14 / 38
14 恋のライバルが出会ってしまいました
しおりを挟む
セレストはディミエルに歩み寄り、手を取って挨拶しようとする。
ライシスはすかさず二人の間に割って入った。彼はセレストを牽制するように、にこやかな笑みを浮かべる。
「あのさ、悪いけどディミーは俺とデート中なんだ。今日のところは遠慮してくれる?」
「誰ですか貴方は。僕はディミエルに話しかけているんです、邪魔をしないでくださいよ」
銀と黒の美形二人が睨みあう図は、町の人々の関心を大いに引いた。ディミエルは巻き込まれたくないと、二人からじりじりと離れていく。
けれどセレストが話しかけたことで、その些細な努力は台無しになった。
「ディミエル。こんな粗野な冒険者にかまけていないで、僕と来てください」
「ディミー、こんなやつ放っておいて、いこう」
ライシスに肩を抱かれて、その場を後にする。チラリと振り向くと、セレストは怖い笑みを浮かべていた。
(ど、どうしよう……次に会った時が恐ろしいわ)
セレストがディミエルに話しかけてくるようになってから、パッタリと他の人から声をかけられなくなった。
裏から手を回すくらい、ディミエル (の胸)に執着しているセレストだから、ライシスと仲良くしていたら何かちょっかいを出してきそうだ。
「さっきのヤツ、知り合い?」
「あ、うん……薬の取引先のご子息なの」
「カーフェレン家だよな」
「ええ」
ライシスはしばらくの間なにか考え込んでいたが、やがて顔を上げる。真剣な表情でディミエルに語りかけた。
「ディミーはアイツと付き合うより、俺といる方が気楽に過ごせていいと思うよ?」
「そもそもあの人と付き合う気はないから」
「そうなのか、よかった」
麗しい笑みを浮かべるライシスを、複雑な気持ちで見上げる。
「どうした?」
「……貴方と会っていることで、セレスト様が何か仕掛けてくるかもしれない」
「大丈夫、俺は強いから。いざとなったら頼れるツテもある。けど、ディミーが心配だな。今日は家まで送っていくよ」
「そ、それはそれで困るの……貴方といると、周りの視線が痛いし」
「そう?」
ライシスが周囲を見渡すと、きゃー目が合っちゃったと喜ぶ女性が複数人いた。ディミエルに刺すような視線を送る者は、パッと視線を逸らす。
「いつも通りじゃない?」
モテ男さんにとっては、これが通常の光景なのね……遠い目をしていると、ライシスは肩に置いていた手を離し、ディミエルの手を取った。
「わっ?」
「いいところに連れてってやるよ。こっち!」
「え、ええっ⁉︎」
楽しげな笑顔と共に連れていかれたのは、服屋だった。大人っぽくも可愛らしい、センスのいい服がショーウィンドウを飾っている。
ライシスが臆することなく店に入ると、奥から色っぽい美人の店員が出迎えてくれる。
「いらっしゃいませ……あら、ライシスじゃないの」
「やあ、ベル。この子の服を見立ててくれない?」
ベルと呼ばれた女性は、ローブで顔を隠したままのディミエルをチラリと見た。
「誰なの? 新しい彼女?」
「彼女になってくれればいいなと思っている、大事な人だよ」
ライシスは優しく微笑みながらそう告げた。ディミエルは思わず目を伏せる。
「へえ、珍しいじゃない。向こうから寄ってきた子じゃなくて、貴方が振り向かせたいと思うなんて」
「だから、大事にしたいんだってば。頼んだ」
「そういうことなら、任せられたわ」
目を伏せたままのディミエルに、ベルは柔らかな声で語りかけた。
「お嬢さん、私のお店にようこそ。腕によりをかけて、貴女にピッタリのお洋服を選ばせてちょうだい。こっちに来て」
店の奥に連れていかれて、恐る恐るローブを脱いだ。桃色の髪は今日も三つ編みにしてある。
現れた顔を見て、ベルはまじまじと覗きこんできた。
「あら、いい素材じゃない。弄り甲斐があるわ。それに、とーってもスタイルがいいのねえ」
「ひゃっ」
いきなり腰を掴まれて、変な声が出てしまう。ライシスが表の方から声をかけてきた。
「ディミーを虐めないでよ?」
「虐めてないわよ!」
ベルは大声で言い返してから、ディミエルに小声でささやく。
「ふふ、彼があんなに女の子を気にかけてるところなんて、初めて見たわ。愛されてるわね」
(あ、愛されてるだなんて……!)
