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第3部 文化祭の思い出作り
第40話「舞台の光と袖の影」
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夕暮れがすっかり夜へと変わり、校舎の中庭には提灯や電飾が灯されていた。
文化祭前夜祭。
生徒会主催のイベントとして、軽音部の演奏や模擬店の試作販売が並び、普段の校舎とはまるで違う華やかさを放っている。
「わぁ……きれい……」
真白が感嘆の声を漏らした。
灯りに照らされた横顔は、舞台で見たときとはまた違う可憐さを纏っていて、思わず目を奪われる。
「おいしそうな匂いもするな。あっち、屋台っぽいの出てるぞ」
「行ってみようか、蒼真君」
並んだ手は自然と触れ合い、そのまま繋がる。
周囲は文化祭の賑わいに夢中で、俺たちの様子を気にする者はいない。
けれど、真白の指先が小さく震えているのに気づいた。
「……緊張してる?」
「う、ううん。なんかね……幸せすぎて、ちょっと怖いの」
はにかんだ笑顔。
その言葉が、真白の本心をそのまま映しているようで胸が熱くなる。
「大丈夫だ。俺が隣にいる。これからも、ずっと」
「……うん。ありがと、蒼真君」
真白はそっと肩を寄せてきた。
提灯の明かりに照らされ、彼女の頬は桜色に染まっている。
◇◇◇
しばらくして、俺たちは中庭のベンチに腰掛け、屋台で買った焼きそばとクレープを分け合った。
賑やかな声と音楽が遠くで響き、ここだけがふわりとした静けさに包まれている。
「ねえ、蒼真君」
「ん?」
「明日の本番、すごく楽しみだよ。……でも、ちょっと緊張してる」
真白は小さな声で打ち明ける。
その姿は舞台上の凛としたヒロインではなく、一人の女の子の表情だった。
「俺がいる。だから大丈夫。真白は、ちゃんと輝ける」
「……うん。蒼真君がそう言ってくれるなら」
彼女は目を閉じ、ほんの一瞬だけ俺の肩に頭を預けた。
その重みは軽いのに、不思議なほど胸に響いた。
◇◇◇
前夜祭の最後は、打ち上げ花火だった。
夜空に大輪の花が咲き、歓声が上がる。
光に照らされた真白の横顔を見て、俺は改めて思う。
(この笑顔を守るためなら、どんな困難でも乗り越える)
そう固く心に誓いながら、俺は真白と並んで夜空を見上げた。
◇◇◇
朝の校舎は、いつもよりずっと騒がしかった。
色とりどりの看板や飾りつけが廊下を彩り、模擬店の匂いが漂ってくる。
昨日の前夜祭で高まった空気が、今日はさらに熱を帯びていた。
「蒼真君! おはよう!」
教室に入ると、真白が満面の笑顔で手を振ってくる。
いつもの制服ではなく、演劇用の衣装に身を包んだ彼女は――息を呑むほど美しかった。
白いドレス風の衣装は、真白の清楚さを際立たせる。
髪も丁寧に整えられ、ほんのり光沢のあるリボンでまとめられている。
(やばいな……本当にヒロインだ)
心の中でそう呟かずにはいられなかった。
「新堂、そっち大道具の方お願い!」
「了解!」
俺は慌ただしく呼ばれ、作業に加わる。
舞台裏は完全に戦場だった。大道具、小道具、衣装――すべてが時間との勝負。
その端で――紗和が黙々と小道具を確認していた。
台本の角を押さえ、出演者の持ち物を一つ一つ机に並べていく。
声を張り上げることはない。ただ、こまめに忘れ物がないかを気にかけ、困っている人に小さな声で「これ、使う?」と差し出していた。
(……ああいうのが一番助かるんだよな)
派手さはない。けれど、あの気配りがあるから混乱が広がらないのだと気づく。
◇◇◇
やがて開場のアナウンスが響き、観客が入ってきた。
体育館に設けられた舞台は、ざわめきと期待で満ちている。
俺の心臓も、ドラムのように高鳴っていた。
(いよいよだ……!)
