地味魔女を装っていたのに、気がついたらイケメン王子に溺愛されてます

兎騎かなで

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11 くしゃみが出てしまいました

 ディミエルは二人で自然と笑いあった後、小さくくしゃみをした。

「くちゅん!」

 ライシスはハッとして、ディミエルの手をとった。

「ディミーちゃん!? ……手がとても冷たくなっている、すぐに浴槽に湯を溜めよう。手伝わせて」

 裏口から浴室に入れるのに気づいたライシスが、さっさと火と水の魔石を駆使して、お湯を用意してくれた。

「ほら、先に入って」
「貴方は寒くないんですか?」
「俺のことはいいから、先にお風呂に入ってあったまるんだ。それとも、寒いって言ったら一緒に入れてくれる?」
「そ、そんなことできません! もう、じゃあ先に失礼しますね」

 ディミエルの寒さで血の気の引いた顔が、わずかに赤くなる。

 ずぶ濡れの服を脱ぎ湯船に浸かると、勝負に負けたことをだんだんと実感してきた。

(私、あの人とつきあうの?  ……いや、違うわ。確か条件は、ライシスに話しかけられても無視したり避けたりしないで、ちゃんと名前を呼ぶことだったかな)

 なんせすっかり勝った気でいたので、自分が勝った時の条件しか、きちんと覚えていない。

 細かい条件をいろいろ出された気がするが、どうせ勝てるわけないとタカをくくって、全部許可した覚えがある。

(え? 私はいったい、これからどうなっちゃうの?)

 考えすぎて今度はのぼせそうになったので、フラフラと湯船から上がり服を身につける。

 ディミエルはなんとか思い出そうとしながらも裏庭に回り、ライシスに入浴を促した。

 しばらく考えていたが、名前と無視禁止以外はどうにも思い出せないまま、家の中に戻ってきてしまった。

 椅子に座ってじっくり熟考しようと思ったが、その前にライシスの着替えがないことを思い出す。

(とりあえずタオルと……ローブしかないかな)

 成人女性の中でも小さめのディミエルと、スラリと背の高いライシスでは、当たり前だが一つとしてサイズのあう服がなかった。

 服が乾くまで裸の上にローブという変態くさい格好になってしまうが、他に選択肢がないのだからどうしようもない。

(というか、今あの人が私の家のお風呂を使っているのね……ふ、深く考えちゃダメ!!)

 裸というワードに過剰に反応したディミエルは、激しく首を振って思考を打ち消した。


*****


「はあ、お風呂ありがとう。生き返ったよ」
「そ、それはどうも」

 湯上りのライシスの破壊力といったら、ディミエルの想像の限界を突破していた。

 濡れた髪、滴る雫、血の気を帯びた頰と、ローブの首元から覗く、頼り甲斐のありそうな体……

「うっぶう!」
「ディミーちゃん!?」

 ディミエルは机に頭を打ち付けることで、なんとか正気を取り戻した。

 純情な魔女にとって、ライシスの色気は心臓に負担がかかりすぎるようだった。

「な、なんでもありません」
「そう? まだ髪が濡れてるけど、本当に大丈夫? 今乾かすよ」
「大丈夫ですったら……え」

 フワリと桃色の髪を風が通りぬけると、サラリとした感触が肩にかかった。

 こんな一瞬で髪が乾くなんて。ライシスはどうやら、風魔法が使えるらしい。それに相当に熟練している。

「あ……ありがとう、ございます」
「どういたしまして。これくらい、いつでもやってあげるよ」

 そう言って、自分の髪も器用に乾かすライシス。

 繊細な魔法を目の前で見せられたディミエルは、ぼーっとライシスの腕前に見惚れてしまう。
感想 4

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