超好みな奴隷を買ったがこんな過保護とは聞いてない

兎騎かなで

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第三章 魔人救済編

りんこさんちの子とコラボ番外編

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前書き

ツイッターで交流させてもらっております絵師様、ばばりんこ様のキャラクターとコラボした話です。
イツキが珍しい異国の商品を買い漁ります。

読まずとも本編の展開とは関わりがないので、飛ばしても支障はありません。
読んでもいいよという方はスクロールどうぞ。


─────────


 またダンジョンで稼ぐべく、リドアートがダンジョンの外に出かけているであろう、夕暮れ時に出かけてみた。

 するとダンジョン前で、誰かが揉めているのが視界に入る。なんだあいつら。見たことのない獣人がいるぞ。

 揉めているのはダンジョンの猪門番と、二人の見知らぬ青年だった。

 一人は俺よりちょっと大きい程度の、茶髪垂れ耳の兎獣人で、カイルくらい背が高いもう一人は……魔族のように耳が尖っているが、角がない。

 なんの獣人だ? それとも魔人? な訳ないよな……彼は地面の上に布を敷き、異国の気配がする怪しげな商品を並べていた。

「だから、ここで商売されちゃ困るんだ」
「ちょっとくらい見逃してくれよ、門番さん。ほら、珍しい異国のお香だぞ。こいつをやるからちょっとだけ、ここで商売させてくれねえかな」

 謎の獣人は、緑色の髪をしている。彼の長髪は下の部分が薄紫に染まっていて、ファンタジックな見た目をしていた。

 この獣人世界では、基本的に動物の色の髪やら目の色ばかりだから、緑の髪なんぞ見たことがない。染めてんのかな、ちょっと興味が出てきた。

「なあ、どうしたんだ?」

 門番に声をかけると、彼はぱあっと笑顔になった。

「お、ちょうどいいところに! この人達にマーシャルのルールを教えていたんだよ。兎のあんちゃんも知ってるだろ、ここで商売しちゃいけねえって!」
「いや、初耳だなあ」
「知らなかったのかよ!? でもな、ダンジョン前に露店が出てるとこなんて、見たことねえだろ? つまり、ここで商売しちゃダメってことなんだよ」

 商売しようと思ったことがなかったから、知らなかったな。こいつら、おそらく旅人だろ? 俺と同じように無知だったんだろう。

 大きなリュックが二人分、無造作に道端に置かれており、二人とも旅装を身につけている。

「なあアンタら、ここで商売しちゃダメなんだってさ。かわりと言っちゃなんだが、場所を変えて俺になんか売ってくれないか?」
「お前誰だよ」
「樹だ。こっちはカイル。俺達はダンジョン探索者なんだ、よろしくな」

 ギロっと鋭い目つきで睨んできた謎の獣人は、腕を組んでニヒルに口の端を釣り上げながら、自己紹介をした。

「俺はダン。後ろにいるのはトゥーリだ」
「はじめましてイツキさん、それにカイルさん」

 ダンの後ろからひょっこり顔を出したトゥーリは、恥ずかしそうに微笑んだ。俺もにこっと笑い返しておく。

「場所を変えようぜ。商品をみせてくれよ」
「ダンジョン探索者か、稼いでるんだろうな。いいぞ、待ってろ今荷物をまとめっから」

 ダンは手早く商品をまとめると、俺達の方に寄ってきた。猪門番に感謝されながら、手を振って別れる。

 黄色っぽい、これまた稀有な色の目をしたダンからは、煙草のような香りが漂ってくる。彼はじろっと俺を見ながら問いかけてきた。

「どこで売ればいいんだ」
「どこがいいだろうな……カイル、なんかいい場所を知らないか?」
「さあな。この町のルールなど俺も把握していない」
「だよなあ。じゃ、家に呼ぶか?」
「あの辺りでいいんじゃないか」

