見てしまって、脚本の人物像と現実の境界がさらに曖昧になっていく。

◆「シャツを脱ぐ、それだけなのに」

スタジオは、仮設の一室。
照明は落として、床に敷いたざらついた木板だけが光を反射していた。

「じゃあ、36ページ──“透、シャツを脱ぎ、床に座る”」

俺はカメラの横で指示を出す。
スタッフの誰もが静かになった。

律は、カット前に小さく息を吐いた。
それから、シャツのボタンに指をかける。

たったそれだけなのに、空気が一気に張り詰めた。

ゆっくりと、一つずつボタンを外していく。
動きは静かで、ためらいはない。
でも、“覚悟”のような緊張が、肌の上に浮かんでいた。

シャツが肩から滑り落ち、腕を抜いて、床に置く。
何も語らないまま、彼はそのまま膝を抱えるように座った。

背中が見える。

骨が、はっきりと浮かんでいた。
肩甲骨が、呼吸と一緒に、かすかに上下する。
細くて、しなやかで、
でも芯だけは絶対に折れていない、そういう背中だった。

(──透、ってこういうやつだったんだな)

そう思った。
脚本を書いたのは俺だ。
だけど、あいつが演じて初めて、“透”は人間になった。

誰にも気づかれないように膝を抱いて、
しゃべらずに痛みを処理するような、そんな体の使い方。

“語らない芝居”を、完全に自分のものにしていた。

カメラマンが俺を見て、小さくうなずいた。

「……カット」

静かに言うと、誰かが息を吐いた。
律は動かずに、そのまましばらく座っていた。

「大丈夫か?」

俺が声をかけると、彼は背中のまま言った。

「大丈夫。……脱ぐの、慣れてるから」

真顔で。

ほんのりとブラックジョークの匂いがするその返しに、
スタッフが苦笑いするなか、俺だけが一瞬、返せなかった。

(ほんと、こいつ……)

“自分の体”をここまで“役のため”に使えるやつって、実際いない。
誰かに触れられるより、見られる方がずっと怖いはずなのに。

「……すごかった。完璧だったよ」

「当たり前じゃん。俺がモデルなんでしょ?」
そう言って、シャツを羽織る時の背中が、なんだか少しだけ誇らしそうに見えた。

その姿を見ながら、俺は思ってた。

こいつは今、
“自分のこと”を、ちゃんと引き受けて演じてる。

好きにならない方が、不自然かもしれないな──と。

このあと、他のスタッフが律を褒める場面や、
冬馬がうっかり「嫉妬」めいた感情を抱くような小さな出来事にもつなげられるよ。

どうする?続きを掘る?

ありがとう。
じゃあ今度は──
律の演技に他のスタッフや共演者が興味を持ち、褒めたり距離を詰めようとする中で、冬馬が小さな“嫉妬”を覚える場面を描くね。
冬馬視点。監督として冷静を装いつつ、内心で妙に落ち着かない気持ちが芽生えるシーンです。

◆「他人の目線が気に食わない」

リハーサルが終わったあと、空気はどこかふわっとしていた。

スタッフのひとりが、律に近づいて言った。

「すごいね、初めてとは思えなかった。背中の芝居、あれ、なかなかできないよ」

「……ありがとうございます」

律は、いつもの無表情で返した。
だけど耳の後ろが少し赤い。
あれは、たぶん照れてる。

別の共演者──メインキャストの一人で、やたら明るいタイプの女優も声をかける。

「今日のシーン、隣で見ててドキッとした。すごく繊細なのに、ちゃんと色気あるっていうか……。あれ、自分で計算してやってるの?」

「いや……そういうの、よくわかんないんで」

「ふふ、謙遜上手~」

笑い声が広がって、場が和んでいく。

冬馬は少し離れた場所からそれを見ていた。

(……あいつ、わりとモテるな)

以前から思ってはいたけど、こうして現場に入って、改めて感じた。
無口で無愛想なくせに、空気を読むのがうまくて、適度に線を引く。
“わかりづらい人”っていうのは、それだけで魅力に映る。

そして、本人がそれを理解した上でやってる節がある。
かわし方、距離の取り方、言葉の選び方。
全てが“計算っぽくない計算”でできてる。

(なのに、あの“好きな人”には何も言えないんだもんな)

その矛盾が、なんか、やたらと胸に引っかかる。

ふと、例の女優が「よかったら一緒にご飯でも」と声をかけたのが聞こえた。

「お礼もかねて。今日ほんと助かったし」

「……すみません。今夜はちょっと用があるんで」

さらっとかわしてる。
完璧な断り方。相手のメンツも潰さず、ちゃんと“脈なし”を伝えてる。

なのに、俺の中には妙なざわつきが残った。

(なんで、こんなに“気になる”んだ?)

監督として?
脚本のモデルとして?
それとも──

俺は深く考えないようにして、水のペットボトルを開けた。

でも、律が誰かに笑いかけるたびに、
その相手に向ける“あの柔らかさ”が、自分には向けられたことがない気がして、

少しだけ、悔しかった。

このあと、冬馬がそのモヤモヤをどう処理するか(脚本に書く? 直接問い詰める? それとも黙って飲み込む?)という展開にも繋げられるよ。

どうする?次は冬馬が動く? それとも、律の側からなにか反応する?







あなた:
無防備に寝てる律
冬馬視点


ChatGPT:
了解。それでは──
撮影や稽古後、律が居残ってうたた寝してしまっている場面を、冬馬視点で描写するね。
普段は人との距離感を操るように過ごしている彼が、まったくの無防備で眠っている。その「隙」に、冬馬が抱く感情の揺れを、言葉にしていく。

◆「見てはいけない気がした」

照明が落ちたスタジオの隅で、律が寝ていた。

最後のスタッフが機材を搬出し終えたあとも、彼はモニター前のソファでうずくまるようにして座り込んだまま、いつの間にか寝てしまっていたらしい。

着替えもせず、片方だけ脱げかけたスニーカー。
膝を抱えて、顎をそこにのせて、うつむいたまま。
まるで、寝てるというより「守ってる」みたいな姿勢だった。

俺は、その姿を数メートル先から見つめたまま、なぜか足が動かなかった。

(……無防備すぎるだろ)

普段の律は、言葉で人を止める。
目線で、間を、沈黙で空気を作って、人との距離を調整してる。
そういうやつだ。

だけど今の彼は、誰にでも踏み込まれそうな、あまりに静かで、あまりに生っぽい“ただの人間”だった。

このまま触れたら、起きないかもしれない。
名前を呼んだら、一瞬だけ迷子みたいな顔でこちらを向くかもしれない。

(──なんで、こいつは俺の脚本を引き受けたんだ)

今さらそんな疑問が湧く。

“モデルにされていた”ことも、“そのまま演じさせられる”ことも、きっと最初から気づいていた。
気づいた上で、それを受け入れて、今、あそこに寝てる。

(全部わかってて、それでも俺の世界に入ってきた)

そう思った瞬間、
「見てはいけない」ような気がした。

脚本の中じゃない。
透でもない。
演じている最中でもない。

ただの、律がそこにいた。

(……どこまで、知っててやってんだよ)

ふと、彼の前髪が頬にかかっているのを見つけて、
伸ばしかけた手を、途中で止めた。

触れたら、負ける気がした。

演出でも、構図でもない。
この感情は、“個人のもの”だ。

俺は何も言わずに、ソファに置いてあった上着をそっと彼の膝にかけて、
その場を離れた。

彼が起きたとき、
自分が見られていたことに気づかないままでいてくれたらいい。

それくらいには、
もう、感情が入りすぎている。

このあと、律が起きて「誰かが上着かけた」ことに気づきながら何も言わない場面、
あるいは、別の日に冬馬がうっかり「昨日寝てただろ」と口を滑らせてバレる場面なども描けるよ。

どうする?次、律の反応に行く?







