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奈落の希望
しおりを挟む冒険者生活3週間。
ダンジョンの攻略を中心にいくつもの依頼をこなし続けてきた僕たちは、とうとうガンマランク昇格を決めることができた。
「やったぁあ! とうとうガンマランクだよリンカッ」
「うん、やったねセージ君ッ!」
「リンカのおかげだよ」
「ううん。セージ君が頑張ったからだよ」
「じゃあ二人の頑張りだよ」
「ふふ」
手を取り合って喜ぶ僕たちを回りの冒険者達が注目していた。
「セージ様、リンカ様」
「ん? アンナさんじゃないですか」
ギルドを出てお祝いでもしようかと相談していた所へ、ミルミハイド商会のメイドであるアンナさんが僕たちのもとへやってきた。
なんでもトトルムさんが僕たちの昇格をお祝いしたいので食事に招待してくれるという。
「旦那さまもエリスお嬢様も、お二人に会うのが待ち遠しくて堪らないご様子です」
「あはは。それは光栄な話です」
そうしてアンナさんが準備していた馬車に乗り込み、トトルムさんのお屋敷へと向かうのだった。
◇◇◇
「実は、本日はお二人に直接依頼したいクエストがあるのです」
パーティーは絢爛豪華な料理が並び、最高級の食材を使った色とりどりの料理でもてなしを受けた。
そして宴会が終わってエリス嬢との談話を楽しんでいた頃、トトルムさんが真剣な表情で「二人にお願いがある」としてソファに案内される。
アンナさんが運んできたケーキに目を輝かせるリンカに微笑ましい気持ちになりながら、話に耳を傾ける。
「指名依頼ですか」
「ええ。お二人もめでたくガンマランクに昇格した事ですし、そろそろ名を上げる為に本格的な行動を起こして良い頃です。既にお二人の評判は隠しきれない所まで広がっています」
確かに。もともと長い事隠しきれるとは思っていなかったし、自分達の能力をアップさせることを最優先に動いてきたので想定の範囲は超えていない。
「そうですね。確かにそろそろ行動を起こしてもいいかもしれません」
「そこで、お二人の実力を見込んでアルファランク冒険者に出す予定だったクエストを直接オーダーしたいと思いまして」
「それは光栄です。一体どんな依頼を?」
「来週の頭、数ヶ月に1度行なわれる大規模なダンジョン掃討作戦が行なわれる予定です」
それは国家の資産であるダンジョンを管理している王家から直接卸されるクエストだ。
詳しいことはまた追い追い話すけど、ダンジョンというのは定期的にモンスターを掃除して数を減らさないと氾濫して地上に溢れてしまう。
そして地上に出てきたダンジョンモンスターは、例外なく凄まじいパワーアップをして大災害をもたらしてしまうらしい。
魔物学で習った範囲では100年くらい前に氾濫したダンジョンの魔物によって壊滅した町がいくつもあったという記録がある。
そういう事が起こらないように徹底した管理の下で行なわれる掃討作戦によって国家の平和は守られている。
ダンジョンというのはコアを破壊すれば活動を停止し、二度と機能を果たすことはない。
だけど資産でもあるからそれはできない。
故に定期的に国家主導で大掃除が行なわれるわけだ。
「今回の作戦では、オメガランク1チーム、アルファランクの冒険者が1チーム。その他各ランクから数チームで作戦が行なわれます。お二人には私の権限で最前線であるオメガランクパーティーに随行できるように手配しようと思っています」
確かに、一流冒険者のリンカから見ても、僕の力はオメガランクに相当するそうだ。
自分ではまだそこまでになっているかどうかは分からない。
自分の実力を試すためにも、この提案は受けてみるべきだろう。
「僕は受けてみたい。リンカはどう思う?」
「そうね。オメガランクパーティー随行は、良い勉強になると思うし、セージ君の実力はきっと後れをとらない。それに今回のためにダンジョン攻略はみっちり訓練してきたしね」
そう、ここ2週間ほど、僕たちはダンジョン攻略に精を出してきた。
それはこの国家オーダーで結果を出すためだ。
「ありがとうございます。そういえば、そろそろ冒険者チームの名前をお決めになってはいかがですか」
「そういえばずっと無名でしたね」
一応それにも狙いはあった。名前を付けるとどうしても目立つのだ。
メンバーも僕ら2人だけだし、地に足を付けた活動ができるようになるまで名前を付けないでおこうとリンカから提案してもらっていた。
「ええ、当日までにで構いませんので、チーム名を決めておいてください」
「分かりました。二人で相談します」
◇◇◇
そうして数日後、僕らはトトルムさんから受けた国家クエストに参加するためダータルカーンの北門に集合していた。
ザワ……
周りのざわめきに何が起こったのか見回してみると、一つの集団に注目が集まっている事に気が付く。
「あれが……国内最高峰の冒険者チーム『煉獄の騎士団』」
ルインハルド王国広しといえど、国内屈指の実力を持つ者にしか与えられないオメガランクの称号を持っている彼らの迫力は段違いだった。
燃えるような赤い髪の青年。『煉獄騎士』のギフトを持つリーダーのアテン。
深い湖のような青い瞳の副リーダー、『氷結魔導師』のフェンネル。
巨人族のハーフである防御系で最上位と言われる『守護スル者』をギフトに持つザーク。
遙か東に栄える辺境の島国、サクラ国からやってきた異郷特有のギフト『忍者』のシズカ。
そして光魔法の達人であり、役割を持つ教団最高峰の使い手『聖光神官』のセレン。(似ているけど聖女は別にいる)
この五人は他国にも名前が知られるほど才能と実力を持つ冒険者チームだ。
世界広しといえど、これだけのレアギフトを持つ五人が集まった冒険者チームは彼らだけだろう。
しかも彼らは巨人族ハーフのザークを除き、全員が純人間種だけで構成されている。
他の高ランクには必ずと言って良いほどエルフや獣人などの、何かしらに特化した他種族が混じっているものだ。
「やあ、君たちが新進気鋭の2人組だね」
僕らを見つけたリーダーのアテンがこちらに歩いてくる。
「初めまして煉獄の騎士団の皆さん。新参者ですが、皆さんの行動チームに随行させていただくことになりました。足を引っ張らないように頑張りますのでよろしくお願いします」
「君たちの噂は聞いてるよ。とんでもない異例の出世をしているってね」
「様々な幸運が重なってのことです。まだまだ学ぶことは多いので、皆さんの戦いで勉強させて頂ければと思っています」
「なるほど。随分と謙虚らしい。気取ってないし、慢心もしていない。期待しているよ。ところで、君たちのチームには名前はないのかい?」
「先日発足したばかりなので、まだ無名ですが、2人で考えて昨日登録してきました」
「ほう。聞かせてくれるかい?」
リンカと2人で相談し、僕たちはチーム名を決定した。
「僕らのチーム名は――」
僕らはどん底から頂点にまで這い上がる。
そんな僕らが付けた名前が――
「冒険者チーム『奈落の希望』です」
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