【絶対俺だけ王様ゲーム】美少女幼馴染3人と男オレ1人で始まったゲームが何かおかしい。どんどんNGがなくなっていく彼女達に迫られてます

かくろう

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32回目 その2

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「せーのっ!」
「「「王様れーじ君♡♡♡」」」

 この瞬間だけは、何度やっても心臓が跳ねる。

「で、正室は?」
 杏奈たちが一斉にくじをめくる。
「じゃじゃーん! 『当たり♡』!」
「杏奈か……お前、初手からテンション高すぎだろ」
「だって旅だもん♪ 初日記念にふさわしい命令しちゃうよ~♡」

 嫌な予感パート2。

「じゃあ発表します! 今回の命令は――」
 杏奈が胸を張り、指をピッと立てた。
「“王様は、正室から旅の安全祈願として――デコチュー♡”」

「……」
「……」
「……おい」
「静かめの命令って言ったのに!?」
「静かだよ? 声出してないし♡」
「行為がうるさいんだよ!」
「じゃ、ほら♡ 命令だから、拒否はナシね♪」

 ふわりと鈴音が呆れ半分・照れ半分の表情で見守る中、杏奈がそっと近づいてくる。
 車窓から差し込む冬の光が、彼女の黒髪に柔らかく反射する。
「ね、れー君」
「……あーもう、分かったよ。責任取れよ?」
「ふふっ、取ってあげる♡」

 額と額が、コツンと触れ合った。
 冷たい肌に、ほんの一瞬だけ温もりが残る。

「……安全祈願、完了っ♡」
「……お前なぁ」
「れー君、顔まっか~♡」
「ち、違う! 照れてねぇし!」
「ふわりもやりたい~♡」
「ふわりさん!?」
「リンちゃんもやる~?」
「やりませんっ!!」

 電車はコトコトと音を立てながら、白い雪原を駆け抜けていく。
 車内には、笑い声と、ほんの少しの心臓の鼓動が混じっていた。

「……ふぅ、あったか~い♡」
 ふわりがほわっと伸びをして、柔らかい息を吐いた。
 窓の外はすっかり銀世界。列車の中だけが、小さな春みたいにぽかぽかしている。

「ねぇれーじくん~」
「なんだよ」
「次のターン、ふわりでいい~?」
「いいけど……何企んでる?」
「うふふ~♡ お返し~」

 その言い方に、杏奈が目を細める。
「お返しって、さっきのデコチューのやつでしょ絶対!」
「旅の思い出、平等に分けっこしなきゃ~♡」
「ふわりちゃん、それ平等って言わないよ!?」
「大丈夫だよ~♡ ふわり、ちゃんと考えてるもん」

 彼女がくじを取り出すと、車内にいつもの合図が小さく響いた。
「せーのっ!」
「「「王様れーじ君♡♡♡」」」

 結果は――また俺が“王様”。
「お、おい、確率おかしくね?」
「れーじくん、今日は“運がいい日”なの~♡」
 いや、運というより罠のような気がする。

「じゃあ発表しまーす♡」
 ふわりがゆるっと笑いながら、俺の隣にすとんと座る。
 近い。というか、近すぎる。
「王様は……ふわりの肩、もんでくださ~い♡」
「は?」
「だって~、重いの~。れーじくんの手、気持ちよさそうだし♡」

「お、おい、これ電車の中――」
「静かにすればバレないよ~♡」
 そう言って、ふわりが少しだけ髪をかきあげる。
 肩のラインがあらわになり、ニット越しでも分かるほど柔らかそうだ。

「れー君、さっき杏奈にデコチューしたんだから、これは平等だね♪」
「……そういう理屈なのか」
「そういう理屈なの♡」

 おそるおそる手を伸ばすと、ふわりの肩がほんのり温かかった。
 力を入れずに指を滑らせると――
「んんっ♡ あ、そこ~♡」
「ちょっ、声っ、声抑えて!」
「だって~♡ 気持ちいいんだもん♡」

 向かいの席で杏奈が頬を染め、鈴音が真っ赤になって俯いている。
「ふ、ふわりちゃん……電車の中ですから……っ!」
「リンちゃんもあとでやってもらう~?」
「や、やりませんからぁぁぁっ!」

