【絶対俺だけ王様ゲーム】美少女幼馴染3人と男オレ1人で始まったゲームが何かおかしい。どんどんNGがなくなっていく彼女達に迫られてます

かくろう

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幕間3/5 ウィンターカップ

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 全国大会の開会式って、空気がぜんぜん違う。
 床のワックスの匂いも、ライトのまぶしさも、観客のざわめきも、ぜんぶ「ここは全国だ」って言ってくる。俺は行進の列の中で、背筋を一本だけ余計に伸ばした。伸ばしたところで身長が急に増えるわけじゃないけど、気持ちは背が高くなる。

 スタンドをぐるっと見上げる。いた。水色、桃色、黄色。
 杏奈は水色のリボンで大きく手を振ってる。視線が合うと、口だけで「大丈夫♡」って言った。
 ふわりは桃色のシュシュで髪をまとめて、ひらひら旗を振りながら、あののんびり笑顔。緊張が半分抜ける。
 鈴音は黄色の小旗を両手でぴしっと掲げて、小さく「ファイトです」と唇を動かした。遠くからでも“丁寧”が伝わるの、ずるいよな。

 マイクの声が響いて、選手宣誓。拍手の波。
 行進が解散になって、俺らの控えベンチへ戻る途中、横を通り過ぎる他県の選手たちがわざと聞こえる声量で言う。

「……マジかよ、土峰零士、復帰って本当だったんだな」
「引退したって聞いてたのに。面白くなってきたじゃん」
「“天井に届かない大黒柱”が帰ってきたか。お前がいないと、残った意味がねぇんだよ」

 ちょっと胸が熱くなる。悪口まじりの賛辞って、いちばん効く。
 キャプテンが俺の背中を軽く叩いた。「零士、行くぞ。今日は初戦。白星で入る」

「分かってる。最初の一歩、外さない」

 アップのボールは手に張りつく。ワン、ツー……ドリブルの音が体育館の高さを測ってくれる。ステップの踏み込みで床が返してくる反発は、夏のそれよりちょっとだけ優しい。戻ってきた場所の感触だ。

 タイムスコアがゼロに揃って、審判が笛を短く鳴らす。
 ――全国大会、初戦。

 ティップオフ、味方センターが競り勝つ。俺は自陣へ一歩下がって、ボールを受けるふりをしてマークを釣る。釣れた瞬間、ハイピック。相手はドロップで下がるタイプ。ならば――スネークで中へ潜り、ショートロールの味方へスッと差し込む。
 ゴール。先制。よし、呼吸がきれいに入った。

 相手は東北の走るチーム。高さは互角、脚は速い。序盤は互いに様子見、スコアは並走。俺はプルアップのふりからノールックでコーナーへ飛ばし、逆サイドの戻りを遅らせる。相手がカバーにずれた瞬間、再びハイピック。今度は相手がスイッチしてきた。
 だったら――ギャロップで重心をずらして、ミドル。ネットがさらっと鳴る。気持ちいい高さだ。

 歓声の中に、三つの音色が混ざる。
「れー君、ナイスっ♡」
「れーじくん~、リズムいいよ~♡」
「レージ君、判断、完璧です!」

 声だけで、脚が一本軽くなる感じ。全国だろうがなんだろうが、俺の“真ん中”はいつもあの三つの声に合わせればいい。

 中盤、相手が当たりを強くしてきた。ファウルをもらいに来る当たり方。流れがちょっと淀む。ここは焦らない。
 俺はわざとテンポを落として、背中で守りながら時間を削る。ベンチの合図でセットを一本。ゴール下のスクリーンザスクリーナー。引っかかったディフェンスの裏へ、ピタッとロブ。センターが叩き込む――と言いたいところだけど、全国のリングは硬い。
 バチン、と嫌な音。リングから高く跳ねる。

 ここだ。
 俺は一歩で詰めて、空中でボールに触る。ダンクは届かない。でも、タップで角度を変えれば、リングの内側に落とせる。指先の一枚分で方向を決める。
 コトン、と落ちた。どよめきに笑いが混ざる。

