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第6章 春休みと、新しい季節
第75話「新学期の日常リズム」
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二年生になって一週間。
新しい教室、新しい席、新しい時間割。最初はぎこちなかった空気も、少しずつ馴染んできた。
「えーと、二時間目が数学で……あ、次は体育だ」
時間割表を眺めていると、真白が隣から覗き込んでくる。
ほんわりと良い匂いがしてちょっと幸せな気分になった。
「体育かぁ。……蒼真君、運動得意じゃないでしょ?」
「おい、いきなり失礼だな」
「だって、ほら……去年のシャトルランとか、途中で苦しそうだったし」
「ぐっ……覚えてたのか」
「ふふっ、あの必死な顔、可愛かったんだよ」
「可愛いってなんだ可愛いって……」
周囲のクラスメイトがくすくす笑っているのに気づき、耳が熱くなる。
昼休みになると、千佳が勢いよく机に突っ伏した。
「ねー! 二年って一年のときより授業ハードじゃない? もう眠いんだけど!」
「千佳ちゃん、まだ一週間だよ……」
紗和が苦笑して弁当を広げる。
「まあ、真白と一緒ならどんな授業でも楽しいけどな」
「えっ……なにそれ、急に……!」
俺の一言に真白が真っ赤になり、千佳が机を叩いて爆笑する。
「でたー! 甘々爆弾! ごちそうさまでーす!」
「ちょ、千佳ちゃん!」
紗和まで小さく吹き出していて、教室は自然に笑い声で満ちていった。
授業、休み時間、放課後――。
同じクラスで過ごす日々は、こうして当たり前みたいに積み重なっていく。
(……ほんの半年前までは、ゲームの記憶があるせいでいつ何が壊れるかって不安ばかり抱えてたのに。
今は違う。目の前のこの日常が、俺にとっての救いになってるんだ)
この世界に転生したのは9月の中頃。それから寝取り野郎の神崎玲央を撃退したのが先日のこと。
実に半年もの時間がこの世界で経過している。
窓の外、春の陽射しが机に落ちる。
それだけで胸の奥がほんのり温かくなった。
◇◇◇
校門に向かって並んで歩き出す。
雨音がぽつぽつと傘を叩く中、真白が少し恥ずかしそうに視線をそらした。
「……なんか、ドキドキするね」
「おい、そういうこと言うなよ。余計に意識するだろ」
「だって……本当にそうなんだもん」
頬を染めて呟く真白の横顔が、傘の中の世界を淡く彩っていく。
昇降口に着くと、ちょうど同じクラスの男子が通りかかった。
「おーい、新堂ー! ラブラブ相合傘かよ!」
「お似合いだなー!」
「結城さん、優しすぎ!」
「なっ……!?」
真白は慌てて俺の袖をぎゅっと掴む。
「み、見られてた……」
「まあ……隠すのは無理だろ」
「うぅ……恥ずかしい……」
彼女の耳まで赤く染まっていて、思わず笑いそうになった。
それでも傘の中、二人だけの距離は確かに近くて。
雨の音さえ、まるで俺たちを包み込むBGMみたいに聞こえていた。
(――この狭い世界が、いつまでも続けばいいのに)
◇◇◇
週末の午後。俺は真白の家に招かれていた。
リビングのテーブルにはノートと参考書が広がり、ポットのお茶とお菓子が並んでいる。
4月に入っていきなりの小テストが迫っているからだ。
前世が25歳のサラリーマンだった俺にとって、高校生の小テストなんて難しい話じゃない。
でも結構忘れている所もあったし、この半年はかなり苦労したからな。
元々勉強はそれなりに頑張ってきた方なので支障が出なくて助かった。
ただし、頑張ったといってもそれなりでしかないので、よくある転生チートで大活躍みたいな事もできなかったのは残念だ。
「さ、集中してやろうね」
「お、おう」
真白は丸眼鏡をかけていて、それだけで“勉強モード”の雰囲気をまとっていた。
――可愛い。けど言ったら怒られるから黙っておこう。
しばらくは真面目に問題集を解いていた。
だけど隣から視線を感じて顔を上げると、真白がじっと俺の答案を覗き込んでいる。
「……蒼真君、この計算、途中で間違ってるよ」
「マジか……全然気づかなかった」
「ふふ。私がついてるから安心して」
軽く微笑まれて、胸が跳ねた。
勉強よりも、彼女の横顔の方が気になって仕方がない。
ピンポーン、と玄関のチャイムが鳴った。
「はーい!」と真白が立ち上がる。戻ってきた彼女の後ろには――
「おじゃましまーす!」
千佳が元気よく登場した。
「……あの、私も来ちゃった」
続いて紗和の姿。
「二人とも!? なんで」
「勉強会やってるって聞いたから、混ぜてもらおうかなーって」
「一人よりみんなの方が集中できると思って……」
千佳はノートを広げ、紗和は静かに席についた。
そこからはもう賑やかだった。
千佳が「ねー、ここ教えて!」と騒げば、真白が「そこは公式こうだよ」と丁寧に説明し、紗和は静かに図解を描いて補足してくれる。
俺はというと……全員に見守られながら宿題を片付ける役目になっていた。
「蒼真君、そこ間違ってる」
「え、また?」
「こっちもだよ」
「ちょっ……お前ら教師かよ!」
笑いが弾け、空気は勉強会というよりピクニックに近かった。
夕方になり、参考書を片付けながら千佳がにやっと笑った。
「ねえ、気づいた? 蒼真君、結局今日一番勉強できなかった人だからね」