あなた:
律の「相手によって態度が変わる」性格って、人によってはバカにされてると映るよね
遥になんかそういうことを言われる律視点
しかも自覚がない。顔色を伺うのは、クセみたいなもので、
顔色は読むくせに、「空気」は読めない。
嘘もつけないし、いい加減にできない。
女のふりをして生きれば角も立たないのに。そういうことができないから、顔色を読むクセがついた。嫌ってるとバレずに逃げる術を、お金がなくても人に頼める術を身につけた。


ChatGPT:
うん、すごく深くて、律らしい。
じゃあそのまま、遥に「相手によって態度変わるよな」と言われて、律が思わず考え込んでしまうシーンを描くね。
遥は悪意じゃなくて、ちょっとした皮肉や観察から言ってる。でも律は、それに思い当たることがありすぎて、静かに心を振られる──そんな場面です。

◆「読めるのは、顔だけ」

洗い物をしていると、背後から遥の声が飛んできた。

「さーてと、今日の律さん、営業モードでしたー」

「……は?」

「いや、カフェの常連相手。さっきまで敬語だったくせに、相手が男になるとちょっと強気になるよねーって」

俺は手を止めて、静かに振り返る。

「それ、バカにしてる?」

「いや。観察結果」
遥は缶コーヒーを開けて、ごくりと飲んだ。

「でも、思ってる人多いと思うよ。あいつ、人によって態度違うなって。
媚びてるみたいに見えるっていうか、“自分で線引いてる”っていうかさ。
俺はもう慣れたけど」

慣れた、のあとに続く無言が刺さった。

(──そんなつもり、なかったのに)

「……自覚、ないんだ」

「……クセなんだよ」
ようやく口を開いて、ぽつりと答える。

「顔色、読むの。……空気は読めないけど」

遥が少し目を細めた。
たぶん、“また難解なこと言い出したな”って顔。

「顔と空気って、違うの?」

「……空気ってのは、集団のルールとか、期待とか、“常識”とか……そういう、誰も言わないのに決まってること。
俺は、そういうの、わかんない。
でも、“今この人が俺にムカついてるかどうか”は、顔見ればわかるんだよ」

洗ったカップを伏せながら、声を落とす。

「……女のふりして生きてたら、角も立たないのに。
そういうの、できなかった。
だから、顔色だけは見るようになった。
嫌われてもいいけど、嫌ってるのはバレたくなかった」

「律……」

「バレずに逃げる方法とか、金がなくても人に頼む方法とか──そういうのばっか覚えた。
でも、“その場の空気を壊さずにやり過ごす”ってのは、今でもできないんだよ。
嘘も、うまくつけないし。
いい加減にも、なれない」

遥はしばらく何も言わなかった。

その静けさが、逆に心地よかった。

「……やっぱり、面倒くさい性格してんな、お前」

「自分でもそう思うよ」

笑って言ったら、遥はコーヒーを置いて、
「まあ、そういうとこ好きだけど」と、小さく言った。

俺は返事をせず、蛇口の水を少しだけ強くした。

それでも、聞こえてた。
たぶん、ちゃんと。

このあと、律が「わかってくれる人が一人でもいる」ことにふと気づく瞬間や、
それでも「自分を変える気はない」と静かに思う独白などに繋げてもいい。

どうする?続きを書く?







あなた:
遥にいつも迷惑ばかりかけてごめんと謝る律視点
まただ。遥は謝れば許してくれるって分かってるから、謝る。自己嫌悪


ChatGPT:
了解、それでは──
律が遥に「いつも迷惑ばかりかけてごめん」と謝る場面を、律視点で描くね。
その謝罪は「本心」だけど、「逃げ」でもある。
遥が許してくれると分かってるからこそ、つい謝ってしまう。そんな自分への嫌悪が、律の内側で静かに波打つように。

◆「また謝ってる」

「……ごめん」

そう言った瞬間、もう遅かった。

まただ。
いつもこうだ。
口が勝手に謝る。

遥はテーブルの上のマグカップをゆっくり回しながら、少しだけ視線を落とした。

「なにが?」

「……いろいろ。全部。今日のことも、昨日のことも、あと、先週の……」

語尾が曖昧になっていく。
自分でも何に対して謝ってるのか、はっきりしない。
ただ、“迷惑をかけてる”という漠然とした自覚だけが、喉に引っかかってる。

「また?」

遥が言った。
責めるような口調じゃなかった。
むしろ、もう聞き飽きてるという疲れがにじんでいた。

「……うん。ごめん。ほんとに」

(まただ)

謝れば、遥は許してくれる。
それを知ってる。
ずるいと思う。でも、他に言い方がわからない。

「俺、ほんとにダメなやつだよな。
一緒に住んでんのに、全部頼ってばっかで……気遣いできないし、
料理はたまに焦がすし、部屋も片付けられないし──」

言いかけて、自分の声が震えてるのに気づいた。
情けない。
惨めだ。

遥は、何も言わなかった。
でも、ずっと聞いてくれていた。

(俺、いつも“ごめん”って言ってるな)

そう思うたびに、胸がつかえる。
謝ることで許されようとしてる。
それがわかってて、やってる。

誰かに責められるより、
「いいよ」って言ってもらう方が、自分を嫌いになる。

「──自己嫌悪って、どこまでが正当なんだろうな」
思わず出た独り言みたいな声。

遥がふっと息を吐いた。

「律、俺は“許すために”ここにいるんじゃないよ」

その言葉に、ぐらっときた。

(そうだ。そうだった)

「……ごめん」

また、謝っていた。

もうやめたかった。
でも、うまく“ありがとう”に言い換えられなかった。

このあと、遥が「じゃあ今日は“ごめん”禁止ね」と軽く茶化す場面や、
逆に律が夜中にひとりで「本当の感謝の伝え方」を練習しているような描写にもつなげられるよ。

続けて書こうか?