「そんなんじゃありません……」
「そうかしら? まあいいわ。お仕事、させてもらいましょうか」
ベルは華やかな笑顔を見せた。
ライシスはすかさず二人の間に割って入った。彼はセレストを牽制するように、にこやかな笑みを浮かべる。
「あのさ、悪いけどディミーは俺とデート中なんだ。今日のところは遠慮してくれる?」
「誰ですか貴方は。僕はディミエルに話しかけているんです、邪魔をしないでくださいよ」
銀と黒の美形二人が睨みあう図は、町の人々の関心を大いに引いた。ディミエルは巻き込まれたくないと、二人からじりじりと離れていく。
けれどセレストが話しかけたことで、その些細な努力は台無しになった。
「ディミエル。こんな粗野な冒険者にかまけていないで、僕と来てください」
「ディミー、こんなやつ放っておいて、いこう」
ライシスに肩を抱かれて、その場を後にする。チラリと振り向くと、セレストは怖い笑みを浮かべていた。
(ど、どうしよう……次に会った時が恐ろしいわ)
セレストがディミエルに話しかけてくるようになってから、パッタリと他の人から声をかけられなくなった。
裏から手を回すくらい、ディミエル (の胸)に執着しているセレストだから、ライシスと仲良くしていたら何かちょっかいを出してきそうだ。
「さっきのヤツ、知り合い?」
「あ、うん……薬の取引先のご子息なの」
「カーフェレン家だよな」
「ええ」
ライシスはしばらくの間なにか考え込んでいたが、やがて顔を上げる。真剣な表情でディミエルに語りかけた。
「ディミーはアイツと付き合うより、俺といる方が気楽に過ごせていいと思うよ?」
「そもそもあの人と付き合う気はないから」
「そうなのか、よかった」
麗しい笑みを浮かべるライシスを、複雑な気持ちで見上げる。
「どうした?」
「……貴方と会っていることで、セレスト様が何か仕掛けてくるかもしれない」
「大丈夫、俺は強いから。いざとなったら頼れるツテもある。けど、ディミーが心配だな。今日は家まで送っていくよ」
「そ、それはそれで困るの……貴方といると、周りの視線が痛いし」
「そう?」
ライシスが周囲を見渡すと、きゃー目が合っちゃったと喜ぶ女性が複数人いた。ディミエルに刺すような視線を送る者は、パッと視線を逸らす。
「いつも通りじゃない?」
モテ男さんにとっては、これが通常の光景なのね……遠い目をしていると、ライシスは肩に置いていた手を離し、ディミエルの手を取った。
「わっ?」
「いいところに連れてってやるよ。こっち!」
「え、ええっ⁉︎」
楽しげな笑顔と共に連れていかれたのは、服屋だった。大人っぽくも可愛らしい、センスのいい服がショーウィンドウを飾っている。
ライシスが臆することなく店に入ると、奥から色っぽい美人の店員が出迎えてくれる。
「いらっしゃいませ……あら、ライシスじゃないの」
「やあ、ベル。この子の服を見立ててくれない?」
ベルと呼ばれた女性は、ローブで顔を隠したままのディミエルをチラリと見た。
「誰なの? 新しい彼女?」
「彼女になってくれればいいなと思っている、大事な人だよ」
ライシスは優しく微笑みながらそう告げた。ディミエルは思わず目を伏せる。
「へえ、珍しいじゃない。向こうから寄ってきた子じゃなくて、貴方が振り向かせたいと思うなんて」
「だから、大事にしたいんだってば。頼んだ」
「そういうことなら、任せられたわ」
目を伏せたままのディミエルに、ベルは柔らかな声で語りかけた。
「お嬢さん、私のお店にようこそ。腕によりをかけて、貴女にピッタリのお洋服を選ばせてちょうだい。こっちに来て」
店の奥に連れていかれて、恐る恐るローブを脱いだ。桃色の髪は今日も三つ編みにしてある。
現れた顔を見て、ベルはまじまじと覗きこんできた。
「あら、いい素材じゃない。弄り甲斐があるわ。それに、とーってもスタイルがいいのねえ」
「ひゃっ」
いきなり腰を掴まれて、変な声が出てしまう。ライシスが表の方から声をかけてきた。
「ディミーを虐めないでよ?」
「虐めてないわよ!」
ベルは大声で言い返してから、ディミエルに小声でささやく。
「ふふ、彼があんなに女の子を気にかけてるところなんて、初めて見たわ。愛されてるわね」
(あ、愛されてるだなんて……!)
「そんなんじゃありません……」
「そうかしら? まあいいわ。お仕事、させてもらいましょうか」
ベルは華やかな笑顔を見せた。
1
あなたにおすすめの小説
白い結婚を捨てた王妃は、もう二度と振り向かない ――愛さぬと言った王子が全てを失うまで』
鍛高譚
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」
華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。
王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。
そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。
レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。
「お願いだ……戻ってきてくれ……」
王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。
「もう遅いわ」
愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。
裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。
これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。
捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。
蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。
これで、貴方も私も自由です。
……だから、もういいですよね?
私も、自由にして……。
5年後。
私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、
親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、
今日も幸せに子育てをしています。
だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。
私のことは忘れて……。
これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。
はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?
