前世ゲーマーの俺、最悪の寝取られルートをハッピー学園ラブに改造中

かくろう

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第3部 文化祭の思い出作り

第37話「文化祭準備スタート」

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 朝の教室は、いつも以上にざわめいていた。
 机を端に寄せる音、木材を組み立てる音、台本を読み合わせる声――文化祭の演劇準備が本格的に始まったのだ。

「新堂、背景パネル運ぶの手伝ってくれ!」
「結城さん、このドレスの色どう思う?」

 声があちこちから飛んできて、自然と活気に満ちていく。
 真白は班の女子たちと並んで、小物や衣装の色合いを相談していた。
 その笑顔を見ているだけで、昨日までの番外編みたいな「幸せの積み重ね」が続いていることを実感する。

 けれどクラス全員が集まる場だからこそ、からかいも当然飛んでくる。

「なあなあ、新堂と結城さん、駅前でセリフ合わせしてたんだって?」
「しかも練習の後で“あーん”してたって噂だぞ~?」

 わっと歓声が上がり、真白の顔は真っ赤に染まった。
 俺も言い返そうとしたけど、結局は苦笑するしかない。

(……ま、もう否定しても仕方ないよな)

「ちょっとっ! みんな集中して!」
 クラスの女子が大声を上げる。落ち着いた口調なのに、教室全体をぴしりと締める力がある。
「文化祭はもう目前なんだから、からかってる暇はないよ。大道具の仕上げも、衣装合わせもまだ終わってないんだから!」

 その一言に、クラス中が「あ、そうだった」と慌てて作業へ戻っていく。

 休み時間。俺と真白は、切り終えた紙飾り……いや、舞台に垂らす幕用の飾り布を整頓していた。
 彼女は手を止め、小さくつぶやく。

「……やっぱり恥ずかしいよね」
「何が?」
「みんなにからかわれるの。でも……ほんとはちょっと嬉しい」

 伏し目がちな笑顔。
 その横顔を見て、胸が温かくなる。

「俺もだよ。みんなに公認されるのって、悪くない」
「……ふふ、そっか」

 二人で顔を見合わせ、同時に笑った。
 その瞬間、準備で散らかった教室の中さえ、まるで特別な空間に思えた。

 午後の教室は、まるで小さな劇場の工房だった。
 木槌で釘を打つ音、ペンキの匂い、衣装合わせで広げられる布――みんなが一斉に手を動かし、舞台セットが少しずつ形になっていく。

「新堂くん、こっち押さえてて!」
「おう、任せろ」

 隣では真白が、背景画に細い筆を走らせていた。
 彼女の描く線は丁寧で、花園の背景がみるみる完成していく。

「……やっぱり真白が描くと綺麗だな」
「えっ、な、何それ……! もう、集中できなくなるからやめて」

 頬を染めて筆を止める真白。
 その反応がまた可愛くて、思わず笑ってしまう。

 一方で、周囲はわいわいと賑やかだった。
「その板、もう乾いた?」
「照明コード踏むなよー!」
「結城ちゃん、こっちの色どう思う?」

 真白は呼ばれるたびに駆け寄り、にこやかに意見を伝えていた。
 クラスの中心に自然と溶け込み、誰からも頼られている。

(……本当にすごいな。俺なんかより、よっぽどクラスを回してるじゃないか)

 その背中を見ていると、誇らしさと同時に「ちゃんと支えなくちゃ」という気持ちがこみ上げてきた。

「はいはい、みんな集中!」
 再び声を上げたのは紗和だ。
 班ごとに作業を分担し、時間配分を仕切っている。
 落ち着いた声で的確に指示を出す姿は、まるで舞台監督のようだ。

「白石さんって、本当に頼りになるよな」
 男子のひとりが感心したようにつぶやく。
 俺も小さく頷いた。

(……彼女がいるから、このクラスはまとまってるんだろうな)

 作業が一段落して、みんなが少し休憩に入った。
 窓際のベンチに腰掛け、真白と肩を並べる。
 夕陽が差し込み、彼女の横顔を黄金色に染めていた。

「ねえ蒼真君」
「ん?」
「こうして準備してるだけなのに、すごく楽しいね」
「……ああ。真白が隣にいるから、どんな作業も楽しく感じる」

 不意に口から出た言葉に、真白は一瞬驚いた顔をして、すぐに赤くなった。
「も、もう……やっぱり集中できなくなる……」

 その仕草が愛おしくて、俺は笑いを堪えるのに必死だった。

(文化祭……本番もきっと、最高の思い出になる)