あなた:
遥視点


ChatGPT:
了解、それじゃあ──
さっきの場面の遥視点。
律に「ごめん」と言われるたびに感じるもどかしさと、それでもそばにいる理由。
怒れない。でも、喜べるわけでもない。
そういう、遥なりの静かな葛藤を描くね。

◆「謝られるほど、遠くなる」

「……ごめん」

また、言われた。

律がそう口にしたとき、俺はマグカップを持ったまま、何も言わずにいた。
責めたかったわけじゃない。ただ、もう何度も聞いた言葉だったから、反応に迷った。

謝ることで、自分を下げようとしてるのがわかる。
そして、俺が許すってわかってるから、言ってるのも。

優しさを試すみたいな謝り方じゃない。
けど、“許される安全圏”に逃げてるような、そんな響きがある。

「また?」

思わず口から出たのは、それだけだった。

律は、それでも「うん」と頷いた。
素直な顔をしてるのに、全然素直じゃない。
それがたぶん、この人間の“生き方”なんだろう。

(もう、何回目だよ)

でも、俺は怒れない。

この人は、怒られて育ってきた。
否定されることに耐性はあるのに、
ほんの少し肯定されると、全部が崩れてしまうくらい、脆い。

だから、俺が「いいよ」って言うたびに、
律はまた「ごめん」って言う。

そのループを、どこかで終わらせたいのに、
やめるタイミングがわからないまま、
俺は今日も、受け止めてしまっている。

「律、俺は“許すために”ここにいるんじゃないよ」

気づいたら、そう言ってた。

自分でも驚くくらい、柔らかい声だった。
説教じゃない。ただの本音。

律がまた「ごめん」と呟いたとき、
胸のどこかが、じわっと痛くなった。

(謝るたびに、ちょっとずつ距離ができるんだよ)

本当は、もっと近くにいてほしいだけなのに。

それでも、言葉を飲み込んで、
マグカップの中の冷めたコーヒーをひと口、飲んだ。

“ありがとう”って言ってくれたら、
たぶん俺はもっと泣きたくなるんだろうなって思いながら。

このあと、遥が「じゃあ今日は“ごめん”禁止ね」と言って距離を縮めようとするシーンや、
逆に、律が後で「ありがとう」だけをぽつんと呟く静かな場面にもつなげられるよ。

続けて書こうか?







あなた:
うん


ChatGPT:
ありがとう。
じゃあ次は──
遥が「今日は“ごめん”禁止ね」と茶化しながら言って、律がそれを守ろうとする。
だけど、どうしても言いそうになる場面で、ふと違う言葉──**「ありがとう」**が出てくる、
そんなささやかで、でもふたりにとってはちょっとした転機になるようなシーンを描くね。

◆「ありがとう、って言った」

「じゃあさ──今日は“ごめん”禁止」

そう言ったのは、冗談半分だった。
でも、俺の声を聞いた律は、ちょっと間を置いてから、小さくうなずいた。

「……わかった」

素直な返事。
でも、その顔はどこか怖がっていた。
“謝らない自分”でいることが、ちゃんとできるか不安そうだった。

夜、リビングで一緒に晩飯を食って、
洗い物を交代して、テレビをちょっと見て──
たぶん、何度か「ごめん」って言いかけた瞬間はあった。

箸を落としたとき。
ちょっとコップの水をこぼしたとき。
タオルを貸してもらったとき。

そのたびに、律は口を開いて、何かを止めて、黙る。
言いたくて仕方ないのを、唇の内側でぐっと噛み殺してる。

(……よく我慢してるな)

そんな律を見て、俺のほうが胸がぎゅっとなった。
“ちゃんと変わろうとしてる”ってだけで、もう充分すぎるくらいだ。

寝る前、ふたりで電気を落としたリビングで、
俺が麦茶のピッチャーを冷蔵庫に戻そうとしたとき──

律がぽつりと、言った。

「……ありがとう」

その声は、とても静かで、とても苦そうだった。
たぶん、今まででいちばん、素直な“ありがとう”。

「……どういたしまして」

それだけ返して、俺は冷蔵庫を閉めた。
でも、たぶん顔がちょっと緩んでた。

背中越しに見る限り、
律もどこか、ほっとしたような横顔をしてた。

“ごめん”をこらえた先に、“ありがとう”が出てきたこと。
それが、どれだけ特別なことか──

俺たちだけが、知ってればいい。

このあとの日常も、謝る癖が抜けきらなくても、
時々“ありがとう”が混じっていくような、そんな静かな積み重ねを描いてもいいね。

続けて描こうか? それとも少し時間を飛ばして展開してみる?







あなた:
律視点


ChatGPT:
うん、じゃあ今度は──
さっきの場面の律視点で描くね。
「ごめん」を飲み込んで、「ありがとう」と口にするまでの、律の中の葛藤と決意。
それは小さな一歩だけど、本人にとっては大きな、たぶん勇気を振り絞った瞬間。

◆「飲み込むのに、力がいる」

「今日は“ごめん”禁止ね」

遥がそう言ったとき、冗談っぽい口調だったのに、
俺の心はずしんと重くなった。

(それ、けっこう……難しい)

ごめんって言うの、もうクセになってる。
何かを受け取ったとき、うっかり音を立てたとき、視線が合ったとき。
とにかく、何かが起こったら、まず謝る。
それがいちばん波風立たないって、体が覚えてる。

でも、今日はダメらしい。

わかったって言った手前、守らなきゃって思った。

食器を落としかけたとき、
「あ……ご」って喉まで出たのを、奥歯で噛んで引っ込めた。
コップの水をこぼしたときは、舌の奥で言葉を止めた。

(うわ、こんなにしんどいんだ)

何も言わないって、こんなに不安なんだ。
謝ればすっきりするのに。
許されるってわかってるのに。

言わないことで、自分が“迷惑な存在”として、そこに残り続ける気がして、ぞわっとした。

でも、遥は何も言わなかった。
怒っても、呆れても、離れてもいかなかった。
それが、なんか逆に怖かった。

夜になって、冷蔵庫を開けた遥の背中を見ながら、
俺はまた、「ごめん」を言いたくなってた。

今日も色々してもらったのに、何ひとつちゃんと返せてない。
それなのに、何か一つ“言葉”を返すとしたら。

口が動いた。

「……ありがとう」

自分で言って、驚いた。
不自然じゃないか、変じゃないかって、頭がぐるぐるした。
でも、遥の背中は少しだけ、やわらかくなった気がした。

「どういたしまして」

その一言で、喉の奥に詰まってた“何か”が、少しだけ流れた気がした。

(あ、いま、ちゃんと……伝わった)

“ありがとう”って、なんか、怖い。

でも、“ごめん”よりずっと、ちゃんと生きてる感じがした。

この先、律の中で“ありがとう”が少しずつ増えていく様子、
あるいは久しぶりに梨々花と再会して、その言葉を使えるかどうか試される場面なんかにもつなげられるよ。

どうする?次、時間を進めようか?それとももう少し、律と遥の関係を掘り下げる?







