地味スキル「ためて・放つ」が最強すぎた!~出来損ないはいらん!と追い出したくせに英雄に駆け上がってから戻れと言われても手遅れです~

かくろう

文字の大きさ
58 / 150
51~60

繋がっていく要素

しおりを挟む
 敵が霧と共に消えた後、広間に静けさが戻る。
「ふぅ……とんでもない戦いだったわね」リンカが額の汗を拭う。

 床には尖兵たちが残した戦利品が散らばっていた。
 黒い外套、呪詛のこもった指輪、そして――一際大きな赤黒い魔石。

「これ……ただの魔石じゃない。質が高いわ」
 リンカが目を細める。
「ん……強い。ルミナス、感じる。魔素、ぎゅうぎゅう詰まってる」

 僕は拾い上げた瞬間、いつもの無機質な声を聞いた。


『魔石を取得しました。魔素ストックに変換しますか? 変換値は120万』

 天の声が、いつも通り淡々と響く。
(よし、いつもありがとう。変換してくれ)

『変換を実行します。現在の魔素ストック:3億 4920万』

 数値が更新された。

 魔素ストックもかなりたまってきたな。そろそろレベルアップに使うことも検討して良い頃かもしれない。

 同時に、さらに新しい通知が重なる。

『フィーリングリンクの効果が強化されました。
 新規取得:【聖属性付与(強)】【呪い耐性強化(強)】』

 眩い光が胸の奥で弾け、全身を満たす。
 セレスと繋がったことで得られた力だ。

「今の光……セージ君?」

 リンカが驚いた声をあげる。
「ん……新しい力。セージ、また強くなった」

 ルミナスが嬉しそうに頷く。

 セレスは目を丸くし、両手を胸に当てた。
「わたくしが……皆さまのお力になれたのですか?」
「ああ。セレスが加わってくれたから、この力を得られたんだ」

 少女は小さく息を呑み、それから微笑んだ。
「……よかった。わたくしにも、存在する意味があったのですね」

 聖属性付与と呪い耐性――アンデッドとの戦いにはこれ以上ない強化だ。
 僕らは互いに視線を交わし、自然と笑みがこぼれる。

「さあ、次の階層に進もう。イグニスって奴の正体を掴むためにもな」
「うん、絶対に辿り着きましょう」
「ん……焼き尽くす」
「わたくしも……皆さまと共に歩ませてください」

 戦いの火蓋は、まだ切られたばかりだった。


 ◇◇◇

 ダンジョンを後にし、街へ戻った僕たちは冒険者ギルドに顔を出した。
 受付嬢が僕たちの姿を見つけるや否や、慌てて駆け寄ってくる。

「セージさん、リンカさん、ルミナスちゃん……! あっ、それにそちらの方は。もうお怪我は大丈夫なのですか?」

「はい、もうすっかり良くなりました。改めてありがとうございます」

「彼女は……セレスだ。ダンジョンの奥で囚われていたんだ。危うく儀式に使われるところだった」
「儀式……ですか?」

 受付嬢の顔が険しくなる。僕は拾ってきた戦利品――黒衣や呪詛の指輪を見せた。

「これを見てくれ。どうやら普通のモンスターや盗賊じゃない。組織立った動きだ。心当たりは?」

 受付嬢は眉を寄せ、小声で言った。
「……噂ですが、最近《ベアストリア教団》が不穏な動きをしている、と。表向きは国中に広がる信仰ですが、裏で何か……」

「やはり教団が……」と呟いたのはセレスだった。
 彼女は胸の前で手を組み、唇を震わせる。


「セージ君、これってもう冒険者の依頼の範囲を超えてるわよね」
「ああ。でも無視できない。ここで目を逸らしたら、もっと多くの人が犠牲になるだろう」

「ん……セージ、戦う。ルミナスも」

 セレスは少し俯き、それから決意を宿した瞳で僕を見た。
「わたくしも……皆さまと共に。教団の悪意を止めたいのです」

 ギルドの一室で、地図が広げられる。教団の動き、迷宮の位置、そして不審な儀式の痕跡――すべてが一本の線で繋がり始めていた。



 ◇◇◇

 僕はふと自分の手首を見下ろした。

 銀色に淡く光る《幻色の腕輪》。これはもともとトトルムさんから譲られたもので、僕とリンカ、ルミナスは全員つけている。外見の印象を変えられる便利なマジックアイテムだ。

