地味魔女を装っていたのに、気がついたらイケメン王子に溺愛されてます

兎騎かなで

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14 恋のライバルが出会ってしまいました

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 セレストはディミエルに歩み寄り、手を取って挨拶しようとする。

 ライシスはすかさず二人の間に割って入った。彼はセレストを牽制するように、にこやかな笑みを浮かべる。

「あのさ、悪いけどディミーは俺とデート中なんだ。今日のところは遠慮してくれる?」
「誰ですか貴方は。僕はディミエルに話しかけているんです、邪魔をしないでくださいよ」

 銀と黒の美形二人が睨みあう図は、町の人々の関心を大いに引いた。ディミエルは巻き込まれたくないと、二人からじりじりと離れていく。

 けれどセレストが話しかけたことで、その些細な努力は台無しになった。

「ディミエル。こんな粗野な冒険者にかまけていないで、僕と来てください」
「ディミー、こんなやつ放っておいて、いこう」

 ライシスに肩を抱かれて、その場を後にする。チラリと振り向くと、セレストは怖い笑みを浮かべていた。

(ど、どうしよう……次に会った時が恐ろしいわ)

 セレストがディミエルに話しかけてくるようになってから、パッタリと他の人から声をかけられなくなった。

 裏から手を回すくらい、ディミエル (の胸)に執着しているセレストだから、ライシスと仲良くしていたら何かちょっかいを出してきそうだ。

「さっきのヤツ、知り合い?」
「あ、うん……薬の取引先のご子息なの」
「カーフェレン家だよな」
「ええ」

 ライシスはしばらくの間なにか考え込んでいたが、やがて顔を上げる。真剣な表情でディミエルに語りかけた。

「ディミーはアイツと付き合うより、俺といる方が気楽に過ごせていいと思うよ?」
「そもそもあの人と付き合う気はないから」
「そうなのか、よかった」

 麗しい笑みを浮かべるライシスを、複雑な気持ちで見上げる。

「どうした?」
「……貴方と会っていることで、セレスト様が何か仕掛けてくるかもしれない」
「大丈夫、俺は強いから。いざとなったら頼れるツテもある。けど、ディミーが心配だな。今日は家まで送っていくよ」
「そ、それはそれで困るの……貴方といると、周りの視線が痛いし」
「そう?」

 ライシスが周囲を見渡すと、きゃー目が合っちゃったと喜ぶ女性が複数人いた。ディミエルに刺すような視線を送る者は、パッと視線を逸らす。

「いつも通りじゃない?」

 モテ男さんにとっては、これが通常の光景なのね……遠い目をしていると、ライシスは肩に置いていた手を離し、ディミエルの手を取った。

「わっ?」
「いいところに連れてってやるよ。こっち!」
「え、ええっ⁉︎」

 楽しげな笑顔と共に連れていかれたのは、服屋だった。大人っぽくも可愛らしい、センスのいい服がショーウィンドウを飾っている。

 ライシスが臆することなく店に入ると、奥から色っぽい美人の店員が出迎えてくれる。

「いらっしゃいませ……あら、ライシスじゃないの」
「やあ、ベル。この子の服を見立ててくれない?」

 ベルと呼ばれた女性は、ローブで顔を隠したままのディミエルをチラリと見た。

「誰なの? 新しい彼女?」
「彼女になってくれればいいなと思っている、大事な人だよ」

 ライシスは優しく微笑みながらそう告げた。ディミエルは思わず目を伏せる。

「へえ、珍しいじゃない。向こうから寄ってきた子じゃなくて、貴方が振り向かせたいと思うなんて」
「だから、大事にしたいんだってば。頼んだ」
「そういうことなら、任せられたわ」

 目を伏せたままのディミエルに、ベルは柔らかな声で語りかけた。

「お嬢さん、私のお店にようこそ。腕によりをかけて、貴女にピッタリのお洋服を選ばせてちょうだい。こっちに来て」

 店の奥に連れていかれて、恐る恐るローブを脱いだ。桃色の髪は今日も三つ編みにしてある。

 現れた顔を見て、ベルはまじまじと覗きこんできた。

「あら、いい素材じゃない。弄り甲斐があるわ。それに、とーってもスタイルがいいのねえ」
「ひゃっ」

 いきなり腰を掴まれて、変な声が出てしまう。ライシスが表の方から声をかけてきた。

「ディミーを虐めないでよ?」
「虐めてないわよ!」

 ベルは大声で言い返してから、ディミエルに小声でささやく。

「ふふ、彼があんなに女の子を気にかけてるところなんて、初めて見たわ。愛されてるわね」

(あ、愛されてるだなんて……!)

「そんなんじゃありません……」
「そうかしら? まあいいわ。お仕事、させてもらいましょうか」

 ベルは華やかな笑顔を見せた。
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