転生したら世話係?

東雲

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「止まれ!」
何度目かの休憩が終わり、国境に向け歩いていると、先頭を歩いていたノアが緊張した様子で静止の声をかけてきた。
確かに進むにつれて森深い場所に入って行ってるのだろう、薄暗く、苔が生えているような陽が当たらない場所が増えてはきているものの、特に危険を感じなかった。
それでも隣を歩いているアメリアも、前を歩いている零やリアムもどこかピリピリしているから、この先に何かがあるのかもしれない。
何が起こるかわからない恐怖で俺が固まっていると、目の前にいた零が突然走り出した。

「零!」
「ノア、あなた短剣どうしたの?」
リアムは慌てたように名前を叫んで零の背中に向かって手を伸ばしたが、それは虚しく空を切ってしまった。
零の奴、まだ本調子じゃないのに無鉄砲だ。
そのことが俺でもわかり焦っていると、アメリアが困惑したように、走り出そうとしていたノアに声を掛けた。
誰ともすれ違っていないし、戦闘もしてないから落としてないはずなのに、アメリアは何を言っているのかと思いながらノアの腰を見ると、先ほどまで腰にぶら下がっていた短剣がなくなっている。

「まさか、あいつ戦うつもりか?」
「無茶だ。 ノア、急いで行くぞ。」
アメリアに言われて短剣があるはずの場所を触ったノアは、短剣が無くなっていることに気づくと、顔を強張らせて前にいるリアムに尋ねていた。
そしてなんとなく事態を把握した様子のリアムと、慌てて零が突っ走って行った方角に向かって走って行った。

「私たちは、ゆっくりで大丈夫よ。 あの二人、ああ見えて強いから、すぐに回復が必要な大怪我を負うことは、この辺りの魔物ではないわ。」
「じゃあ歩いていくか。」
取り残されたけど、どうしたらいいんだ?
走って追いかけるべきか、ここでじっと待つべきかわからず戸惑っていると、アメリアがノアたちが放り出して行った荷物を手に戻ってきた。
あの二人、どこをどう見ても強いだろ。
特にリアム。
もしあいつらが、この世界では弱い部類に入るって言うんなら、俺はきっと生きていけない。
アメリアの言葉に突っ込みたかったが、まだそんなに親しくもないため俺は返事をするだけにとどめ、アメリアが回収してきたノアとリアムの荷物を受け取り、一緒に零たちがいるであろう場所へ向かって歩き始めた。

「あら? もう終わっているみたいね。」
数百メートルほど歩いたところで、アメリアは足を止めて驚いたように呟いた。
気配に気づいたみたいだったから、すぐそこかと思ってたが予想以上に遠かった。
この距離の敵を察知できるって、お前らどれだけ野生味溢れてるんだよ……。
しかも何が入っているのか知らないが、リアムの荷物がめちゃくちゃ重い。
俺は荷物を下ろして屈むと、草の陰からアメリアが見ている方を覗き見た。
するとそこにはイノシシのような生き物の死体が三体転がっていたが、リアムたちはその生き物には興味がないのか、別の場所に集まっていた。

「どうしたの?」
アメリアはリアムたちに近づくと、背中に向かって声をかけた。

「零が人を見つけたんだけど……。」
「話は後だ。 とりあえず治療してやってくれ。」
声に反応してリアムとノアは振り返ったが、どうも歯切れが悪い。
そもそもけっこう森の中に入ったと思うし、魔物も出てくるような場所に一般人がいるだろうか?
アメリアも俺と同じ疑問を感じたのか、怪訝な表情を見せた。
しかし治療という言葉を聞くと頷き、二人の横へ移動して行った。

「あら? あなた……。 あとで、ゆっくり聞くわ。 治療をするから、じっとして。」
リアムたちが困っている相手が見えたのか、近づいていっていたアメリアが驚きの声を上げた。
しかしそれ以上は何も言わず、すぐに屈んで治療を始めたが、三人全員が驚く相手がすごく気になる。
それにアメリアの、どこか困惑していた横顔……。
何か問題でもあったんだろうかと近づくと、ノアとアメリアの隙間からグレージュの髪の毛がチラッと見えた。

「何か手伝おうか?」
「もう少し進んだ先で休憩か、野宿になるから、その時にでも手伝ってくれ。 今は大丈夫だ。」
アメリアがグレージュヘアの人の治療を始めると、リアムは少し離れた樹の下で座り込んでいる零の元へ駆け寄っていった。
アメリアとノアがグレージュヘアの人を、リアムが零の世話をしているのに俺だけなにもしていない。
居心地の悪さを感じてリアムに声をかけたが、断られてしまった。
そのとき見たリアムの様子が零の世話というより治療に見えたが、手伝いはいらないと言われた以上、手を出したら迷惑なんだろうな。
俺は零が気になりつつも、大人しく荷物番をすることにした。
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