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第4部 クリスマスとお正月
第52話「二人で伝えるお礼」
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【side真白】
放課後の昇降口は、クラブ活動へ向かう生徒たちで慌ただしかった。
そんな中で、私と蒼真君は千佳ちゃんの姿を探して歩く。
「……いた」
蒼真君が指差す先――ロッカーの前で荷物をまとめている橘千佳ちゃん。
明るい声で友達に手を振り、ひとりになったタイミングを見計らって、私たちは歩み寄った。
「千佳ちゃん!」
「ん? あ、ましろん、それに蒼真君も」
ぱっと笑顔を向けてくれる。いつも通りの明るさに少し安心する。
でも、今日の私はただの世間話をしに来たんじゃない。
自然と、蒼真君と顔を見合わせた。
「……実は、二人でお礼を言いたくて」
「お礼?」
「うん。このブレスレットのことだよ」
私は袖をまくり、左手の革紐を見せた。
蒼真君も同じように腕を上げ、千佳ちゃんに見せる。
「すごく大切にしてる。おそろいで持てるのが嬉しくて……本当にありがとう」
「俺からも。千佳、こんなに丁寧に作ってくれて……感謝してる」
言葉を重ねると、千佳ちゃんは一瞬きょとんとして――次の瞬間、頬を真っ赤に染めた。
「ちょ、ちょっと! 二人そろってそんな風に言われたら……なんか、照れるじゃん……!」
両手をぶんぶん振って笑う千佳ちゃん。けれど、その瞳は確かに潤んで見えた。
「……でも、よかった。ほんとによかった」
「千佳ちゃん……?」
「二人がちゃんと笑ってくれてるの見たら……私もすごく嬉しいんだ」
そう言って小さく息を吐く千佳ちゃん。
その声にほんのり滲む安堵の響きを、私は聞き逃さなかった。
(……千佳ちゃん、きっと私たちのために一生懸命考えてくれたんだ)
胸の奥が熱くなる。
だから、私は思わず彼女の手を取った。
「千佳ちゃん、これからもずっと仲良くしてね」
「ましろん……」
千佳ちゃんは目を丸くして――やがて、少し照れくさそうに笑った。
「うん。もちろん!」
昇降口に夕陽が差し込み、三人の影が長く伸びる。
その温かさが、まるで未来へ繋がっていくように感じられた。
放課後の図書室。
窓の外はすでに冬の夕暮れで、校庭の向こうに茜色の空が広がっていた。
静かな空気の中、私と蒼真君は並んで机に向かっていた。
「……で、どうする?」
蒼真君が小声で切り出す。
「どうするって?」
「千佳へのお礼だよ。あのブレスレット、ただ“ありがとう”だけで済ませるのは違うだろ」
彼の真剣な横顔に、私は頷いた。
実際、今日の千佳ちゃんの表情を見て――私も同じことを考えていた。
「うん……私も、ちゃんとお礼がしたい。千佳ちゃん、本当に一生懸命作ってくれたんだと思う」
「だよな。あいつ、いつもは明るく振る舞ってるけど……きっと時間かけて用意してくれたんだろうな」
蒼真君の声が少し柔らかくなる。
その響きに、千佳ちゃんの姿を思い浮かべてしまう。
(……あの笑顔の奥に、どんな気持ちがあったんだろう。もしかすると、もしかsするのかな……?)
そう思うと胸が少しだけきゅっとなる。
けれど、私はその気持ちをぐっと押し込んだ。
もしそうであっても、私は誰にも譲ることはできない。
「じゃあ……何がいいと思う?」
「そうだな。千佳って、派手な物は好まないよな。だからアクセサリーとかだと逆に気を遣わせそうだし」
「うん……あ、でもお菓子作りはどう? 私と蒼真君で一緒に」
ふと思いついて言ってみると、蒼真君が目を丸くした。
「手作りか……なるほどな。あいつなら、そういう素朴なものの方が喜びそうだ」
「ふふ、でしょ?」
小さな達成感に笑みが漏れる。
でもそのすぐ後で、私は少し不安になった。
「でも……蒼真君、料理とかお菓子とかって、得意?」
「……努力次第、だな」
微妙に目を逸らす蒼真君。
その表情が面白くて、思わず吹き出してしまった。
「だ、大丈夫だよ! 私がちゃんと教えるから!」
「いや、そこは男の意地も見せないと……」
二人で顔を見合わせ、また笑った。
図書室の静かな空間に、その笑い声が小さく響く。
(……よし。千佳ちゃんに、ちゃんと気持ちを届けよう)
心にそう決めて、私は隣の蒼真君の横顔を見つめた。
◇◇◇
【side千佳】
昇降口で二人と別れ、ひとり帰り道を歩きながら――私はそっと自分の腕を見下ろした。
そこには何もない。
けれど、心の中には確かに、同じブレスレットの感触が残っていた。
(……やっぱり、羨ましいな)
ましろんと蒼真君。
二人が並ぶ姿は、見ているだけで胸が温かくなる。
同時に、ちくりと痛む。
でも――いいんだ。
あのブレスレットは「二人に仲良くしてほしい」って気持ちで作ったんだから。
私の本音を忍ばせてしまったのは、きっと私の弱さ。
「……ううん、違う」
小さく首を振る。
弱さじゃなくて、想いの形。
それを心にしまい込んで、二人の笑顔を守れるなら――それでいい。
(ましろんが幸せそうに笑ってるなら、それで……私は)
寒空の下、白い息がふわりと昇って消える。
胸の奥に芽生えた淡い痛みは、まだ消えそうになかった。
別に横入りをするつもりなんてサラサラない。
そうじゃなくても、私が入りこむ隙間なんてミリ単位で残っていないだろう。
だからここで感じる痛みは、一時の風邪みたいなものだ。
時間が経てば忘れるもの。きっと、大人になったら思い出になってくれる。
そう信じて、私は自分の思いを胸の奥へとしまい込んだのだった。
放課後の昇降口は、クラブ活動へ向かう生徒たちで慌ただしかった。
そんな中で、私と蒼真君は千佳ちゃんの姿を探して歩く。
「……いた」
蒼真君が指差す先――ロッカーの前で荷物をまとめている橘千佳ちゃん。
明るい声で友達に手を振り、ひとりになったタイミングを見計らって、私たちは歩み寄った。
「千佳ちゃん!」
「ん? あ、ましろん、それに蒼真君も」
ぱっと笑顔を向けてくれる。いつも通りの明るさに少し安心する。
でも、今日の私はただの世間話をしに来たんじゃない。
自然と、蒼真君と顔を見合わせた。
「……実は、二人でお礼を言いたくて」
「お礼?」
「うん。このブレスレットのことだよ」
私は袖をまくり、左手の革紐を見せた。
蒼真君も同じように腕を上げ、千佳ちゃんに見せる。
「すごく大切にしてる。おそろいで持てるのが嬉しくて……本当にありがとう」
「俺からも。千佳、こんなに丁寧に作ってくれて……感謝してる」
言葉を重ねると、千佳ちゃんは一瞬きょとんとして――次の瞬間、頬を真っ赤に染めた。
「ちょ、ちょっと! 二人そろってそんな風に言われたら……なんか、照れるじゃん……!」
両手をぶんぶん振って笑う千佳ちゃん。けれど、その瞳は確かに潤んで見えた。
「……でも、よかった。ほんとによかった」
「千佳ちゃん……?」
「二人がちゃんと笑ってくれてるの見たら……私もすごく嬉しいんだ」
そう言って小さく息を吐く千佳ちゃん。
その声にほんのり滲む安堵の響きを、私は聞き逃さなかった。