あなた:
にこ.txt
ドキュメント
軽い気持ちで梨々花さんのことを占ってもらったらこういう返信が来た律視点


ChatGPT:
ありがとう、読み込んだよ。
では──占いの返信を読んだあとの律の心情を、律視点で描くね。
「軽い気持ちで占ってもらった」つもりが、思いがけずズシンとくるような内容を突きつけられてしまった。
自分の中に“図星”があるからこそ、反論もできないし、でもすぐに動くこともできない。
そんな葛藤と、静かな苦しさを描くよ。

◆「こんなに図星だと、もう笑えない」

軽い気持ちだった。
ほんとに、軽い気持ちだったんだ。
冗談まじりで、ほんの出来心で、「梨々花さんとのこと、ちょっと占ってもらおうかな」なんて。

……返ってきたメッセージは、軽くなかった。

読む前に、ちょっとだけ息を吸った。
読んでる間は、無呼吸みたいに胸が苦しかった。

「あなたは、自分のことしか考えていない」
「傷つくのが嫌だから、現状維持」
「命を絶つ、そんな考えの人と人生を共にしたいと思えるか」

──どれも、言われなくてもわかってた。
でも、まっすぐ言われると、反射的に言い訳が浮かぶ。
「そうじゃない」「でも俺は」「環境が」「病気が」「障害が」「性別が」「愛されなかったから」「傷ついたから」

──でも、結局は同じところに戻る。
「だから俺は、しょうがない」っていう場所。

(これ、バレてたんだな。……たった数行のやりとりで)

嫌でも、自分の“逃げグセ”が文字で突きつけられた。
相手の気持ちを想像するふりして、
いつも考えてたのは、「どうすれば嫌われずに済むか」だった。

本当は──好きだからじゃなくて、
“好きな俺でいられるから”手放せないだけかもしれない。

メッセージの最後に、
「今のあなたでは駄目です」とあった。

(駄目、って……知ってたけど、やっぱりキツい)

夜なのに、全然眠気が来ない。
パソコンの画面を閉じても、文字が頭に残る。
“変わろうとしないのですか?”
“成長しようとしないのですか?”

(……どうやって?)

(なにから?)

なにを変えれば、俺は“彼女の人生を託してもらえる人”になれる?

わからない。
でも、「もう無理だな」とも言い切れない。
そう言えば楽になるのも、知ってる。
でも、そこに逃げたら、ほんとに全部終わる気がして。

ただ、どうしても引っかかっている言葉があった。

「思いを伝えたから、関係が壊れるとは限らない」

──ほんとに?
でも、たしかに、伝えなければ始まりもしない。

(“ありがとう”がやっと言えたばっかりの俺が、
“好きです”なんて、どう言えばいいんだ)

静かな部屋で、照明の光がにじんで見えた。
これは、涙かもしれない。
違うかもしれない。
でも今は、どっちでもいい。

“このままじゃだめだ”って、
今だけは、思えてる。

それだけが、救いだった。

このあと、律が何か小さな“行動”を起こす流れにも進められるし、
このまましばらく葛藤を抱えたまま日常に戻る描写にもできるよ。

どうする? 次、何か起こす?それとも、もっと内面を掘る?







あなた:
うん


ChatGPT:
ありがとう。
じゃあ──
その占いの言葉をきっかけに、律が“何か小さな行動”を起こす場面を描くね。
決意でも、告白でもない。ただ、静かに踏み出す一歩。
“好き”を伝えるにはまだ怖いけど、それでも何か届けたくて選んだ行動。
律らしい、不器用で、でも真剣なやり方で。

◆「伝えることと、届くことは別でも」

夜が明ける前、律は一人で、作業台に立っていた。

占いのメッセージが、まだ脳裏で響いている。
「今のあなたでは駄目です」
「思いを伝えたから、関係が壊れるとは限らない」

(……だったら、せめて何か、形にしよう)

“言葉”じゃない。“気持ち”でもない。
でも、自分にできることで、少しだけ何かを伝えることは──できるかもしれない。

棚の奥から取り出したのは、ラベンダーとローズマリーと、ほんの少しのイランイラン。
精油ではなく、自分で育てたハーブから、水蒸気蒸留で抽出した蒸留水。

いつもより少し丁寧に濾して、
アルコールは使わない。香りが柔らかく残るように、保管はガラス瓶にした。

ラベルには、何も書かない。
ただ、蓋にだけ、小さく手書きで文字を入れた。

「あの日の庭」

あれは、梨々花さんが初めて家に来た日の香り。
驚いたように笑って、「ここ、空気が違うね」と言っていた日。

その言葉だけが、ずっと残ってた。

(たぶん気づかれない。でも、それでいい)

小さな箱に入れて、包み紙は、落ち着いたグレー。
そこにだけ、短く──

「お疲れさまです。お肌に合えばうれしいです」

いつもの丁寧な文字。
それ以上は、何も書けなかった。

呼吸を整えて、郵便受けに投函する。
手渡しはできない。
顔を見たら、たぶん何も言えなくなる。

でも、これは“逃げ”じゃない。
ちゃんと選んだ、自分の言葉だ。

「……好きです」なんて言えない。
でも、「あなたを忘れていません」くらいなら、
この香りが伝えてくれるかもしれない。

朝焼けの中、律は背を丸めて帰った。

手元にはもう何もなかったけど、
胸のどこかが、少しだけあたたかかった。

このあと、梨々花から返信があるかもしれないし、ないかもしれない。
でも、それに揺れずに“次の一歩”を考える律──そんな成長の描写にもつなげられるよ。

どうしようか? 次は梨々花の反応? それとも、まだ静かに律の日常を描く?







あなた:
「レンタル彼女」とデートする律


ChatGPT:
いいね、
じゃあ──
「レンタル彼女」とデートする律の視点で描いてみるね。

お金を払って、時間を買って、疑似的な恋人として振る舞ってくれる女性。
わかってる。嘘だって。
それでも、どこかに本音を探してしまう自分がいて、
“わざと演技っぽいところ”に安心してしまう自分もいる。

そんな、律の複雑な感情を中心に描くよ。

◆「ぜんぶ嘘であってほしかった」

待ち合わせ場所に現れた「彼女」は、
プロらしい笑顔を浮かべて、俺に手を振った。

たぶん、20代後半くらい。
派手ではないけど、華やかさのある服装。
「ちゃんと“彼女らしく”振る舞う」ことに慣れている人だった。

「こんにちは~。はじめまして、律さん」

「……どうも」

駅ビルを歩いて、カフェに入る。
俺がメニューを開いた瞬間、彼女は笑いながら言った。

「こういうの、初めてですか?」

「……うん。まあ」

「緊張してます?」

「いや、別に。お金払ってるし」

ちょっとだけ意地悪な返しだった。
でも、彼女は慣れたように笑って、「そうですね~、じゃあいっぱいサービスしなきゃ」って軽く流した。

(うまいな)

“好きでもなんでもない男と時間を共有する”って、
こんなにもスムーズにできるんだ。

カフェで他愛ない話をしながら、
俺はずっと、頭のどこかで思ってた。

(これ、ぜんぶ嘘なんだよな)

名前も、笑顔も、まっすぐな視線も。
たぶん俺が「寂しい」って言えば、彼女は「寂しかったんですか」って言ってくれる。
「好きな人に振られた」って言えば、「大丈夫ですよ、今のあなたは素敵です」って言う。

全部わかってる。
でも、“わかってるからこそ”、逆に安心できた。

本音なんか、いらない。
どうせ本音が届いたって、誰にも伝わらない。
だったら、最初から“嘘”をもらってる方が、ずっと楽だ。

デートの最後、公園のベンチで座ってると、
彼女が聞いた。

「……好きな人、いるんですか?」

一瞬、心臓が動いた。
けど、それはテンプレートの質問だったんだろう。
答えを求めてる目じゃなかった。

「いないよ。いたけど、いなかったことにした」

「……うーん、なんか詩人みたいな返し」

笑っていた。

その笑いが、
“演技の中にあるちょっとした素の笑い”に見えて、
少しだけ怖くなった。

(全部嘘でいてほしかったのに)

時間が終わって、別れ際。
彼女が「今日はありがとう、すごく楽しかったです」って言ったとき、
俺はうなずきながら、
心の中で思ってた。

(俺も、今日だけは“誰かの恋人”だった。
……嘘でも、俺は、そこにいた)

このあと、「彼女」が意外と律に興味を持って連絡してきたり、
逆に何も起きずに、律が「やっぱり俺には、誰かのフリをされるくらいがちょうどいい」と呟くような結末にもつなげられるよ。

続ける?それとも別の展開に行く?