カーテンの隙間から客席を覗くと、他クラスの友人や保護者の姿が見える。
視線の先で真白は、落ち着いた表情を浮かべていた。
けれど、その手は小さく震えている。
「大丈夫か?」
そっと声をかけると、真白は小さく頷いた。
「……うん。蒼真君がいてくれるから」
その言葉に、胸の奥が熱くなる。
◇◇◇
照明が落ち、幕が上がる。
舞台中央に立つ真白の姿は、まるで本物の物語のヒロインだった。
清らかな声が体育館全体に響き渡ると、観客席から思わずどよめきが漏れる。
舞台袖で、小道具の順番を確認していた紗和がそっと顔を上げる。
真白の堂々とした姿を見つめて、ほんの少し口元をほころばせていた。
(……やっぱり、結城さんってすごいな)
その瞳は羨望と尊敬が入り混じっていたが、すぐにまた視線を小道具へと戻す。
俺は舞台袖から、その姿を見守っていた。
(……すげえ。俺の幼馴染が、こんなにも輝いてるんだ)
誇らしさと、少しの胸の痛みが混じる。
でも、それ以上に――守りたいという想いが強くなった。
◇◇◇
眩しい照明が舞台を照らす。
真白は堂々と台詞を紡ぎ、観客席を引き込んでいた。
その姿は、普段の彼女よりも一回り大きく見える。
(……すげえ。完全に物語の世界にいるみたいだ)
舞台袖で見守りながら、胸の奥が熱くなる。
クラスメイトたちも真剣そのもの。大道具を動かすタイミング、小道具を渡す動き、一つ一つに全員の集中がこもっていた。
その中で――紗和は、台本の端を押さえながら小声で確認を続けていた。
「……次は二場、椅子を二つ出す……衣装のマント、もう袖に……」
淡々と呟きつつ、必要な小道具を出演者にそっと手渡す。
控えめだけど、絶対に間違えない。
(あいつがいるから、安心できるんだよな……)
蒼真は心の中でそう思い、軽く頷いた。
◇◇◇
やがてクライマックス。
真白が舞台中央に立ち、長い台詞を言い終えた瞬間――客席から大きな拍手が湧き上がる。
まるで体育館全体が揺れるような熱気。
真白は少し息を切らしながらも、笑顔を浮かべていた。
その頬は赤く、目は潤んでいる。
(真白……めちゃくちゃ頑張ったな)
カーテンが閉じ、舞台袖に戻ってきた彼女は、俺の顔を見るなり一気に力を抜いた。
「……はぁぁぁ……緊張したぁ……!」
「おつかれ! すごかったぞ」
思わず肩を支えると、真白は恥ずかしそうに笑う。
「ほんとに……? 失敗しなかった?」
「完璧だった。みんな見惚れてた」
「……うぅ、蒼真君がそう言うなら……よかった」
そのやり取りを、紗和は少し離れた場所から見ていた。
彼女は拍手を送るように手を合わせ、ほっと安堵の息を吐く。
「……成功、だね」
誰に聞かせるわけでもない小さな声。
けれどその瞳には、確かな喜びが宿っていた。
◇◇◇
舞台の成功にクラス全体が沸き立つ。
「やったな!」
「最高だった!」
次々とハイタッチが交わされ、笑顔が溢れる。
その中心で真白は、衣装の裾を押さえながら笑っていた。
俺の視線に気づき、照れくさそうに小さく手を振る。
その姿を見て、胸の奥がまた熱くなる。
(……これからも、こうやって一緒に乗り越えていきたい)
舞台の幕は下りた。けれど、俺たちの物語はまだ続いていく。
文化祭前夜祭。
生徒会主催のイベントとして、軽音部の演奏や模擬店の試作販売が並び、普段の校舎とはまるで違う華やかさを放っている。
「わぁ……きれい……」
真白が感嘆の声を漏らした。
灯りに照らされた横顔は、舞台で見たときとはまた違う可憐さを纏っていて、思わず目を奪われる。
「おいしそうな匂いもするな。あっち、屋台っぽいの出てるぞ」
「行ってみようか、蒼真君」
並んだ手は自然と触れ合い、そのまま繋がる。
周囲は文化祭の賑わいに夢中で、俺たちの様子を気にする者はいない。
けれど、真白の指先が小さく震えているのに気づいた。
「……緊張してる?」
「う、ううん。なんかね……幸せすぎて、ちょっと怖いの」
はにかんだ笑顔。
その言葉が、真白の本心をそのまま映しているようで胸が熱くなる。
「大丈夫だ。俺が隣にいる。これからも、ずっと」
「……うん。ありがと、蒼真君」
真白はそっと肩を寄せてきた。
提灯の明かりに照らされ、彼女の頬は桜色に染まっている。
◇◇◇
しばらくして、俺たちは中庭のベンチに腰掛け、屋台で買った焼きそばとクレープを分け合った。
賑やかな声と音楽が遠くで響き、ここだけがふわりとした静けさに包まれている。
「ねえ、蒼真君」
「ん?」
「明日の本番、すごく楽しみだよ。……でも、ちょっと緊張してる」
真白は小さな声で打ち明ける。
その姿は舞台上の凛としたヒロインではなく、一人の女の子の表情だった。
「俺がいる。だから大丈夫。真白は、ちゃんと輝ける」
「……うん。蒼真君がそう言ってくれるなら」
彼女は目を閉じ、ほんの一瞬だけ俺の肩に頭を預けた。
その重みは軽いのに、不思議なほど胸に響いた。
◇◇◇
前夜祭の最後は、打ち上げ花火だった。
夜空に大輪の花が咲き、歓声が上がる。
光に照らされた真白の横顔を見て、俺は改めて思う。
(この笑顔を守るためなら、どんな困難でも乗り越える)
そう固く心に誓いながら、俺は真白と並んで夜空を見上げた。
◇◇◇
朝の校舎は、いつもよりずっと騒がしかった。
色とりどりの看板や飾りつけが廊下を彩り、模擬店の匂いが漂ってくる。
昨日の前夜祭で高まった空気が、今日はさらに熱を帯びていた。
「蒼真君! おはよう!」
教室に入ると、真白が満面の笑顔で手を振ってくる。
いつもの制服ではなく、演劇用の衣装に身を包んだ彼女は――息を呑むほど美しかった。
白いドレス風の衣装は、真白の清楚さを際立たせる。
髪も丁寧に整えられ、ほんのり光沢のあるリボンでまとめられている。
(やばいな……本当にヒロインだ)
心の中でそう呟かずにはいられなかった。
「新堂、そっち大道具の方お願い!」
「了解!」
俺は慌ただしく呼ばれ、作業に加わる。
舞台裏は完全に戦場だった。大道具、小道具、衣装――すべてが時間との勝負。
その端で――紗和が黙々と小道具を確認していた。
台本の角を押さえ、出演者の持ち物を一つ一つ机に並べていく。
声を張り上げることはない。ただ、こまめに忘れ物がないかを気にかけ、困っている人に小さな声で「これ、使う?」と差し出していた。
(……ああいうのが一番助かるんだよな)
派手さはない。けれど、あの気配りがあるから混乱が広がらないのだと気づく。
◇◇◇
やがて開場のアナウンスが響き、観客が入ってきた。
体育館に設けられた舞台は、ざわめきと期待で満ちている。
俺の心臓も、ドラムのように高鳴っていた。
(いよいよだ……!)
カーテンの隙間から客席を覗くと、他クラスの友人や保護者の姿が見える。
視線の先で真白は、落ち着いた表情を浮かべていた。
けれど、その手は小さく震えている。
「大丈夫か?」
そっと声をかけると、真白は小さく頷いた。
「……うん。蒼真君がいてくれるから」
その言葉に、胸の奥が熱くなる。
◇◇◇
照明が落ち、幕が上がる。
舞台中央に立つ真白の姿は、まるで本物の物語のヒロインだった。
清らかな声が体育館全体に響き渡ると、観客席から思わずどよめきが漏れる。
舞台袖で、小道具の順番を確認していた紗和がそっと顔を上げる。
真白の堂々とした姿を見つめて、ほんの少し口元をほころばせていた。
(……やっぱり、結城さんってすごいな)
その瞳は羨望と尊敬が入り混じっていたが、すぐにまた視線を小道具へと戻す。
俺は舞台袖から、その姿を見守っていた。
(……すげえ。俺の幼馴染が、こんなにも輝いてるんだ)
誇らしさと、少しの胸の痛みが混じる。
でも、それ以上に――守りたいという想いが強くなった。
◇◇◇
眩しい照明が舞台を照らす。
真白は堂々と台詞を紡ぎ、観客席を引き込んでいた。
その姿は、普段の彼女よりも一回り大きく見える。
(……すげえ。完全に物語の世界にいるみたいだ)
舞台袖で見守りながら、胸の奥が熱くなる。
クラスメイトたちも真剣そのもの。大道具を動かすタイミング、小道具を渡す動き、一つ一つに全員の集中がこもっていた。
その中で――紗和は、台本の端を押さえながら小声で確認を続けていた。
「……次は二場、椅子を二つ出す……衣装のマント、もう袖に……」
淡々と呟きつつ、必要な小道具を出演者にそっと手渡す。
控えめだけど、絶対に間違えない。
(あいつがいるから、安心できるんだよな……)
蒼真は心の中でそう思い、軽く頷いた。
◇◇◇
やがてクライマックス。
真白が舞台中央に立ち、長い台詞を言い終えた瞬間――客席から大きな拍手が湧き上がる。
まるで体育館全体が揺れるような熱気。
真白は少し息を切らしながらも、笑顔を浮かべていた。
その頬は赤く、目は潤んでいる。
(真白……めちゃくちゃ頑張ったな)
カーテンが閉じ、舞台袖に戻ってきた彼女は、俺の顔を見るなり一気に力を抜いた。
「……はぁぁぁ……緊張したぁ……!」
「おつかれ! すごかったぞ」
思わず肩を支えると、真白は恥ずかしそうに笑う。
「ほんとに……? 失敗しなかった?」
「完璧だった。みんな見惚れてた」
「……うぅ、蒼真君がそう言うなら……よかった」
そのやり取りを、紗和は少し離れた場所から見ていた。
彼女は拍手を送るように手を合わせ、ほっと安堵の息を吐く。
「……成功、だね」
誰に聞かせるわけでもない小さな声。
けれどその瞳には、確かな喜びが宿っていた。
◇◇◇
舞台の成功にクラス全体が沸き立つ。
「やったな!」
「最高だった!」
次々とハイタッチが交わされ、笑顔が溢れる。
その中心で真白は、衣装の裾を押さえながら笑っていた。
俺の視線に気づき、照れくさそうに小さく手を振る。
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