 これによって僕は元々の黒い髪色を銀色に。
 リンカは銀狐族の特徴である銀髪を水色に。
 パープルだったルミナスは赤い髪色になっている。

 そして今、セレスティア――いや、セレスにも必要なのは明らかだった。聖女の姿のまま人前に出るのは、あまりにも危険だ。

「セレス。これを」

 僕はストレージから予備の腕輪を取り出し、彼女の前に差し出した。

「僕たち全員が同じものを身につけている。髪や瞳の色を変えられるアイテムだ。これを付ければ、教団にすぐに気付かれることはない」

 セレスは一瞬驚いたように目を瞬かせたが、すぐに柔らかく微笑んだ。
「……ありがとうございます、セージ様。わたくしのために」

 彼女が腕輪を手首にはめた瞬間、金色の髪は栗色へ、碧眼は落ち着いた灰色へと変化していく。荘厳な聖女というより、どこにでもいそうな村娘のような雰囲気になった。

「おお……」
 リンカが感嘆の声を漏らす。
「これなら、誰も聖女だとは思わないわ」
「ん……セレス、普通の人に見える。そして可愛い。セージ、スケベオヤジのように喜ぶ」
「おいおいルミナスさんや。人を誤解のルツボに引きずり込む風評被害はやめてもらおうか

「ふふ、ふふふ、ありがとうございます」

 ルミナスも頷く。

 セレスは胸に手を当て、少し照れたように言った。
「……改めて。わたくしの名はセレスティア。ですが、どうぞ“セレス”とお呼びくださいませ」

 僕たちは顔を見合わせ、自然と頷き合った。

 冒険者ギルドのホールは、昼下がりだというのに相変わらず賑やかだった。武骨な戦士、怪しげな魔導士、そして駆け出しらしい若者たちが出入りし、クエストボードの前では依頼の奪い合いが繰り広げられている。

 僕たちがカウンターに近づくと、顔馴染みの受付嬢ミレイナさんが目を丸くした。
「セージさん……それに、見慣れない方が」

「彼女を仲間に迎えたんだ。名前はセレス。冒険者登録をお願いできるかな」

 セレスは姿勢を正し、丁寧に一礼する。腕輪の効果で髪は栗色、瞳は灰色へと変わっているが、元の清廉な雰囲気までは隠せないらしい。周囲の冒険者たちがなんとなく視線を送ってくる。

「わたくし、セレスティアと申します。どうぞ“セレス”とお呼びくださいませ。以後、よろしくお願い致します」

 その柔らかな声に、ホールのざわめきが一瞬やんだ。やがて仲間たちが「可愛いな」「高貴なお嬢さんみたいだ」と囁き合い、再び場が沸く。

「……は、はいっ! 登録の手続きをさせていただきます!」
 ミレイナさんは慌てて書類を取り出した。名前、生年月日、得意分野を確認し、血判を押す。

 僕はこそっとセレスに耳打ちをする。

「セレス。本名を名乗ってどうするのさ。偽装した意味が無いでしょ」
「あっ。そ、そうでしたっ。申し訳ありません」

 幻色の腕輪の効果で認識されずに済んだが、ちょっと天然なのだろうか。

「気を付けてね。誰が聞き耳を立ててるか分からないんだから」
「そうですわね。危機感が足りませんでした。世間知らずで申し訳ありません」

 セレスって実はちょっと天然が入ってるのかな。
 少しだけ肝を冷やす出来事だった。

 ◇◇◇

 その後、僕たちはギルド長室へ呼ばれた。筋骨隆々の中年の男――ギルド長ガルディアは、報告を聞きながら厳しい顔を崩さない。

「囚われていた娘を救った……だがその背後に、ベアストリア教団の影があると」

「ええ。直接“教団”と口に出したわけではありませんが、敵が共通して使っていた紋章が……」

 僕は戦闘で見た黒い三日月の印を説明した。

「なるほどな……教団の動きが、いよいよ冒険者ギルドの管轄にまで及んできたか」

 彼は低く唸り、机を拳で叩いた。
「セージ、お前たちに正式な依頼を出そう。『囁く迷宮』を再調査し、敵の正体を掴め。そしてもし可能なら、殲滅せよ」

「承ります」

 僕は即答した。

「その娘が聖女セレスティア様だということは、俺を含めて一部の者にしか知らせていない。お前達も十分注意してくれ」

「はい、分かってます」

 ◇◇◇

 出発の朝。準備を終えた僕たちは、ギルドの前で並んだ。
 リンカは新しい矢筒を腰に掛け、ルミナスは杖に魔力を通して火花を散らしている。そしてセレスは――腕輪の効果で外見は地味だが、清楚なローブを身に纏い、ぎゅっと胸の前で祈るように手を組んでいた。

「……必ず、お役に立ちます」

 彼女の瞳は真剣だった。

「よし。じゃあ行こう。次は本格的に教団と向き合うことになる」

 僕たちは足並みを揃え、再び迷宮の入り口へと向かった。
 その先で待つものが何であれ、もう後戻りはできない――。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!

枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕 タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】 3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!

異世界転移したら、神の力と無敵の天使軍団を授かったんだが。

猫正宗
ファンタジー
白羽明星は気付けば異世界転移しており、背に純白の六翼を生やした熾天使となっていた。 もともと現世に未練などなかった明星は、大喜びで異世界の大空を飛び回る。 すると遥か空の彼方、誰も到達できないほどの高度に存在する、巨大な空獣に守られた天空城にたどり着く。 主人不在らしきその城に入ると頭の中にダイレクトに声が流れてきた。 ――霊子力パターン、熾天使《セラフ》と認識。天界の座マスター登録します。……ああ、お帰りなさいルシフェル様。お戻りをお待ち申し上げておりました―― 風景が目まぐるしく移り変わる。 天空城に封じられていた七つの天国が解放されていく。 移り変わる景色こそは、 第一天 ヴィロン。 第二天 ラキア。 第三天 シャハクィム。 第四天 ゼブル。 第五天 マオン。 第六天 マコン。 それらはかつて天界を構成していた七つの天国を再現したものだ。 気付けば明星は、玉座に座っていた。 そこは天の最高位。 第七天 アラボト。 そして玉座の前には、明星に絶対の忠誠を誓う超常なる存在《七元徳の守護天使たち》が膝をついていたのだった。 ――これは異世界で神なる権能と無敵の天使軍団を手にした明星が、調子に乗ったエセ強者を相手に無双したり、のんびりスローライフを満喫したりする物語。

異世界転移から始まるハーレム生活〜チートスキルを貰った俺は、妹と共に無双する〜

昼寝部
ファンタジー
 2XXX年、X月。  俺、水瀬アキトは戦争の絶えない地球で『戦場の悪魔』と呼ばれ、数多の戦で活躍していた。  そんな日々を過ごしていた俺は、ひょんなことから妹と一緒に異世界へ転移することになった。  その世界にはダンジョンが存在しており、ライトノベルなどで登場する世界観と類似していた。  俺たちはその世界で過ごすため女神様からチートスキルを貰い、冒険者となって異世界での生活を満喫することにした。  これは主人公の水瀬アキトと妹のカナデが異世界へ転移し、美少女たちに囲まれながら異世界で無双するお話し。

ペーパードライバーが車ごと異世界転移する話

ぐだな
ファンタジー
車を買ったその日に事故にあった島屋健斗(シマヤ)は、どういう訳か車ごと異世界へ転移してしまう。 異世界には剣と魔法があるけれど、信号機もガソリンも無い!危険な魔境のど真ん中に放り出された島屋は、とりあえずカーナビに頼るしかないのだった。 「目的地を設定しました。ルート案内に従って走行してください」 異世界仕様となった車(中古車)とペーパードライバーの運命はいかに…

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

異世界帰還者の気苦労無双録~チートスキルまで手に入れたのに幼馴染のお世話でダンジョン攻略が捗らない~

虎柄トラ
ファンタジー
 下校帰りに不慮の事故に遭い命を落とした桜川凪は、女神から開口一番に異世界転生しないかと勧誘を受ける。  意味が分からず凪が聞き返すと、女神は涙ながらに異世界の現状について語り出す。  女神が管理する世界ではいま魔族と人類とで戦争をしているが、このままだと人類が負けて世界は滅亡してしまう。  敗色濃厚なその理由は、魔族側には魔王がいるのに対して、人類側には勇者がいないからだという。  剣と魔法が存在するファンタジー世界は大好物だが、そんな物騒な世界で勇者になんてなりたくない凪は断るが、女神は聞き入れようとしない。  一歩も引かない女神に対して凪は、「魔王を倒せたら、俺を元の身体で元いた世界に帰還転生させろ」と交換条件を提示する。  快諾した女神と契約を交わし転生した凪は、見事に魔王を打ち倒して元の世界に帰還するが――。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...