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第6章 春休みと、新しい季節
第77話「ゴールデンウィーク初日」
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連休初日。駅前は買い物客や観光客でごった返していた。
人の波を眺めながら待っていると、すぐに見覚えのある姿が視界に入る。
――真白だ。
白いブラウスに、ラベンダー色のプリーツスカート。
いつもは制服姿ばかり見慣れているから、その装いだけで息を呑んでしまう。
シンプルなのに上品で、ほんの少し大人びて見えた。
(……慣れてるはずなのに、やっぱり毎回新鮮だな)
何度も一緒に出かけているのに、姿を見るたびに胸が高鳴る。
その感覚がくすぐったくて、でも嬉しかった。
ショッピングモールに入ると、館内は冷房が効いていて外の熱気が嘘みたいだった。
吹き抜けの広場には大きなディスプレイがあり、子ども連れやカップルでどこも賑わっている。
「すごい人……。やっぱり連休だね」
「まあ仕方ないな。でも、こういう雰囲気は嫌いじゃない」
真白はそう言いながら歩調を合わせ、軽くスカートの裾を押さえた。
プリーツの揺れ方がどこか上品で、普段の制服とはまったく違う一面を見せていた。
雑貨屋に入り、棚に並んだアクセサリーを眺める。
「わ、かわいい。これなんてどうかな?」
真白が小さなペンダントを胸元に当ててみせる。
「……似合うと思う。けど、正直なんでも似合うから選びきれないな」
「またそういうこと……。ほんと、ずるい返しだよね」
照れながらも嬉しそうに笑う。その笑顔を見るたびに、こちらの方がドキッとさせられる。
今度は服屋の前で足を止めた。
マネキンが着ているブラウスを見上げながら、真白がぽつり。
「こういうのも……似合うかな?」
「試してみればいいんじゃないか」
「うーん……でも蒼真君に“似合う”って思われるのが一番だから」
「……っ」
不意打ちに心臓が跳ねた。
「そ、そういうことを自然に言うなよ」
「えへへ。だって本当のことだもん」
軽く肩をすくめて笑う彼女に、またしても言葉を失う。
モールを歩くたびに、周囲のざわめきなんて消えてしまいそうだった。
俺にとっては――真白が立ち止まる場所が、そのまま特別なスポットになっていた。
ショッピングモールの上階にある映画館は、連休初日とあって大盛況だった。
チケット売り場前には行列ができ、ポスターには人気のアクションやファミリー映画が並んでいる。
「どれにする?」
「えっと……これ、面白そうじゃない?」
真白が指差したのは、学園ラブコメ映画のポスターだった。
主演俳優と女優が制服姿で微笑み合う絵柄に、俺は苦笑する。
「……まさかの学園ラブ?」
「いいじゃない。雰囲気合うし」
「まあ、確かに俺たちが観たらリアルすぎるかもな」
そう言いながらも、彼女が楽しそうにしているなら反対する理由はなかった。
劇場に入り、シートに腰を下ろす。
照明が落ち、予告編が流れ出すと自然に周囲のざわめきが遠のく。
隣には真白。暗がりの中で、ほんのり甘いシャンプーの匂いが漂ってきた。
(……この距離感、やばいな)
スクリーンに映し出される物語より、すぐ隣にいる彼女の存在の方が気になって仕方ない。
映画が進むにつれて、観客席は笑い声やため息で盛り上がっていった。
主人公とヒロインがすれ違い、やがて和解して抱きしめ合うシーン。
ふと横を見ると、真白の肩が小さく震えていた。
「……泣いてる?」
「ち、違うもん……!」
慌てて顔を背けるが、目尻がほんのり濡れているのが見えてしまう。
思わずポケットからハンカチを差し出すと、真白は観念したようにそれを受け取った。
「……だって、切なかったんだもん」
「いや、分かるけどさ」
「蒼真君だって泣きそうだったでしょ」
「俺は……ちょっとだけな」
二人して小声でやり取りしながら、スクリーンの光に照らされる彼女の横顔を盗み見た。
目元を拭う仕草さえ愛しく思えて、胸の奥が温かくなる。
物語がクライマックスへ近づく。
主人公とヒロインが涙ながらに互いの想いを伝えるシーン――その瞬間、真白の肩がわずかに震えた。
次の瞬間。
そっと、俺の手に柔らかな感触が重なる。
「……っ」
暗がりの中で、真白の指先がぎゅっと俺の手を握っていた。
無意識なのか、それとも気持ちを抑えきれなかったのか。
映画の切なさより、その小さな手の温もりが胸をいっぱいにする。
(……反則だろ、こんなの)
俺も握り返すと、真白の身体がわずかに震えて――けれど、離す気配はなかった。
エンドロールが流れ、館内に明かりが戻る。
真白は慌てたように俺の手を離し、ハンカチで目元を拭いながら小さく笑った。
「……やっぱり映画っていいね。蒼真君と一緒に観ると、もっと」
「俺もだよ。……隣で泣かれたら、さすがに心臓に悪いけどな」
「も、もう! 忘れてよね!」
照れる声に苦笑しながら立ち上がる。館内を出ると、昼下がりの明るさが戻ってきて、さっきまでの暗がりが夢みたいに感じられた。
エスカレーターへ向かう途中、不意に真白が立ち止まる。
「……あのね」
小さく息を吸って、俺の手をそっと取った。今度は指を絡めて、恋人繋ぎに。
「映画だけじゃなくて……このあとも、ずっと一緒に楽しみたいな」
「……ああ」
握られた手から熱が伝わってくる。もう離さないと決めているみたいに、真白はしっかりと指を絡ませてきた。