 カイルはダンジョンから離れた場所にある、公園を指差した。

 木がほどよく生えていて目隠しになりそうだし、短時間商談するだけなら、あそこでよさそうだな。

「そこにするか」

 二人組を連れて公園のベンチに腰かけ、早速商品を見せてもらった。ゴソゴソとリュックを漁ったダンは、次から次へと珍しい品を取りだす。

「お前はどういうものに興味があるんだ? 塩やスパイス、タリスマン、他にもお香や煙草や、薬の材料なんかもあるぞ」
「スパイスや薬の材料が気になるな」
「だったらこれなんてどうだ。クセになる風味だぞ」

 黄色い粉の入った瓶を手渡される。トゥーリが補足するように説明をつけ加えた。

「タメリクっていうんですけど、土っぽいいい匂いがするんですよ。僕は好きです」
「へえ、開けて匂いを嗅いでみてもいいか?」
「構わねえよ」

 ダンの許可をもらえたので、蓋を開けて匂いを嗅いでみた。ちょっと苦味を感じる香りだが、いい匂いだな。

「アンタも嗅いでみてくれ」

 カイルに手渡すと、彼は眉をしかめて首を横に振った。

「嗅ぎ慣れない臭いだ」
「そうか? 俺は好きだけどな」

 カレーが食べたくなるような匂いだ。あー、ダメだ想像したら食いたくなってきた。

 この世界にカレーってないのか……こいつら知ってたりしねえかな? 遠回しに質問をしてみることにする。

「ダンとトゥーリは、遠くから旅をしてきたのか?」
「そうだ。南から海を渡ってきて、ずっと陸地を北上してここまできた」

 へえ、海か。まだこの世界じゃ見たことねえな。

「なんでも、マーシャルには評判のいいダンジョンがあって、魔人っていう怖い種族がいるらしいからな。興味本意で見にきたんだ」

 魔人ならアンタの目の前にいるけどな、とは言わないでおく。カイルに目配せすると、フッと笑われた。

「そうか、アンタのような種族は、南の大陸にはよくいるのか?」
「いるな。俺は海トカゲ族だが、この大陸にはどうやら同胞はいないらしい。よく珍しがられるぜ」

 海トカゲ族……爬虫類の獣人……いや、獣じゃないから爬虫人になるのか? そんなのもいるのかこの世界には。世界は広いな。

 旅の話を聞きながら、他のスパイスも見せてもらう。クミンっぽいものやナツメグっぽいものを見つけたので、タメリクとあわせて購入する。

「景気がいいじゃねえか、さすがダンジョン探索者様だ」
「はは、まあな。ところで、このスパイスを使ったレシピとか教えてくれたりしねえ?」
「レシピありますよ、どうぞ」

 トゥーリは細かいところによく気がつくようで、折りたたんだ紙を取り出して俺にくれた。

 ちゃんと獣人王国で使われている文字で書かれている。南の大陸と言語が一緒だったりすんのかな。

「読みやすいな。アンタが書いたのか? 大陸とは文字が違うんじゃねえか?」
「がんばって覚えました」
「すげえな。ありがとよ、もらっておくぜ」

 このレシピがあれば、スープカレーっぽいものができそうだ。

 ついでにレシピに書かれていた他の材料も買いつけると、ダンは商機を逃すまいとどんどん商品を披露しはじめた。

「薬の材料も欲しいって言ってたな。見てくれ、貴重なコビトトカゲの尻尾もあるぞ」

 干からびた尻尾を誇らしげに見せられても、返答に困るな。カイルを振り返って確認する。

「これって、ポーションの材料になったりとかは……」
「しない」
「だよな」
「だったらこれとか、ナマクイドリの尾羽!」

 虹色の尾羽を目の前で掲げられるが、カイルは一刀両断する。

「買わない」
「ナンマンゾウの耳!」
「いらん」
「それじゃ俺のとっておき、マクビラスクジラの糞はどうだぁ!」
「絶対にいらん」

 ぷゎんと塩っぽいような、仄かに甘いような、なんとも言えない香りがその場に漂った。白っぽい見た目だし、糞というよりは香料みてえだな。

「いい匂いじゃねえか」
「買うなよイツキ」
「そんなにダメか……? そこまでアンタが拒否するのも珍しいな」
「そもそも、ポーションの材料に動物性の物は使わない。必要ないだろう」

 たしかにな、香水とか別にいらねえし、買う必要はねえか。俺はカイルの自然な匂いの方が好きだしな。

「雑多な匂いはいらない。お前自身の匂いが何より香り高い」
「ちょ、カイル……! わかった、買わないからそれ以上言うなよ」

 俺と同じことを思ってくれてたのか、嬉しいけど初対面の人達の前でのろけてんじゃねえよ!