追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる
湊一桜
恋愛
王宮薬師のアンは、国王に毒を盛った罪を着せられて王宮を追放された。幼少期に両親を亡くして王宮に引き取られたアンは、頼れる兄弟や親戚もいなかった。
森を彷徨って数日、倒れている男性を見つける。男性は高熱と怪我で、意識が朦朧としていた。
オオカミの襲撃にも遭いながら、必死で男性を看病すること二日後、とうとう男性が目を覚ました。ジョーという名のこの男性はとても強く、軽々とオオカミを撃退した。そんなジョーの姿に、不覚にもときめいてしまうアン。
行くあてもないアンは、ジョーと彼の故郷オストワル辺境伯領を目指すことになった。
そして辿り着いたオストワル辺境伯領で待っていたのは、ジョーとの甘い甘い時間だった。
※『小説家になろう』様、『ベリーズカフェ』様でも公開中です。
「地味で無能」と捨てられた令嬢は、冷酷な【年上イケオジ公爵】に嫁ぎました〜今更私の価値に気づいた元王太子が後悔で顔面蒼白になっても今更遅い
腐ったバナナ
恋愛
伯爵令嬢クラウディアは、婚約者のアルバート王太子と妹リリアンに「地味で無能」と断罪され、公衆の面前で婚約破棄される。
お飾りの厄介払いとして押し付けられた嫁ぎ先は、「氷壁公爵」と恐れられる年上の冷酷な辺境伯アレクシス・グレイヴナー公爵だった。
当初は冷徹だった公爵は、クラウディアの才能と、過去の傷を癒やす温もりに触れ、その愛を「二度と失わない」と固く誓う。
彼の愛は、包容力と同時に、狂気的な独占欲を伴った「大人の愛」へと昇華していく。
なりゆきで妻になった割に大事にされている……と思ったら溺愛されてた
たぬきち25番
恋愛
男爵家の三女イリスに転生した七海は、貴族の夜会で相手を見つけることができずに女官になった。
女官として認められ、夜会を仕切る部署に配属された。
そして今回、既婚者しか入れない夜会の責任者を任せられた。
夜会当日、伯爵家のリカルドがどうしても公爵に会う必要があるので夜会会場に入れてほしいと懇願された。
だが、会場に入るためには結婚をしている必要があり……?
※本当に申し訳ないです、感想の返信できないかもしれません……
※他サイト様にも掲載始めました!
大好きだった旦那様に離縁され家を追い出されましたが、騎士団長様に拾われ溺愛されました
Karamimi
恋愛
2年前に両親を亡くしたスカーレットは、1年前幼馴染で3つ年上のデビッドと結婚した。両親が亡くなった時もずっと寄り添ってくれていたデビッドの為に、毎日家事や仕事をこなすスカーレット。
そんな中迎えた結婚1年記念の日。この日はデビッドの為に、沢山のご馳走を作って待っていた。そしていつもの様に帰ってくるデビッド。でもデビッドの隣には、美しい女性の姿が。
「俺は彼女の事を心から愛している。悪いがスカーレット、どうか俺と離縁して欲しい。そして今すぐ、この家から出て行ってくれるか?」
そうスカーレットに言い放ったのだ。何とか考え直して欲しいと訴えたが、全く聞く耳を持たないデビッド。それどころか、スカーレットに数々の暴言を吐き、ついにはスカーレットの荷物と共に、彼女を追い出してしまった。
荷物を持ち、泣きながら街を歩くスカーレットに声をかけて来たのは、この街の騎士団長だ。一旦騎士団長の家に保護してもらったスカーレットは、さっき起こった出来事を騎士団長に話した。
「なんてひどい男だ!とにかく落ち着くまで、ここにいるといい」
行く当てもないスカーレットは結局騎士団長の家にお世話になる事に
※他サイトにも投稿しています
よろしくお願いします
酒飲み聖女は気だるげな騎士団長に秘密を握られています〜完璧じゃなくても愛してるって正気ですか!?〜
鳥花風星
恋愛
太陽の光に当たって透けるような銀髪、紫水晶のような美しい瞳、均整の取れた体つき、女性なら誰もが羨むような見た目でうっとりするほどの完璧な聖女。この国の聖女は、清楚で見た目も中身も美しく、誰もが羨む存在でなければいけない。聖女リリアは、ずっとみんなの理想の「聖女様」でいることに専念してきた。
そんな完璧な聖女であるリリアには誰にも知られてはいけない秘密があった。その秘密は完璧に隠し通され、絶対に誰にも知られないはずだった。だが、そんなある日、騎士団長のセルにその秘密を知られてしまう。
秘密がばれてしまったら、完璧な聖女としての立場が危うく、国民もがっかりさせてしまう。秘密をばらさないようにとセルに懇願するリリアだが、セルは秘密をばらされたくなければ婚約してほしいと言ってきた。
一途な騎士団長といつの間にか逃げられなくなっていた聖女のラブストーリー。
◇氷雨そら様主催「愛が重いヒーロー企画」参加作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる