前世ゲーマーの俺、最悪の寝取られルートをハッピー学園ラブに改造中

かくろう

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第2章 体育祭の思い出作り

第36話「蒼真の夢と真白の現実」

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 夜。布団に潜り込んだはずなのに、なかなか眠れなかった。
 昨日は真白と一緒に過ごした、幸せすぎる一日。
 その余韻を反芻しているうちに、まぶたが重くなって……いつの間にか意識が落ちていった。

 ――気づくと、俺は見覚えのある校舎裏に立っていた。
 夕陽に染まる壁、グラウンドから響く掛け声。
 だがそこにあったのは、決して忘れられない“あの場面”。

「……わたし、ずっと前から、あなたのことが好きだったの!」

 真白が涙を浮かべて告白している。
 けれど、俺の口から出た言葉は――

「ごめん」

 ……違う。違うんだ。
 俺はそんなことを言うつもりなんてない。
 必死に声を上げようとしても、喉が塞がれ、身体は金縛りのように動かない。


 次の瞬間。
 暗がりの中で、真白の肩に無遠慮な手が伸びる。
 チャラついた笑い声。
 ――神崎玲央が、彼女を腕の中へ引き寄せた。

「ちょ、やめて……っ」
「いいじゃん、チョロいんだろ? お前みたいな子は」

 真白が必死に振りほどこうとする。
 俺は叫ぶ。
 ――助けろ、手を伸ばせ!
 だが声は虚空に吸われ、腕は鉛のように動かない。

 気がつけば、真白の瞳には大粒の涙が溜まり、俺を見上げていた。
 その表情は、あのゲーム画面で何度も見せつけられた絶望の顔。

 胸が張り裂けるほどの悔しさと無力感が押し寄せる。
 どうして、また……。
 どうして俺は、救えないんだ。

 はっと目を覚ます。
 額は汗でびっしょり濡れ、心臓は暴れるように鼓動を打っていた。

 暗い天井を見つめながら、震える拳を握りしめる。
「……二度と、繰り返させない」

 スマホの画面を点けると、通知に小さなメッセージが光っていた。
 ――『今日はありがとう。すごく幸せだった。また明日ね』

 真白からのメッセージ。
 それを見た瞬間、胸の奥の痛みがじんわりと溶けていく。

 彼女はここにいる。俺の隣に。
 ゲームの悪夢なんて、ただの過去にすぎない。

「……絶対に守る。俺が」

 小さく呟きながら画面を閉じ、再び布団をかぶった。
 もう悪夢に戻ることはなかった。

◇◇◇

【side紗和】

 最近、教室の空気が柔らかくなった。
 その理由ははっきりしている。
 ――新堂くんと結城さん。

 二人が並んで笑っているだけで、周りまで自然と明るくなる。
 体育祭を乗り越えてからは、もう隠しようもないくらい「恋人同士」って雰囲気になっていた。

 今日の放課後もそう。
 文化祭の買い出しから戻ってきた二人を見たとき、結城さんの頬はほんのり赤くて、新堂くんは照れたように笑っていて。

(……本当に、幸せそう)

 胸の奥が少しだけきゅっとなったけれど、それは嫌な感情じゃなかった。
 むしろ「この光景を守りたい」と素直に思えた。

 思い返せば、少し前までの新堂くんは、どこか頼りなげで、何をするにも迷っているように見えた。
 けれど今は違う。
 まっすぐで、時に大胆で、結城さんのことを一番に考えて行動している。

(……やっぱり、変わったんだね。いい意味で)

 休み時間。
 女子たちが集まって小声で話しているのが耳に入る。

「結城ちゃん、最近すごく可愛くなったよね」
「新堂くんと一緒だと、自然に笑ってるんだもん」
「うらやましいけど……あの二人なら応援したくなるなぁ」

 その言葉に、胸がふっと温かくなる。
 私も同じ気持ちだから。

 片付けを手伝いながら、ふと窓越しに二人を見る。
 新堂くんが重い荷物を抱え、結城さんが心配そうに横で支えている。
 視線が合うと、同じタイミングで笑い合う。

(……いいなぁ。あんな風に笑い合えるのって、きっと本物だよね)

 少しだけ羨ましい気持ちを覚えつつも、自然と笑みがこぼれる。

 家に帰り、日記帳にペンを走らせた。

――結城さんは、幸せそうだった。
――新堂くんは、その隣で誇らしげに笑っていた。
――二人の物語は、もう悲しい結末なんて迎えない。

 文字にしてみると、胸の奥のざわめきはすっと消えた。
 私はこの場所で、静かに二人を見守っていけばいい。
 それだけで充分だ。

(……結城さん。どうかその笑顔を、ずっと忘れないでね)

 窓の外に沈む夕陽を眺めながら、私は小さくそう願った。



◇◇◇




【side真白】

 ――あの日。勇気を振り絞って蒼真に告白した瞬間のことは、今でも鮮明に覚えている。
 緊張で胸が苦しくて、声も震えて……本当は振られるかもしれないって怖くて仕方なかった。
 でも彼は迷わず「俺も真白が好きだ」って言ってくれた。
 その言葉を聞いた瞬間、涙がこぼれるくらい嬉しかった。

 それからの日々は、夢みたいに甘かった。
 朝の挨拶ひとつで心が跳ねたり、放課後に一緒に歩くだけで胸がいっぱいになったり。

 体育祭では、彼が真剣な顔で走る姿を見て、「こんなに頼もしいんだ」って改めて気づいた。
 そしてバトンをつなぎ終えた後に、誇らしげに笑ってくれた顔――あれは一生忘れないと思う。


 夜、打ち上げの帰り道。肩が触れるだけで心臓がうるさくて、うまく言葉が出なかった。
 でも蒼真は、そんな私の緊張も全部受け止めてくれた。
 ベンチに並んで座って、「これからも一緒に」って言ってくれた時、胸の奥に温かい灯がともった気がした。

 そして、昨日の買い出しデート。
 人混みの中で手を繋いで歩いたとき、やっと「本当に彼女になれたんだ」って実感が湧いた。
 ポテトを「あーん」ってし合ったり、夕暮れに並んで歩いたり――小さなこと全部が宝物。

(……わたし、こんなに幸せでいいのかな)

 ふと不安になるくらい、今は毎日がきらきらしている。
 でも隣に蒼真がいてくれるから、その不安さえも甘いものに変わる。


 日記の最後に、今日も同じ言葉を書き留めた。

――わたしは今、幸せです。
――それは全部、蒼真君がいてくれるから。

(ねえ、蒼真君。これからも、ずっと……一緒にいてね)

 ページを閉じながら、私はそっと微笑んだ。
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