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第四章 ダンジョン騒動編
45 初夜だから気合を入れる
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最先端の魔法技術と、桁違いの魔力を使用した魔法を見せつけたお陰か、式は滞りなく進んでパーティへと突入した。
入れ替わり立ち代わり祝いの言葉を受けて、カイルと共に卒なく受け答えをしていく。
ん? あの立派な服を着た緑髪の少年、見覚えがあるな?
親と一緒にやってきた彼は、カイルに最後まで反抗的だった魔人の少年だった。緊張して強ばった肩のままで、俺とカイルに向かって声をかける。
「殿下……ご結婚おめでとうございます! 行こう、父上、母上」
「待て、なんて無礼な真似を……すみません、躾がなっておらず」
母親が去っていく彼の背を追いかけていき、父親は残って恐縮している。いやあ、アレでもかなり成長したと思うぜ?
自分の非を認めて、馬鹿にしていた相手を見直し祝いの言葉を告げるなんてのは、大人になってもできないヤツはできないだろうから。
「いや、気にしていない。遠路はるばるご苦労だった」
「とんでもない。カイル殿下には息子がお世話になりました。強情で、思い込んだら一直線な子でしたから、ダンジョンがなくなった世の中を受け入れられるか心配しておりましたが」
少年の父親は、母親に引き止められてそっぽを向いている彼を、目を細めて見つめる。
「カイル殿下のおかげで、我々よりも先進的な考えを持つに至ったようです。獣人が優れた知能を持つことや、彼らの発明品についてなども事細かく教えられましたよ」
「獣人には愚かな者もいるが、よき隣人となれる者もいる。魔人とそう変わりないのだと、理解してもらえたようだな」
言いながら、カイルはこれみよがしに俺の肩を抱く。人前でいちゃつくのは気恥ずかしいが、これも友好アピールだと思ってにこやかに微笑んでおいた。
「それにしても、イツキ殿下は非常に度胸のあるお方だ。なんでも、一般的な獣人は我々を悪魔と呼んで、非常に恐れていると聞きました。そんな中で、よくぞカイル殿下と打ち解けたものだと感服いたします」
「いやあ、それほどでも」
当時のカイルはそりゃあツンケンしてたけどな。でもまあ、可愛いもんだったぜ。
父親が去ると、魔人たちに混じってヴァレリオとクインシーも顔を出した。
「イツキ殿、カイル殿。結婚おめでとう」
「よお、来てくれてありがとうな。アンタらの式には出席できなくて悪かった」
「ちゃんと祝ってくれたから気にしてないよ。ていうか、君たちはとっくに結婚したものだと思ってた」
揃いで騎士のような正装をした彼らは、魔人たちに囲まれていても堂々としている。
彼らの気品溢れる振る舞いを見て、地方から式に出席しに来た魔人たちも、密かに関心しているようだ。
「まあ、訳あってちゃんと形に残る式を挙げたくなったんだ」
「すごくよかったよ、特にあの魔法! さすが魔力を大量に使える魔人の魔法は、一味違うねえ」
「ああ、あれは魔石を使ったんだよ。アンタらだって再現できるぞ」
「えっ、本当に?」
これまでの魔石は、魔法金属を触媒にした低速かつ持続する方法でしか、魔力を引き出すことができなかった。
けどミスリル温泉の研究をするうちに、例の温泉に浸した魔石は、魔力を一気に大量放出するってことがわかったからな。
兵器に転用されたら大変なことになるので、光を発するだとかの方向性に限定して販売すれば、平和利用できるだろうと踏んでいる。
ヴァレリオは感嘆のため息をつきながら、狼尻尾をふさふさと振った。
「なかなか興味深い話だ、王も興味を持たれることだろう」
「お得意様になってくれそうか? 俺が窓口になるから、必要な時は声をかけてくれ」
「つまり今後イツキは、カイル君と一緒に魔人國で暮らすことになるのかあ。寂しくなるね」
「ならねえよ。マーシャルにもしょっちゅう帰るつもりだし、手紙も自由に出せるだろ?」
「そっか。魔導話もあるしね」
話は尽きないが、他にもまだまだ客が控えている。そこそこで切り上げて、また今度話そうってことになった。
裏方業務を終わらせて駆けつけたフェムに涙目で祝われたり、エイダンたちやこっそりやってきた研究仲間ロビンに冷やかされたりしながら、あっという間に夜になる。
というわけで、初夜だ。いまさら初夜ってなんなんだ……と思わなくもないが、結婚式の後だから初夜と言えなくもないだろう。
一度カイルとは別れて、身支度を整えた。メイドに着替えを任せるなんて冗談じゃないので、王族用の初夜の準備は全て辞退して用意された服……服って言えるのかわからないが、とにかく衣装に着替えた。
いつも寝泊まりしている部屋は花で飾られ、ベッドにはご丁寧に天蓋がかけられている。
半透明のカーテンを全て閉じて、俺は布面積の少ない衣装を隠すためにゴソゴソとベッドの中へと潜った。
潜ってから、チラッと下を向いてヒラヒラのそれを確認した。ベッド脇に雷魔の照明が置かれているせいで、ハッキリ見えちまったじゃねえか。くっそ……
「イツキ、入ってもいいか」
「……っ!」
うわあ、カイルが来ちまった……いや、来るに決まってるんだが。
せっかくカイルが着てほしいって言っていた、エプロンっぽい夜着を着たんだから、むしろ来てくれなきゃ恥ずかしい思いをするだけ損だ。
いやでも、こんなにヒラヒラでスケスケだなんて予想してなかった。これじゃエプロンじゃなくてネグリジェじゃねーか!
