転生!底辺ドワーフの下剋上~小さい英雄の建国記~

西の果てのぺろ。

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第27話 逃げるドワーフ達

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 コウとダンカン、ワグ、グラ、ラルの四人は、南に向けて走っていた。

 全員が戦斧や斧槍、戦槌などを片手に鈍足で駆けている。

 一番最後はコウが走っていた。

 コウは一番足が速いから、先を走るとみんなを置いていってしまいそうになるからだ。

 ただし、ドワーフは確かに鈍足だが、その代わりその太い手足からわかる通り、力が強く体力があるので重装備でもその速度は変わらない。

 下手をすると同じ重装備の人族よりは速いかもしれなかった。

 コウ達はドスドスと音を立てながら、街道を南下する。

 そんなコウ達を一騎の馬に跨った領兵が、遠目から発見、すぐにその場から急いで去って行く。

「見つかったようだ。追手が来るのも時間の問題だな」

 ダンカンがその騎馬の背中を見送ってコウに声をかける。

「少しでも有利なポジションを取る為に時間稼ぎをしておきましょう」

 コウはそう言うと、腰に付けている小型鞄《ポーチ》に手をやる。

「「「?」」」

 ダンカン達が何をするのかと思った次の瞬間だった。

 その小型鞄から大きな木が一本、二本、三本と次から次に飛び出してきて街道を塞ぐ。

「「「!」」」

 ダンカン達は驚きに目を見開き、コウの顔と大木を何度も見比べた。

「あ、この事は秘密でお願いします」

 コウはそう言えばリーダーのヨーゼフ以外、秘密にしていた事を思い出して、人差し指を口元に立てて見せた。

「……いつの間に、そんなもの入手していたんだ……? 魔法の鞄なんて入手するお金、お前にはなかっただろう? ──まさか……、『遺産の部屋』を見つけたのか!?」

 ダンカンがコウの秘密の鞄について見事に予想して答えに辿り着いた。

 その指摘にはワグ、グラ、ラルの三人も驚いてまたも目を見開く。

 三人共無口だが、その表情は豊かだ。

「──正解です……。黙っていてすみません。ヨーゼフさんに口止めされていたのでみんなには内緒にしていました……」

 コウは申し訳なさそうに言う。

「何だ、それなら早く言えよ! それを知っていたら他の作戦も考えられたぞ!」

 ダンカンは怒るでもなく呆れる感じで応じてきた。

 ワグ、グル、ラルの三人もダンカンの言葉に強く頷いている。

「え?」

 コウは意外な反応に驚く。

 てっきり、秘密にしていた事を仲間として残念だと責められると思っていたのだ。

「なんだ、俺達が怒ると思っていたのか? そんな事で怒るかよ。それより、その小型鞄に馬車を入れておくとかできただろう! 馬は現地調達すればいいんだからな」

 ダンカンはコウに苦笑すると、みんなに改めて「走るぞ!」と、促す。

「あ、でも、この魔法収納は出入り口が狭くて幅がある大きな物は入らないんですよ。容量は大木が入るので大きいみたいですけど……」

 コウは申し訳なさそうに答えた。

「だが、大木が入るだけでもこれからの戦い方も変わって来るというもんだ。その能力があれば、この中の一人二人くらいは生き残れるかもしれん」

 ダンカンはその鈍足で先頭を走りながらそう答え、続ける。

「──この先は見ての通りずっと行ったところが山道になっている。そこまで辿り着ければ、その大木でまた道を塞いで時間稼ぎが沢山出来るぞ」

 ダンカンの言う通り、このまま南下していくと目の前に山々が広がっており、当然進めば山道になっている。

 そこに辿り着ければダンカンの言う通りの展開になりそうであった。

「コウ、お前は先にあの山道まで行って、大木で道を塞いでおけ! それで仲間のドワーフ達は追手に追いつかれる事なく他所の領地に逃げ込めるはずだ」

 ダンカンの提案はもっともに聞こえた。

 しかし、重要な事が抜けている。

 それはダンカン達が間に合わない可能性があるからだ。

「でも、みんなが追手に追いつかれる可能性が……」

「そんな事を言っている場合か! さっきの偵察の騎馬が仲間を連れて戻ってきたら、俺達だけでなく他の仲間まで逃げられないかもしれないんだ。最悪の事態だけはどうやっても回避するんだ!」

 そう言うとダンカンがコウの背中を強めに押した。

「……わかりました。道を塞いだら、すぐ引き返してきます!」

「「「おう!」」」

 ダンカン達はコウの言葉に頷く。

 その場から走って去って行く背中を四人は見送ると、

「……よし、お前らこの辺りで追手を迎え撃つか」

 とダンカンが真剣な声で告げた。

 そして、うっすらと砂塵が上がっている後方に視線を向ける。

 すでに追手が迫っていたのだ。

 ダンカンはそれに気づいたうえでコウを逃がす選択をしたのである。

 ワグ、グラ、ラルの三人もそれを承知していたのか足を止めると、焦る事なくそれぞれ武器を片手に道の真ん中に仁王立ちするのであった。


 コウは嫌な予感がしていた。

 と言っても根拠はないから、ともかく山道を大木で塞いでダンカン達の下に少しでも早く戻る為に必死で走る。

 しばらく走り山道に差し掛かるところで、前を進む馬車を一台発見した。

「おーい! コウ!」

 馬車の中からコウの名前を呼ぶ者がいた。

 そう、捕らえられていたドワーフ達の護衛の為に同行していた髭無しグループのみんなだ。

「あ! みなさん、急いでください。追手が迫っています!」

「何!? わ、わかった! ──おい! 馬に鞭を入れろ! ──あ、それでダンカン達は?」

「みんなこっちに向かってます。僕はこの先の山道の出入り口を大木で塞ぐ為に先行しました。──ではみなさん、急いでくださいね」

 コウは馬車と並走していたが、山道に入り道が狭くなったところで、そう言うと立ち止まり、馬車に手を振ってから、大木を魔法収納から出して道を塞ぎ始める。

「急いで戻らないと、みんなが追手に追いつかれるかもしれない!」

 コウは急いで大木を複雑に積んでいく。

 まさか、この時すでにダンカン達が追手に追いつかれ、死闘を繰り広げているとはコウも夢にも思わないのであった。
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