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124両片思いしてる幼馴染の話
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好きな人とは、けして結ばれない。今までずっとそうだった。
三白眼くんは幼馴染の美麗な顔を、恨めしく見上げた。
「なに?」
「別に」
幼馴染の手には、ピンクの可愛らしい封筒が握られている。
本当は、三白眼くんがもらえるはずだった手紙だ……と思ってしまう。
「俺が最初に彼女を好きになったのに……」
好きになったコは、みんなイケメン幼馴染に惚れてしまう。
「見る目がなかったね。顔だけで選ぶ女とか、君にふさわしくない」
「お前は顔だけじゃないだろ。成績も運動神経もトップクラスだし、家も金持ちだし、それに性格だっていい」
「そうかな? ありがと」
笑うコイツに罪はない。全ては、自分に魅力がないせいだ。
……と、思い込んでいるであろう、三白眼くんの横顔を、イケメン幼馴染は恍惚と見つめる。
(いちいち落ち込むの、可愛いな。また好きなコ取られたって思ってるんだろうなあ。はやく女の子とつきあうのは諦めて、僕だけを見てほしい)
幼馴染はわざと、三白眼くんが好きになった子にアプローチして落としてる。
そして落ちたらポイ捨てする。なぜなら本当につきあいたいのは三白眼くんだから。
性別が女子だというだけで、好きな人から好かれている、羨ましくて憎い相手だから。
「あーあ、どっかに俺のことだけを好きになってくれる人はいないのか」
(ここにいるよ)
「そうだね、みんな見る目ないよね」
「幼馴染もそう思うよな?」
「本当にね。君だけを見てくれる人は絶対いるから、はやく気づけるといいね」
「気づく……? え、お前俺のことが好きなヤツを知ってんの!?」
「まあね」
「なんだよー教えろよ。そんな女子いたら絶対好きになっちゃう自信がある」
(女子じゃなきゃダメなのかな)
いつかきっと、つきあってみせる。
お互いに同じ言葉を胸の中に誓いながら歩く二人は、今日も盛大にすれ違っている。
そんな平行線な日々に疲れて、幼馴染くんはいい加減三白眼くんを諦めようと、彼女とつきあい始める。
幼馴染くんが離れていった時、三白眼くんはあれ、なんか寂しいなっ? ってなって
きっとその時はじめて、幼馴染くんがすごく大切だったんだと気がつく。
「おーい幼馴染、一緒に帰ろ……」
声をかけようとしたら、となりに女の子がいた。
女の子は幼馴染に腕を絡めてて、幼馴染くんは話しかけられて頷いている。
呆然としているうちに、二人は校門を出ていってしまう。
行きも帰りも一人、休み時間も幼馴染は彼女に連れられて、どこかに行ってしまう。
「あいつ最近つきあい悪いよな、これだから彼女持ちは」ってひがむ友人に「寂しいよな」って無意識に言っちゃって(ああ俺寂しいんだ)って気づく。
そんな中、慰めてくれた女子から告白される三白眼くん。
やっと彼女ができたと喜んだのも束の間、山に行けば幼馴染と協力して虫とりした思い出が胸に迫るし、夏祭りに行けば彼と競いあった金魚掬いを思い出す。
彼女のことなんて考えられない、幼馴染がいないことが気になってしょうがない。
「ねえ、ほんとは好きな子いるんでしょ」
「え?」
「私といても、貴方はいつも寂しそう」
好きな子って。違う、あいつは幼馴染で…
「忘れさせてあげる」
グロスで光る唇が近づいてきて、とっさに肩を押した。
(この子じゃダメなんだ、アイツじゃなきゃ)
さりげなく向けられる優しさに、見守られていた眼差しに、喉から手が出るほど会いたい。
駆け出しながら、幼馴染くんの通話ボタンを押した。
「なあ今、どこにいる!?」
「夏祭りに来てるけど。神社のところ」
「待ってろすぐ行く!」
一方的に通話を切って、神社を目指して駆けていく。
階段を登りきったところに、幼馴染と彼女がいた。
「あ……」
そうか、夏祭り。彼女と来るよな、当たり前だ。
とっくに失恋してたんだと俯き、背を向けて階段を駆け降りる。
勢いよすぎて転げ落ちそうになったところで、後ろから腕を掴まれた。
「幼馴染……っうわ!?」
彼に手を引かれたまま階段を降りていく。
「お前、彼女は?」
「そんな顔の三白眼くんを放っておけないから」
どんな顔だと頬に手を当て百面相してると、ひと気のない林で花火の打ち上げ音が響いた。
「彼女のところに行ってやれよ、花火のために来たんだろ」
「もういいんだ」
「なんで」
幼馴染は口を開くけれど、花火の音に声が掻き消される。
なにか大切なことを言われた気がする。手を繋いだまま見上げていると、幼馴染が一歩近づいてきた。
相変わらずイケメンだなって、ぽけっと見上げていると。
顔が近づいてきてキスをされた。
「……!」
夜空で咲く花火と同じくらい、心臓がドコドコうるさい。
けれどちっとも嫌ではなくて、それどころかもっとしてほしくて。
花火そっちのけでキスに夢中になった。