 そう心の中でつぶやきながら、真白の隣で深く息を吸った。


◇◇◇


 文化祭準備二日目。
 クラスの空気は、ますます活気づいていた。
 背景パネルの色塗り、衣装の縫い合わせ、小道具の飾り付け――どこもかしこも賑やかで、教室は完全に“作業場”になっている。

「ちょ、待って! そこ、ペンキ垂れてる!」

 誰かの声が飛んだ直後――俺の手元にあったペンキの缶が、ぐらりと傾いた。

「うわっ!」

 慌てて支えた瞬間、隣にいた真白の腕に赤いしぶきが飛ぶ。

「きゃっ……!」

 反射的に俺はタオルで拭った。思っていた以上に近い距離で、彼女の白い肌に触れる。

「ご、ごめん真白! 大丈夫か!?」
「う、うん……ちょっと冷たかったけど、平気……」

 そう言いながら、真白の顔が真っ赤になっていく。俺の手はまだ彼女の腕に添えられたままだ。

(やば……めっちゃドキドキしてる)

「おーいおーい、蒼真~?」
 すかさずクラスの男子が茶化してくる。

「それ、もう恋人プレイだろ」
「いや、もう恋人じゃん。絵に描いたようなラブコメ展開だな!」

「ち、ちがっ……!」

 慌てて否定する俺を見て、真白はさらに顔を赤くして俯いた。その仕草がまた周囲をざわつかせる。

「ほらほら、蒼真くん、優しく拭いてあげなよー」
「結城ちゃん、照れてるー!」

 黄色い声と冷やかしに包まれ、俺の心臓はバクバクだった。

 やがて紗和が軽く咳払いして割り込む。

「あ、あの……作業が進まなくなるので、そろそろ」

 その声に場が落ち着き、真白もほっとした顔で俺を見上げる。

「……ありがとう、蒼真君」
「いや、俺こそ……」

 言葉にならない気持ちが、胸の奥でじんわりと熱を広げた。

(……こんな小さな出来事でも、隣に真白がいると特別に感じるんだな)

 赤く染まった彼女の頬を見て、俺は強くそう思った。

 午前中の準備がひと段落し、教室の熱気が一時的に和らいだ。
 壁には立てかけられた背景パネルが乾き、机の上には色とりどりの布や台本が散らばっている。

「ちょっと休憩しようかー」

 誰かの声で、クラス全体が一気にだらけムードに切り替わった。

「蒼真君、ちょっと廊下、行かない?」
 真白がそっと声をかけてくる。

「いいのか? クラスのやつらに任せて」
「うん、みんな休んでるし……二人で少しだけ」

 その小さな微笑みに逆らえるわけがない。
 俺たちは飲み物を持って、こっそり教室を抜け出した。

 廊下は午後の光が差し込み、教室よりもずっと静かだ。
 真白は紙パックのジュースを口にしながら、俺の隣を歩く。

「ねえ……準備、大変だけど楽しいね」
「ああ。みんなとワイワイやるの、久しぶりな気がする」

 自然に並んで歩きながら、肩と肩が触れ合う。
 そのわずかな温もりが、不思議と心地よかった。

「……蒼真君、疲れてない?」
「いや、まだ大丈夫だよ」
「でも、ちょっと顔に出てる」

 真白は立ち止まり、俺の額に手を当ててきた。
 ひやりとした指先が心地よく、同時に心臓が跳ねる。

「……熱はないね」
「そ、そんなに心配しなくても」
「だって、無理して倒れたりしたら困るから……私、蒼真君に頼ってばかりだし」

 潤んだ瞳で見上げてくる真白に、言葉が詰まる。

(……頼ってばかり? 違うだろ。俺が救われてるんだ)

 そう心の中で呟きながら、俺は自然と彼女の手を握った。
 真白は一瞬驚いたように目を見開いたが、すぐにふわりと笑顔を浮かべる。

「……蒼真君、優しいね」
「真白がそう思ってくれるなら、それでいい」

 短いやりとりだけど、胸の奥がじんわり熱くなる。
 誰に見られてもいいと思えるくらい、今この時間が特別に思えた。

(……文化祭の準備なんて、ただのイベントだったはずなのに)
(真白と一緒だと、全部が思い出に変わるんだな)

 俺は心の中でそう噛みしめながら、再び歩き出した。
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