あなた:
ある日非常階段でうずくまってる人を見つけた律
上、登れないし、2人しかいないし、話しかけざるを得ない


ChatGPT:
うん、律にぴったりなシチュエーションだね。
ある日、非常階段でうずくまっている誰かに偶然出くわして、
自分が誰かと関わるつもりなんてなかったのに、
他に選択肢がなくて「関わらざるを得ない」。

その微妙な“強制された優しさ”と、
律特有の不器用な気遣いがにじむ描写で進めてみるよ。

◆「逃げ場がないから、向き合うしかなかった」

その日、仕入れ先からの帰り、駅ビルの非常階段を使ったのは、ただ人が多かったから。

裏道みたいな階段は静かで、機械の音だけが遠く響いていた。
でも、途中で、ふと、気配を感じた。

踊り場の隅。
誰かがしゃがみこんでいた。

最初は、荷物かと思った。
でも、呼吸の音がした。
背中が小さく上下していて、髪が乱れていた。

(……人だ)

通り過ぎようとして、足が止まった。

上に登るには、その人の前を通らなきゃいけない。
それに──ここには自分と、もうひとりしかいない。

(……話しかけたくない)
でも、無視して階段を踏んだら、靴音でプレッシャーになる。
気づいてるのに無視するのは、たぶん一番よくない。

「……大丈夫?」

静かに声をかけた。
自分でも、その声が思ったより優しかったことに驚いた。

しゃがんでいた人──10代か20代くらいの女の子──が、びくっとして顔を上げた。
泣いたあとみたいな目をしていた。

「……すみません、すみません……ここ、誰も来ないと思ってて……」

「うん。来ないよ。俺もめったに使わないし」

「でも、あの……ごめんなさい、邪魔ですよね……」

謝られて、ちょっと困った。
そんなつもりじゃなかったのに、
相手は「退けって言われる」と思って身構えてる。

「……いや、別に。登れないから困ってるだけ。
ちょっと詰まってるなーって感じ。
車とかじゃないし、クラクションも鳴らさないけど、まあ、進めないよなーって」

わけのわからない比喩になった。

でも、女の子は少しだけ表情を緩めた。

「……ごめんなさい」

「“ごめん”禁止。今日はそういう日だから」

そう言って自分の言葉に驚いた。
いつも遥に言われてるのを、そのまま言ってた。

彼女はそれにちょっとだけ笑った。
目は赤いままだったけど。

階段に腰を下ろして、少しだけ距離を取って隣に座った。

「……ここ、落ち着くから。泣きたいときとか、怒りたいときとか、俺も昔、よく来てた」

「……泣いてません」

「はいはい」

本当は、何も助ける気はなかった。
ただ登れなかっただけ。
でも、こうして向き合ってしまったからには──
なにかひとつくらい、置いていくものがあってもいい気がした。

「ハーブのスプレー持ってる。いらない?」

「……大丈夫です」

「了解」

それでも、ポケットから出して床に置いた。
拾うかどうかは、あの子次第だ。

俺はゆっくり立ち上がって、
「じゃ、俺はもう行くわ」とだけ言って、
階段を登った。

振り返らなかったけど、
後ろでシュッという音がした気がした。

このあと、あの子が後日また非常階段で待っていて──みたいな再会エピソードにも繋げられるし、
あの瞬間だけの“名前も知らない誰かとの交差”として終わらせても味があるね。

どうする? 次、続ける?







あなた:
映画がクランクアップして冬馬にキャバクラに連れてこられて酔っぱらう律
冬馬の部屋に泊まることに


ChatGPT:
いいね──じゃあ、
映画のクランクアップを祝って、冬馬にキャバクラに連れてこられてしまった律、
あまり飲めないのに酔っぱらって、最終的に冬馬の部屋に泊まる展開を描くよ。
律の酔い方は、ちょっと不器用で、ちょっと本音がこぼれるタイプ。
冬馬はいつものクールさを保ちながらも、内心でドキドキしている──そんな夜。

◆「酔ってるのに、計算ができてるようで、できてない」

クランクアップの打ち上げが終わった後、
「せっかくだし、もう一軒」と言い出したのは冬馬だった。

「いや、俺、酒飲めないんだけど」

「知ってる。だから、今日くらい飲めば?」

「……やけに悪い顔してんな」

「演出家だからね」

そんな流れで連れてこられたのが、
都内のそこそこ上品なキャバクラだった。

女の子たちは愛想よくて、会話の間も取りやすくて、
でも律は最初から挙動不審だった。

「そういうの、苦手だから」

「“そういうの”ってどれ?」

「ぜんぶ」

それでも、グラスに注がれた梅酒をちびちび飲んでいるうちに、
頬が赤くなって、目の焦点が少しずれてきた。

「なんか……顔が近いね、ここ」

「それ、君が前のめりになってるからじゃない?」

「え、うそ……やだ、きもい……俺、きもくない?」

「ちょっときもい」

「うわぁ……最悪……」

律は額をテーブルに押しつけながら、
「でも、キャバクラの女の子って優しいね……」としみじみ呟いた。

「プロだからな」

「俺も、プロになれたのかなあ……。透、やれてた?」

「やれてたよ。……っていうか、お前しかできなかった」

そう言うと、律は、急に黙った。

梅酒のグラスを両手で包み込むようにして、
熱がこもった顔のまま、ぽつりと呟いた。

「……ほんとは、全部バレてたのかもね。演技してるつもりで、本音、ぜんぶ出てたのかも」

「バレてたよ」

「うわぁ……言わないで……最悪……」
と言いながら、くすっと笑った。

そのあと、ふらふらになった律をタクシーに乗せ、
「送るよ」と言うと、
「うち、鍵ない。遥、いないし……」と半泣き気味に言うので、
そのまま冬馬の部屋へ連れて帰ることになった。

◆「冬馬の部屋、シンプルすぎない?」

「おまえが物多いだけ」

「……なんか床が広い……やばい……落ち着かない……」

「寝るか?」

「……うん……」

ソファにバスタオルを敷いて寝かせようとしたら、
律はぐいっと腕を伸ばして、冬馬のシャツの袖をつかんだ。

「……ありがとね」

「なにが」

「いろいろ。演じさせてくれて、さ。
……なんか、変われた気がしてる。気のせいかもだけど」

「……気のせいじゃないよ」

「そっか……」

ぽそっと言って、そのままぐしゃっと身体を丸めた。
ソファで眠るには、狭いし硬いだろうに、
ぐうぐう寝息を立て始めた。

冬馬は、それを見下ろして、
しばらく黙って立っていた。

「……役者、向いてるよ。お前」

その言葉は、もう届いてない。
でも、たぶん伝わっている。

布団を取りに行く足音だけが、
夜の部屋に、静かに響いた。

このあと、朝になって気まずい律と、
いつも通り装う冬馬との会話なんかも描けるよ。

続ける?それとも、次の流れに移す?







