27 / 137
21~30
奈落の希望
しおりを挟む冒険者生活3週間。
ダンジョンの攻略を中心にいくつもの依頼をこなし続けてきた僕たちは、とうとうガンマランク昇格を決めることができた。
「やったぁあ! とうとうガンマランクだよリンカッ」
「うん、やったねセージ君ッ!」
「リンカのおかげだよ」
「ううん。セージ君が頑張ったからだよ」
「じゃあ二人の頑張りだよ」
「ふふ」
手を取り合って喜ぶ僕たちを回りの冒険者達が注目していた。
「セージ様、リンカ様」
「ん? アンナさんじゃないですか」
ギルドを出てお祝いでもしようかと相談していた所へ、ミルミハイド商会のメイドであるアンナさんが僕たちのもとへやってきた。
なんでもトトルムさんが僕たちの昇格をお祝いしたいので食事に招待してくれるという。
「旦那さまもエリスお嬢様も、お二人に会うのが待ち遠しくて堪らないご様子です」
「あはは。それは光栄な話です」
そうしてアンナさんが準備していた馬車に乗り込み、トトルムさんのお屋敷へと向かうのだった。
◇◇◇
「実は、本日はお二人に直接依頼したいクエストがあるのです」
パーティーは絢爛豪華な料理が並び、最高級の食材を使った色とりどりの料理でもてなしを受けた。
そして宴会が終わってエリス嬢との談話を楽しんでいた頃、トトルムさんが真剣な表情で「二人にお願いがある」としてソファに案内される。
アンナさんが運んできたケーキに目を輝かせるリンカに微笑ましい気持ちになりながら、話に耳を傾ける。
「指名依頼ですか」
「ええ。お二人もめでたくガンマランクに昇格した事ですし、そろそろ名を上げる為に本格的な行動を起こして良い頃です。既にお二人の評判は隠しきれない所まで広がっています」
確かに。もともと長い事隠しきれるとは思っていなかったし、自分達の能力をアップさせることを最優先に動いてきたので想定の範囲は超えていない。
「そうですね。確かにそろそろ行動を起こしてもいいかもしれません」
「そこで、お二人の実力を見込んでアルファランク冒険者に出す予定だったクエストを直接オーダーしたいと思いまして」
「それは光栄です。一体どんな依頼を?」
「来週の頭、数ヶ月に1度行なわれる大規模なダンジョン掃討作戦が行なわれる予定です」
それは国家の資産であるダンジョンを管理している王家から直接卸されるクエストだ。
詳しいことはまた追い追い話すけど、ダンジョンというのは定期的にモンスターを掃除して数を減らさないと氾濫して地上に溢れてしまう。
そして地上に出てきたダンジョンモンスターは、例外なく凄まじいパワーアップをして大災害をもたらしてしまうらしい。
魔物学で習った範囲では100年くらい前に氾濫したダンジョンの魔物によって壊滅した町がいくつもあったという記録がある。
そういう事が起こらないように徹底した管理の下で行なわれる掃討作戦によって国家の平和は守られている。
ダンジョンというのはコアを破壊すれば活動を停止し、二度と機能を果たすことはない。
だけど資産でもあるからそれはできない。
故に定期的に国家主導で大掃除が行なわれるわけだ。
「今回の作戦では、オメガランク1チーム、アルファランクの冒険者が1チーム。その他各ランクから数チームで作戦が行なわれます。お二人には私の権限で最前線であるオメガランクパーティーに随行できるように手配しようと思っています」
確かに、一流冒険者のリンカから見ても、僕の力はオメガランクに相当するそうだ。
自分ではまだそこまでになっているかどうかは分からない。
自分の実力を試すためにも、この提案は受けてみるべきだろう。
「僕は受けてみたい。リンカはどう思う?」
「そうね。オメガランクパーティー随行は、良い勉強になると思うし、セージ君の実力はきっと後れをとらない。それに今回のためにダンジョン攻略はみっちり訓練してきたしね」
そう、ここ2週間ほど、僕たちはダンジョン攻略に精を出してきた。
それはこの国家オーダーで結果を出すためだ。
「ありがとうございます。そういえば、そろそろ冒険者チームの名前をお決めになってはいかがですか」
「そういえばずっと無名でしたね」
一応それにも狙いはあった。名前を付けるとどうしても目立つのだ。
メンバーも僕ら2人だけだし、地に足を付けた活動ができるようになるまで名前を付けないでおこうとリンカから提案してもらっていた。
「ええ、当日までにで構いませんので、チーム名を決めておいてください」
「分かりました。二人で相談します」
◇◇◇
そうして数日後、僕らはトトルムさんから受けた国家クエストに参加するためダータルカーンの北門に集合していた。
ザワ……
周りのざわめきに何が起こったのか見回してみると、一つの集団に注目が集まっている事に気が付く。
「あれが……国内最高峰の冒険者チーム『煉獄の騎士団』」
ルインハルド王国広しといえど、国内屈指の実力を持つ者にしか与えられないオメガランクの称号を持っている彼らの迫力は段違いだった。
燃えるような赤い髪の青年。『煉獄騎士』のギフトを持つリーダーのアテン。
深い湖のような青い瞳の副リーダー、『氷結魔導師』のフェンネル。
巨人族のハーフである防御系で最上位と言われる『守護スル者』をギフトに持つザーク。
遙か東に栄える辺境の島国、サクラ国からやってきた異郷特有のギフト『忍者』のシズカ。
そして光魔法の達人であり、役割を持つ教団最高峰の使い手『聖光神官』のセレン。(似ているけど聖女は別にいる)
この五人は他国にも名前が知られるほど才能と実力を持つ冒険者チームだ。
世界広しといえど、これだけのレアギフトを持つ五人が集まった冒険者チームは彼らだけだろう。
しかも彼らは巨人族ハーフのザークを除き、全員が純人間種だけで構成されている。
他の高ランクには必ずと言って良いほどエルフや獣人などの、何かしらに特化した他種族が混じっているものだ。
「やあ、君たちが新進気鋭の2人組だね」
僕らを見つけたリーダーのアテンがこちらに歩いてくる。
「初めまして煉獄の騎士団の皆さん。新参者ですが、皆さんの行動チームに随行させていただくことになりました。足を引っ張らないように頑張りますのでよろしくお願いします」
「君たちの噂は聞いてるよ。とんでもない異例の出世をしているってね」
「様々な幸運が重なってのことです。まだまだ学ぶことは多いので、皆さんの戦いで勉強させて頂ければと思っています」
「なるほど。随分と謙虚らしい。気取ってないし、慢心もしていない。期待しているよ。ところで、君たちのチームには名前はないのかい?」
「先日発足したばかりなので、まだ無名ですが、2人で考えて昨日登録してきました」
「ほう。聞かせてくれるかい?」
リンカと2人で相談し、僕たちはチーム名を決定した。
「僕らのチーム名は――」
僕らはどん底から頂点にまで這い上がる。
そんな僕らが付けた名前が――
「冒険者チーム『奈落の希望』です」
19
あなたにおすすめの小説
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
最弱弓術士、全距離支配で最強へ
Y.