「イツキ?」
怪訝そうなカイルの声が、扉越しに響いている……いつまでも新郎を部屋の外に立たせておくもんじゃねえよな。ゴクリと唾を飲み込み、返事をした。
「……来いよ」
キイと蝶番が音を立てた。明るい光が漏れていた扉が閉まり、部屋の中は間接照明だけの隠微な雰囲気へと逆戻りする。
足音は迷いなくベッドへと近づいてきて、カーテンを開かれる。シーツから出っぱなしになっていた兎耳の端にそっと触れられて、大袈裟にびくついた。
「イツキ、どうした? 俺が用意した服を着るのが嫌になったのか」
「そうじゃねえよ……」
ちゃんと着てると、肩までシーツから出してみた。頼りない肩紐がカイルにも見えたのだろう、彼は期待に目を輝かせた。
「ちゃんと着てくれたのか」
「約束だからな。だがなカイルよ、これはエプロンじゃねえ」
だって俺ってば、肩と腰は細かいフリルがついた紐で蝶々結びしてるだけだし。前面は隠れているかと思いきや、つやつやの白い生地は薄すぎて透けてるし。
入れ替わり立ち代わり祝いの言葉を受けて、カイルと共に卒なく受け答えをしていく。
ん? あの立派な服を着た緑髪の少年、見覚えがあるな?
親と一緒にやってきた彼は、カイルに最後まで反抗的だった魔人の少年だった。緊張して強ばった肩のままで、俺とカイルに向かって声をかける。
「殿下……ご結婚おめでとうございます! 行こう、父上、母上」
「待て、なんて無礼な真似を……すみません、躾がなっておらず」
母親が去っていく彼の背を追いかけていき、父親は残って恐縮している。いやあ、アレでもかなり成長したと思うぜ?
自分の非を認めて、馬鹿にしていた相手を見直し祝いの言葉を告げるなんてのは、大人になってもできないヤツはできないだろうから。
「いや、気にしていない。遠路はるばるご苦労だった」
「とんでもない。カイル殿下には息子がお世話になりました。強情で、思い込んだら一直線な子でしたから、ダンジョンがなくなった世の中を受け入れられるか心配しておりましたが」
少年の父親は、母親に引き止められてそっぽを向いている彼を、目を細めて見つめる。
「カイル殿下のおかげで、我々よりも先進的な考えを持つに至ったようです。獣人が優れた知能を持つことや、彼らの発明品についてなども事細かく教えられましたよ」
「獣人には愚かな者もいるが、よき隣人となれる者もいる。魔人とそう変わりないのだと、理解してもらえたようだな」
言いながら、カイルはこれみよがしに俺の肩を抱く。人前でいちゃつくのは気恥ずかしいが、これも友好アピールだと思ってにこやかに微笑んでおいた。
「それにしても、イツキ殿下は非常に度胸のあるお方だ。なんでも、一般的な獣人は我々を悪魔と呼んで、非常に恐れていると聞きました。そんな中で、よくぞカイル殿下と打ち解けたものだと感服いたします」
「いやあ、それほどでも」
当時のカイルはそりゃあツンケンしてたけどな。でもまあ、可愛いもんだったぜ。
父親が去ると、魔人たちに混じってヴァレリオとクインシーも顔を出した。
「イツキ殿、カイル殿。結婚おめでとう」
「よお、来てくれてありがとうな。アンタらの式には出席できなくて悪かった」
「ちゃんと祝ってくれたから気にしてないよ。ていうか、君たちはとっくに結婚したものだと思ってた」
揃いで騎士のような正装をした彼らは、魔人たちに囲まれていても堂々としている。
彼らの気品溢れる振る舞いを見て、地方から式に出席しに来た魔人たちも、密かに関心しているようだ。
「まあ、訳あってちゃんと形に残る式を挙げたくなったんだ」