人混みのざわめきの中、俺たちはそのまま繋いだ手を解かずに歩き出す。
映画の余韻と、彼女の温もりを抱えながら――このデートの続きを楽しむために。
人の波を眺めながら待っていると、すぐに見覚えのある姿が視界に入る。
――真白だ。
白いブラウスに、ラベンダー色のプリーツスカート。
いつもは制服姿ばかり見慣れているから、その装いだけで息を呑んでしまう。
シンプルなのに上品で、ほんの少し大人びて見えた。
(……慣れてるはずなのに、やっぱり毎回新鮮だな)
何度も一緒に出かけているのに、姿を見るたびに胸が高鳴る。
その感覚がくすぐったくて、でも嬉しかった。
ショッピングモールに入ると、館内は冷房が効いていて外の熱気が嘘みたいだった。
吹き抜けの広場には大きなディスプレイがあり、子ども連れやカップルでどこも賑わっている。
「すごい人……。やっぱり連休だね」
「まあ仕方ないな。でも、こういう雰囲気は嫌いじゃない」
真白はそう言いながら歩調を合わせ、軽くスカートの裾を押さえた。
プリーツの揺れ方がどこか上品で、普段の制服とはまったく違う一面を見せていた。
雑貨屋に入り、棚に並んだアクセサリーを眺める。
「わ、かわいい。これなんてどうかな?」
真白が小さなペンダントを胸元に当ててみせる。
「……似合うと思う。けど、正直なんでも似合うから選びきれないな」
「またそういうこと……。ほんと、ずるい返しだよね」
照れながらも嬉しそうに笑う。その笑顔を見るたびに、こちらの方がドキッとさせられる。
今度は服屋の前で足を止めた。
マネキンが着ているブラウスを見上げながら、真白がぽつり。
「こういうのも……似合うかな?」
「試してみればいいんじゃないか」
「うーん……でも蒼真君に“似合う”って思われるのが一番だから」
「……っ」
不意打ちに心臓が跳ねた。
「そ、そういうことを自然に言うなよ」
「えへへ。だって本当のことだもん」
軽く肩をすくめて笑う彼女に、またしても言葉を失う。
モールを歩くたびに、周囲のざわめきなんて消えてしまいそうだった。
俺にとっては――真白が立ち止まる場所が、そのまま特別なスポットになっていた。
ショッピングモールの上階にある映画館は、連休初日とあって大盛況だった。
チケット売り場前には行列ができ、ポスターには人気のアクションやファミリー映画が並んでいる。
「どれにする?」
「えっと……これ、面白そうじゃない?」
真白が指差したのは、学園ラブコメ映画のポスターだった。
主演俳優と女優が制服姿で微笑み合う絵柄に、俺は苦笑する。
「……まさかの学園ラブ?」
「いいじゃない。雰囲気合うし」
「まあ、確かに俺たちが観たらリアルすぎるかもな」
そう言いながらも、彼女が楽しそうにしているなら反対する理由はなかった。
劇場に入り、シートに腰を下ろす。
照明が落ち、予告編が流れ出すと自然に周囲のざわめきが遠のく。
隣には真白。暗がりの中で、ほんのり甘いシャンプーの匂いが漂ってきた。
(……この距離感、やばいな)
スクリーンに映し出される物語より、すぐ隣にいる彼女の存在の方が気になって仕方ない。
映画が進むにつれて、観客席は笑い声やため息で盛り上がっていった。
主人公とヒロインがすれ違い、やがて和解して抱きしめ合うシーン。
ふと横を見ると、真白の肩が小さく震えていた。
「……泣いてる?」
「ち、違うもん……!」
慌てて顔を背けるが、目尻がほんのり濡れているのが見えてしまう。
思わずポケットからハンカチを差し出すと、真白は観念したようにそれを受け取った。
「……だって、切なかったんだもん」
「いや、分かるけどさ」
「蒼真君だって泣きそうだったでしょ」
「俺は……ちょっとだけな」
二人して小声でやり取りしながら、スクリーンの光に照らされる彼女の横顔を盗み見た。
目元を拭う仕草さえ愛しく思えて、胸の奥が温かくなる。
物語がクライマックスへ近づく。
主人公とヒロインが涙ながらに互いの想いを伝えるシーン――その瞬間、真白の肩がわずかに震えた。
次の瞬間。
そっと、俺の手に柔らかな感触が重なる。
「……っ」
暗がりの中で、真白の指先がぎゅっと俺の手を握っていた。
無意識なのか、それとも気持ちを抑えきれなかったのか。
映画の切なさより、その小さな手の温もりが胸をいっぱいにする。
(……反則だろ、こんなの)
俺も握り返すと、真白の身体がわずかに震えて――けれど、離す気配はなかった。
エンドロールが流れ、館内に明かりが戻る。
真白は慌てたように俺の手を離し、ハンカチで目元を拭いながら小さく笑った。
「……やっぱり映画っていいね。蒼真君と一緒に観ると、もっと」
「俺もだよ。……隣で泣かれたら、さすがに心臓に悪いけどな」
「も、もう! 忘れてよね!」
照れる声に苦笑しながら立ち上がる。館内を出ると、昼下がりの明るさが戻ってきて、さっきまでの暗がりが夢みたいに感じられた。
エスカレーターへ向かう途中、不意に真白が立ち止まる。
「……あのね」
小さく息を吸って、俺の手をそっと取った。今度は指を絡めて、恋人繋ぎに。
「映画だけじゃなくて……このあとも、ずっと一緒に楽しみたいな」
「……ああ」
握られた手から熱が伝わってくる。もう離さないと決めているみたいに、真白はしっかりと指を絡ませてきた。
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