 そんなやり取りの間も、ふわりは満足げに身を預けてくる。
 長い髪が俺の腕に触れて、ほのかに甘いシャンプーの香りが漂う。
「ん~♡ れーじくんの手、あったかい~♡」
「お、おう……そりゃ人間だし」
「……人間のあったかさ、大好き~♡」

 彼女がふにゃっと笑って、俺の肩に頭を預けてきた。
 電車の揺れと、体温と、雪の白。
 すべてが混じって、ほんの一瞬、世界が静かになった気がした。

「はいっ、終了~♪」
 ふわりがぱっと顔を上げる。
「ふわり、元気回復っ♡ 次はリンちゃんの番だよ~♡」
「え、ええぇぇ!?」
「えへへ~、リンちゃんの命令、ふわり楽しみ~♡」

 ……どうやら、旅の初日はまだまだ波乱が続きそうだ。

 ふわりに指名された瞬間、鈴音の声が車内に響いた。
 周囲の乗客が一瞬こちらを見て、鈴音は慌てて口を押さえる。

「シッ、シッ! 声でかいって!」
「す、すみませんっ……!」
 赤くなった頬が可愛い。
 彼女は反射的にカバンから旅行用のスケジュール帳を取り出した。

「リンちゃん……それ、旅のノート?」
 杏奈がくすっと笑う。
「い、一応ですね! 卒業旅行ですし、時間配分を――」
「もう、“計画の妖精”だね」
「そ、そんな妖精いませんっ!」
 鈴音が真っ赤になって否定する。
 でも、否定するほど顔がかわいくなるのがズルい。

 ふわりが微笑みながら、くじ棒を取り出した。
「じゃあ、正室を決めよ~♡」
「えぇ!? ふわりちゃん、まだやるの!?」
「旅の思い出は多いほうがいいの~♡」

「せーのっ!」
「「「王様れーじ君♡♡♡」」」

 くじをめくると――
「……あっ。当たり……!」
 鈴音の手の中にハートマーク。

「おめでと~♡ 正室、リンちゃんだね~!」

「わ、わたしが……!?」
「うんうん♪ ほら、命令出さなきゃ~」
「そ、そんな急に言われても……」

 鈴音が手帳をぎゅっと抱きしめて、数秒間真剣に考え込む。
 彼女なりに“真面目に遊ぼう”としているのが伝わってくる。

「……き、決まりました!」
 背筋をピンと伸ばし、顔を真っ赤にしながら宣言する。
「王様は――正室に、優しく頭を撫でてあげてください!」

「……」
「……かわいい命令きたぁ」
 杏奈が思わず笑いを噛み殺す。
「い、いいじゃないですか!? 旅の疲れを癒す意味もありますし!」

 今始まったばかりだぞ?

「リンちゃん、優しい~♡」
「や、やめてくださいふわりちゃんっ!」

「じゃ、命令には従うしかないな」
 俺は隣の席に移動して、鈴音の頭に手を伸ばした。
 指先が彼女の髪をそっと撫でる。

「……ん」
 鈴音が小さく声を漏らす。
 瞳を閉じて、少しだけ身体を寄せてくる。
「れーじ君の手、あったかいです……」
「冷たい手でやったら怒られるだろ」
「ふふ……そうですね……」

 車内のざわめきが遠くに聞こえる。
 雪の白さと車輪の音の中で、鈴音の頬がほんのり桜色に染まっていた。

 ……が、その空気を壊すのはいつもの2人だ。

「れー君、あたしにも撫でてよ!」
「れーじくん、ふわりも~♡」
「おいおい! 順番守れ!」
「公平が大事でしょ♪」
「ふわりも平等が好き~♡」

 わちゃわちゃと騒ぎ出す3人。
 鈴音は両手で顔を覆って、「もうやだぁぁぁ……」と小さく呟いた。

「リンちゃん、照れてる~♡」
「照れてませんっ!!!」

 ――こうして、鈴音の真面目なターンは、見事に笑いと赤面で幕を閉じた。







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