(……千佳ちゃん、きっと私たちのために一生懸命考えてくれたんだ)
胸の奥が熱くなる。
だから、私は思わず彼女の手を取った。
「千佳ちゃん、これからもずっと仲良くしてね」
「ましろん……」
千佳ちゃんは目を丸くして――やがて、少し照れくさそうに笑った。
「うん。もちろん!」
昇降口に夕陽が差し込み、三人の影が長く伸びる。
その温かさが、まるで未来へ繋がっていくように感じられた。
放課後の図書室。
窓の外はすでに冬の夕暮れで、校庭の向こうに茜色の空が広がっていた。
静かな空気の中、私と蒼真君は並んで机に向かっていた。
「……で、どうする?」
蒼真君が小声で切り出す。
「どうするって?」
「千佳へのお礼だよ。あのブレスレット、ただ“ありがとう”だけで済ませるのは違うだろ」
彼の真剣な横顔に、私は頷いた。
実際、今日の千佳ちゃんの表情を見て――私も同じことを考えていた。
「うん……私も、ちゃんとお礼がしたい。千佳ちゃん、本当に一生懸命作ってくれたんだと思う」
「だよな。あいつ、いつもは明るく振る舞ってるけど……きっと時間かけて用意してくれたんだろうな」
蒼真君の声が少し柔らかくなる。
その響きに、千佳ちゃんの姿を思い浮かべてしまう。
(……あの笑顔の奥に、どんな気持ちがあったんだろう。もしかすると、もしかsするのかな……?)
そう思うと胸が少しだけきゅっとなる。
けれど、私はその気持ちをぐっと押し込んだ。
もしそうであっても、私は誰にも譲ることはできない。
「じゃあ……何がいいと思う?」
「そうだな。千佳って、派手な物は好まないよな。だからアクセサリーとかだと逆に気を遣わせそうだし」
「うん……あ、でもお菓子作りはどう? 私と蒼真君で一緒に」
ふと思いついて言ってみると、蒼真君が目を丸くした。
「手作りか……なるほどな。あいつなら、そういう素朴なものの方が喜びそうだ」
「ふふ、でしょ?」
小さな達成感に笑みが漏れる。
でもそのすぐ後で、私は少し不安になった。
「でも……蒼真君、料理とかお菓子とかって、得意?」
「……努力次第、だな」
微妙に目を逸らす蒼真君。
その表情が面白くて、思わず吹き出してしまった。
「だ、大丈夫だよ! 私がちゃんと教えるから!」
「いや、そこは男の意地も見せないと……」
二人で顔を見合わせ、また笑った。
図書室の静かな空間に、その笑い声が小さく響く。
(……よし。千佳ちゃんに、ちゃんと気持ちを届けよう)
心にそう決めて、私は隣の蒼真君の横顔を見つめた。
◇◇◇
【side千佳】
昇降口で二人と別れ、ひとり帰り道を歩きながら――私はそっと自分の腕を見下ろした。
そこには何もない。
けれど、心の中には確かに、同じブレスレットの感触が残っていた。
(……やっぱり、羨ましいな)
ましろんと蒼真君。
二人が並ぶ姿は、見ているだけで胸が温かくなる。
同時に、ちくりと痛む。
でも――いいんだ。
あのブレスレットは「二人に仲良くしてほしい」って気持ちで作ったんだから。
私の本音を忍ばせてしまったのは、きっと私の弱さ。
「……ううん、違う」
小さく首を振る。
弱さじゃなくて、想いの形。
それを心にしまい込んで、二人の笑顔を守れるなら――それでいい。
(ましろんが幸せそうに笑ってるなら、それで……私は)
寒空の下、白い息がふわりと昇って消える。
胸の奥に芽生えた淡い痛みは、まだ消えそうになかった。
別に横入りをするつもりなんてサラサラない。
そうじゃなくても、私が入りこむ隙間なんてミリ単位で残っていないだろう。
だからここで感じる痛みは、一時の風邪みたいなものだ。
時間が経てば忘れるもの。きっと、大人になったら思い出になってくれる。
そう信じて、私は自分の思いを胸の奥へとしまい込んだのだった。
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