「すごくよかったよ、特にあの魔法! さすが魔力を大量に使える魔人の魔法は、一味違うねえ」
「ああ、あれは魔石を使ったんだよ。アンタらだって再現できるぞ」
「えっ、本当に?」
これまでの魔石は、魔法金属を触媒にした低速かつ持続する方法でしか、魔力を引き出すことができなかった。
けどミスリル温泉の研究をするうちに、例の温泉に浸した魔石は、魔力を一気に大量放出するってことがわかったからな。
兵器に転用されたら大変なことになるので、光を発するだとかの方向性に限定して販売すれば、平和利用できるだろうと踏んでいる。
ヴァレリオは感嘆のため息をつきながら、狼尻尾をふさふさと振った。
「なかなか興味深い話だ、王も興味を持たれることだろう」
「お得意様になってくれそうか? 俺が窓口になるから、必要な時は声をかけてくれ」
「つまり今後イツキは、カイル君と一緒に魔人國で暮らすことになるのかあ。寂しくなるね」
「ならねえよ。マーシャルにもしょっちゅう帰るつもりだし、手紙も自由に出せるだろ?」
「そっか。魔導話もあるしね」
話は尽きないが、他にもまだまだ客が控えている。そこそこで切り上げて、また今度話そうってことになった。
裏方業務を終わらせて駆けつけたフェムに涙目で祝われたり、エイダンたちやこっそりやってきた研究仲間ロビンに冷やかされたりしながら、あっという間に夜になる。
というわけで、初夜だ。いまさら初夜ってなんなんだ……と思わなくもないが、結婚式の後だから初夜と言えなくもないだろう。
一度カイルとは別れて、身支度を整えた。メイドに着替えを任せるなんて冗談じゃないので、王族用の初夜の準備は全て辞退して用意された服……服って言えるのかわからないが、とにかく衣装に着替えた。
いつも寝泊まりしている部屋は花で飾られ、ベッドにはご丁寧に天蓋がかけられている。
半透明のカーテンを全て閉じて、俺は布面積の少ない衣装を隠すためにゴソゴソとベッドの中へと潜った。
潜ってから、チラッと下を向いてヒラヒラのそれを確認した。ベッド脇に雷魔の照明が置かれているせいで、ハッキリ見えちまったじゃねえか。くっそ……
「イツキ、入ってもいいか」
「……っ!」
うわあ、カイルが来ちまった……いや、来るに決まってるんだが。
せっかくカイルが着てほしいって言っていた、エプロンっぽい夜着を着たんだから、むしろ来てくれなきゃ恥ずかしい思いをするだけ損だ。
いやでも、こんなにヒラヒラでスケスケだなんて予想してなかった。これじゃエプロンじゃなくてネグリジェじゃねーか!
「イツキ?」
怪訝そうなカイルの声が、扉越しに響いている……いつまでも新郎を部屋の外に立たせておくもんじゃねえよな。ゴクリと唾を飲み込み、返事をした。
「……来いよ」
キイと蝶番が音を立てた。明るい光が漏れていた扉が閉まり、部屋の中は間接照明だけの隠微な雰囲気へと逆戻りする。
足音は迷いなくベッドへと近づいてきて、カーテンを開かれる。シーツから出っぱなしになっていた兎耳の端にそっと触れられて、大袈裟にびくついた。
「イツキ、どうした? 俺が用意した服を着るのが嫌になったのか」
「そうじゃねえよ……」
ちゃんと着てると、肩までシーツから出してみた。頼りない肩紐がカイルにも見えたのだろう、彼は期待に目を輝かせた。
「ちゃんと着てくれたのか」
「約束だからな。だがなカイルよ、これはエプロンじゃねえ」
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