(なんだよ、俺だけを見てくれてる人って、お前のことだったのか)
ときめきで胸を疼かせながら、背中にきつく手を回した。
三白眼くんは幼馴染の美麗な顔を、恨めしく見上げた。
「なに?」
「別に」
幼馴染の手には、ピンクの可愛らしい封筒が握られている。
本当は、三白眼くんがもらえるはずだった手紙だ……と思ってしまう。
「俺が最初に彼女を好きになったのに……」
好きになったコは、みんなイケメン幼馴染に惚れてしまう。
「見る目がなかったね。顔だけで選ぶ女とか、君にふさわしくない」
「お前は顔だけじゃないだろ。成績も運動神経もトップクラスだし、家も金持ちだし、それに性格だっていい」
「そうかな? ありがと」
笑うコイツに罪はない。全ては、自分に魅力がないせいだ。
……と、思い込んでいるであろう、三白眼くんの横顔を、イケメン幼馴染は恍惚と見つめる。
(いちいち落ち込むの、可愛いな。また好きなコ取られたって思ってるんだろうなあ。はやく女の子とつきあうのは諦めて、僕だけを見てほしい)
幼馴染はわざと、三白眼くんが好きになった子にアプローチして落としてる。
そして落ちたらポイ捨てする。なぜなら本当につきあいたいのは三白眼くんだから。
性別が女子だというだけで、好きな人から好かれている、羨ましくて憎い相手だから。
「あーあ、どっかに俺のことだけを好きになってくれる人はいないのか」
(ここにいるよ)
「そうだね、みんな見る目ないよね」
「幼馴染もそう思うよな?」
「本当にね。君だけを見てくれる人は絶対いるから、はやく気づけるといいね」
「気づく……? え、お前俺のことが好きなヤツを知ってんの!?」
「まあね」
「なんだよー教えろよ。そんな女子いたら絶対好きになっちゃう自信がある」
(女子じゃなきゃダメなのかな)
いつかきっと、つきあってみせる。
お互いに同じ言葉を胸の中に誓いながら歩く二人は、今日も盛大にすれ違っている。
そんな平行線な日々に疲れて、幼馴染くんはいい加減三白眼くんを諦めようと、彼女とつきあい始める。
幼馴染くんが離れていった時、三白眼くんはあれ、なんか寂しいなっ? ってなって
きっとその時はじめて、幼馴染くんがすごく大切だったんだと気がつく。
「おーい幼馴染、一緒に帰ろ……」
声をかけようとしたら、となりに女の子がいた。
女の子は幼馴染に腕を絡めてて、幼馴染くんは話しかけられて頷いている。
呆然としているうちに、二人は校門を出ていってしまう。
行きも帰りも一人、休み時間も幼馴染は彼女に連れられて、どこかに行ってしまう。
「あいつ最近つきあい悪いよな、これだから彼女持ちは」ってひがむ友人に「寂しいよな」って無意識に言っちゃって(ああ俺寂しいんだ)って気づく。
そんな中、慰めてくれた女子から告白される三白眼くん。
やっと彼女ができたと喜んだのも束の間、山に行けば幼馴染と協力して虫とりした思い出が胸に迫るし、夏祭りに行けば彼と競いあった金魚掬いを思い出す。
彼女のことなんて考えられない、幼馴染がいないことが気になってしょうがない。
「ねえ、ほんとは好きな子いるんでしょ」
「え?」
「私といても、貴方はいつも寂しそう」
好きな子って。違う、あいつは幼馴染で…
「忘れさせてあげる」
グロスで光る唇が近づいてきて、とっさに肩を押した。
(この子じゃダメなんだ、アイツじゃなきゃ)
さりげなく向けられる優しさに、見守られていた眼差しに、喉から手が出るほど会いたい。
駆け出しながら、幼馴染くんの通話ボタンを押した。
「なあ今、どこにいる!?」
「夏祭りに来てるけど。神社のところ」
「待ってろすぐ行く!」
一方的に通話を切って、神社を目指して駆けていく。
階段を登りきったところに、幼馴染と彼女がいた。
「あ……」
そうか、夏祭り。彼女と来るよな、当たり前だ。
とっくに失恋してたんだと俯き、背を向けて階段を駆け降りる。
勢いよすぎて転げ落ちそうになったところで、後ろから腕を掴まれた。
「幼馴染……っうわ!?」
彼に手を引かれたまま階段を降りていく。
「お前、彼女は?」
「そんな顔の三白眼くんを放っておけないから」
どんな顔だと頬に手を当て百面相してると、ひと気のない林で花火の打ち上げ音が響いた。
「彼女のところに行ってやれよ、花火のために来たんだろ」
「もういいんだ」
「なんで」
幼馴染は口を開くけれど、花火の音に声が掻き消される。
なにか大切なことを言われた気がする。手を繋いだまま見上げていると、幼馴染が一歩近づいてきた。
相変わらずイケメンだなって、ぽけっと見上げていると。
顔が近づいてきてキスをされた。
「……!」
夜空で咲く花火と同じくらい、心臓がドコドコうるさい。
けれどちっとも嫌ではなくて、それどころかもっとしてほしくて。
花火そっちのけでキスに夢中になった。
(なんだよ、俺だけを見てくれてる人って、お前のことだったのか)
ときめきで胸を疼かせながら、背中にきつく手を回した。
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