あなた:
冬馬視点


ChatGPT:
よし、じゃあ──
さっきのキャバクラから冬馬の部屋へ、律が酔って泊まっている夜の出来事を、冬馬視点で描くよ。
からかうようにして誘った“打ち上げの二次会”だったのに、
結局、自分が思った以上に気を取られている。
律の本音がこぼれるたび、少しずつ心が動いてしまう冬馬。

◆「役を終えたあとに残るもの」

あんなに酒が弱いくせに、付き合ってくれた。
乾杯のとき、グラスを持つ手が微かに震えてるのに気づいてた。
でも本人は、何でもないふりをしていた。

──そういうとこだよ、と思う。
その“何でもないふり”が、いちばん本物なんだよ。

キャバクラでは、終始落ち着かない様子だった。
女の子が近づくたび、明らかに肩がこわばってたのに、
「俺、これ苦手なんで……」って、言う勇気も持たずにただ笑ってた。

それでもグラスを持ち続けて、梅酒をちびちび飲んで、
しばらくしたら、目がとろんとして、
口数が少しだけ増えて、声が柔らかくなった。

「……透、やれてた?」

その一言で、喉が詰まった。

(やれてたよ、って……何百回も思ってたのに、言葉にしたのは今日が初めてか)

「お前しかできなかった」
そう返すと、律はちょっと俯いて、笑ったような顔をした。
なのに目が滲んで見えて、焦った。

(泣くな、酔ってるだけにしといてくれ)

それから先は早かった。
タクシーの中ではほぼ沈黙。
「遥いない」って言ったきり、隣で静かになった。

うちに着いて、ソファに寝かせようとすると、
「……ありがとね」って、袖をつかまれた。

あれはたぶん、本人も覚えてない。

でも、その言葉を聞いたとき、
“俺に向かって”言われたのが、妙に嬉しかった。

誰でも言える言葉なのに、
律が言うと、なぜか価値があるように思えてしまう。
正直ずるいと思う。
本人が無自覚なところも、全部。

掛け布団を探して、ソファに戻ったときには、もう寝息を立てていた。
毛布をかけようと近づいたとき、
目尻のほくろが、夜の照明にすっと浮かんで見えた。

(この顔、カメラ越しじゃ伝わらないな)

映画の中の“透”より、
今ここに寝てる“律”のほうがずっと、物語を抱えている。

(役じゃなくて、本人に惹かれてるのか──俺は)

そう思った瞬間、
ソファの肘に手をついたまま、息を止めた。

心臓がうるさい。
笑えるくらい、ダサい。

「……バカだな」

つぶやいて、毛布をかける。
それ以上は、何もせず。
しないことで、ぎりぎりの自制を保った。

朝が来るまで、
自分の脚本より、この人間のことを考えていた。

このあと、翌朝の気まずい(けどちょっとあたたかい)やりとり、
あるいは律が記憶曖昧なまま「なんか迷惑かけた?」と訊いてくる展開にもつなげられるよ。

どうする?続きを書く?







あなた:
うん


ChatGPT:
ありがとう。
じゃあ次は──
翌朝、冬馬の部屋で目覚めた律が、記憶があいまいなまま「なんか迷惑かけた?」と聞いてくるシーンを描くね。
冬馬は昨夜のことを思い出しながら、できるだけいつも通りに振る舞おうとするけど、
ちょっとだけ気持ちがにじんでしまう。
そんな、静かでぎこちない、でもやさしさがある朝の場面。

◆「朝になっても、距離が測れない」

「……ん」

ソファの毛布が動いた。
律が寝返りを打って、片目だけ開いた。

「……ここ、どこ?」

「うち」

冬馬はキッチンの電気ポットに手をかけたまま、振り返らずに答えた。

「俺……昨日、どこまで……?」

「キャバクラで酔って、タクシーでぐったりして、鍵ないって言って、俺んとこ来て寝た」

「……ああ。最悪」

律は毛布をかぶって、もう一度寝ようとする素振りを見せた。
でもすぐに、また起き上がって、ぼさぼさの頭のままぼそっと呟く。

「……なんか、迷惑かけた?」

その一言に、冬馬はちょっとだけ手を止めた。

(“ありがとう”の次にそれかよ)

「べつに。面白かった」

「……なんか、変なこと言ってない?」

「“俺、きもくない?”とか言ってたな」

「……うわ、死にたい」

「“プロになれたかな”とも言ってた。あと“ありがとね”って」

「……えっ、それ……本気で言った?」

「たぶんな。酔ってたけど、顔がまじめだった」

律は黙りこんで、毛布の縁をきゅっとつかんだ。

「やだな……そういうの、あとで思い出すと、ちゃんと恥ずかしい」

「大丈夫。全部、映画のセリフってことにしとくから」

「……ずるいな、それ」

「お互いさま」

ポットが沸く音がして、冬馬はカップにお湯を注いだ。
香ばしいほうじ茶の匂いが、部屋にふわっと広がる。

「飲む?」

「……うん。ありがとう」

やっと、“ありがとう”が出た。
昨夜と同じ声だったけど、
今朝のはもうちょっと照れてて、あったかかった。

冬馬は律の隣にカップを置いて、
少しだけ、言葉を飲み込んでから、こう言った。

「なあ──また一緒に、何か作る気ある?」

「……映画?」

「うん。次のやつ、書くなら、お前にあて書きしたい」

「また、俺?」

「うるさいやつ、書けなくなった」

「それ、褒めてるの?」

「……一応」

律は苦笑して、
「……じゃあ、ちゃんと朝起きれるようにする」と言った。

冬馬は、内心で少しだけ笑った。

それはたぶん、“やる”ってことなんだろう。
誰よりも遠回しなくせに、
ちゃんと一番まっすぐな返事。

朝の光のなかで、
昨夜よりちょっと距離が近くなった気がした。

このあと、また日常に戻っていく2人、
あるいは次の企画に本格的に踏み出すシーン、
または律が少しだけ「言葉で伝えよう」とし始める変化にもつなげられるよ。

どうしよう?次の展開、進める?







あなた:
冬馬の部屋で目が覚めて、怖かった  
微妙にセクハラっぽいことをされる律視点



2/2

ChatGPT:
了解。
では今回は、冬馬の部屋で目を覚ました律視点で、「何かされたかもしれない」という不安と、実際は冗談まじりの微妙なセクハラ(でも律にとっては怖い)を受けたシーンを描きます。

律のトラウマや身体的な警戒心を踏まえて、描写は繊細に進めますね。
「触れられたのかも」と思ってしまう感覚そのものが、すでに恐怖になる──そういう、身体と心の反応にフォーカスします。

◆「ぜんぶ夢だと思いたかった」

目が覚めたとき、知らない天井が見えた。

──いや、知らないわけじゃない。
冬馬の部屋。
クランクアップのあと、キャバクラに連れて行かれて、飲まされて──
……そのあとは、よく覚えていない。

毛布をかぶっていた。
ソファのクッションの硬さ。頭がずきずきする。
喉がからからで、口の中が変な味だった。

起き上がろうとして、
ふと、足元にタオルケットが落ちていることに気づいた。

(……あれ?)

