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第4部 クリスマスとお正月
第53話「初めての二人お菓子作り」
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日曜の午後。
真白の家のキッチンに立つのは、なぜか俺――新堂蒼真だった。
「……で、本当にやるのか?」
「もちろん! 千佳ちゃんへのお礼なんだから、気持ちを込めたいでしょ?」
真白は袖をまくり、三角巾を頭にちょこんと結んでいる。
その姿だけで、まるでドラマのワンシーンみたいに可愛くて――思わず目を奪われた。
「そ、そうだな……」
危ない危ない。目的を忘れるところだった。
テーブルの上には小麦粉、砂糖、チョコチップ、卵。
作戦会議の結果、プレーンなクッキーを作ってデコレーションすることにした。
シンプルだけど気持ちがこもって伝わるだろう、という真白の提案だ。
「じゃあまず、小麦粉をふるって……」
「お、おう……」
言われるがままにやろうとしたけど、いきなり粉がどばっとこぼれる。
「うわっ!」
「きゃっ……もう、蒼真君ったら!」
慌てて二人で粉を拭き取る。気づけば距離が近くて、真白の頬がほんのり赤い。
「ご、ごめん……」
「ふふ、大丈夫。こういうのも含めて楽しいから」
小さく笑う彼女に救われ、俺も苦笑を返した。
その後も失敗の連続だった。
卵の殻をボウルに落としたり、バターを溶かしすぎて慌てたり。
けれど、そのたびに真白が優しくフォローしてくれる。
「こうやって優しく混ぜれば、ちゃんとまとまるの」
「なるほどな……お、ほんとだ。意外と滑らかになってきた」
「でしょ? だから焦らなくても大丈夫」
そう言って見せる真白の笑顔は――材料よりも甘く感じられた。
やがてオーブンにクッキーを並べ、焼き上がりを待つ時間。
漂う甘い香りに、俺と真白は顔を見合わせる。
「なんか……本当に夫婦みたいだな」
「えっ……」
つい口を滑らせた俺に、真白は一瞬固まって――真っ赤に染まった。
「そ、そういうこと言うの、ずるいよ……!」
「わ、悪い! つい!」
気まずさに頭をかく俺。
でも、その空気もすぐにクッキーの焼き上がりの音で打ち消された。
「できた!」
オーブンから取り出したクッキーは、形はいびつだけど香りは抜群。
チョコペンで「ありがとう」と書き込む真白の横顔は、どこまでも幸せそうだった。
「……これなら千佳も絶対喜ぶな」
「うん。私たちの気持ち、ちゃんと伝わるよ」
二人で並んで見下ろすクッキーの山。
その光景が、甘さと温かさで胸を満たしていった。
◇◇◇
【side真白】
翌日の放課後。昇降口前のベンチに、私と蒼真君は並んで腰掛けていた。
紙袋の中には、昨日二人で焼いたクッキー。
見た目は少しいびつ。でも、そこに込めた気持ちの大きさは、どんな高価なお菓子にも負けないと胸を張れる。
「……緊張するな」
隣の蒼真君が、ぽつりと呟いた。
その声に私は思わず小さく笑う。
「ふふ、そう? 私は楽しみだよ」
「いや、失敗してたらどうしようとか思ってさ」
「大丈夫。ちゃんと美味しかったもん」
そう答えると、昨日二人で試食したときのことを思い出した。
焼き立てのまだ温かいクッキーを割り合って、同時に口に入れて――「甘いな」「うん、でも美味しいね」って笑い合った。
あの瞬間、ただの作業じゃなくて、心が結び合うひとつの思い出になった気がした。
だから私は、今日を迎えるのが楽しみで仕方なかった。
そんな時――
「おーい、ましろん、蒼真君!」
明るく弾む声が昇降口に響く。