 俺はごまかすようにして、ダンとトゥーリに苦笑した。

「スパイスを大量に買えたし、今日はこのくらいにしとくわ」
「そうか……たくさん買ってくれてありがとうよ」

 ダンが大人しく商品を仕舞いはじめた。トゥーリは困ったように笑いながら、組紐で編まれた玉を俺達に一つづつ差しだした。

「すみません、ダンさんが暴走してしまって……あの、お詫びといってはなんですが、よかったらこちらをもらってください」
「これは?」
「タリスマンです。ダンさんが一生懸命石を磨いて、僕が編みこんだので、ご利益があると思います!」
「そうか、これにはどういう効果があるんだ?」
「魔除けです。これがあればきっと、悪魔に食べられそうになっても、守ってくれると思います」

 思わず渋い顔をしたカイルと顔を見あわせてから、二人分のタリスマンを受け取る。にっこり笑ってトゥーリに返答した。

「そりゃ頼もしいな。大事にするぜ」
「ありがとうございます!」

 商品を全てリュックに詰めこんだダンが立ち上がる。夕陽が彼を照らし、長い影が公園の草地にのびていた。

「俺達はそろそろ行くぜ。商売ができる場所を探さないとな」
「そうですね。宿も探さないといけませんし」
「だったら、白枝のせせらぎ亭ってとこがオススメだ。料理も美味いし」

 馴染みの宿を紹介すると、彼らは喜んで礼を言ってくれた。

「いいですね、ダンさん! そこにしましょうよ」
「部屋が空いてるといいけどな」
「とにかく行ってみましょう。ああでも、リゴの実パイを買えなかったですね……」
「泊まって、明日買えばいいだろ」
「そうですね、そうしましょう」

 トゥーリはリゴの実パイが好きなのか。好物が被ってるし、同じ垂れ耳の兎獣人だし、ちょっと親近感が湧いてきた。

「じゃあな。またどこかで会ったら、商品を見せてくれ」
「ああ。面白い物を仕入れておくな」
「今日はありがとうございました、イツキさん、カイルさん! またどこかで会えますように!」

 手を振って彼らと別れて、家路につく。手の中のタリスマンを眺めていると、一つカイルに奪われた。

「あ、こら」
「一つは俺にくれた物だろう」
「そうだけどさ。魔人が魔除けを持ってていいのかよ?」
「お前もわかっているだろう。これは魔力も何も宿っていない、ただの飾りだ」

 綺麗な玉だが、なんの魔力も込められていないことは、もちろん俺にもわかっている。

「家に飾るか。どこがいいかな、玄関か窓辺か」
「魔除けなら玄関でいいんじゃないか」
「アンタさっき信じてないって言っただろ?」
「こういう物は気の持ちようだ。信じれば効果があるかもしれない」
「なら試してみるか。カイルが玄関を通れなくなったりとか、しないといいけどな」

 ふざけあいながら帰って、早速玄関の内側にとりつけた。うん、華やかになっていいじゃねえか。

 その後はトゥーリにもらったレシピを参考にしながら、カレースープもどきを作って食べた。

 カイルは匂いに辟易としていたが、俺は久しぶりのカレーに舌鼓を打った。悪いなカイル、匂いは後で風呂に入って落とすからさ。

 その日の夜、俺はなにやら面白い夢を見ていたようだ。カイルいわく、寝言を言いながら笑っていたらしい。

 本当に通れないとか、ウケる……とか言いながら、含み笑いをしてたんだってよ。

 起きた時には夢の内容を、綺麗さっぱり忘れていたから残念だ。
 
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