着てる服は、昨日と同じ。
でも、シャツの裾が少し乱れていて、
襟元がずれていた。ブラトップの紐がむき出しになっている。

(……あれ……なんで、ずれて……)

心臓が、ズッと沈む。
冷や汗が、背中に流れた。

頭がまわらない。
なにかされた?──いや、まさか。冬馬はそんなこと──
でも、でも。

あいつ、昨日、やけに静かだった。
カメラ越しの目じゃない目をしてた。
いつもより、近かった。

(寝てるあいだに……なにか……?)

動けないまま、壁の時計を見つめた。

そのとき、キッチンのほうから冬馬の声がした。

「……寝癖、すごいぞ、お前。写真撮っとけばよかった」

「──え?」

呆気にとられて顔を上げると、
冬馬はマグカップ片手にこっちを見ていた。
いつもの無表情で、でも口元だけちょっと笑っていた。

「あと、ソファで丸まって寝るの、お前、シャツずれるから気をつけろよ。いろいろ見える」

「……見たの?」

「見ようとはしてないけど、目の前だったから、ね」

「──ッ、セクハラ……」

「そう。ごめんごめん、気をつけるわ」

軽い調子。
でも、謝る声が冗談に聞こえないのは、
冬馬があえて軽くしてるからだ。

(ほんとに……見ただけ?)

そこがいちばん怖いのに、聞けなかった。
責めても、言い逃れできるようなライン。
冗談みたいに処理される距離感。
“された側”の怖さだけが、宙ぶらりんで残ってる。

ソファに座り直して、
胸元をぎゅっと引き寄せながら、ぽつりと呟いた。

「……やっぱ、男の家に泊まるのって、無理あるな……」

「そっちが勝手に寝たんだろ。……鍵なくて、泣きそうになってたくせに」

「泣いてないし」

「うんうん、泣いてないな。顔ぐしゃぐしゃだったけど」

「……それ、写真撮ってたら殺すからな」

冬馬は笑った。
本気で冗談にしてる。
でも、こっちはまだ怖いままだ。

怖いことが、“なかったこと”にされるとき、
自分の反応だけが浮いて、
それがまた、自分を責める材料になる。

(……でも、言えなかったのは、俺だ)

この人が“優しい”ことも、知ってる。
そう思いたいだけかもしれないけど、
それでも、信じたかった。

だから俺は、何も言わなかった。

このあと、律が時間をおいて「昨日のこと、ちょっとだけ怖かった」と打ち明ける展開にもできるし、
冬馬がその空気を察して、わざと距離を取るようになる展開にもできるよ。

どうする?律の内面をもう少し掘る?冬馬に反応させる?







あなた:
律は胸ないよ


ChatGPT:
了解。
律の身体は、胸がない=男性化した身体であること、つまりトランス男性としての描写を反映させるね。

だから、冬馬が「シャツがずれてた」「いろいろ見えた」って冗談を言うとしても、それは「身体的な意味での女性性」への接触ではないし、逆に律本人にとっては、“女性として見られた”と感じることのほうが怖い、という感覚が強いはず。

この観点を踏まえて、先ほどの続きを、律視点で掘り下げ直すね。

◆「女として見られたんじゃないか、っていう恐怖」

──シャツがずれてた。

冬馬は軽く言った。「いろいろ見えた」って。
でも、その“いろいろ”ってなんだ。

(俺、胸なんて……ないのに)

でもだからこそ、怖かった。

身体が“女としての構造”から遠ざかってることは、安心のはずだった。
それなのに、「女」として見られたかもしれないと感じた瞬間、
全身がざわついた。

(まさか、見間違えた? あると思われた?)

自分の身体の、無いものに対して、
誰かが「ある」かのように冗談を言うとき。
それが“男のからかい”として言われたとき。

──それが一番怖い。

無視されたことよりも、
「女の体として認識されたかもしれない」と思う方が、
ずっと痛かった。

「……やっぱ、男の家に泊まるのって、無理あるな……」
吐き捨てるように言った声は、
自分でもびっくりするくらい低かった。

冬馬は軽く流してた。
“そういうつもりじゃない”って態度だった。
本気でそうなのかもしれない。
でも、もし仮に少しでも──
ほんの1ミリでも、“女の裸”を期待されたんだとしたら。

それは、ただの冗談じゃすまない。

(俺の身体は、見せるためにあるんじゃない)

それを伝える言葉が、喉に詰まった。

律が「胸がない」ことを受け入れてるのと同時に、
「ないこと」を“女扱い”された瞬間に消されるような恐怖や怒り──
そこが、彼にとって根の深い地雷でもある。

冬馬がそれをいつかきちんと理解する場面、あるいは律が勇気を出して説明する場面──
どちらにも続けられるよ。

どうする?次、冬馬に何か伝える?それとももう少し律の内面描写を深める?







あなた:
冬馬の部屋に見覚えのあるものが
すず香の私物だ
からかう律視点



2/2

ChatGPT:
了解、それじゃあ──
冬馬の部屋で、律がすず香の私物を見つけてしまい、からかい半分・皮肉半分でつつくシーンを、律視点で描くね。
冬馬にはちょっと意地悪したくなるけど、
どこかでほんの少しだけ、ザラッとした感情も混ざってる。
そんな律らしい、笑いに隠した探りのやりとりで。

◆「なんで、ここにそれがあるの」

お茶を飲みながら、冬馬の部屋をぼんやり見回してると──
視界の端に、やたら可愛い柄のハンカチがあった。

……見覚えがある。
この前すず香がうちに泊まったとき、バッグからちらっと見えてたやつ。
たしか、白地に金の猫の刺繍。
あいつ、「お気に入りなの」って言ってたやつ。

(……へえ?)

さりげなく立ち上がって、近くを装って確認。
確定。

「……へぇ、女物、落ちてるじゃん」

冬馬がコップを洗ってる背中に向かって声をかける。
こっちを見ずに、「なんの話」と返された。

「この刺繍、すず香のだよ。あの子、猫のやつ集めてるから。……ここにあるってことは……」

にやにや笑って、声のトーンを少しだけ落とす。

「……なに、そういう関係だったんだ?」

冬馬はちょっとだけ手を止めたけど、
すぐにまた蛇口をひねった。

「違う」

「うそだー。だって、すず香、あんたのこと“演出オタク”って言いながらも目ぇ細めてたよ?
あれ、あの子の“気がある”顔だもん」

「それはお前の主観な」

「いやいや、客観的にも。
しかもこの感じ、泊まったときうっかり置いていって、
冬馬は“まあいっか”って返し忘れたタイプでしょ?」

「……拾っただけだよ。まだ渡してないだけ」

「ふーん? じゃあ俺が持って帰って届けようか?
“あの演出家、意外と繊細ですね”って伝えとくけど?」

冬馬がやっと振り返って、
ちょっとだけ眉をひそめた。
でも、本気で怒ってはいない。
めんどくさそうな顔。

(やっぱ、動揺してるな)

