ツイノベ倉庫〜1000文字程度の短編集

95.アパートの粘着お隣さん

風邪を引いてしまった強がりリーマンくん、アパートの部屋で一人きり。

グッタリ状態で寝込んでいたら、お隣の大学生が見舞いにきてくれた。

「大丈夫ですか？　お隣さん。食べやすいもの買ってきました」
「あ、ありがとう。悪いな」

生活能力の低いリーマンだと、引越し後すぐにバレてしまい、たびたび仲良くしてくれている。

冷たいタオルを額に乗せてくれて、甲斐甲斐しさに胸がじんわり温かくなった。

「ああ、助かるよ……君がいなかったら俺は死んでたかも」

冗談混じりにそう言うと、彼はお盆を取り落とし震えはじめた。

「死……！？　やめてくださいよお隣さん冗談でもそんなこと言わないでください考えたくもないもし貴方が死んだら僕はこれから何を希望に生きていけばいいんですかどうしようやはりもう一緒に住んで守るしか」
「え、え？　大学生くん？」
「はっ、すみません。取り乱しました」

布団を肩まで掛け直してくれて、ちょっと変なところはあるけれどいい子だよなあと、頬を緩める。大きな欠伸をした。

「ごめん、眠いや……鍵、机の上にあるから、適当に使って……」

目蓋がどんどん落ちていく。眠りに落ちる寸前、彼の声が聞こえた気がする。

「適当、に……？　つまりこの鍵で合鍵を作り彼を陰日向から支えいつでも自由に適した時に訪問していいんですね？　わかりましたそうしますありがとうございます」

風邪が治ったリーマンは、合鍵を作って家に入り浸る彼を不思議に思うが「貴方がいいと言いました」と言われ、そうだっけと流される。

流されまくって食べられちゃう日は、もう目前。