駆けてきた千佳ちゃんが、額に浮かんだ汗を手の甲で拭いながら笑顔を見せた。
「待たせちゃった?」
「ううん、ちょうど来たところ」
自然と蒼真君と目が合う。互いに頷き合って、私はそっと紙袋を差し出した。
「これ……千佳ちゃんに、二人からのお礼」
「えっ?」
「この前のブレスレットのお返しだ。真白と一緒に作ったんだ」
千佳ちゃんが袋を受け取り、中を覗き込む。
その瞬間、彼女の目がぱっと見開かれる。
「……クッキー? しかも“ありがとう”って書いてある!」
「へへ、ちょっと形はいびつだけどね」
「でも気持ちはすっごく詰め込んだから」
自分で言いながら、胸がどきどきした。
“ありがとう”という言葉は、ただの文字じゃない。
私にとっても蒼真君にとっても――千佳ちゃんがくれた優しさに応えたい、心からの気持ち。
千佳ちゃんはしばらく言葉を失ったように、クッキーをじっと見つめていた。
その瞳の奥に、揺れる光が見えた気がした。
やがて彼女はゆっくり顔を上げて――
「……嬉しい。めっちゃ嬉しい! ありがとう!」
にかっと笑ったけれど、その声は少し震えていて、胸の奥に直接届いた。
私は思わず胸をぎゅっと押さえてしまう。
(千佳ちゃん……本当に喜んでくれてるんだ)
「良かった」
隣で蒼真君が安堵の息を漏らす。
その横顔を見て、私の胸もじんわりと温かさで満たされていった。
「じゃあ、遠慮なく――」
千佳ちゃんが一枚クッキーを取り出し、ぱくりと口にする。
「……ん! 甘い! でも、なんかほっとする味!」
「え、ほんと? よかったぁ……」
「うん! 世界一幸せな味!」
無邪気に笑うその顔は、まるで太陽みたいに輝いていた。
見ているだけで、こっちまで笑顔になってしまう。
(千佳ちゃん……本当に、素直でいい子だな)
心の奥から、そう強く思った。
私も蒼真君も、この瞬間だけは同じ気持ちを抱いていたに違いない。
だからこそ、胸の中にほんのりとした温かさと、言葉にならない切なさが同時に残っていくのを感じていた。
真白の家のキッチンに立つのは、なぜか俺――新堂蒼真だった。
「……で、本当にやるのか?」
「もちろん! 千佳ちゃんへのお礼なんだから、気持ちを込めたいでしょ?」
真白は袖をまくり、三角巾を頭にちょこんと結んでいる。
その姿だけで、まるでドラマのワンシーンみたいに可愛くて――思わず目を奪われた。
「そ、そうだな……」
危ない危ない。目的を忘れるところだった。
テーブルの上には小麦粉、砂糖、チョコチップ、卵。
作戦会議の結果、プレーンなクッキーを作ってデコレーションすることにした。
シンプルだけど気持ちがこもって伝わるだろう、という真白の提案だ。
「じゃあまず、小麦粉をふるって……」
「お、おう……」
言われるがままにやろうとしたけど、いきなり粉がどばっとこぼれる。
「うわっ!」
「きゃっ……もう、蒼真君ったら!」
慌てて二人で粉を拭き取る。気づけば距離が近くて、真白の頬がほんのり赤い。
「ご、ごめん……」
「ふふ、大丈夫。こういうのも含めて楽しいから」
小さく笑う彼女に救われ、俺も苦笑を返した。
その後も失敗の連続だった。
卵の殻をボウルに落としたり、バターを溶かしすぎて慌てたり。
けれど、そのたびに真白が優しくフォローしてくれる。
「こうやって優しく混ぜれば、ちゃんとまとまるの」
「なるほどな……お、ほんとだ。意外と滑らかになってきた」
「でしょ? だから焦らなくても大丈夫」
そう言って見せる真白の笑顔は――材料よりも甘く感じられた。
やがてオーブンにクッキーを並べ、焼き上がりを待つ時間。
漂う甘い香りに、俺と真白は顔を見合わせる。
