転生!底辺ドワーフの下剋上~小さい英雄の建国記~

西の果てのぺろ。

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第98話 村の未来 第三章

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 バルバロス王国辺境のエルダーロックの村は、ドワーフを中心とした多種族の村となっている。

 現在、大鼠族の情報網で、各地のドワーフ達が安住の地を求めて、この村を目指して集まりつつあるという話もあった。

 なにしろこの村は、バルバロス王国と隣国ヘレネス連邦王国と緩衝地帯に位置する事から、浮いた存在になっているのだ。

 領主であるダーマス伯爵との売買契約を結んで購入し村を作ったわけだが、肝心の中央への登録が行われていなかった。

 それはつまり、バルバロス王国下の正式な村として登録がなされていなかったのである。

 これは、たまに地方であることなのだが、村の登録をしないで、税だけ回収し、現地の領主がそれを丸々懐に入れ、中央にその分は納めないというものだ。

 ダーマス伯爵も不当な売買契約と税収欲しさに中央に登録せずにいたのである。

 つまり脱税だ。

 それを、たまたまお忍びで訪れ長い時間滞在していたオーウェン第三王子によって発覚した。

 このことにより、エルダーロックの村の扱いも表向きには未承認のままにし、自治区として扱うことで有耶無耶にした。

 承認したら、隣国のヘレネス連邦王国と、緩衝地帯の占有権で国際問題になるからだ。

 その為、ダーマス伯爵の罪もこれについては、罪を問われないことになった。

 その罪を問うと、エルダーロックの村の存在を公に認めることになるからだ。

 だから今は、よくある《勝手に住みついて集落を作った者達の村》ということにし、どこにも所属しないから税はなく、ただ、貢物を納めてもらい、税の代わりとしている。

 そんなエルダーロックの村は、一見すると、村という規模ではない。

 山に棚田を作り、一部を整地して住居とし、その周囲は幾重にも防壁を築いているから、一つの大きな砦のようである。

 もはや、広さだけなら街と言ってもいいだろう。

 あとは人口だが、その人口も、ドワーフを中心にこの辺境に異種族が集まりつつある。

 これには、通り道になるダーマス伯爵も通行料などの収入で嬉しいやら、憎きドワーフの村が大きくなることに悔しいやらで複雑な思いではあったのだが……。

「……それで。奴らの村の人口は今どのくらいだ?」

 ダーマス伯爵は、エルダーロックの村が日増しに大きくなることを危惧して部下に確認する。

「現在のところ、八百人程度かと思われます」

「八百人!? いつの間にそんな数になっているのだ! 小さな街程度あるではないか!」

 ダーマス伯爵が驚くのも仕方がない。

 通常、街の人口は千人から六千人程。

 栄えている領都でも、一、二万人というところである。

 出来てまだ、日が浅いエルダーロックの村は最初の移住者が五百人程もいたとはいえ、辺境の村が短期間で三百人増はありえない数値であった。

「この数か月、エルダーロックを目指す異種族も増えている様子なので、さらに増えているかと思います」

 部下は数か月に一度、間者を送ってエルダーロックの様子を窺っているようで、曖昧な情報を口にする。

「なんとか、あそこに人が集まるのを防げないものか?」

 ダーマス伯爵はまだ、凝りていないのか、そんなことを口にした。

「伯爵様、今度また、あそこに手を出したら、国際問題ですよ?」

 部下の指摘はもっともだ。

 すでに、エルダーロックの村は自治を認めらた国外なのである。

 そこにちょっかいを出したら今度は、有耶無耶になるどころか、隣国ヘレネス連邦王国も巻き込む問題になりかねない。

「……その、ヘレネス連邦王国に報告してやれ……。緩衝地帯に住み着いたがいるとな……」

 ダーマス伯爵は、暗鬱とした表情で部下にそう命じる。

「! 伯爵様、そのようなことをしたら、エルダーロックの村はおろか、この領地も領境を接している分、巻き込まれることになるかもしれませんよ!?」

 部下はダーマス伯爵の気がふれたと思ったのか、慌てて進言する。

「命令通りにせよ! エルダーロックの村は、国外だ。どうなろうと、我が領は関係ないことだ!」

 ダーマス伯爵はヒステリックにそう告げると、部下を退室させるのであった。


 その頃のエルダーロックの村はというと。

「こいつはたまげた……」

 村の農民ドワーフ達が、招かれたコウの自宅の裏庭で、驚きに包まれていた。

「だろ!? やはり、これはと変わらないよな?」

 大鼠族の商人ヨースが、農民ドワーフ達の驚きに賛同して頷く。

「ねぇヨース。これって本当に使えるのかな? 元々ベルが教えてくれた植物だし、そんなに期待していなかったのだけど……」

 コウは、発見者である剣歯虎《サーベルタイガー》のベルとその主であるコウを差し置いて盛り上がっているみんなに疑問を口にした。

「コウ、これは『胡椒』の代用品として十分使えるぜ? それも、アイダーノ山脈地帯という麓の森に群生するような厳しい環境に強い植物なら、生産も十分可能だろうしな!」

 ヨースはコウの疑問に自信を持って答えた。

「この植物は、この村の武器になりますよ! 生産できればなおのことです!」

 農民ドワーフの代表であるヨサクが興奮気味に言う。

「どのくらいの価値があるんでしょうか?」

 コウはまだピンと来ないのか、価値を聞いた。

「そうだなぁ……。この代用品を見る限り、収穫時期で黒胡椒、白胡椒のように分類できそうだから、胡椒と同じか、その少し下くらい。高級で知られる砂糖と同じくらいの値で取引できるんじゃなかろうか?」

 ヨサクがコウに渡された胡椒の代用の植物を眺めながら、そう評価した。

「砂糖と同じくらい!?」

 コウは声を上ずらせて、反応する。

 砂糖はそれこそ貴重で貴族をはじめとした特権階級にとても好まれるものであり、高値で取引されているのだ。

 それと同じくらいとなれば、驚くのも当然である。

「さっきから、『胡椒の代用品』とばかり、言われているが、この植物の正式名称はなんだ?」

 ヨースが、この植物の固有名詞を知りたくて、農民ドワーフのヨサクに聞いた。

「俺も初めて見る植物なので、名称はないかもしれないですな……。──この鉱山の村の胡椒もどき、ということで、『鉱椒《こうしょう》』なんてのはどうじゃろうか?」

 ヨサクはこの村の特産品になりそうなネーミングを提案した。

「いいですね、それ! 胡椒とは名乗れないし、わかりやすくていいと思います!」

 発見者のコウが、一番に賛同する。

「よし! 発見者であるコウの賛同も得たし、こいつは『鉱椒』で決定だ! ヨーゼフ村長にも話して今後の生産予定に入れてもらわないとな!」

 ヨースはお金の臭いしかしない、この『鉱椒』に興奮気味だ。

「それじゃあ、僕は、森でこの『鉱椒』のタネをいっぱい探してくるよ」

 コウは俄然やる気になって、立ち上がる。

「「「我々も行きますぞ!」」」

 農民ドワーフ達も興奮気味に立ち上がった。

「コウ、落ち着きなさいよ。慌てなくても森にある『鉱椒』はなくならないわ。明日の朝から採取しに行きましょう」

 ダークエルフのララノアが、やる気のコウ達を止める。

「はははっ。そうだね。──それでは、ヨサクさん。明日の朝から、お願いします!」

 コウはララノアの指摘で冷静になると、笑ってそうヨサク達に伝えた。

「俺としたことが……。明日から、やりましょう。わははっ!」

 ヨサクもコウの言葉に落ち着くと、興奮してしまった自分に思わず笑ってしまう。

こうして、村の新たな主力になりそうな生産品が生まれようとしているのであった。
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