転生!底辺ドワーフの下剋上~小さい英雄の建国記~

西の果てのぺろ。

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第180話 戦の準備

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 セイレイン王領王都を出たコウ一行はそのまま南下せず、まずは東進して国境を出ると緩衝地帯に出てからようやく南下した。

 これは、セイレイン王領東側と、緩衝地帯の地形を確認する為でもあった。

 コウは、街長ヨーゼフが緩衝地帯であるアイダーノ山脈一帯を、エルダーロックの行動範囲と考えているようだったから、今後のことも考えて見ておく必要があると考えたのである。

「アイダーノ山脈のヘレネス連邦王国側は、思ったより緩衝地帯を広く取っているみたいだね」

 コウは剣歯虎のベルに騎乗した状態で、コボルトのレトリーに確認した。

「土地が痩せているので、領地として組み入れる必要性を感じていないのだと思いますワン。この土地を与えられても領主はもちろんのこと、領民も困るだけですからワン」

 レトリーがコウの疑問にもっともな意見で答える。

「へー、そうなんだね。なだらかな地形が多くて、南北の迅速な移動には適しているから、これからも緩衝地帯を利用していいかもしれない」

 コウは、答えながらその緩衝地帯をみんなと疾走し、コボルトの村を目指すのであった。


 数日をかけてコウ達は、コボルトの村に帰還した。

「無事お帰りになって良かったですワン。とても早い帰還ですが、何かあったのですかワン?」

 コウ達の帰還を知って、村長ドッゴが、相談役の老オルデンと村長宅前で出迎えてくれた。

「実は──」

 コウは、入手した情報の内容が至急のものだったから、挨拶もそこそこに、村長宅に入りながら、説明を始める。

 村長ドッゴと相談役である老オルデンは、コウの話を聞いて呆然とした。

「噂が本当だったとは……」

 老オルデンがようやく険しい顔つきでそう漏らす。

 村長ドッゴも、深刻な表情になっていたが、老オルデンの言葉を聞くまでは沈黙を守る。

「ドッゴ村長、これは、この村存続の危機だワン……。コウ殿の情報通りなら、四日後にはセイレイン王領王都をあとにした地方軍五百がこの村に向けて動くことになるワン。迎え撃つ準備期間は約十日。それまでに万全の準備をするべきだワン」

 老オルデンは相談役として村長ドッゴにそう助言する。

「コウ殿。戻ったばかりで申し訳ないけど、街長ヨーゼフ殿に援軍をお願いしたいワン。ドワーフ隊が援軍に来れば、地方軍を討伐するのも難しくないワン」

 ドッゴは、ドワーフのヤカー重装騎兵隊と訓練を度々行っていたから、その強さをよく知っている。

 それにその数も最近増やしていることを知っていたので、援軍が来れば、兵力的にも互角で渡り合えると計算した。

「……ドッゴさん、オルデンさん。今回の戦い、コボルトの村のみでやってみませんか? もちろん、僕達も協力はしますが」

 コウは意外なことに援軍の前に自分で戦えと言い出した。

「ちょっと、コウ、何を言っているの!? 私達エルダーロックとコボルトの村は同盟関係にあるのよ? 援軍を出さないでどうするの!」

 これには、コウらしからぬ反応だと思って、ダークエルフのララノアも留めに入る。

「ララノア殿、少し待つワン。──コウ殿、理由を聞いてもよろしいですかワン?」

 老オルデンが驚いている村長ドッゴに代わって、コウに理由を問う。

「もし、今回の地方軍を撃退しても、次は、中央軍が派遣されると思うのです。その時の為に、エルダーロックとその軍についてはまだ秘密にしておく方が、戦略的に有利だと考えました。それに、コボルトのみなさんには、地方軍相手でも自分達の力で勝てるという自信をつけてほしいという気持ちもあります。もちろん、みなさんに混じって僕達は戦いますが、あくまで主力はコボルトのみなさんで戦うべきだと思います」

 コウは、先のことも考えてそう助言をした。

 これには、村長ドッゴ、相談役の老オルデンもハッとした表情になり、黙って聞き入る。

 そして、二人は静かに頷き合うと、

「コウ殿言うこと、至極もっともだと思いますワン。……ですが、情けない話、我々では籠城戦しか思いつかないワン。コウ殿には今回の戦いについて何か一案がありそうだと思えるので、それを聞かせてもらってもよろしいですかワン?」

 と老オルデンが恥を忍んでコウに策を促した。

「もちろんです。僕の作戦が正しいとは限りませんが、みなさんの友人として助言はいくらでもさせてもらいます。──ちなみに僕の作戦も、籠城です」

 コウは、意外にもこの状況で一番やってはいけないと思われることを提案した。

 籠城とは、援軍ありきの作戦である。

 だが、今回は、エルダーロックの援軍無しに勝つことを条件にしてあるのだから、籠城にその意味はない。

 兵力で圧倒的に不利なコボルトの村だから、敵も籠城するであろうことはわかっているはずだ。当然、その準備もしてくるだろう。

 その状況下での籠城は無策を意味するものであった。

 それだけに、下策としか言いようがないだろう。

「「コウ殿、それは……」」

 村長ドッゴと老オルデンもそのくらいは理解できたから言葉に詰まる。

「はははっ。そう思わせるのが大事なんです」

 コウは当然の反応を二人がしたので、笑顔で答えた。

「「えっ?」」

 ドッゴと老オルデンは理由がわからず聞き返す。

「地方軍はこちらをどう思っていると思いますか? 正直、コボルトのみなさんを侮っているのではないかと考えています。下手をしたら、五百の軍で村を包囲したら、それだけで降伏するかもしれないとも思っているかもしれません。最悪でも籠城程度の策しかないだろうとも。こちらはその希望に応えるのです。もちろん、表面上だけですが」

 コウは意味ありげにそう答えた。

「確かに以前の我々なら、降伏か籠城ですワン……。ですが、表面上とはどういうことですワン?」

 ドッゴが、コウの言うことに納得しつつ、意味深な言葉に興味を持って聞き返した。

「地方軍には、籠城するコボルトのみなさんを見て、『ああ、やっぱりか』と思わせるのが重要なんです。前回の盗賊討伐際も村に籠城しての勝利ですから、それがあちらに伝わっているのであれば、おそらく今回も同じだろうと判断すると思います。ならば、表向き籠城してみせて相手の意に沿うことで、油断させる。そうすれば、こちらの術中に嵌めやすくなるかと思います」

 コウがそう説明すると、ドッゴと老オルデンは、希望に溢れる輝いた目で見合わせると、頷く。

「「それで、その後はどうするのですかワン!?」」

 ドッゴと老オルデンは、コウの作戦について詳しく説明を求めた。

「これはもちろん、敵の動きによって作戦は変わりますが──」

 コウは二人を安心させる為、いくつかの状況によって考えた作戦を説明し、それを成功させる為にも戦の準備を促すのであった。
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