「なんか……本当に夫婦みたいだな」
「えっ……」
つい口を滑らせた俺に、真白は一瞬固まって――真っ赤に染まった。
「そ、そういうこと言うの、ずるいよ……!」
「わ、悪い! つい!」
気まずさに頭をかく俺。
でも、その空気もすぐにクッキーの焼き上がりの音で打ち消された。
「できた!」
オーブンから取り出したクッキーは、形はいびつだけど香りは抜群。
チョコペンで「ありがとう」と書き込む真白の横顔は、どこまでも幸せそうだった。
「……これなら千佳も絶対喜ぶな」
「うん。私たちの気持ち、ちゃんと伝わるよ」
二人で並んで見下ろすクッキーの山。
その光景が、甘さと温かさで胸を満たしていった。
◇◇◇
【side真白】
翌日の放課後。昇降口前のベンチに、私と蒼真君は並んで腰掛けていた。
紙袋の中には、昨日二人で焼いたクッキー。
見た目は少しいびつ。でも、そこに込めた気持ちの大きさは、どんな高価なお菓子にも負けないと胸を張れる。
「……緊張するな」
隣の蒼真君が、ぽつりと呟いた。
その声に私は思わず小さく笑う。
「ふふ、そう? 私は楽しみだよ」
「いや、失敗してたらどうしようとか思ってさ」
「大丈夫。ちゃんと美味しかったもん」
そう答えると、昨日二人で試食したときのことを思い出した。
焼き立てのまだ温かいクッキーを割り合って、同時に口に入れて――「甘いな」「うん、でも美味しいね」って笑い合った。
あの瞬間、ただの作業じゃなくて、心が結び合うひとつの思い出になった気がした。
だから私は、今日を迎えるのが楽しみで仕方なかった。
そんな時――
「おーい、ましろん、蒼真君!」
明るく弾む声が昇降口に響く。
駆けてきた千佳ちゃんが、額に浮かんだ汗を手の甲で拭いながら笑顔を見せた。
「待たせちゃった?」
「ううん、ちょうど来たところ」
自然と蒼真君と目が合う。互いに頷き合って、私はそっと紙袋を差し出した。
「これ……千佳ちゃんに、二人からのお礼」
「えっ?」
「この前のブレスレットのお返しだ。真白と一緒に作ったんだ」
千佳ちゃんが袋を受け取り、中を覗き込む。
その瞬間、彼女の目がぱっと見開かれる。
「……クッキー? しかも“ありがとう”って書いてある!」
「へへ、ちょっと形はいびつだけどね」
「でも気持ちはすっごく詰め込んだから」
自分で言いながら、胸がどきどきした。
“ありがとう”という言葉は、ただの文字じゃない。
私にとっても蒼真君にとっても――千佳ちゃんがくれた優しさに応えたい、心からの気持ち。
千佳ちゃんはしばらく言葉を失ったように、クッキーをじっと見つめていた。
その瞳の奥に、揺れる光が見えた気がした。
やがて彼女はゆっくり顔を上げて――
「……嬉しい。めっちゃ嬉しい! ありがとう!」
にかっと笑ったけれど、その声は少し震えていて、胸の奥に直接届いた。
私は思わず胸をぎゅっと押さえてしまう。
(千佳ちゃん……本当に喜んでくれてるんだ)
「良かった」
隣で蒼真君が安堵の息を漏らす。
その横顔を見て、私の胸もじんわりと温かさで満たされていった。
「じゃあ、遠慮なく――」
千佳ちゃんが一枚クッキーを取り出し、ぱくりと口にする。
「……ん! 甘い! でも、なんかほっとする味!」
「え、ほんと? よかったぁ……」
「うん! 世界一幸せな味!」
無邪気に笑うその顔は、まるで太陽みたいに輝いていた。
見ているだけで、こっちまで笑顔になってしまう。
(千佳ちゃん……本当に、素直でいい子だな)
心の奥から、そう強く思った。
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