転生!底辺ドワーフの下剋上~小さい英雄の建国記~

西の果てのぺろ。

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第112話 麓の集落

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 コウ達一行はダークエルフのララノアが契約を交わした氷の精霊フロスの力を借りることで、隣国ヘレネス連邦王国側のアイダーノ山脈をわずか二時間で無事下山することができた。

 コウが考えたスキー板で滑り落ちたからというのが一番の理由であったが、目立った事故もなかったのはやはり精霊フロスのお陰である。

 この精霊フロス、よほどララノアとの相性が良いのかララノアの魔力にほとんど頼る様子がない。

 精霊との契約は当然相性が一番大事なのだが、相性が悪くても魔力で強引に契約を結ぶことはできる。

 ただし、使用する度に膨大な魔力を消費することになるので相性は良いに越したことはないのだ。

 ララノアは元々魔力量が少ないことやそれらの知識が不足していたから、これまで精霊との契約は結べないでいたのだが、そのララノアと契約を結べるフロスは万分の一、いや、それ以上に出会える確率が低い相性の良さだったようである。

 だから、ララノアはフロスが力を駆使しても魔力枯渇で疲れる様子がない。

 ララノア本人は精霊との契約自体が初めての経験なので、これが普通のことなのかさえわかっていない様子であった。

 コウもご近所のエルフ・アルミナスからの受け売りだから、氷の精霊フロスについてはよくわかっていないが、その受け売りの知識でもこのフロスは特殊なのではないかというのは何となく感じるところである。

 そんな疑問をもちながらも、コウ一行(ベルとフロスを含む)と剣歯虎三頭は、雪のない山の中腹まで下りてきていた。

 装備もすでに雪山仕様から通常登山のものに変更している。

「上からだと麓の様子とか丸見えだね。──あつ! あの辺り、集落ができていない?」

 コウが指さした先の麓に、結構大規模な集落が作られつつあるようだ。

 と言うのも、その集落は不規則に家がいくつも作られているが、秩序だった感じではないのである。

「見た感じだと……、数は三、四百人はいると思う。でも、それだけの数がこんな緩衝地帯に集落を作るとしたら、その数をまとめあげている指導者がいてその下に秩序が生まれ、しっかりした村作りが行われると思うのだけど、そういう感じがないわね」

 村長の娘カイナは父ヨーゼフの姿を見て育っているから、眼下の集落が無秩序に家が作られている有様に少し呆れ気味であった。

「どれ、俺が能力でここから確認してみる」

 髭なしドワーフグループで三兄弟の長男ワグが一行を岩陰に移動させて、その集落を中腹から確認することにした。

 ワグはどうやら、遠見系の能力持っているようだ。

「……あの集落、コボルト達中心の集まりだな。……その中に、人族が数人混ざっている。いや、違うな……、あれはただ命令しているみたいだ。──その人族達も馬車で去っていくぞ」

 ワグは手をおでこの辺りにかざして光を遮り、麓を覗き見ていたが、自分が見える光景をコウ達に細かく伝える。

「……これって、エルダーロックの村の存在に対して、その対抗措置としてこちら側にも異種族の村を作らせようってことだよね?」

 コウがヘレネス連邦王国の狙いをすぐに見抜いた。

「確かにそうかもね。人族の国でコボルトだけの村なんて聞いたことないもの。それにヘレネス連邦王国では、人の形をしていない種族が差別されているのよね? 例えば大鼠族とか。ヨースがそんなこと言ってたわ」

 ララノアが二足歩行で犬の姿をしたコボルト族がヘレネス連邦王国では差別対象であることを指摘する。

「なるほど……。コボルト族は自分の意思でここに村を作ろうとしたのではなく、無理やり連れてこられたから、無秩序な感じに集落ができているのか……」

 コウはコボルト族に対して同情的な気持ちになった。

 自分達の意思ならばどんなに貧しくても、希望が持てる。

 しかし、無理やり連れて来られて村を作ってここに住めと言われたのであれば、それは絶望でしかない。

 なにしろ、人が住んでいなかった場所は土地が荒れている。

 人が住んでいない場所というのは色々理由があるというもので、そんな土地に住もうとすると土から見分けないといけない。

 エルダーロックの村の場合は、整地の時に出た比較的に肥えている土や近くの大きな森の腐葉土などを混ぜて棚田を作っているから畑に適していた。

 しかし、ここから集落を見る限り、その周囲は開けた土地ではあるが、緑も少なくあまり肥えているようには見えない。

 幸運なのは近くに大きな川が流れていることくらいか。

「コウ、どうする? ヘレネス連邦王国はうちの村に対抗する形で村を作らせているみたいだが、これなら脅威にはならないだろう。放っておいても一年持たずに消滅するだろうな」

 ワグが、今回の偵察目的が達成できたので、冷静な分析を口にした。

「……ちょっと、コボルト族のみなさんに協力できないかな?」

 コウは突然、そんなことを口にした。

「「「え?」」」

 みんなは驚いてコウに視線を向ける。

「あ、別に何が目的とかということではない……、よ……?」

 コウは自分が、とんでもないことを言っているなと気づいて声が小さくなっていく。

「……エルダーロックの村は俺達ドワーフの誇りだ。今ではいろんな種族も集まってきて差別されている種族の自由の地になりつつあると村長も言ってた。──彼らにもそんな場所にしてほしいってことか?」

 ワグがコウの気持ちを汲み取って聞く。

「そんな大それたことは考えていないけど……、ただ、辺境に追いやられて希望もなくこの場所で朽ちていくのはつらいと思うんだ。僕はエルダーロックの村のお陰で希望が持てたし、帰れる故郷が出来たと思っているから、コボルトのみんなにもあの土地が大事な場所になってほしい!」

 コウは目に強い光を宿して、力強く答える。

「……そうね。私達の村も色々あったけど、自分達の居場所だと思ったら希望が持てた。力になれるなら、それもいいかもしれない。でも、こちらがそう考えてもコボルト族が賛同するかはまた別の話よ?」

 村長の娘カイナは父ヨーゼフの隣でいろんなことを見てきていたから、甘さはない。

 コボルト族がそれを望まなければ、意味はないのだ。

「うん。わかってる。とりあえず、今日は、旅人のフリをしてあの集落で休ませてもらって様子を見ない?」

 コウはカイナの言葉を深く受け止めつつ、そう提案する。

「コウがそうしたいのなら、私もそれを支持するわ。行きましょう!」

 ララノアが元気にコウの意見に賛同すると麓に下りる素振りを見せた。

「仕方ない、コウに従おう。どっちにしろ、詳しい情報は欲しいからな」

 ワグもそう賛同すると、弟達グラ、ラルも頷く。

 ベルも「ニャウ!」と鳴くと、他の三頭の剣歯虎も黙って従う素振りを見せるのであった。
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