ファンタジー
「弓術士? ああ、あの器用貧乏な最弱職のことか」
剣と魔法が全てを決める世界において、弓は「射程は魔法に及ばず、威力は剣に劣る」不遇の武器と蔑まれていた。
若き冒険者リアンは、亡き叔父から譲り受けた一振りの弓「ストーム・ウィスパー」を手に、冒険者の門を叩く。周囲の嘲笑を余所に、彼が秘めていたのは、世界をナノ単位で解析する「化け物じみた集中力」だった。
リアンの放つ一矢は、もはや単なる遠距離攻撃ではない。
風を読み、空間を計算し、敵の急所をミリ単位で射抜く精密射撃。
弓本体に仕込まれたブレードを操り、剣士を圧倒する近接弓術。
そして、魔力の波長を読み取り、呪文そのものを撃ち落とす対魔法技術。
「近距離、中距離、遠距離……俺の射程に逃げ場はない」
孤独な修行の末に辿り着いた「全距離対応型弓術」は、次第に王道パーティやエリート冒険者たちの常識を塗り替えていく。
しかし、その弓には叔父が命を懸けて守り抜いた**「世界の理(ことわり)」を揺るがす秘密**が隠されていた――。
最弱と笑われた少年が、一張の弓で最強へと駆け上がる、至高の異世界アクションファンタジー、開幕!
転生特典〈無限スキルポイント〉で無制限にスキルを取得して異世界無双!?
スピカ・メロディアス
ファンタジー
目が覚めたら展開にいた主人公・凸守優斗。
女神様に死後の案内をしてもらえるということで思春期男子高生夢のチートを貰って異世界転生!と思ったものの強すぎるチートはもらえない!?
ならば程々のチートをうまく使って夢にまで見た異世界ライフを楽しもうではないか!
これは、只人の少年が繰り広げる異世界物語である。
魔法使いが無双する異世界に転移した魔法の使えない俺ですが、陰陽術とか武術とか魔法以外のことは大抵できるのでなんとか死なずにやっていけそうです
忠行
ファンタジー
魔法使いが無双するファンタジー世界に転移した魔法の使えない俺ですが、陰陽術とか武術とか忍術とか魔法以外のことは大抵できるのでなんとか死なずにやっていけそうです。むしろ前の世界よりもイケてる感じ?
四つの前世を持つ青年、冒険者養成学校にて「元」子爵令嬢の夢に付き合う 〜護国の武士が無双の騎士へと至るまで〜
最上 虎々
ファンタジー
ソドムの少年から平安武士、さらに日本兵から二十一世紀の男子高校生へ。
一つ一つの人生は短かった。
しかし幸か不幸か、今まで自分がどんな人生を歩んできたのかは覚えている。
だからこそ今度こそは長生きして、生きている実感と、生きる希望を持ちたい。
そんな想いを胸に、青年は五度目の命にして今までの四回とは別の世界に転生した。
早死にの男が、今まで死んできた世界とは違う場所で、今度こそ生き方を見つける物語。
本作は、「小説家になろう」、「カクヨム」、にも投稿しております。
転生したら遊び人だったが遊ばず修行をしていたら何故か最強の遊び人になっていた
ぐうのすけ
ファンタジー
カクヨムで先行投稿中。
遊戯遊太(25)は会社帰りにふらっとゲームセンターに入った。昔遊んだユーフォーキャッチャーを見つめながらつぶやく。
「遊んで暮らしたい」その瞬間に頭に声が響き時間が止まる。
「異世界転生に興味はありますか?」
こうして遊太は異世界転生を選択する。
異世界に転生すると最弱と言われるジョブ、遊び人に転生していた。
「最弱なんだから努力は必要だよな!」
こうして雄太は修行を開始するのだが……
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
家庭菜園物語
コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上悠は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏も、寿命から静かに息を引き取ろうとする。
「助けたいなら異世界に来てくれない」と少し残念な神様と出会う。
転移先では半ば強引に、死にかけていた犬を助けたことで、能力を失いそのひっそりとスローライフを送ることになってしまうが
迷い込んだ、訪問者次々とやってきて異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる