地味スキル「ためて・放つ」が最強すぎた!~出来損ないはいらん!と追い出したくせに英雄に駆け上がってから戻れと言われても手遅れです~

かくろう

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神託の儀式

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「それではこれより、本年の神託の儀式を執り行う」

 ――いよいよだ
 ――ハズレギフトじゃありませんようにっ
 ――創造神様お願いします創造神様お願いします創造神様お願いします
 ――ふん、高貴なワタクシに相応しいギフトに決まってますわ
 ――平凡に生きられますように

 白い柱に囲まれた荘厳な神殿の中、今年15歳になる少年少女達が集まり、毎年恒例の儀式にそれぞれの思いを馳せていた。

 かくいうボクもその1人。


 この世界の人間は、15歳になると同時に神託の儀によって神からのギフトが与えられる。

 それらは創造神ベアストリア様より与えられるとされており、儀式全般はベアストリア神殿から派遣される神官によって執り行われ、貴族、平民が平等になって受けることが義務づけられている。

 このボク、ルインハルド王国内の片隅にある一つの領地、タブリンス家のセージ・タブリンスも、今日をもって15歳を迎えた。

 名門貴族のめかけの子であるボクは、この日のためにあらゆる英才教育をほどこされてきたんだ。

 毎日毎日厳しい訓練に身をやつしながらも、主人の期待に応えるために必死に努力してきた。

 この世界は、特に貴族はギフトがなにより重視される。

 タブリンス家は王国内でも数少ない自軍を持つことを許された上位貴族。

 王国最上位のアルファ貴族。領地の独自法律を作る事を許されたベータ貴族。ガンマ、デルタ。

 貴族の種類は数多い。

 そしてその中でも特別枠。アルファ貴族と同等の権力を認められ、更に国境警備の要となる防衛軍の指揮を執る王国内特別枠の最上位貴族、オメガ。

 タブリンス家は王国内でも指折りのオメガ貴族に名を連ねる名門中の名門だ。

 それは一つのスキルであったり、職業の資質であったりと、人によって様々だ。

 たとえばスキル「剣技」。授かれば剣の才能を無条件に手に入れ、普通に努力するより遙かに早く上達し、人によっては数年で達人の域に到達する者もいる。

 たとえば職業「魔導師」。授かればあらゆる魔法を行使する才能を与えられる。

 一見すると剣技だって「剣士」でもよさそうだけど、その違いは授かる才能の幅広さと言ってもいい。職業ギフトを授かるとそれに必要な才能を数多く開花させることができる。

 だけど単一のスキルが職業ギフトより劣っている訳じゃない。例えば「炎魔法」なんて火属性の魔法に特化したギフトなら、「魔導師」が幅広く習得する魔法より威力も効果も高くなる。

 ようは与えられるギフトは一つのきっかけであって、そこからの努力次第で良くも悪くもなるってことだ。まあそれでも本人の資質がものを言うのは否定できない。

 だからこそ貴族は幼い頃から厳しい訓練を課せられ、己を鍛えることを義務づけられるんだけど。

 だけど数あるギフトの中で例外なのが「役割ディバイン・ロール」と呼ばれる希少ギフト。別名「上級職」、とも言われ、スキルや並の職業よりも圧倒的な力を得る代わりに、神から与えられた役割を全うすることを義務づけられるレアギフトだ。 いわゆる特別枠って奴らしい。

 まあそれらが与えられるのは何十年に1人現われるかどうかって話だ。

「なんだセージ。緊張してるのか?」
「いえ、そんなことは……」

「ふん。ここでゴミのようなギフトを授かろうものなら父上に追放されるだろうしな」

「マハル様、流石に神の御前です。お控えを」

「ケッ……。いい子ぶりやがって」

 僕の隣で足を組んでいるのはご当主様の嫡男マハル様。


 名門貴族であるタブリンス家の血を引く者が役に立たないギフトでも授かろうものなら、どんなお叱りを受けるか分からないのだ。
 
 だけど創造神様からの賜り物に文句を付けるほど不信心ではないと信じたい。



 同じ年に生まれたボクたちはさながら双子であるが、立場はまるで違う。

 父親が同じなので顔立ちはそこそこ似ているけど、貴族令嬢で傾国の美女と言われた正室の母君の血を受け継いでいるだけあって、誰もが黄色い声をあげずにはいられない美男だった。