「くそ、あれで届かないのに、届かせてくるのかよ」
「エンペラーアイってやつか?視野お化け……!」

 スタンドのざわめきが面白い。視野お化けは言い過ぎだ。でも、味方の足音や、相手の鼻息まで聞こえるくらいには集中できてる。

 相手のターン。外から一発、綺麗に決められて、同点。
 すぐ返す。トランジションで前に走る後輩の背中が見える。間を縫う角度でボールを通す。……が、横から長い腕が伸びた。読まれた。スティール。
 速攻を食らう。逆転。会場の空気がちょっとだけ相手寄りになる。

 タイム。ベンチへ戻ると、監督が短く言う。「焦るな。一本で戻す」

 水をひと口。額の汗を手の甲で拭う。視線を上げると、三人が身振りで合図してくる。
 杏奈は“深呼吸”、ふわりは“肩の力を抜いて”、鈴音は“目線を広げて”。
 分かったって。俺はコートへ戻りながら、肺の奥まで空気を入れなおす。

 再開。最初の一手は相手の勢いを殺すための“時間”。トップでボールを抱え、足だけを細かく刻んで、相手の足を止める。止まった瞬間、右へクロス。ヘルプが寄る。寄ったら逆。スキップパスが弧を描く。
 ――決まる。コーナー3。再同点。

 そこからは行って来い。リードして、追いつかれて、また突き放して。全国の初戦って、こういう“揺れ”が普通なんだよな。
 第三クォーターの終わり際、俺は一度だけ強引に行った。ユーロステップでヘルプの間に体をねじ込んで、フローター。指先で、ほんの少しだけボールを持ち上げる。
 ポトン。音が小さいほど、気分は大きくなる。

 ベンチに戻ると、後輩が笑って肩を小突いてきた。「先輩、えげつないっす」
「お前の戻りが速いから、間が生まれたんだよ」
 返しながら、自分の心拍のリズムを確かめる。まだ走れる。まだ跳べる。

 第四クォーター。相手はトラップでプレッシャーを上げてきた。パスコースを殺しにくるタイプ。
 ここで、夏から冬にかけて戻した“勘”の出番だ。俺は一拍だけボールを床に置いたまま、目だけで横と縦を見せる。食いついた瞬間、逆へ。
 空いたレーンに味方が飛び込む。通す。決まる。二ポゼッション差。

 ここで、スタンドからまた別の声が落ちてきた。
「土峰!お前が全国にいるって聞いて、俺も引退やめたんだよ!決勝で会おうぜ!」
「だから負けんなよ!お前がいないと、俺らの燃料が減る!」

 笑うしかない。知らない誰かの“期待”が、こんなに軽く背中を押すなんて、去年までは思ってなかった。

 残り二分、相手の3Pが連続で刺さって一気に一点差。会場が揺れる。ここは静かにいく。
 トップで受けて、ピックを二回重ねる“スパニッシュ”。スウィッチがもつれて、ディフェンスが一瞬遅れる。俺は踏み切りの角度を低く、リングの手前で止めてプルアップ。
 ――入る。三点差。
 ディフェンスへ戻る足が、やけに軽い。三人の「今の最高♡」「きれい~♡」「完璧です!」が、空気を甘くしてくれる。

 最後の守り。相手のエースが外でボールを持つ。フェイクからのステップバック。高い弧。
 短い、嫌な沈黙。
 リングに触って、外れた。味方がリバウンドを確保。俺はすぐさまファウルを誘って時計を溶かし、フリースローへ。
 一本目。深呼吸。ルーティン。放す。入る。
 二本目。放す。リングに触って、落ちる。
 四点差。残り十数秒。相手の速攻を無理に打たせ、外。ブザー。

 ――白星スタートだ。

 抱きついてきた後輩を片手で受け止めながら、天井を見上げる。やっぱり全国の天井は高い。届かない。でも、届かせる手はいくらでもある。
 視線をスタンドへ。三つの色が、同時に跳ねた。

「れー君、初戦突破っ♡」
「れーじくん~、最高の立ち上がりだよ~♡」
「レージ君、次もいけます。いきましょう」

 うなずいて、胸の内側で返事をする。――行く。
 この大会の“真ん中”に、俺たちはちゃんと立てる。
 次は二戦目。テンポは変えない。声も呼吸も、いつものまま。全国だろうが、俺の真ん中は四人で作る。そう決めたから、怖くない。

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