ツイノベ倉庫〜1000文字程度の短編集

兎騎かなで

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59.会社の後輩と寝てしまった話

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朝起きたら隣に、好みだなと思っていた後輩が寝ていた。

昨日の歓迎会で飲み過ぎたらしい。

腰と尻に違和感が残っていて、覚えていないが激しい夜だったんだなと察した。

三十路を過ぎて性欲が落ち着いていたはずなのだが、会社のヤツを誘って寝てしまったのは初めてだ。

どう口止めしようか考えていると、後輩が起きた。

「先輩、俺感激しました……! これからよろしくお願いします!」
「……おう、何がだ?」
「もう、とぼけないでくださいよ。本当に嬉しかったんですから、なかったことにしないでください。コーヒー淹れますね、先輩好きでしたよね?」

よくわからないが、上機嫌な後輩はコーヒーに朝飯まで用意して一緒に食べて、寝ぼけているうちに熱烈なキスをして帰っていった。なんなんだ。

後輩は会社では何事もなかったかのように過ごし、週末になると家に上がり込み先輩を抱くようになった。

先輩はピンときた。そうか、セフレになってくれとでも言われたんだな?

後輩はベッドの上では愛してるとかリップサービスを言うけれど、家で性急に身体を求められるだけだし外では何もなかったように振る舞う。

きっとこれはセフレなのだろうと結論づけ、まあ具合も悪くないしと流されるように関係を続けた。

花束を買ったり食事を毎回作るのはセフレ相手にやりすぎだと思ったが、律儀な性格なんだなあとありがたく好意を受け取っていた。

一カ月経った頃、今日は飲みに行きましょうと誘われたのでついていく。

後輩は個室つきのいいレストランをとったらしい。

前回の失敗を考えセーブして飲んでいると、食事の後にケーキが運ばれてくる。

「なんだ、君今日が誕生日だったりするのか?」
「違いますよ! ちょうど今日がつきあって一カ月の記念日じゃないですか。お祝いがしたかったんです」
「そ、そうか」

なんと、今までつきあっていたらしい。

ということは愛してると言われた事も、気持ちいいところを探され泣くまで責められた事も、大きな花束を持って現れたのも全部自分への愛情表現だったのか……

「あれ、先輩顔が赤いですね。ひょっとしてかなり酔ってます?」
「いや……」

セフレだと思っていたから「キザなヤツだなあ」で流していたあれやこれやが、本気で愛してくれた結果だと知り心臓の鼓動がドンドコ速くなる。

「その……ありがとう」
「はい!」

三十路を過ぎて早数ヶ月、セフレ改め彼氏ができました。
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