前世ゲーマーの俺、最悪の寝取られルートをハッピー学園ラブに改造中

かくろう

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第4部 クリスマスとお正月

第54話「三者三様の思い」

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【side千佳】

 放課後の昇降口は、人が少なくなっていて、しんとした空気が流れていた。
 そこに二人の姿を見つけたとき――胸の奥が、きゅっと締め付けられる。

(あ……やっぱり絵になるなぁ、二人って)

 隣り合って座ってるだけで、空気が柔らかく見える。
 真白はちょっと照れたように笑って、蒼真君はそれを見守るような顔をして――
 まるで恋愛ドラマのワンシーンみたい。

「おーい、ましろん、蒼真君!」
 できるだけ元気な声で呼ぶ。
 そうじゃないと、この胸の奥に広がるもやもやが、声の震えになって漏れちゃいそうだから。

 二人が振り向いた瞬間――目が合って、胸がどきんと跳ねた。
 慌ててごまかすように駆け寄っていく。

「待たせちゃった?」
「ううん、ちょうど来たところ」

 真白が笑って答える。
 その笑顔が、どこまでも柔らかくて……ほんの少し、妬けちゃう。
 だって私に向けられる笑顔とは、明らかに違うから。

 すると真白が、紙袋を差し出してきた。
「これ……千佳ちゃんに、二人からのお礼」
「えっ?」

 驚いて袋を受け取り、中を覗く。
 そこには、リボンで包まれたクッキーが並んでいた。
 ひとつひとつにチョコペンで“ありがとう”って書かれていて――思わず目を見張る。

「……クッキー? しかも“ありがとう”って……」

 言葉が喉で止まった。
 胸の奥がじわっと熱くなって、危うく涙がにじみそうになる。
 慌てて顔を上げて、笑顔を作った。

「……嬉しい。めっちゃ嬉しい! ありがとう!」

 全力で笑ってみせる。
 でも声の奥は、震えていたと思う。
 だって、こんなに温かい気持ちを込められたもの、どう受け止めたらいいのかわからなかったから。

(……やっぱり二人は特別なんだ。私が入り込む余地なんて、最初からなかったんだよね)

 心のどこかで、そんな言葉が浮かんでくる。
 でも同時に――
(それでも、こうして“友達”として私を見てくれてる……それだけで十分幸せなんだ)

 自分にそう言い聞かせた。
 だって、この二人に出会ってから、私の日常は確実に変わったのだから。
 笑ってごまかすんじゃなく、本当に笑える時間が増えた。
 それは、私にとって大切すぎる宝物だった。

「じゃあ、遠慮なく――」
 クッキーをひとつ摘んで、口に運ぶ。
 甘くて、少しほろっと崩れる優しい味。

「……ん! 甘い! でも、なんかほっとする味!」

 心の奥まで満たされていくのを感じて、思わず声が弾んだ。
 本当は、涙が混じりそうなくらい胸に響いたのに――私はそれを「笑顔」で隠した。

(ましろんと蒼真君、ありがとう。……私は、これからも二人のそばにいるよ)

 そう心にそっと誓いながら、私は二人に向かって最高の笑顔を浮かべた。


◇◇◇

【side蒼真】

 千佳がやって来たとき、真白と一緒に並んでいた俺は、自然と姿勢を正していた。
 別にやましいことなんてない。けれど、なんとなく“これから渡すもの”に緊張していたのかもしれない。

「待たせちゃった?」
「ううん、ちょうど来たところ」

 真白が答えると、千佳の表情がぱっと明るくなる。
 その笑顔に、一瞬だけ目を奪われた。
 ……けれど同時に気づく。あの笑顔の奥には、ほんの少し無理をしたような影があることに。

(やっぱり……千佳も、何か抱えてるんだよな)

 でも、それを表に出さないのが彼女らしい。
 だからこそ、今日渡す“お礼”には、俺と真白なりの気持ちを込めたつもりだ。

「これ……千佳ちゃんに、二人からのお礼」

 真白が紙袋を差し出す。
 千佳は驚いたように袋を受け取り、中を覗き込んで――目を見開いた。

「……クッキー? しかも“ありがとう”って……」

 小さな声。
 だけどその響きには、心を揺さぶられたような色が含まれていた。
 千佳はすぐに顔を上げて、笑顔を浮かべる。

「……嬉しい。めっちゃ嬉しい! ありがとう!」

 元気にそう言った瞬間――胸の奥がぎゅっと痛んだ。
 なぜだろう。彼女の笑顔が、少しだけ寂しそうに見えた。

(無理して笑ってる……? いや、考えすぎかもしれないけど)

 真白の横で、俺はその笑顔をしばらく見つめていた。
 けれど千佳は、すぐにクッキーを取り出し、口に運ぶ。

「……ん! 甘い! でも、なんかほっとする味!」

 弾むような声。
 本当に嬉しそうに笑っている。
 俺の胸に生まれたわだかまりは、一瞬で霧散した。

(……そうか。やっぱり千佳に渡せてよかった)

 クラスの輪の中でいつも明るく振る舞っているけど、きっとその裏で無理をしていることもあるはずだ。
 だからこそ、少しでも「ありがとう」を伝えたかった。

 真白がそっと俺の袖をつまんだ。
 視線を向けると、彼女もまた安堵したように微笑んでいる。

(真白も同じことを思ってたんだろうな)

 俺と真白、そして千佳。
 三人の間に流れる空気は、ほんのひとときだけど、柔らかくて温かかった。

(大切な人が隣にいて、その大切な人を大事に思ってくれる友達がいて……これ以上の幸せってあるのか?)

 そう心の中で呟きながら、俺は二人を見つめた。
 まるで――かけがえのない宝物を抱えているような気持ちで。

◇◇◇

【side真白】

 放課後、千佳ちゃんと待ち合わせをしていた。
 蒼真君と二人で準備してきた“お礼”を、ようやく渡せる時がきたのだ。

「待たせちゃった?」
「ううん、ちょうど来たところ」

 千佳ちゃんはいつもみたいに元気に笑ってそう答えてくれた。
 けれど――その笑顔の奥に、一瞬だけ影がよぎった気がした。

(……気のせい? でも、なんだか無理してるようにも見える)

 彼女は明るくて、クラスの雰囲気をふわっと和ませてくれる。
 でも私、知ってる。そういう子ほど、無理をしてしまうことがあるって。

 だからこそ――今日はどうしても「ありがとう」を伝えたかった。
 あの日、千佳ちゃんから受け取ったブレスレットは、蒼真君との日々を支えてくれるお守りになっている。
 それを黙って受け取ったままじゃ、友達として失礼だと思った。

「これ……千佳ちゃんに、二人からのお礼」

 紙袋を差し出すと、千佳ちゃんは目を丸くして中を覗き込む。
 その瞬間、胸が高鳴った。

「……クッキー? しかも“ありがとう”って……」

 小さな声。
 でも、驚きと同時に、どこか胸に響いたような音色が混じっていた。

「……嬉しい。めっちゃ嬉しい! ありがとう!」

 笑顔でそう言ってくれたとき、私もほっと息をついた。
 やっぱり渡してよかった。
 彼女の表情を見て、自然と蒼真君の袖を指でつまんでしまう。
 視線を合わせると、彼もまた安心したように微笑んでいた。

(蒼真君も、同じ気持ちなんだ……よかった)

 千佳ちゃんはさっそくクッキーを口に運び、無邪気に笑う。
「……ん! 甘い! でも、なんかほっとする味!」
 その声は、作っているときに思い描いたままの反応だった。

 けれど――ほんの一瞬だけ。
 クッキーを口にする前、彼女が見せた小さな表情の揺らぎが、頭の片隅に残っていた。

(やっぱり……少しだけ、寂しそうだった気がする)

 女の子同士だからこそわかる違和感。
 でも、それを今問い詰めるのは違う。
 今はただ――笑ってくれている千佳ちゃんの気持ちを大事にしたい。

「千佳ちゃん。本当にありがとう。私たちのこと、見守ってくれて」

 素直に言葉を口にした。
 それは蒼真君の隣にいる“彼女”としてじゃなくて、同じ女の子として、そして友達としての言葉だった。

(……これからもずっと一緒に笑っていられますように)

 そう願いながら、私は二人の横顔を交互に見つめた。
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