「う……」
「ふふっ、ほんとだ」
「……あの、でも楽しかったよ」
三人に畳みかけられ、俺はただ頭を抱えるしかなかった。
新しい教室、新しい席、新しい時間割。最初はぎこちなかった空気も、少しずつ馴染んできた。
「えーと、二時間目が数学で……あ、次は体育だ」
時間割表を眺めていると、真白が隣から覗き込んでくる。
ほんわりと良い匂いがしてちょっと幸せな気分になった。
「体育かぁ。……蒼真君、運動得意じゃないでしょ?」
「おい、いきなり失礼だな」
「だって、ほら……去年のシャトルランとか、途中で苦しそうだったし」
「ぐっ……覚えてたのか」
「ふふっ、あの必死な顔、可愛かったんだよ」
「可愛いってなんだ可愛いって……」
周囲のクラスメイトがくすくす笑っているのに気づき、耳が熱くなる。
昼休みになると、千佳が勢いよく机に突っ伏した。
「ねー! 二年って一年のときより授業ハードじゃない? もう眠いんだけど!」
「千佳ちゃん、まだ一週間だよ……」
紗和が苦笑して弁当を広げる。
「まあ、真白と一緒ならどんな授業でも楽しいけどな」
「えっ……なにそれ、急に……!」
俺の一言に真白が真っ赤になり、千佳が机を叩いて爆笑する。
「でたー! 甘々爆弾! ごちそうさまでーす!」
「ちょ、千佳ちゃん!」
紗和まで小さく吹き出していて、教室は自然に笑い声で満ちていった。
授業、休み時間、放課後――。
同じクラスで過ごす日々は、こうして当たり前みたいに積み重なっていく。
(……ほんの半年前までは、ゲームの記憶があるせいでいつ何が壊れるかって不安ばかり抱えてたのに。
今は違う。目の前のこの日常が、俺にとっての救いになってるんだ)
この世界に転生したのは9月の中頃。それから寝取り野郎の神崎玲央を撃退したのが先日のこと。
実に半年もの時間がこの世界で経過している。
窓の外、春の陽射しが机に落ちる。
それだけで胸の奥がほんのり温かくなった。
◇◇◇
校門に向かって並んで歩き出す。
雨音がぽつぽつと傘を叩く中、真白が少し恥ずかしそうに視線をそらした。
「……なんか、ドキドキするね」
「おい、そういうこと言うなよ。余計に意識するだろ」
「だって……本当にそうなんだもん」
頬を染めて呟く真白の横顔が、傘の中の世界を淡く彩っていく。
昇降口に着くと、ちょうど同じクラスの男子が通りかかった。
「おーい、新堂ー! ラブラブ相合傘かよ!」
「お似合いだなー!」
「結城さん、優しすぎ!」
「なっ……!?」
真白は慌てて俺の袖をぎゅっと掴む。
「み、見られてた……」
「まあ……隠すのは無理だろ」
「うぅ……恥ずかしい……」
彼女の耳まで赤く染まっていて、思わず笑いそうになった。
それでも傘の中、二人だけの距離は確かに近くて。
雨の音さえ、まるで俺たちを包み込むBGMみたいに聞こえていた。
(――この狭い世界が、いつまでも続けばいいのに)
◇◇◇
週末の午後。俺は真白の家に招かれていた。
リビングのテーブルにはノートと参考書が広がり、ポットのお茶とお菓子が並んでいる。
4月に入っていきなりの小テストが迫っているからだ。
前世が25歳のサラリーマンだった俺にとって、高校生の小テストなんて難しい話じゃない。
でも結構忘れている所もあったし、この半年はかなり苦労したからな。
元々勉強はそれなりに頑張ってきた方なので支障が出なくて助かった。
ただし、頑張ったといってもそれなりでしかないので、よくある転生チートで大活躍みたいな事もできなかったのは残念だ。
「さ、集中してやろうね」
「お、おう」
真白は丸眼鏡をかけていて、それだけで“勉強モード”の雰囲気をまとっていた。
――可愛い。けど言ったら怒られるから黙っておこう。
しばらくは真面目に問題集を解いていた。
だけど隣から視線を感じて顔を上げると、真白がじっと俺の答案を覗き込んでいる。
「……蒼真君、この計算、途中で間違ってるよ」
「マジか……全然気づかなかった」
「ふふ。私がついてるから安心して」
軽く微笑まれて、胸が跳ねた。
勉強よりも、彼女の横顔の方が気になって仕方がない。
ピンポーン、と玄関のチャイムが鳴った。
「はーい!」と真白が立ち上がる。戻ってきた彼女の後ろには――
「おじゃましまーす!」
千佳が元気よく登場した。
「……あの、私も来ちゃった」
続いて紗和の姿。
「二人とも!? なんで」
「勉強会やってるって聞いたから、混ぜてもらおうかなーって」
「一人よりみんなの方が集中できると思って……」
千佳はノートを広げ、紗和は静かに席についた。
そこからはもう賑やかだった。
千佳が「ねー、ここ教えて!」と騒げば、真白が「そこは公式こうだよ」と丁寧に説明し、紗和は静かに図解を描いて補足してくれる。
俺はというと……全員に見守られながら宿題を片付ける役目になっていた。
「蒼真君、そこ間違ってる」
「え、また?」
「こっちもだよ」
「ちょっ……お前ら教師かよ!」
笑いが弾け、空気は勉強会というよりピクニックに近かった。
夕方になり、参考書を片付けながら千佳がにやっと笑った。
「ねえ、気づいた? 蒼真君、結局今日一番勉強できなかった人だからね」
「う……」
「ふふっ、ほんとだ」
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