 それにひきかえボクの顔立ちは平々凡々。母上はもともと領主のお屋敷に奉公していた平民の娘で、めずらしい魔力持ちだったためにご当主様のお手付きとなった。

 マハル様より先に生まれた僕であるが、正室の子である彼にはずっと召使いと同じ扱いを受けてきた。

 だからこそ、変なスキルを授かってご当主様を落胆させるようなことがあってはならない。


 だからこそいいギフトを授かり、僕が役に立つ人間であることを証明しなければ。

 ボクの心は、そんな未来への決意に満ちていた。


「それでは次のグループ、前に出なさい」
「マハル様、順番が回ってきました」
「分かっている。うるさいぞ」
「申し訳ございません」




「それでは神託の儀式を執り行う。主神ベアストリア様に祈りを捧げよ。そして1人ずつ、聖なるクリスタルに手をかざすのだ」

 神官の言葉に従い、女神像の前に跪いて手印を組む。

 そして祈りの言葉を口にすることで、創造神様からギフトを授かるのだ。

「マハル・タブリンス。前へ」
「はいっ!」

 マハル様の出番だ。眉目秀麗な彼が立ち上がるだけで黄色い歓声が上がる。

 厳かな儀式なのに年頃の女の子達がガマンできないほどに、場の空気は期待に高まっていた。

「おおおおおっ、こ、これはっ!」

 ⁉

 再び神官の驚愕の声が響き渡る。そこに表示された文字にボクも思わず汗が流れた。

「ギフト【剣神】!! 剣神だっ!」


「素晴らしいッ! 最上位のギフトホルダーが現われるとはっ。さすがは名門貴族!」

 どうでもいいけどさっきからこの神官の人、名門貴族がどうのって騒ぎすぎじゃないかな。
 創造神様は貴族平民に平等な機会を与えるためにギフトを授けるって教えがあるのに。

 この人はさっきから貴族だなんだとうるさい。教会が腐敗してるって噂は本当なのかもしれないな。

「さあさあ、次なる者よ。そなたの番ですぞ」

「はい」

「名門貴族に連なる者、セージ・タブリンス殿。さぞかし素晴らしいギフトを授かるに違いないッ。さあさあっ!」

 興奮冷めやらぬテンションで鼻息荒い神官が促してくる。気持ちは分かるけどプレッシャーかけないでほしい。


 同じ血筋から生まれたマハル様が剣神だ。僕だって魔力持ちの母上の血が流れている。

 きっと大丈夫だ。

 母上の墓前に最高の報告をするためにも、創造神様、どうかお願いします。せめて主人を支えられるギフトをお与えくださいっ!

 僕の母上は10歳の頃に病気で死んでしまった。
 だからせめて立派なギフトを授かり、安心させてあげたい。

(母上……どうか僕に祝福を)

 クリスタルの前に立つ。期待と不安に支配されながら、ボクはその手を差し出した。

「え? うわっ⁉」

 その時、ぼんやりとした光を放っていた水晶がこれまで以上に眩い光を放ち始めた。

 そのあまりの光量にひっくり返りそうになるのを必死にこらえる。

「おおおっ! これまでにないもの凄い光! もしやこれは、またもや超レアギフトの降臨かっ!」

 もの凄い光に目が開いていられない。夜空の星が爆発したかのような光だ。

「え……?」

 やがてその光も収まり、ボクは閉じた目蓋を恐る恐る開く。

 神殿内は静寂に包まれていた。誰もが声を失っている。

「ギフト……、た、【ためて・放つ】」

「え……?」

 クリスタルに浮かび上がった文字が、残酷な真実を表していた。
 
 嫌な静寂が耳鳴りを起こした。







 その日の夜……ボクはタブリンス家を追放されることになる。

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