内心で小さくガッツポーズ。

「すず香ってさ、意外とちょろいんだよね。
可愛いとか言われるとすぐ目が潤むし、
料理褒められるとすぐエプロン新しくするし。……あれ?褒めた?」

「褒めてないし、泊めてもない」

「ふ~ん……ふ~~ん……」

笑いながらハンカチを指で持ち上げる。

「でもさ、女の子の忘れ物って、無言のマーキングだったりするんだよ?」

「それもお前の主観な」

「うわ~。否定はするけど返さないんだ?」

からかってる。
けど、ちょっとだけ、胸の奥で何かがざらつく。

ほんとに、泊まったのかもしれない。
ほんとに、ここで──

(……まあ、どうでもいいけど)

そう思って、ハンカチをそっと置いた。

「……ま、そういうの、似合わないけどね。
冬馬には、恋愛とか、絶望的に似合わないし」

軽口を最後に、ソファに倒れ込む。

心の中に残ったざらっとした何かは、
たぶん、単なる好奇心でも嫉妬でもなくて──

「俺には関係ないよな」って思いたい自分と、
「そうじゃないかもしれない」って、
少しだけ信じていた自分の食い違いだった。

このあと、冬馬が改めて「すず香とは何もない」とはっきり言うか、
あるいは、あえて律の反応を見て、黙っておく選択をする展開にもできるよ。

どうする?続きを書く?それともこの空気のまま別の場面へ?







あなた:
梨々花さんへの手紙風日記を書く律視点


ChatGPT:
了解。
では──律が、梨々花さんへの手紙のような日記を書くシーンを描くね。
直接渡すつもりもないし、出すあてもない。
でも、書かずにはいられない。
思いを言葉にすると自分が壊れそうで、でも何かをつなぎとめておきたくて、
そうして“日記”という形で書き残す、律の視点で進めるよ。

◆手紙風日記:律より、梨々花さんへ

梨々花さんへ。

この日記は、きっと渡すことはないと思います。
だから、「さん」付けで書いてます。
いつか渡す日が来たら、「梨々花」って呼び捨てで書き直します。
そんなこと、ないと思うけど。

今日は何もない日でした。
天気はくもり。湿気が強くて、乾燥機回したけど、タオルは生乾きのにおいがした。
こういうの、梨々花さんは平気かな。
保育園って、いろんなにおいがしそう。

香りの話をしたいです。
「お風呂上がりの子どもの髪のにおいが一番好き」って、前に言ってましたよね。
あれ、なんとなくわかります。
人の髪って、不安なときほど安心するにおいがします。

俺の部屋は、最近ちょっと湿っぽくて、
前にあげたスプレーの香りも薄くなってしまいました。
新しいのを作ったら、送りたいなと思ってます。
でも送りません。たぶん、受け取ってもらえない気がして。

「どうして何も言わないの」って、思ってますか?
俺も思ってます。
なんで何も言えないんだろうって。
たぶん、怖いからです。
嫌われるのも、見捨てられるのも。
それよりも怖いのは、「あなたに期待されてない」って自分で気づくことです。

でも、まだ好きです。
こんなに時間が経っても、
会わなくても、返事が来なくても、
好きって感情が、ちゃんと残ってます。

梨々花さんが元気でいてくれたら、もうそれでいいや、って思うときもあるけど、
やっぱりそれは嘘で、
本当は、隣に座ってほしいし、
何気ないことで笑ってほしいです。

今、言葉にしたから、少し楽になりました。
ありがとう。読んでくれてるつもりで書いてます。

おやすみなさい。
また明日も、あなたのいない日です。

でも、
あなたがいないだけで、
今日が悪い日だったとは思いません。



この手紙風日記は、
後に梨々花が偶然見つける展開にもつなげられるし、
律が書き溜めたまま誰にも見せず、
“自分の気持ちの証拠”としてだけ持ち続けることもできる。

どうする?続けて別の日の手紙を書く?それとも梨々花の側に視点を移す?







あなた:
性風俗の依頼を受ける律
派遣されたホテルにいたのは元クラスメートの小瀧さんだった


ChatGPT:
了解です。
このシーンは非常に繊細でセンシティブな内容になりますので、律の心の動き、羞恥・怒り・自尊心・自己嫌悪といった複雑な感情を中心に描き、身体的描写ではなく心理描写に重点を置いて進めます。

また、「性風俗の仕事を断れず受けてしまった状況」「偶然にも相手が過去に自分を傷つけた人物だった」という構造に焦点をあて、
この瞬間が、律にとって何を突きつける出来事だったのかを描いていきます。

◆「お前だったんだ」

呼び出されたホテルの部屋番号を確認して、
深呼吸を一度だけして、ノックした。

「──どうぞ」

鍵が開いて、ドアの向こうにいた顔を見た瞬間、
呼吸が止まった。

小瀧だった。

一瞬で記憶がよみがえった。
あの中高一貫の学校。
教室の隅で自分を「空気扱い」していた連中の中心。
声をかけてきたと思ったら、からかいか、質問ごっこ。
自分が性別を言えなかった時代。
「お前ってさ、結局どっちなの?」
そんな言葉を笑って投げてきた奴。

その小瀧が、
目の前でバスローブを羽織って、
一瞬きょとんとした顔をして、
そのあと──笑った。

「……律? うわ、マジか。え? 本物?」

息が詰まった。
部屋に入ってしまったことを、
今さら取り消せなかった。

「お前、今……そういう仕事してんの? へぇ……すげえな。
てか、びっくり。なんか、エロいじゃん、今の方が」

言葉がナイフだった。
笑いながら喉元を削ってくるような音だった。

(最悪だ。なんで、こんなとこで──)

でも、律は笑った。

「……久しぶり。元気そうじゃん」

そう言った自分の声が、妙に澄んでいて気持ち悪かった。

「いや、マジでさ、来てくれるなら言ってくれりゃよかったのに。
あの頃のこと、謝っとくよ。まあ、時代ってやつ? 気にすんなって」

「うん、気にしてないよ」

嘘だった。
全部、嘘だった。

顔色を読むのは得意だった。
こういうとき、どう振る舞えば“プロっぽく”見えるか、
わかってた。

でも、心臓だけが暴れてた。
本当に吐きそうだった。

(逃げたい)

でも、ここで逃げたら負けだと思った。
逃げても負け。残っても地獄。
じゃあ、せめてこの地獄の中心に、
自分の正気をひとつだけ置いていきたかった。

「──シャワー、浴びてきていい?」

「うん? ああ、もちろん。準備するわ」

シャワーの音に紛れて、
歯をくいしばった。

(俺は、モノじゃない。お前の思い出の延長でも、
勝手に“消費していい過去”でもない)

逃げないことは、強さじゃない。
でも、嘘のまま終わらせないことは、
俺の意地だった。

このあと、律が「何もせずに時間を潰して帰る」「言葉で逆襲してから去る」
あるいは小瀧の“想像してたものと違った”顔を見る展開にもできるよ。

どうする?次の描写、続ける?
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